No.141757

ヤンデレな知人に狙われる社会人 03

堀坂勇樹さん

ブラコンでヤンデレな姉達に狙われる義弟のパロディ作品。中学生のなのはさん達が社会人のオリ主に全力全壊で病んデレ予定な第三話。

2010-05-08 15:47:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:8013   閲覧ユーザー数:7350

日が落ち、街の明かりが灯る夜7時。

仕事が一段落つき、同じ態勢を長時間続けて凝り固まった体を伸ばす。

 

僕が勤めている Alicia Companyは、常時残業しなければならないほど多忙なのだが毎週1日は定時で上がらなければならない規則がある。

それが今日この日であり、なのはちゃんが一番楽しみにしている日なのだ。

 

この日は僕が定時に上がるので、なのはちゃんはいつもより長く僕の家に滞在できる様にと、家族とお話と言う壮大な喧嘩を起こし勝ち取ってた日と自慢してたのだが…。

何が起こったのか聞くのが怖いので、出来るだけ早く帰るようにしている。

 

連絡を入れれば、それなりに遅れても大丈夫なのだがそうじゃないとなのはちゃんのお話、もとい説教を数時間に渡って聞くハメになるのでそれだけは避けたい。

 

お話はとにかく、家の手伝いを任せっきりにしているのは事実なのでお礼も兼ねて一緒に過ごしているわけだが、個人的にはもっと学校の友人と仲良く遊んで欲しいと思う。

いつも僕の家に来ているので、彼女が友達と遊んでいる姿を見た事がない。

 

きっかけ作りにと部活を勧めるも、嫌だと本気で泣かれて以来彼女にはこう言う話はできなくなっている。

彼女の両親や兄弟ともたまに話すのだが、友人らしい友人がいないので心配だ。

 

ため息を付きながらパソコンの電源をを落とす。

机を整理し、書類の整理を行っていると不意に後ろから肩を叩かれた。

 

何事かと思い、振り返るとそこには僕の班の上司チンク・スカリエッティ課長の姿があった。

合法ロリを地で行く身長と体型は、その気がある男からすれば理想を体現していると思うのだが、幸か不幸か僕にはその気がまったくない。

 

それに容姿とは裏腹に、課長はリーダーシップに優れ部下達にも真摯に対応してくれるので尊敬できる。

尊敬できる上司を、そんな目で見る事なんて僕は出来ない。

 

「アイギス。これから空いているか?」

 

──またか。

 

課長は決まってこの日、必ずと言っていいほど声を掛けてくる。

定時で上がれるし、日頃のストレスを解消する為に気の合った仲間と酒を飲みに繰り出す人も多い。

 

しかし、課長はいつも誘いを断り僕だけを誘おうとしてくる。

最初の内は美味しいご飯が食べれるという事で、ホイホイ付いていったのだが見た目に寄らず酒癖が悪い課長に襲われそうになって以来、何かと理由をつけて断り続けている。

 

「…すいません課長。今日も予定が入っているので」

 

「ふむ。非常に心苦しいのだが、その予定を伸ばす事はできないのか?今日はどうしても話したい事がある」

 

いつもならショボン、と落ち込みながら引いてくれるのだが今回はちょっとしつこい。

…とりあえず、客観的に状況を整理するとしよう。

 

今日の課長は、いつにも増して誘ってくる。

これまでの経験上、何かあるのは間違いない。

 

しかしそれがプライベートなのか、仕事なのかどちらかによって対応が違ってくる。

プライベートだったら何がなんでも断るつもりなのだが、仕事の話だと立場上聞かざるをえないのだ。

 

普段の仕事を円滑に進めるためにも、酒の席での仕事話は社会人に取っては重要になってくる。

 

「…それは、仕事の話ですか?」

 

と言う事で、こういう事は課長の反応を見るためにも直球で聞いたほうがいい。

 

「そそ、そうだ。大事な仕事の話なんだが…」

 

ちょっと噛んだ感じが怪しいのだが、真剣にこちらを見ているのでよほど大事な話なんだろう。

今回ばかりは、こちらが折れるしかないようだ。

 

「分かりました。ちょっと待ってください」

 

なのはちゃんに、今日の事を連絡しないと行けないのだが気が重い。

ポケットから携帯を取り出し、連絡帳からなのはちゃんを選ぶ。

 

プライベートな事だし、中学生に自分の家を任せているなんて会社の人に知られたら恥ずかしい。

尊敬している課長に聞かせる訳にも行かないので外で電話しようと席を立った所、課長が肩を掴んで離してくれない。

 

「電話をするならここでいいぞ?それとも私には聞かせられないのか」

 

…何を言っているんだこの人は。

 

振りほどこうにも、肩に置かれた手には相当力が入っており僕にはどうする事もできない。

この場所で話さないと、どうなっても知らんぞ。と暗に言っている事は確実で、僕に与えられた選択肢は一つしかない事は明白だ。

 

諦めて、アドレス帳からなのはちゃんの情報を表示させそのままコールを掛ける。

携帯特有のコール音が、1回と半音なり終わらない内に電話の主は出た。

 

「お兄ちゃんお疲れ様!ご飯もう少しで出来るんだけど何時頃帰って来れそう?」

 

とても嬉しそうに話すなのはちゃんの声を聞いていると、罪悪感が沸いてくるのだがこれもある意味仕事なのでしょうがない。

長年の経験で、自分以外の女性の名前を出すといけない事は分かっているのでその部分を曖昧にして一気に説明する。

 

「と言うわけで今日はごめんね。本当はなのはちゃんの手料理が食べたかったんだけど…」

 

「そう言う事なら…、分かりました。でも次は必ずですよ!」

 

どうやら、今回の説得は上手くいったみたいだ。

ホッ、とため息を付き安心していると課長の顔が何時の間にかすぐ傍まで近づいている。

 

「アイギス、早く行くぞ」

 

「… お兄ちゃん。そこにいるの誰?」

 

課長の声が聞こえた瞬間に、なのはちゃんの声色が変わる。

ゾクゾクッ、と全身に鳥肌が立つのを感じた。

 

部屋は空調が効いていて快適なはずなのに、背中から汗が滝のように出る。

 

「じょ、上司だよ上司!それじゃあこの埋め合わせするからまたね。気をつけて帰るんだよ」

 

なのはちゃんに、一瞬恐怖を覚えたが優しい彼女がこんな声を出せるはずがない。

何か言っている気がしたが、気にせず携帯を切る。

 

後で怖いが、休日にお詫びとして遊びに連れて行こう。

ため息を尽きつつ僕は、課長と一緒に仕事場を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼と会ったのは、4年前のある日の事だった。

何の通達もなくバイトとして入ってきた彼を見て、私達は社長の意向を疑った。

 

それもそうだろう。

 

履歴書等の書類審査も行わず、何の前触れもなく彼を雇い入れたのだ。

いくら自分の娘達の頼み事とは言え、私情を持ち込む社長に半ば溜息をつかざるを得なかったのだが、彼が働き出して一月ほど経った頃その考えは一変した。

 

彼は自分の立場を初めから理解しており、誰もがやりたがらない仕事を率先して行い続けたのだ。

一週間で止めるだろうと思った私達の思惑とは裏腹に、彼は一月二月とやり続け社員となった今でも続けている。

 

その直向きな姿勢は、上司として、先輩として、何より女として見ていて心地よいものだった。

以前からこういった事を行い、私達の気を引いてこようとする愚か者達は居たが誰もがすぐに諦める。

 

しかし、アイギスだけは違った。

彼は、純粋に仕事の事だけにしか頭になく、ひたすら努力し続けたのだ。

 

時が経つにつれ、成長していく彼をもっと見ていたくて社長に直訴しにいった所、一騒動あったのは記憶に新しい。

結果、私の部下になって安心したのもつかの間。

 

しきりなしに引き抜こうとしてくる、他の部署の連中もとい私の姉達。

いくら姉達の頼みでも、彼は絶対に譲れない。

 

誰がなんと言おうと、離してやるものか。

 

そういえば、一人暮らしをして4年らしいが、男の一人暮らしなんて栄養のないインスタント食品ばかりと相場が決まっている。

昼食は、社長の娘が毎日手渡しで弁当を持ってくるので心配ないとは思うが夜はどうしているのだろうか。

 

作りに行きたいのは山々なのだが、今までのらりくらり断られてきたので半ば諦めている。

変わりにと言ってはなんだが、仕事の話と称して食事に誘っている。

 

幸い、今日はゆっくりと食事に誘える定時上がりだ。

いつもの様に彼を誘うのだが、返事はやはり芳しくない。

 

だから今回は、真剣に事を運ぶ事にした。

 

あくまで仕事の話として、上司と部下と言う部分を強調すると、彼はちょっと困ったような…可愛い顔をしつつも了承してくれた。

 

──ああたまらない。たまらないぞアイギス。

 

私の事を嫌いだと分かっているのなら諦めがついたのだが、彼からは好意と尊敬だけが感じられる。

自惚れだとは思うが、彼に好かれていると分かる限り諦めきれない。

 

思いふけっていると、彼が外に電話しに行こうと席を立った。

誰に掛けるのか知らないが、私が目の前にいるのに他の事へ目を向けるなんて許されない。

 

彼を引き止め、目の前で電話させる。

男だった場合は許そう。友情は大切にしないといけない。

 

ただし、女はダメだ。

彼と親しい女は私だけでいい。

 

果たして、電話の主は女だった。

しかも親しそうに話しているのを見ると、無性に腹が立ってくる。

 

猫撫で声を出して、謝っている彼を見たくないし、そんな声を出させている電話の向こう側の女が憎い。

 

しかし、それも今日までだ。

今日が終わる頃には、彼は私のものになる。

 

お前がどんなに頑張っても、彼は私のモノになるのだ。

絶望を味あわせてやるのも一興。

 

彼と同じベッドで、彼が寝ている時に絶望を味合わせてやる。

そう考えると、なんだか楽しくなってきた。

 

さぁ楽しい時間の始まりだ。

愛しい愛しい、私のアイギス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は待ちに待った、一週間に一度のお兄ちゃんが早く帰ってくる日だ。

この日をどれだけ楽しみに待っただろう。

 

大好きなお兄ちゃんと、いつもより長く一緒にいられるから、それだけで私は幸せになれる。

 

夕食は、お兄ちゃんの好きな野菜の天ぷらに煮物、あとは鶏肉を焼いて大根おろしとポン酢でさっぱりと…。

 

時間は7時過ぎ。

仕事が終わったはずだから、お兄ちゃんが帰ってくるまであと40分ほど。

 

下準備は済んでいるから、本格的に調理開始だ。

お兄ちゃんに美味しく食べて欲しいから、全力全開で用意だよ!

 

♪~♪~♪~

 

料理していると、携帯から電話の着信音が鳴った。

この音は、待ちに待ったアイギスおにいちゃんからだ!

 

お兄ちゃん専用に着信を設定しているから、すぐに出る事ができる。

 

「お兄ちゃん!え…?ど、どうして」

 

数分ほど話して、電話が切れる。

 

今日お兄ちゃんは、会社の上司という女と一緒に仕事だといって戻ってこない。

電話からはお兄ちゃんとは別の、女の声が聞こえる。

 

すごく楽しそうにお兄ちゃんに声を掛ける女の声が無性にイライラくる。

 

お兄ちゃんもお兄ちゃんだ。私がいるのに…。

お兄ちゃんが望めば私の全部はお兄ちゃんのモノになるのに…。

 

誰だ。私からお兄ちゃんを盗ろうとするヤツは。

 

許さない。絶対に許さない。

 

そうだ。お兄ちゃんを迎えに行けばいいんだ。

 

機会を見てお兄ちゃんと一緒にいた女を──ばいい。

 

そうしよう。それなら早くお兄ちゃんを助けにいかなきゃ。

 

あはは。あははは。アハハハハハハハ。


 
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