No.142402

真・恋姫†無双・魏√ifEND・美羽編

さん

(`・ω・)逃亡中、うっかり魏の領内に入り込んでしまった為に、華淋に捕まってしまった美羽と七乃がそのまま家臣になったという設定でしゅ。
4/10/少し、修正をしました。

2010-05-11 02:29:26 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:7450   閲覧ユーザー数:6121

 

「にょほほほほほーーーーー♪今日の蜂蜜水は格別なのじゃ♪」

 

曹魏と蜀呉同盟との決戦は曹魏の勝利に終わり、三国同盟は此処に締結した。

もはやお互いに敵対する事は無く先ほどまで武器を握っていた手には酒が握られていて、笑いながら酒を酌み交わしていた。

 

「ん?兄様(あにさま)、何処に行くのじゃ?」

「ああ、ちょっと体が火照って来たから涼みにな」

「なら、妾も行くのじゃ。良いであろ?」

「……そうだな、じゃあ行くか」

「うん!」

 

美羽は一刀の手を掴んで後を付いて行く。華琳と七乃はその後ろ姿を辛そうに見送っていた。

 

「…馬鹿……お別れくらい言わせてくれたっていいのに……」

「美羽様…」

森の中、小川のほとりで美羽は一刀に膝枕をしてもらっていた。

 

「なあ、兄様。本当に争いは終ったのじゃな。これからは皆が笑って暮らせるのじゃな」

「ああ、終ったんだ。皆、笑って暮らしていけるさ」

 

そう言いながら一刀は美羽の頭を優しく撫でている。

 

「えへへ。兄様の手は大きくて暖かいのじゃ」

 

美羽もその手に自分の手を重ねて照れながらも笑う。

 

「これからも妾は兄様とずーと一緒におるのじゃ。そして……兄様の…子供を……」

「美羽?」

「すう、すう、すう」

 

自分の膝を枕にして眠り込んだ美羽の頭を撫でていると其処に七乃がやって来て……

 

「…どうしても、駄目なんですね……」

 

そう、辛そうに呟いた。

 

「ああ…けっこうあがいてみたんだけどやっぱりどうにもならなかった」

「美羽様が悲しみます…」

「…ゴメン、ゴメンな…美羽…」

 

眠っている美羽の頬に一刀の目から零れ落ちた涙が一粒、二粒と落ちていく。

 

「うう~む」

 

寝ぼけながら頬を掻く美羽を七乃に預けて一刀は立ち上がる。

 

「じゃあね。七乃さん、美羽をよろしく。…さようなら」

「…か、一刀さん。わ、私も貴方を…貴方が…好きでした…」

 

赤くなった目から止めどなく涙を流しながら七乃は想いを告白した。

 

「うん。節操がないかもしれないけど…俺は七乃さんの事も好きだったよ」

「うふふ。仕方ないですよ、一刀さんは魏の種馬なんですから」

 

「ははは」「うふふ」

 

お互いに笑い合うと一刀は背を向けて森の中へと入っていく。

 

…淡い光に包まれながら……

「ふむ…う~ん、むにゃむにゃ…七乃?」

 

美羽が目覚めると目の前には一刀ではなく七乃が居る事を不思議そうにしていた。

 

「七乃、兄様はどこじゃ?」

 

美羽は辺りを見回しながら聞いた。

 

「美羽様、一刀さんは…帰られる……そうです…」

「帰るじゃと、洛陽にかや?何故じゃ、まだ此処でやる事…は…」

 

美羽は七乃の頬を流れる涙を見て言葉を詰まらせ、そして悟った。

 

「まさか、天に……、かや?」

「…はい……」

「……い、嫌じゃ…嫌じゃーー!!」

「美羽様……」

「兄様は約束してくれたのじゃ、何処にも行かぬと。ずっと傍にいてくれると…約束したのじゃーー!!」

 

そう叫ぶと美羽は一刀の後を追いかける為に駆け出した。

はあはあはあはあ……

 

孫策の率いる孫呉に攻め滅ぼされた後、妾は七乃と一緒に各地を逃げ回った。

そして遂に魏に捕まってしまった時に一刀は自分達を庇ってくれた。

 

『華琳様、この様な者達は生かしておいても何の役にも立ちません。この場で首をはねてしまいましょう』

『そうね』

 

『待ってください、美羽様は、美羽様だけは…』

『待ってたもれ、妾はよい。じゃが七乃は助けてたもれ、七乃はきっと魏の役に立つのじゃ』

『な、何を言うのですか美羽様!私などより』

『こうなったのもすべて妾のワガママのせいなのじゃ。じゃから妾が責任を取って…』

『いい覚悟ね、ならせめて私の手で…』

『待った』

 

そこで一刀が止める。

 

『あら、何故止めるのかしら一刀?』

『張勲さんの力を此処で捨てるのはもったいないよ。彼女の力はきっとこれからの魏の役に立ってくれるよ』

『それは聞き捨てならないのです~』

『私達だけじゃ役不足だとでも言うつもり!これだから脳みその代わりに精液が詰まっている男は……』

『納得できる説明はして頂けるんでしょうね、一刀殿』

 

一刀は三軍師に詰め寄られるが涼しげな顔で答える。

 

『袁術には悪いけどはっきり言って彼女の領土を支えて来たのは張勲さんだよ、それも殆んど一人でね。それに俺は別に張勲さんに軍師になってもらおうなんて言ってないよ。張勲さんに街の政策などを担当してもらえば桂花達はその分、軍の方に集中できると思うんだけど』

『なるほどね。でもこの二人は信用してもいいのかしら?』

『美羽様を助けていただけるなら曹操様に絶対の忠誠を誓います。私の智の全てを曹操様に捧げます、私の誇りと私の真名「七乃」に賭けて』

『妾もじゃ。妾も誓うぞ、我が真名「美羽」に賭けて』

『……分かったわ。ならば貴女達の命と真名、この華琳が預かりましょう』

『華琳様!』

『宜しいので~?』

『仮にも袁家を名のる者が自らの真名を汚すと思うかしら?』

『思いませんね~。そこまで誇りを捨てられるのなら庶人に紛れてひっそりと隠れ住んでいたでしょうから』

『そういう事よ、いいわね桂花、稟』

『はい……』

『では七乃には街の政策など、桂花達の手が回りそうにない事を担当してもらう事にするわね』

『御意!』

『そして一刀には美羽の御守りを任せるわね』

『へ?……何故に俺が?』

『何故も何も七乃が政策にかかりっきりになると美羽が野放しになるでしょ。誰かが付いてないと危なっかしいじゃない。貴方が責任を持ちなさい』

 

呆然としている一刀のズボンを美羽が掴む。

 

『ではよろしくなのじゃ、一刀兄様』

『こらーー!兄ちゃんを兄様なんて呼ぶなーー!』

『そうです。そう呼んで良いのは私達だけです!』

『風達だけの特権なのですよ~』

『じゃが一刀兄様が妾の御守りをするのは華琳姉様がお決めになった事じゃ』

『ううう~~』

 

 

 

 

はあ、はあ、はあ、

 

そして、兄様は色んな事を教えてくれた。子供達との遊び方とか、お金というものは働いて稼ぐものだとか。

『はあ、はあ、つ、疲れたのじゃ~。に、庭の掃き掃除が終わったのじゃ~~』

『お疲れ様です。これは働いた分の給金ですよ』

 

何とか掃除を終えて、息も絶え絶えの美羽に侍女がお金が入っている袋を渡す。

 

『おお、これが給金かや。ちょっぴりしか入ってないのに随分と重い気がするのじゃ』

『それは美羽が働いて得た美羽のお金だからだよ』

『妾のお金……』

 

初めて手にした自分のお金、そのお金で買った蜂蜜は今まで食べて来たどんな高級な蜂蜜よりも遥かに美味しかった。

 

『こんなに美味しい蜂蜜は初めてなのじゃ!』

『そっか、良かったな』

『これも兄様のおかげなのじゃ。兄様に会えて良かったのじゃ』

『ははは。ほら、もう少し落ち着いて飲まないと。頬っぺたに付いてるぞ』

 

一刀はそう言って頬っぺたに付いていた蜂蜜を指で拭い、そのまま自分の口に入れた。

 

『ひゃわっ!あ、あ、あ、兄ひゃま…にゃ、にゃにほ……』

『あっ、ゴメン』

『はうう~~』

 

美羽は茹でダコの様に真っ赤になって倒れた。

 

『お、おい。美羽。美羽~~』

 

そんな二人を影から見ている者達が居た。

 

『はあ、隊長は遂に美羽はんまで落としおったで』

『隊長……』

『やっぱり、隊長は隊長なの~』

『はあ~~。照れて倒れる美羽様、可愛いです~~』

はあ、はあ、はあ、あ、兄様……兄様ぁ~~

 

しどろもどろになりながらも兄様に好きだと告白した時も優しく笑いながら受け入れてくれた、何時までも一緒だと約束してくれたのに……

 

何度もこけながらも走り続けているとようやく兄様の後ろ姿が見えて来た。

 

「あ、兄様~~、兄ざ…あにじゃま~~」

 

顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながらも一生懸命に兄様を呼び続けた。

でも兄様の体は薄い光に包まれて消えかけていた。

 

「嫌なのじゃ~~、何処にも行っては嫌なのじゃ~~。や、やくじょぐ…約束したのに~~、いつまでも、一緒なのではなかったのかや~~」

 

美羽の呼びかけに一刀は振り返る。そして駆けてくる美羽を優しい笑顔で見つめる。

 

「あにじゃま~~!!」

 

美羽は泣きながら一刀に飛びかかり、一刀も優しく手を広げて受け止めようとするが……

 

「ふぎゃっ!」

 

美羽はそのまま地面に倒れ込む。

 

「…うう……うええ~~、うえええ~~ん」

 

美羽は見てしまった。その胸に飛び込もうとした時、大好きな笑顔を残して消えて行った一刀の姿を。

 

「あにさま~~、あ、あにさま~~。うわああ~~~ん!兄様~~~~!!」

 

駆けつけて来た七乃に優しく背中を抱かれながら、空に浮かぶ月の光に見守られながら美羽は何時までも泣き続けていた。

 

それから暫くして……

 

「美羽さん、美羽さんは何処ですか?」

「あら~。お久しぶりですね、麗羽様」

「お久しぶりですね、七乃さん。美羽さんはお元気ですか?」

「ええ、それはもうすこぶる」

 

七乃はすっかり大きくなったお腹を撫でながら答えた。

 

「か、華琳さん達もそうでしたが…あ、貴女もですか……」

「はい~。最近はよくお腹を蹴って来るんですよ」

「あ、姫。あそこに美羽様が……え?」

「どうしたの文ちゃ…ん……え?」

「猪々子さん、斗詩さん。美羽さんがどうした……と……え?」

「あら~~、呆然としてますね~」

 

 

 

 

麗( ゚д゚)…(つд⊂)ゴシゴシ(;゚д゚)…(つд⊂)ゴシゴシゴシ(;゚ Д゚)…!?

猪( ゚д゚)…(つд⊂)ゴシゴシ(;゚д゚)…(つд⊂)ゴシゴシゴシ(;゚ Д゚)…!?

斗( ゚д゚)…(つд⊂)ゴシゴシ(;゚д゚)…(つд⊂)ゴシゴシゴシ(;゚ Д゚)…!?

 

 

 

 

 

「おお、麗羽姉様ではないですか。久しぶりなのじゃ」

「ひ、久しぶりでは無いですわ!な、な、何なのですかそのお腹は!」

 

美羽のすっかり大きくなったお腹を指さして悲鳴のような叫び声をあげた。

 

「何をも何も、勿論一刀兄様との子供じゃ」

「ね、ねねちゃんが妊娠してたからまさかと思ったけど……」

「さすがは魏の種馬……」

「おうっ!」

「どうしたんですか、美羽様?」

「心配はいらぬ。子供がお腹を蹴っただけなのじゃ」

「美羽様もですか~。私もさっき蹴られたんですよ~」

「うむ、この幸せは母親の特権じゃの~」

「そうですね~。まあ、母親になるには相手が居ないとですけど~」

「じゃの~~」

 

二人はそう言いながら横目で麗羽を見つめる。

 

「ムキーーー!何が言いたいんですの貴女達は!」

 

麗羽は二人に掴みかかろうとするが、

 

「ひ、姫っ!駄目ですってば!」

「もしお腹の子に何かあったら今度こそ私達死罪ですよ!」

「ムキャーーー!」

 

 

 

 

そんな騒ぎをよそに、美羽は窓から空を見上げていた。

 

(兄様、妾は元気な子を産んでみせるのじゃ。じゃから早く帰って来てたもれ)

 

笑顔で空を見つめ続けていた。

それからさらに数年後……

 

 

「此処は……?」

 

森の中に一人の青年が立っていた。

 

ガサッ

 

草の音に振り返ってみると、其処にはあの時泣きながら駆け寄ってきた少女の姿があった。

 

「あ、貴方は誰ですか?」

「…え…み、美羽?」

「あ、あの…母様(ははさま)のお知り合いですか?」

「は、母様?」

天羽(てんう)様~、どうしたんですか~?」

十乃(とうの)。この方、母様のお知り合いみたいなんだけど」

「美羽様の?」

 

新たにやって来た少女には何処となく七乃の面影があった。

 

「君達は…ひょっとして……」

 

そして、其処にやって来たのは……

 

「兄様と私達の子供ですよ」

「お帰り、お待ちしていました。一刀さん」

 

七乃ともう一人は、すっかりと成長していたが一刀には一目で分かった。

 

「ただいま…七乃さん。そして……綺麗になったね。ただいま、美羽」

「あ、兄様……兄様ーーー!」

 

美羽は泣きながら一刀に抱きつく。あの頃は腰の位置だった頭も今では肩に乗せる事が出来る。

 

「母様…それでは本当にあの方が……」

「お母様…?」

 

七乃は二人の子供の肩を優しく抱き答えた。

 

「そう。あの方が乱世を収めた天の御使い、そして貴女達のお父様ですよ」

父様(ととさま)

「お父様」

 

二人の子供は瞳を潤ませながら歩み寄ろうとするが。

 

「もう少し、もう少しだけ待っていてくださいね。私だって我慢してるんですから。もう少しだけ美羽様に……」

 

「兄様、兄様……約束して下さい。今度こそ、今度こそ」

「ああ、約束するよ。今度こそ何時までも一緒だ」

 

抱き合う二人。見守る三人。

 

小鳥達の囀りと柔かな日差しが彼らを包み込んでいた………

 

 

~fin~

(`・ω・)美羽編でした。

ラストで美羽の口調がしっかりしててらしくないとお思いでしょうが、一刀が居ない時間、そして母親になったという事で精神的に成長したという事で……。


 
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