No.140235

『舞い踊る季節の中で』 第36話

うたまるさん

『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

虎牢関編へ入りました。
一刀が目を覚ますなり直ぐに虎牢関へ向かった孫策達だが、最後曲に回されてしまい。なにも出来ない日々が続いている。そん中、雪蓮の要請で、現状を打破する策を出すよう言われる。

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2010-05-01 22:23:37 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:19986   閲覧ユーザー数:14289

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』虎牢関編

  第36話 ~ 舞うが如く咲き乱れる喧嘩華 -前編- ~

 

 

(はじめに)

 

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

        :●●●●

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(ただし本人は無自覚)

         気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

         神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

北郷流舞踊(裏舞踊):設定の一部を公開

    神楽を発端とする流派で、その色を強く引き継いでいる。 途中宗教弾圧や権力者に利用された事も

    あり、裏舞踊の形で流派の存続を図った時期もあったが、その時代においても流派の理念は失われる

    事なく研鑽を続けてきた。 そして、その理念の下、流派や舞などに拘らず、多くのものを取り入れ、

    昇華させていき、現在では、極僅かながら、周囲の自然界の"氣"を操るに至る。

 

    舞に使うものも、鈴・扇・笹・榊・幣・帯だけではなく、剣・槍・弓等様々の物が使われる。一刀曰く

    「一つを覚えれば、後は心を知ろうとすれば、自ずと理解できる」との事で、それを言うだけの実力が

    あると一門も認めており、父を差し置いて、継承者筆頭候補となっており、主に扇子を愛用している。

    また、裏舞踊の一環として、祖父に強引に●●●●を習得させられたが、一刀は裏舞踊の色の強いこの

    道具嫌っている。 北郷流の理念に関して一刀は、「馬鹿馬鹿しい考えだと思うけど、高みを目指そう

    とするのは悪い事じゃないと思う」と語っている。

    一刀が居なくなった後、途絶えたかどうかは不明。

    また、古い歴史を持つ舞踊の一派という特性上、其れなりの教養者が門下生として、または、支援者と

    して北郷家と付き合いがあった。そのため、料理人、医者、教授、武術家、政治家等と様々の人種と関

    わりを持ち、それらの人々は、当時まだ小さかった一刀を可愛がり、スポンジが水を吸収するが如く覚

    えが良かった一刀に、自分の持つ技術や知識を、喜んで(面白がって)教えていった。

  (今後順序公開)

 

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配してよく

     食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯を仕

     掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕を見

     て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、現

     実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗脳する

     も、基本的には周りには秘密にしている。そのうち執筆も行うようになり、掲載されるようになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっている。

     黄巾の乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

一刀視点

 

 

「「「「 おぉぉぉぉぉぉっーーーーーー! 」」」」

 

遥か前方で、そんな喊声が聞こえる。

今日で五日連続して聞こえてくる。

もっとも、俺達は二日遅れて来ているため、この攻勢は七日連続して続けられている事になる。

良い事なのか悪い事なのかは、賛否があると思うが、その光景が見えないほど前方と言うのは、俺にとって、正直ありがたかった。

報告では、袁紹の軍が前曲となり、猛攻をしかけているものの、効果が殆ど無いと言うか、一方的にやられていると言った感じらしい。 まぁそれでも、相手を疲労させると言う意味では、効果がまったく無いとは言い切れない。

袁紹の方も、やられているとは言え、金に飽かして、一般兵に防具を揃えている為、怪我人は出るものの死者は、見た目より少ないらしい。 まぁ、兵の錬度が低いため、思い切った策で攻勢に出られないのが、幸いしているようだ。

 

ちなみに、俺はと言うと、

 

「お嬢様、茶菓子の御代わりなどいかがでしょうか?」

「うむ、頼もう、しかし驚いたぞ、まさか天の・」

「賀斉殿」

 

口を滑らかせかけた賀斉さんを、冥琳が窘める。

 

「おう、そうじゃった。 とにかく北郷殿が舞だけでなく、このような美味い茶を煎れれるとは驚きじゃ、

 しかも、限られた材料と道具で、このような菓子まで作れるとはな」

「そうねぇ、私もこうやって毎日一刀のお茶を飲める事なんてないから、偶には後曲に回されるのも

 悪くないわね」

 

孫策の呑気な言葉に、内心溜息をつきつつも、菓子の御代わりを用意する。

つまり孫策は、戦場の間近だというのに、後曲に回されたのを幸いとばかりに、お茶会を開き、

俺は倒れて皆に心配を掛けた罰として、こうして、日に二度の割合で執事をやらされていると言う訳だ。

まぁ傍から見たら、呆れるばかりの行為なのだが、これにはこれで、それなりの意味がある。

 

一つは、袁術に対する目晦まし、

一つは、この場に代わる代わる招待されている、賀斉さんを始めとする、幾つかの一族の代表者を呼び、親睦を深めるため(むろん、それぞれ腹の中で、それなりの攻防があったりするけど)

一つは、虎牢関の内情を知るための時間稼ぎ、

最後に、・・・・・・・・たぶん俺に対する気遣い。

 

舞を終えた直後気を失ってしまった俺は、結局丸一日眠り続け、皆に心配を掛けてしまった。

俺はやってしまったと、落ち込むが、そんな必要は無いとばかりに、思春に

 

『・・・・・・・・我らは、物心付く頃より戦場の空気を知っている。 それを二度目で同じように出来ると思ってい

 るのか? だとしたら我らも嘗められたものだな』

『い、いえ、そんなとんでもない。 と言うか、いちいち剣を抜くのは、やめてほしいんですけど』

『・・・・・・・・軟弱者は軟弱者なりに、焦る事無く己を磨いて行けば良い。 焦って無理をされては、はっきり言

 って、迷惑だ、邪魔だ、身の程を知れ』

 

等と、脅されたのか、励まされたのか、よく分からない有難いお言葉をいただき、今に至っている。

まぁ、これはこれで、気を使ってくれるのは分かるんだけど・・・・・・思春、其処まで言わなくても、良いと思うんですが・・・・・・クスン

 

 

 

 

 

 

「でも、袁紹も曹操もよく飽きないわね」

「攻城兵器が破壊槌だけでは、致し方があるまい。 曹操はそんな状態で、攻城戦に本気で挑む事はするまい。

 今は袁紹に力を貸している、と言う態度を示しているだけだろう」

 

賀斉さんに、代わりのお菓子と、ついでにお茶を煎れ直していると、孫策が冥琳との話しをやめて、

 

「ねぇ一刀、何か良い手無いかしら?」

「お嬢様・」

「もうそれはいいから、普通に話してちょうだい」

「たくっ、やれって言ったり、やるなって言ったり我が儘だな。 それに、何をどうしたいのか言ってくれない

 と答えようが無いぞ。 俺を冥琳と同じように考えるのはやめてくれ」

「ぶー、主人に対する 愛が足りないわよ、愛が」

「もうそれは終わりだって言ったろ、それにそんな物が芽生えた事なんて、・・・・・・・・・・うん、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 孫策、愛しているよ、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・殺したい程にね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんて事はあったな確かに」

 

孫策の冗談に、俺も冗談(真剣な顔)で返したのだが、・・・・・・・・孫策は何故か顔を耳まで赤くさせて、引き攣りながらジト目で、怒りながら、何処か喜んでいるという、よく分からん器用な顔をしながら、

 

「・・・・・・・・あの時、殺されかけた私からしたら、洒落になってないわよ、それ・・・・・・・・」

 

なんて、言ってくる。・・・・・・・・・あれ、外したかな?

そして、そんな俺に冥琳は、溜息混じりに、

 

「北郷、お前の国では知らんが、冗談で女性に愛を語る言葉を使うべきではない」

「う゛っ・・・・・・言われて見れば確かに」

 

注意をされ、反省していると

 

「・・・・・・特にお前が言うと、余計洒落にならん(ボソッ)」

「ん? なに?」

「いや、この場に、翡翠と明命がいなくて命拾いしたなのと思ってな」

「二人は孫策と違って乱暴ものじゃないから、こんな冗談で(ゾクリッ)・・・・・」

 

冥琳の言葉を笑って否定しようとしたところを、何故か凄まじい寒気が俺の背中を襲った。

なんだ? 外からじゃない、こう内から来る感じは、・・・・・・本能が周瑜の言葉を肯定している? 何故?

 

「まあいい、この七日間、袁術は一向に兵を動かしておらぬ。 そして我らは、最後曲に回されている。

 この状況を打破する良い策は無いか?」

「えっ、でも良いのか? 俺が考えても」

 

そんな俺の言葉に、冥琳は小さく笑みを浮かべ

 

「何を今更、それに、もともとこの遠征の目的の一つは、お前を始めとする新人を鍛える事だ。 策を考え動い

 てもらわねば困る。 それとも、先日私に述べた言葉は、偽りと言うつもりか?」

 

 

 

 

 

 

冥琳の言葉に、俺は心を舞の時のように、静める。

孫策達の目的は分かる。

袁術の兵士をなるべく多く巻き込みたいと、遠征後に訪れるであろう時のために、今味方側としている兵士を、一人でも多く殺せと言っているのだ。

 

正直、その考えに眩暈がする。

そして、それをしなければ、いつか此方が袁術か、もしくは他の諸侯に殺される番だと、それが分かる自分に、目が眩む。

そんな事を、させる訳には行かない。

そんな事になれば、俺は再び全てを失ってしまう。

二人を連れて逃げる、と言う選択肢はない、そんな事は二人は許さないし、俺自身、皆を捨てるなんて事は出来ない。

分かっているだろ? 北郷一刀、俺が選んだ道は、そう言う道なんだと、

綺麗事では、済まされないと言う事を、

此処で怖気づいては、逝ってしまった者の想いは、どうなるって言うんだ。

彼等は、そういう世の中を望んで逝ったんだ。 なら生きている俺達が、その想いを引き継がなくてどうするっ!

 

俺はきっと、地獄に落ちるだろう。

もしかしたら、生きたまま地獄に落とされるかもしれない。

なら、たとえ地獄に落ちようとも、前を向いて落ちてやるんだ。

 

 

 

 

 

 

「虎牢関を落とすだけなら、幾つか手はある」

「ほう」

 

俺の言葉に、賀斉さんが、面白そうに俺を見るが、今は関係がない。

 

「だけど、袁術を巻き込むとなると、かなり危険を伴う手しか思いつかない」

「かまわぬ。 今の所なにも手はない。 穏はお手上げ状態だ」

「あの~、そういう言い方されますと、私としては立場がないんですが~」

 

冥琳の言葉に、陸遜が情けなさそうに不満の声をあげる。

まぁ、そうだろうな、普通の手段では、無理だよな・・・・・・・・、

 

「今の状況を整理すると、とにかく袁術が俺達より前に居るのが、最大の問題なんだ。 思い切った行動をしよ

 うとすれば、どうしても袁術の軍が邪魔になる」

「そうなんですよね~、袁紹さんにしろ、袁術さんにしろ、連合で一・二を争う兵数ですから、どう動こうにも

 邪魔なのですよね~、かと言って、何とか通れるような部隊では、何も出来ませんし~」

 

蓮華と賀斉さんにのために、俺の言葉を陸遜が細かく、噛み砕いてくれる(・・・・・・後、たぶんいい訳)。

 

「うん、恐らく五百くらいの兵数しか、通れないだろうね。 それを何回もやれば、袁術に止められる恐れもあ

 るし」

「そうなんですよ~、 北郷さん何か良い手思いついたのですよね、今後の参考のためにも早く教えてください

 よ~」

 

陸遜の催促に俺は苦笑を浮かべる。 何せ・・・・、

 

「良い手とは言えない。 はっきり行って悪手だろうね。 

 俺が提案する策と言うのは、袁術より前に居る幾つかの部隊に、兵糧をタダで贈ろうと言う手なんだから」

「ほぇっ、そんな事をして何の意味があるんです。 それに私達だってそんなに兵糧に余裕があるわけでは・

 あ~~~っ、そう言う事ですか~」

「確かに、悪手と言えるな、兵糧を贈るためには、どうしても幾らか兵を動かさねばならない。 それを幾つ

 もの部隊に贈った後で集結させれば確かに、二~三千位の兵数は送れよう。

 だがその先はどうする? 攻城戦でなくとも、その程度の兵数ではやれる事など知れている。 その上、兵糧

 が乏しくなれば、冬を待たずに撤退を余儀なくされる。 だがそんな事は承知の上なのだろう?」

 

冥琳の言葉に、俺は頷く、

策を言うのは良い、だけど俺は、その前に確認したい事がある。

 

「孫策」

「なにかしら?」

「俺は、悪人になる覚悟はしたけど、下衆になる気はない」

「何が言いたいの?」

「今回だけじゃない、これからも、無駄に命を獲る気は無い、助けられる人間は助けたいって事だよ」

 

俺の言葉に、孫策は小さく溜息を付き、

 

「相変わらず甘い事言うのね。 でも一刀らしいと言えば一刀らしいし、構わないわ。 一刀のやりたい様に

 やりなさい。 ただし、今回は袁術の兵を確実に減らす事と、連合が虎牢関を落とす事が絶対条件よ」

 

まったく、しょうがないわね、と言わんばかりに、俺の気持ちを分かってくれた。

孫策の言うとおり、甘い考えだと思うけど、此れは譲れない。 此れを忘れたら、全てを失う気がするから、

 

 

 

 

 

 

孫策の了承も得られた事だし、俺はもう一度皆を見まわして

 

「こっからがもっと無茶なんだけど、集結させた部隊で、勢いをつけて、強引に連合の軍を中央突破」

「え゛っ」

「最前線に届いたら、今度は周りを巻き込みながら後退するんだ。 中央が大きく崩れたと見せようにね」

「ちょ、ちょっと待ってくださいっ。 北郷さん、もしかして敵を誘い出して、袁術の所まで引っ張るとでも言

 うおつもりではないでしょうね?」

 

俺の提案を聞くうちに、陸遜が顔を引きつらせながら、俺の発言を止めて、確認してくる。

恐らくどうなるか一瞬で計算したのだろう。 そして、そんな陸遜に、俺は感嘆するように

 

「さすが陸遜、よく分かってるじゃないか」

「む、無茶苦茶ですよーーーっ、 それって、本気で連合が総崩れになりかねないですよーーーーっ!」

「そうだね、でも連合の諸侯だって、そんな最悪な事態だけは避けようと必死になるはずだよ。

 折角の連合って形で、手を結んでるんだから、全員で協力するのは悪い事じゃないと思うよ」

 

陸遜の悲鳴のような抗議に、俺はこの無茶な作戦を、少しでも安心させられるように、陸遜に微笑みかけながら、優しく言う。

 

「うぅっ、そ・そんな、笑顔をされたって、ご・誤魔化されたりしないんですからね~」

「穏、そんな顔を赤くして言っても説得力が無いぞ」

「め・冥琳様~っ、茶化さないでくださいよ~っ」

「それは置いておいて、 北郷、その一見無茶な作戦を言い出す根拠はなんだ?

 そもそも、万を超えるならともかく、五千にも満たない部隊が後退したところで、巻き込める数など知れてい

 る、その程度で、相手が打って出るとは考えにくい」

 

一見か・・・・・・、さすが歴史に名を残すだけの事はある。 それが言えると言う事は、俺の言った事等、すでに思いついていたか、想定と展開を全て終えた、と言う事だろうな。

 

「一つは、さっき言ったように、連合は、敗退なんて事だけは、なんとしても防ぎたいはず。 その時は朝敵と

 して、攻められる番になるからね。

 二つ目は、これが大きいんだけど、袁家が邪魔と思っているのは俺達だけじゃないって事」

「あっ、曹操さんですか~」

 

俺の言葉に、陸遜が答えを言う、そしてその表情から、もう作戦全体像は見えたようだ。

(何で、また顔を赤らめているんだ?)

 

「そうだね。 曹操は絶対こっちの動きを見て、此方の意図を理解するはず。 なら、きっと此方の手に乗って

 くれるはずさ、自分達の目的のためにね。 それに劉備の所も気がついて、合わせてくれる筈。 言ったろ、

 全員で協力するのは悪い事じゃないってね」

 

軍議で見せた曹操の性格からして、まず間違いなく乗ってくる。 冥琳言うとおり、数千程度の兵数では、総崩れには遠い。 だけど曹操の軍が、その数千にあわせて後退すれば、話は別だ。 袁家には遠く及ばなくても、連合の中で有数の兵力を保持している事には違いない。

 

小さな雪玉は、やがて大きな雪玉へと姿を変え、やがて、大きな雪崩となって、袁紹を襲うはず。 そして、曹操の誇り高さからして、袁紹軍に痛手をあわせたと判断したら、袁術の所まで引っ張って来るのを手助けしてくれるはず。

 

「一刀いいの?」

 

孫策は、短くそう聞いてくる。

〔 何を 〕とは聞いてこない。 もう分かりきった事だから、そして、それから目を逸らす気はない。

それに、そのための三つ目と、孫策への確認だ。

俺は小さく頷きながら、

 

「もっといい策が他にあれば、良いんだけど、あいにく今の俺では、この程度のものしか浮かばない」

「だが、他に策が無い以上、その手で行くしかあるまい。 なに、悪手に見せて中々の一手だ」

「そうね、普通は、こんな無茶な策考えないわね」

「普通も何も、連合全部巻き込んで、総崩れさせるなんて、無茶苦茶もいい所ですよ~」

「ね・姉様良いのですか? こんな無茶な策とも呼べないもので」

 

冥琳、孫策、陸遜、そして最後に陸遜同様、頬を引き攣らせながら蓮華が、俺の策に対して感想を言う、・・・・・・・・策と呼べないか、でもそれが、この策の利点であり、問題点なんだよな。

とくに・・・・・・・・・・、

 

 

 

 

 

 

「そう、蓮華の言うとおり、これは策と呼べない。 これが一番の問題なんだ」

「えっ、一刀、今のは言葉の例えで、私は別に一刀の策を非難しているわけではないの」

 

蓮華の言葉を認めるように言った俺に、慌てて蓮華は申し訳なさそうな顔をする。

別にそういうつもりは無かったとはいえ、そんな見当違いな事を、地の口調で言ってしまう蓮華の態度は、これから口にしなければいけない内容を前に、俺の心を少しだけ解してくれた。

 

「この策は、その性質上成功したとしても、連合から非難を受けざる得ない。

 そして孫呉はそれを回避するため・」

「一部隊の暴走として、部隊を率いていた将を処断しなければいけない、じゃろう?」

 

俺の言葉を遮り、賀斉さんが俺の考えを言い放つ。

その事に、その内容に、心臓が握り潰されそうな痛みに襲われる。

味方を犠牲にする。 いや生贄にすると言ってもいい。 戦とは、そういうものだ。

でも、それでも思ってしまう。

 

 『 俺はなんて酷い事を言っているのだと、考え付くのだと、 』

 

そんな思いは、偽善だ。

だけど、大切な想い。

仕方がない事だと、諦めたくは無い。

兵を将を駒として扱いたくは無い。

一人一人が、俺達に力を貸してくれる仲間なんだ。

だから、俺は同じ仲間として、そんな仲間を死地に追いやるものとして、目を逸らすわけには、いかないんだっ!

そう覚悟を決め、賀斉さんの目を真っ直ぐ受け止めながら答える。

 

「その通りだ」

 

その言葉と共に、俺の中で、何か大切なものが崩れた音がした。

 

「なっ! 一刀、貴方仲間を犠牲にしようと言うのっ!」

 

ああ、蓮華、怒ってくれていい、罵ってくれていい、俺はそれだけ酷い事を言っているんだ。

そして、孫策、冥琳、陸遜は最初から気づいていたため、俺の言葉に驚かず。 只、俺を強い意志を籠めた瞳で見ていた。 薄っすらと、悲しみの色を残して・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「ならその大任、私が引き受けるのが適任じゃろう」

 

賀斉さんのそんな言葉が、不敵な声が、俺を更に非難しようとする蓮華を止める。

 

「いいの賀斉?」

「かまわぬよ。 小娘共を犠牲にするわけにはいかん。

 それにな、これだけの大軍を巻き込んでの大芝居じゃっ。 そのような面白そうな事、誰かに譲るなど出来る ものかっ、わっはっはっはっはっはっ」

 

孫策の言葉に、賀斉さんは、そう言いながら豪快に笑う。

本当に楽しいと言わんばかりに、

 

「済みません賀斉さん」

「謝るな小僧、謝ってはいかん。 謝れば、それが過ちだと兵が動揺する。 此処は礼を言って送り出すところ

 じゃ、よう覚えておけ」

「はい、ありがとうございます」

 

俺の礼の言葉に、賀斉さんは、優しげな瞳をこちらに向け、

 

「最初は何処の馬の骨と思ったものじゃが、なかなかどうして・・・・・・・、それに良い目をしている。

 あんな真っ直ぐな目で、必死に辛いのを隠そうとしている顔で言われたら、力を貸してやってもかまわん、と

 思えてくるから不思議じゃのう。 じゃから、言っている傍から、そういう顔をするでない、陰気臭いっ」

 

賀斉さんの言葉に、顔に出てしまった事を窘められる。

その心遣いが嬉しいと感じる。 酷い役をやらせようと言うのに・・・・・・・・

 

「それにな、成功さえすれば、そのおかげで虎牢関を落とした事にもなる。 命までは獲られやせぬものじゃ。

 まぁ、それでも二度と戦場に立つことは許されまい。 なら、これが私の最後の華場という事じゃ、これだけ

 の大舞台ならば、何の悔いもありはしない。 むしろ感謝したいぐらいじゃ・・・・・・・・・ん?

 まったく男なら、もうちょっとシャキッてせんかいっ! そんなにこの老骨の身が心配なら、そうじゃの、何

 時か孫策殿が悲願を達成された折には、私のために舞って貰おうかのう、 それとも、儂のような年寄りのた

 めに舞うのは嫌と申すか?」

 

それでも、俺に優しい言葉を掛けてくれる。

 

「その時は、茶と茶菓子も、心を籠めて用意させていただきます」

「わっはっはっはっはっはっ、そうじゃ、そうやって、無理にでも笑みを浮かべておればよい。

 孫策殿、我らは一刻後に出る。 陸遜殿、兵糧と私の所だけでは足りぬ兵の分の編成は任せたぞ。」

 

俺はせめてもと、感謝を籠めて笑顔で賀斉さんに応えると、賀斉さんは前より楽しげに、そして、安心したかのような顔で、そう言葉を残して去っていく。

 

本当に、この地の人は優しい人ばかりだ。

会って間もない俺に、色んな事を教えてくれた。 叱ってくれた。 微笑んでくれた。

そして、今こうして、俺なんかの策のために、命を掛けてくれようとしている。

だから、俺はまっすぐ現実を見なければいけない。

彼女の生き方を、そして、俺の策に命を預けてくれる兵士達の戦いぶりを、

決して忘れてはいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

こんにちは、うたまるです。

 

 

  第36話 ~ 舞うが如く咲き乱れる喧嘩華 -前編- ~~を此処にお送りしました。

 

今回は久しぶりに、一刀視点のお話です。

そしていきなり、虎牢関編での作戦全容を明かしてしまう、作者の阿呆振りを現す内容だったと思います。

しかし賀斉さん、当初本当に、チョイ役だった筈なのに、ここまで目立つ事になろうとは・・・・・・(汗

でも、この戦で、賀斉さんは残念ながら、表舞台から退場する事になってしまいます。

 

今回、一刀がかなり思い切った作戦を出しましたが、別に一刀の精神が壊れたわけではありません。

一刀は一刀なりに、雪蓮達の要望を適え、今後の事を考えた上で、被害の少ない策を提案した訳です。

実際どう抑えるかは、次回をお待ちください。

 

 

あっ、明命出てこなかったなぁ・・・・・・(汗

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

 


 
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