No.141402

真恋姫無双~風の行くまま雲は流れて~第31話

第31話です。

………。

2010-05-07 01:18:56 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:7398   閲覧ユーザー数:6749

はじめに

 

この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です。

 

原作重視、歴史改変反対の方

 

ご注意ください。

 

 

あかん

限界やな

 

春蘭の太刀をかわし、秋蘭の矢をかわし…霞は限界を感じていた

とはいっても限界なのは霞ではない、恋の方だ

 

もともと燃費が悪いからなぁ恋は

 

人一倍物を食べ、人一倍暴れることが出来る恋だが

その反面、割に合わないほどに活動時間は短い

 

ゆうても今回はよくもった方や

 

太陽が一番高く昇った時から始まったこの戦だがすでに日は傾きつつある

勿論そんな長い時間先頭を続ければ普通の人間であれば疲れるのは当たり前であり

恋もその常識から外れる事無く、見るからに動きが鈍っていた

 

だが

 

まだ半分以上残っとる…撤退しようにも逃げ道も戻る先もない

これは…あかんな

 

曹操軍の兵は未だ半数以上が健在であり

尚も斬りかかって来る…と

 

なんや?

 

恋の動きが完全に止まった…しかも

 

恋?

何を見て…っ!?

 

恋の視線の先…虎牢関を見上げて息を呑む霞

視線の先では月が比呂に斬りかかっていた

 

あんたでも…止められんか

 

霞が目を細めた…その時

 

ヒュン

 

「ぐ!?」

 

秋蘭の放った矢が滔々霞を捉えた

肩に走った激痛に顔を顰める霞

 

「覚悟おお!」

 

さらに春蘭が飛び掛るのを

 

「こなくそ!」

 

紙一重に避ける…が

 

ドコォ!!

 

「がっはあぁ…」

 

脇腹に襲い掛かった衝撃に胃液を吐き出す

流琉の放った伝磁葉々が隙だらけの霞に直撃していた

 

「可愛い面して…えげつないモン…放おってくれる…やんか」

 

くそだら…肋骨持っていきよって

 

ひゅうひゅうと自身の吐く息に顔を顰め、額から止め処なく汗が伝い落ちる

 

「霞!?」

 

脇腹を押さえ蹲る霞に駆け寄ろうと踏み出す恋…しかし

 

「…動くな」

「…!?」

 

自身の首元に突き出された刃に恋の動きが止まる

 

「抵抗すれば…解るであろう?大人しくしていてくれ…彼女を死なせたくなくばな」

 

龍牙の矛先をピタリと吸付け、星が恋の動きを封じる

 

「星!?」

 

愛紗が声を荒げるが

 

「軍師殿の命だ…生け捕りにとな」

 

自身の実力で達成したわけではないことに星は唇を噛む

そして振り向けば片膝を着いた霞の首元にもまた、華淋の絶影が添えられていた

 

「ここまでよ…実に見事だったわ張遼」

 

 

急がなきゃ…手遅れになる前に

 

虎牢関の城門にて前に進めずにいた雪蓮は内心焦り、イラついていた

 

『月』と約束したのよあの子を守るって

私がこの戦を終わらせるって!

 

だがその思いとは裏腹に事態は一向に進まない

 

さっき飛び込んだのは間違いなく比呂だったわ

 

自身が気に入ってやまない男だが、一人抜け駆けするように入っていった事に不安が募る

 

もし、彼があの子を手にかける算段なら

 

比呂の実力を知り、彼に迷いがない事を見抜き

 

止めなければ力づくにでも!

 

それでも変わらないこの現状に雪蓮は南海覇王を振り翳し

 

「道を開けよ!邪魔立てすれば斬り捨てるぞ!」

 

目の前の袁紹の兵に斬りかかろうとする

 

「お止めくだされ!我等は連合に在らせますぞ!」

 

雪連の行動に慌てて祭が止めに入る

 

「離してよ祭!」

 

羽交い絞めに抑えてくる祭を振り解こうとする雪蓮だったが

 

「頭を冷やしなされ!ここで己を見失っては策殿が掲げる大儀は成就いたしませんぞ!」

 

祭の言葉にぐっと息を呑み渋々下がる雪蓮

 

時間が無いのに!…どうすれば?

 

爪を噛み虎牢関を見上げる雪蓮…視線の先では月が比呂に斬りかかっているのが見えた

 

「なっ!?」

 

何を考えているのよあの子は!?比呂は!?

 

信じられない光景に息を呑む…ふと視界にある物が映る

 

あれを使えば!?

 

考えるより早く

 

「それを城壁立てかけなさい!」

 

先ほどまで城門を破ろうと打ち付けていた杭を城壁に立てかけさせ

 

「明命!」

「此処に!」

 

孫呉が誇る隠密に城壁の上を指差し

 

「行けるわね!?」

「お任せを!」

 

言うが早く城壁に向かって駆け出す明命、杭の上を走り…跳躍する

 

ガツ!

 

短剣を城壁を構築する石垣の間に突き立て、それを足場にするすると登っていく

やがて城壁の上に登り詰め、一瞬姿を消すと

 

パサリ…

 

城壁の上からロープ投げ出される

 

「大丈夫です!お急ぎください!」

 

明命の声に頷き

 

「祭!城門を突破した後に中にいる董卓軍に降伏の勧告を!…あの子は私が抑えるわ」

 

驚いて目を丸くしている祭を他所に雪蓮は吊るされたロープに手をかけ、攀じ登り出す。

 

「まったく…堅殿に悪い所ばかり似てきよって!」

 

悪態を吐きながらも祭は兵達に声を張り上げ

 

「貴様ら何時までもたついておる!さっさと通り抜けんか!」

 

押し返されそうになっていた一人の兵の尻を力任せに蹴りつけた

 

 

 

「やああ!」

 

城壁の上の櫓

人間二人が立ち回るには広いとは言えない…むしろ狭いその場所で

自身に斬りかかって来る月の剣を、比呂は避け続けていた

 

「はああ!」

 

武に覚えのある者のそれとは明らかに違う…明らかに遅い素人の剣を

無言のまま、上半身だけで起用に避ける比呂

 

「どうしたんですか!?」

「…」

 

避け続ける比呂に月が叫ぶ

 

「ただそうやって避けているつもりですか!?」

「…」

 

いくら斬りかかろうとも

いくら月が叫んでも

 

「その腰の剣は飾りですか…張郃!」

「…」

 

比呂はただ黙って避け続けていた

 

「何とか…何とか言ったらどうですか!?」

 

返事がない比呂に業を煮やして突きだされたそれを

 

ザシュ!

 

鮮血に真っ赤に染めながらも素手で受け止める

 

「なっ!?」

 

比呂のとった行動に息を呑む月…そしてようやく比呂は

 

「俺は貴女の覚悟を笑いに来たわけでも侮蔑に来たのでもない…だが」

 

ボタボタと比呂の手から血が落ち、床に斑点を付けていく

 

「だが貴女の覚悟を知りもせず…貴女を傷つけた」

 

ふるふると月の腕が震え出し、比呂にもそれが伝わっていく

 

「人を斬ったのは…初めてですか?」

 

ガチガチと歯が音を立て始めた事に自分でも気づかずにいる月

 

「教えてください『月殿』」

 

比呂の悲しげな瞳が…真直ぐに彼女を見つめていた

 

「俺はどうしたら…貴女を救えますか?」

 

 

 

~洛陽~

 

 

四方から上がった火の手

 

そして同時に攻め込んできた兵達

 

かつて洛陽の実権を握り

 

かつて董卓に追い出された者達

 

帝が宮まで押し寄せ

 

宮内は騒然としていた

 

火の中を走りぬけ

 

煤だらけになりながら

 

迫り来る兵達から逃げ

 

全身を傷だらけになりながらも

 

それでも一人の赤子を大事に…大事に胸に抱きしめ

 

詠は立ち尽くしていた

 

震える膝が崩れそうになるのを必死に堪えて

 

 

 

「何故あんたが此処にいるの?…天の遣い」

 

 

目の前の青年は

 

幾多の人間を切り捨てても

 

尚青白く光る刀身

 

それはこの大陸の人間は見たこともない細い剣

 

『刀』を右手に

 

詠と赤子の目の前に立っていた。

 

 

 

 

あとがき

 

此処までお読み頂き有難う御座います。

 

ねこじゃらしです。

 

GWですっかり夜型になってしまいました

 

やヴぁい…寝ないと明日の仕事が…

 

 

それでは次の講釈で


 
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