No.140598

愛しい人2-1 秋蘭の反乱

同人円文さん

続きものです
今回は眠る一刀を見守る秋蘭のお話です
4/6に本文を編集しました。

2010-05-03 17:49:11 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:9579   閲覧ユーザー数:7601

暖かい光の降り注ぐ日。

北郷一刀は秋蘭の膝を枕にして眠りについていた。

そんな一刀を見て秋蘭は思う。

 

(寝顔、かわいいな…)

 

いつもは頼りなく情けない顔していることが多いが時には凛々しい顔で皆をまとめ、優しい笑顔で我らまで笑顔にしてくれる。

 

(不思議なものだ)

 

初めて会った時、この男に好意を持つとは思っていなかった。

だが今ではこんなにも愛しく思える。

秋蘭は一刀の顔を細い指でなぞる。

一刀はくすぐったそうに顔を歪めた。

秋蘭の顔に自然と笑みがこぼれる。

 

「秋蘭様、兄さまがくすぐったそうですよ」

 

そばにいた流琉が声を掛けてきた。

秋蘭は笑みを浮かべて。

 

「そうだな、やめといてやろう」

 

まさに二人にとって幸福の時間だった。

そんな時、聞きなれた声が聞こえた。

 

「・・・何で秋蘭が一刀を膝枕しているの?」

 

秋蘭たちの主である、曹操こと華琳がやってきたのだ。

 

「「華琳様!」」

「そのままでいいわよ、何か理由が有りそうだし」

「申し訳ありません・・・、実は・・・」

 

秋蘭は北郷が頭を打って気を失ったことを話した。

 

「警備隊の詰所の前だったので何かあったとは思いますが・・・とりあえず北郷の回復を待ってと思いましてここに運びました」

「で膝枕なのね・・・」

 

ふと華琳の声が低めになる。

 

「そうです」

 

秋蘭も負けじと声を凛と張る。

 

「しゅっ秋蘭様?」

 

 

 

 

流琉は異変に気付いた。

明らかに華琳の声色が不機嫌になっている、と。

理由は明白だった。

秋蘭が一刀を膝枕している為だろう。

 

 

しかし

 

 

問題なのは秋蘭が未だにやめないことだ。

秋蘭のことだから華琳の感情の変化に気付かないはずがない。

だがやめようとしない。

まるで一刀の独り占めを譲らないかのように。

 

「・・・秋蘭?」

「はい」

「今日の仕事は?」

「今日は非番ですが」

「・・・一刀は医者に見せたの?」

「外傷は無かったのでしばらく様子を見ようと思いまして・・・先ほど目を覚ましました」

「ふぅん・・・」

 

 

そんな会話の中、流琉は華琳から絶対零度と思える気が発していることに気付いた。

だが秋蘭はそれに対しても笑顔で知らんぷりを決め込んでいるようだった。

 

(大丈夫なのかな・・・)

 

この光景を見ると誰もが思うだろう。

なにせあの秋蘭が華琳に対して反抗しているのだから。

だが、華琳が決定的な言葉を発した。

 

「膝枕をする必要はあるの?」

 

(来ちゃったー!!)

 

流琉は内心ひどく怯えていた。

もっとも心配すべき一言が出てしまったのだ。

このあとどんなことが起きるのか。

秋蘭は何と華琳に返すのか。

普通であれば秋蘭は華琳の言葉を聞き入れその通り行動するはずだ。

だが、この状況では秋蘭が何と返答するか想像もつかない。

 

「体を休めるなら寝所につれていく方が良いのではなくて?」

 

華琳はもっともらしい正論をいった。

確かに休ませるならベッドの上がいいだろう。

しかし秋蘭は。

 

「華琳様・・・」

「・・・何?」

「失言お許し下さい」

「?」

 

二人は首を傾げた。

流琉はますますわからなくなり現状を見守るしかない。

華琳は不機嫌さを含めた笑みを浮かべて

 

「言ってごらんなさい」

 

と言った。

失言とはいったい何を言うのだろうか。

そして、秋蘭は不敵に笑いこう言った

 

 

 

 

 

「羨ましいのですか?」

 

 

 

 

 

「なっ・・・!」

「秋蘭様!?」

 

背筋に冷や汗を感じると同時にまさかあの秋蘭様が、と流琉は思った。

華琳の忠実な部下であるあの秋蘭が挑発とも取れる発言をしたのだ。

当の華琳は顔を真っ赤にしてあわてた様子で。

 

「そっそんなことあるわけないでしょう!」

 

と声を挙げる。

 

「華琳様、声が大きいです」

「兄さまが目、覚ましちゃいます」

「ご、ごめんなさい」

 

顔を真っ赤にしながら否定した華琳。

正直そんな反応されても肯定しているようにしか思えない、と流琉は思った。

しかし当の本人は顔を赤く染めながら誰が見ても恐怖を抱かせる気を放ち一刀を睨みつけている。

まるでこいつが悪いのだと言わんばかりに。

だが、ここで羨ましいと言えば覇王を称する者としての面目が立たなくなってしまう。

きっと秋蘭はそこを考えて言っているだろう。

 

(やるわね、秋蘭…)

 

そう華琳が考えている時。

 

「華琳様」

 

と秋蘭が声を掛けてきた。

 

「何かしら」

 

華琳も返す。

すると秋蘭は。

 

 

「私とてこいつを…一刀を好いているのです、今だけはお許しください」

 

 

秋蘭ははっきりと華琳に宣言してきた。

一刀を好きだと。

その発言に流琉は顔を真っ赤にし、華琳も同じく顔を赤らめて。

 

(あなたが一刀を好きなのは知っているわよ)

(そこまで言われたら…やることは一つしかないじゃない)

 

 

 

「わかりました」

「かっ華琳様?」

 

流琉が不思議そうに声を上げる。

 

「今日一日、あなたに一刀を預けるわ」

 

なんと華琳が退いたのだ。

流琉は驚いた顔で華琳と秋蘭を交互に見る。

秋蘭は顔を赤らめて。

 

「ありがとうございます」

と答えた。

 

その時。

「ただし!」

 

華琳が声を挙げた。

華琳は覇王としての堂々とした笑みを浮かべて言った。

 

「後でちゃんと返してもらうわよ」

 

秋蘭も同じく笑みを浮かべ。

 

「わかりました」とつげた。

 

「あと一刀が回復したら何があったか聞くこと、よろしくて?」

「はい」

 

そう告げた華琳は流琉の方を見て笑顔を浮かべて声をかけた。

 

「流琉」

「はっはい!」

「秋蘭と一刀をよろしくね」

「御意!」

 

そう言って華琳は去って行った。

その表情は少し残念そうだった。

 

華琳が居なくなった所で流琉は秋蘭に向かって。

 

「もう秋蘭様、あんな怖いことしないでください」

 

と文句を言う流琉。

確かにあんなことをされたら命がいくつあっても足りない。

それに対し秋蘭はいつも通りの笑みを浮かべて。

 

「ふふっ悪かったよ」

 

どうも反省していないようだ。

だが秋蘭は不満げな流琉に向かってこう言った。

 

「しかし流琉」

「なんですか?」

 

頬を膨らませながら流琉は聞いた。

 

「今日は北郷を二人で独占できるのだぞ?」

「それは…」

 

流琉は顔を真っ赤にし、秋蘭は優しげに一刀の寝顔を見つめるのだった。

 

 

こんにちはです

 

前回一刀はどうなってしまうのかと思った方がいらっしゃいましたが

 

とりあえずこうなりました。一応一刀の息子は無事です。

 

まぁその後はどうなるか(笑)

 

と、今回は秋蘭のお話にしてみました。

 

当初の予定だと前回の話の最初にあったように凪に吹っ飛ばされていることから凪中心で話を

 

進めようかな、と思っていたら妄想が突っ走りましてこのようになりました。

 

なぜ一刀は凪に吹っ飛ばされてしまったのか、真桜、沙和はなぜあんなに怒っているのかは   

 

もう少しお待ちください。

 

今回の秋蘭ですが一刀を独り占め(正確には流琉と)するために頑張っています。

 

いつもは忠実な部下である秋蘭が女として好きな男を独占したいと思う所を書いてみたくなりま

 

して…そんなで今回の話です。若干華琳の嫉妬話でもありますが。

 

さて次はだれにしようか…

 

とここまで読んでくださった方々、どうもありがとうございます。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
77
7

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択