「ええっと、お肉は買ってる。野菜や果物に、ひまわりの種も大丈夫かな。これだけ買うとさすがに重たいなー」
菊地真は我那覇響の部屋に向かう道すがら、メールで彼女から頼まれたペットたちの餌を買い込んでそれらが入った袋を抱えながら歩いていた。
最近の沖縄への注目度の高さから響の仕事も比例するように忙しさを増し、わずかなオフができるとペットたちの相手に時間を費やすことしかできない。
ペットたちもそれがわかっているのか彼女にべったりで餌やペット用品を買いに行くこともできなくなってしまっているのだ。
そこを真は日々のペットの世話を買って出てみせたのだった。
まだヘビ香やワニ子はおっかないところがあるもの、慣れてくるとそれぞれに可愛いところがあって響が彼らを手放したがらない理由がよくわかる。最近は人懐っこい性格のや寂しがり屋のが自分が世話にくると響にするように懐いてくるのだから、なおのこと可愛さは増すばかりだ。
そして、そうすることで響が喜んで、さらにお礼をしてくれるんだから真としてはうれしいことばかりだ。この前のお礼は仕事の合間にわざわざ自分の控え室までやってきてプレゼントを渡してくれ、それだけではなくハグとキスをくれたのだから。
真はそれを思い出すと心が躍りだしそうになって笑みがこぼれてしまうのを抑えられない。
今日もこのおつかいのお礼に彼女から何かもらえたりするんだろうか。
服やアクセサリーのような形のあるものではなく、この前みたいなキスとかのほうがなんかうれしいかも――そんなことを考えたりすると、重い荷物でも軽やかにスキップしてしまいそうになる。
それにしても奇妙なのは餌として頼まれたもの以外にも、沖縄のものであるゴーヤや素麺、なんとかという肉の缶詰なども頼まれたこと。
「これで響が手料理とか作ってくれたりするのもうれしいかな」
結局してしまったスキップで形が崩れ始めた袋を整えながら抱え直し、真は響の部屋があるマンションに到着した。
部屋の扉の前までやって来てインターフォンを鳴らす。扉の前では犬美の吠える声がかすかに聞こえてきて、それが真には歓迎されているようでいつものことながらうれしくなってくる。
扉が勢いよく開き、犬美が跳び出てきたかと身構えたが、その目に飛び込んできたのは響の姿だった。
「真ー!」
首に抱きついてきた響の勢いに倒されそうになるのを耐える。
「響! 危ないじゃないか」
「ごめんごめん」
お互い顔を見合わせて笑ってしまう。
しかし目と目が合ってしまうと、なんとも妙な雰囲気にもなってくるもので。
甘い空気とでもいうのだろうか。
真は見つめ合いながらかすかに首を傾げてゆっくりと近づいてくる響の顔の主に唇を意識した。
軽いキスと思っていた真はするりと入ってきた響の舌に驚いて体を震わせる。
わずかに音をたててかき回され、まるで自分の体温が塗り変えていくような錯覚。
舌に絡みついてきて痛いような気持いいような刺激。
口元から零れかけた唾液を舐めすすり取られる音に背徳感を覚え、真は体を震わせた。
響の顔が離れていき、ほほ笑みかけられたところで正気に戻ってきた。買い物袋を抱え直すと、まだちゃんと持っていたのかとそちらのほうに驚いてしまった。
「真! 今からお礼するからな、いっぱい!」
輝かんばかりの笑顔に気圧され、
「う、うん」
そして手をひっぱられるままに真は響の部屋へと誘われていく。
開きっぱなしの扉からペットたちが逃げ出したのが見えたが、今から起きると思われる出来事にそれを告げようとは脳が動いてくれず、すぐ目の前を歩く響の顔を見つめ直した。
部屋の奥へと。
-END-
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