― ある日の竹林にて、
「輝夜っ!ここで会ったが数百年目!今日こそ決着をつけてやるッ」
「待って妹紅、今日はそういうんじゃなくて面白いものを持ってきたのよ」
そう言うと輝夜は袖から、薬のようなものを取り出す。
「えー、なんか拍子抜けだなあ、それはなんだ?」
輝夜は私の眼前に薬を突き出しながら自慢げに語りだす。
「暇つぶしに永淋に作ってもらったの、見た目だけ老化(成長)する
秘薬よ!」
「不老不死が治るワケでもないんだろう、そんなの興味ないよ」
そっけない態度。
口には出さないが、私は不老不死を治したいと思ってないし、むしろ最近は輝夜との因縁めいた関係も、なんだかんだ楽しんでいる気もする。
「まあまあ、物は試しというでしょう、騙されたと思って飲んでみなさいな。それにあなたも自分が年を取った姿を見てみたいと思うでしょ?」
言われてみれば、自分が永久に見ることは無いと思っていた本当の未来の自分の姿に、興味が無いと言えば嘘になる。
「・・・劇薬じゃないだろうな?」
「飲む気になった? 今回は大丈夫よ、それにあなたは死なないじゃない」
・・・それもそうだけど。でも痛いのは嫌だな。
「さあ、ぐいっと一気にどうぞ☆」
ん、さっき今回は、って・・・?
「んぐぐっ!」
まだ色々と気になることはあったが、輝夜が半ば強引に口元に持って来たのでそのまま一気に喉に流し込んでしまう。
ごくっ
「いかが?」
とくに変化は無いようだ、が・・・、あれっ?
なんだか胸がくるしいような。
「え? 輝夜・・・、コレ・・・、何っ!?」
体がとても熱い・・・
「ううっ・・・、んッ、あぁッ」
まるで、むくむくと音を立てているかのように全身が軋み、急速に大きくなっていく。体中に激痛が走り、とくに胸の痛みは尋常じゃない。
「痛いッ!死ぬっ!」
「死なないわ」
・・・冷静に言うな。
いったいどうなってしまうんだ、私の体は。
― 数分後、
「妹紅・・・、大きくなったわね、色々と」
体が思うように動かない。急速に体が成長した反動だろうか。
服は体に合わない大きさになってしまい、素肌がかなり露出してしまっている。
「妹紅にしては、ちょっと予想外に胸が大きいわね。永淋が薬を調合してるときに、変な粉をこっそり全部入れたせいかしら・・・」
すっかり大人の姿に変わり果てた私の体をぶつぶつ言いながら輝夜が観察する。時折なんだか笑いをこらえているようにも見える。
「じ、じっくり見てないで、早く元に戻せ!体が痛くて動かないんだ!」
おまけに恥ずかしさなのか、薬のせいなのか頭がものすごく熱くて、くらくらする。
「ほっておけば、明日の朝には元通りっ!・・・って永淋が言ってた気がする」
・・・気がするって。
一秒でも早くもとの体に戻りたいのに、あのやぶ医者、解毒剤とか作っておかないのか。
「さてと、気が済んだしそろそろ帰ろうかしら。兎たち!行くわよ」
カサっ、と葉陰が動いたような気がした。
え?
あいつらめ・・・
私は兎の見世物にもされていたのか・・・
「汚いぞ!貴様はいつもいつも、人を馬鹿にした態度で・・・」
腸が煮えくり返る思いをするのはもう何百年目か。
「そんな涙目で言ってもかわいいだけよ、泣き虫妹紅ちゃん」
いつもの光景。
思えば不思議な感覚だ。これだけ恥をかかされたにも関わらず、死にたいとは思わない。どうせ死ねないし。
もし死ぬとしても、輝夜を殺して殺して殺し尽くすまで、私は幻想郷(ここ)で生きつづけるだろう。
「輝夜ぁ、憶えてろぉ・・・、絶対後で殺ってやるッ!」
「うふふ、殺れるものならいつでもどうぞ。でも今日は眠いからまた今度ね☆」
― END? LESS
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「妹紅絵を描くにあたって考えた妄想が、結構長くなったのでブログにショート書いちゃったよ」的なのをこっちにも投稿。