朱里と雛里の看病の甲斐があり、溜まっていた政務はすぐに片付いた。
特にすることもないので、いつも通り特訓を始めていた。
「ふっ・・・!はっ・・・!」
時々、愛紗が俺に稽古をつけてくれるおかげで、剣道部にいた頃よりも腕が上達していた。さすが、一騎当千の関雲張が教えてくれるだけはある。
・・・けど、まだ全然足りない気がする。飛鳥を助け出すためには、まだまだ力が必要だと思うけど・・・。
「・・・・・」
他に誰に頼ればいいのやら・・・。愛紗でも十分に頼りになってくれているが、俺ばかりの相手はしていられない。愛紗には愛紗のやる事があるから、時間を無理に取るわけにもいかない。
「はぁ~~~・・・・・」
かといって、そんな都合よく師匠なんて見つかるわけがない。八方塞がりで思わず大きなため息。
「お、青年。ため息なんかついてどうした?幸せが逃げるぞー。」
すると、後ろからゆっくりと歩いてきた長身の男が声を掛けてきた。
「あ、えっと・・・確か・・・」
「龍玄だよ。ま、覚えにくければおっさんでいいぞ。」
「ああ!薬草のことはどうもありがとうございました。」
薬草をくれた本人ということに気づいて、深々と礼をする。
「別に気にするなって♪・・・それより、手に持ってるのは剣か?」
「ええそうです。少しでも強くなろうと、こうして毎日特訓をしていて・・・」
その場で少し素振りをしてみせる。耳元にヒュンッと風を切る音がする。
「ほー・・・。なかなか良い振りをするね~。ちょっと貸してみな。」
そう言って、龍玄さんに木刀を手渡す。
木刀を手渡し、龍玄さんが構え始めた時、急に周りの空気が変わった。
「う・・・ぉ・・・」
その空気に、俺は押し潰されそうな感覚に陥った。そして、
「ふん・・・!」
一回素振りをすると、辺りに強い突風が起きた。周りの木々がその風に、枝を震わせる。
「ふぅ・・・。とまあ、こんな風にもっと剣先に集中してだな・・・ん?おい、どうした?」
「・・・・・」
あまりの凄さについ身震いした。そして、俺は思った。
この人に教われば、きっと強くなれると。
「龍玄さん!」
「うおっ!?いきなりどうしたっ?」
「俺をあなたの弟子にしてください!」
「・・・・・はい?」
いきなりの弟子入り志願に、龍玄は目を丸くして呆然としていた。
「・・・いきなりどうした?具合でも悪いのか?」
「違います!俺、あなたのその強さに感激したんです。その強さがあればきっと・・・!」
「きっと?」
「きっと、親友を救い出せると思うんです!」
龍玄は蒼介の答えに、眉をピクッと動かす。そして、真面目な顔で聞いてきた。
「・・・友に何かがあったのか?」
「・・・はい。五胡に捕まってしまったみたいで・・・。だから、救いたいんです!この手で友を!」
蒼介の真剣な眼差しを見て、龍玄はこう言った。
「そうか・・・いいか青年。これだけは忘れるな。・・・戦いになれば、お前の命は自分だけのものじゃない。みんなのものになる。絶対先走って一人で行くんじゃないぞ。どんな状況でもだ。・・・分かったな。」
「は・・・はい・・・」
いきなりの真剣さに戸惑いながらも頷いた。そして、今の俺には、その言葉の意味の本質を理解することはできなかった。
頷いた俺を見て、龍玄さんは、
「よし♪分かればよろしい。・・・じゃ、さっそく準備するぞ~!」
「え?何をです?」
「何って、移動の準備だよ。これから一月くらい俺の家で修行だからな。じゃあ、行くぞー!」
ニンマリとした笑顔を浮かべ、酒樽を片手に歩き出す。
「えっ!?いきなりですか!?愛紗達には何も・・・!」
「いいっていいって!さ、出発ー!」
「え、ちょっ・・・!」
俺は龍玄さんに手を引っ張られ、みんなに伝えないまま、城を出て行った。・・・本当に大丈夫かな、この人で・・・。
※どうもお米です。なんか展開が変わりすぎておかしいかも・・・。ご指摘ドンドンお願いします。
さて、次回は一刀達魏√の話になります。今後は更新が滞り気味になるかもしれませんので、よろしくお願いします。それでは失礼します~。
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更新が遅れてしまい、本当すいません。この五月と来月の六月は更新が滞るかもしれませんので、ご了承下さい。そしてついに二十話に突入。いやはや早いものです。