「詠、皆は大丈夫なのかっ!?」
戦場に響く大きく力強く、そして柔らかい声が草原の前に立つ少女に届く。今の現状を見てあせらない者は
いないだろう、後曲を潰され羽をもぎ取られ、防戦一方となってしまっている。両翼は遊軍となって巧く本陣に
敵を近寄らせないようにしているが、敵兵の見事としか言いようの無い用兵に誰の目にも劣勢が明らかになっている
「アンタはそこで堂々と構えてなさい、それよりこっちに魔王が来るわよっ!」
軍師の言葉に男は素直に従う、それだけ自分の軍師の能力を信頼していると言うことが窺える
大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出し目の前の敵に対して戦う覚悟の火を灯す
「そう、それで良いの。相手を受け止めたら何人か流すからアンタはそこで敵をその目に焼き付けなさい」
男は頷き、真直ぐ前を見据えて敵兵達の動きをその目に捉え始めた。
「むぅ、こちらから煙矢を放て色は蒼三つだっ!」
秋蘭の声が響き、伝令は空に矢を放ち蒼の線が三筋空に描かれる。
真紅の方天画戟を扱う将は凪たちに任せる、兵の勢いを消してしまっては守ることも出来ん
それにあの三人ならば何とかしてくれる、昭が信頼を置いている部下なのだから
緑の煙矢を見た凪達三人はそれぞれの場所で頷き、急激に進路を変えてくる敵兵達に必死で
対応をし始める。蒼い三本の矢は信頼する任せたとの言葉、それを目にした兵士達と凪たち
の目に闘志が湧き起こる
「走れっ!目指すは真紅の方天画戟!信頼を裏切るなっ、必ず隊長を守り抜くっ!!」
「ウチラは生き残るで、死んだら隊長が泣くの解っとるやろっ!其の為には何するか解るなっ?!」
「お前達のような盆暗どものことでも隊長はきっと泣いちゃうの!だから覚悟を決めろなのー!!!」
『『応』』
凪の力強い声に兵士達は答え、真桜の怒号に兵士は咆え、沙和の柔らかく切れのある言葉に兵士は覚悟を決める
隊は驚くほどの速さで敵兵に対応をしていく、本陣を守り勝利を手にする為に
「くっ・・・」
男の頬を涙が伝う、先ほど後ろを振り向いた時に後曲で死んだ兵達が視界に入ったのだ
それに気がついた詠は男を睨み声を上げる
「馬鹿っ!アンタがココで泣き崩れたら後ろの兵以上に殺されるっ!秋蘭だって」
「・・・すまない」
詠の言葉に謝罪を口にすると、懐の鏃を握り締めスイッチが切り替わったように顔つきが変わり瞳は先ほどの覚悟が
弱弱しく感じるほど強く鋼鉄のような意志が目に宿り、それを見た詠と一馬の背には鳥肌が立ってしまう
相変わらずね、アンタのそれは頼もしすぎるわよ。背中でそんな目をされたら僕たちはそれに応える
しかないじゃない、見なさい一馬をアンタを見た瞬間、まるで別人のように闘気を纏い始めた
これなら魔王の突撃にも何とか持ちこたえられる
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朝一発目のGW企画!
相変わらず楽しんで書いてますw
こちらの陣営も舞王と詠が話しますよー
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