「おとーしゃまー」
雪蓮をそのまんま小さくしたようなが舌っ足らずな女の子が城の中庭をとてとてと、おぼつかない足取りで歩いている。
「紹、こっちよー」
その声に紹と呼ばれた女の子は木陰に座っている雪蓮を見つけた。
「おかーしゃまー」
女の子の名前は孫紹。三国同盟の後に一刀と雪蓮の間に生まれた娘である。
「しー、お父様はお昼寝してるから静かにね」
孫紹が雪蓮のもとに辿り着くと、そこには雪蓮に膝枕をされて眠っている少年……この大陸を平和にするために呉に舞い降りた天の御遣い北郷一刀だった。
一刀の姿はこの世界に来た時と全く変わらず少年のまま。孫紹と同い年くらいにしか見えないのである。
その一刀を雪蓮は優しげな表情で眺めていた。
「えー! おとーしゃまと遊ぶ約束してたのに~!」
孫紹は不機嫌そうに声を荒らげる。
「んー……。……紹?」
その声に目覚めた一刀は目の前に立っている孫紹に気付く。
「あら、起きちゃったのね一刀」
「んー、雪蓮の膝枕が気持ちよくてつい寝ちゃってたよ」
「おとーしゃまー! あーそーんでー!」
一刀と雪蓮の会話を孫紹が遮る。
「おお、そういえば約束してたな。何して遊びたい?」
「んーとね……」
孫紹が何をして遊ぶか考えていると、他の者たちがぞろぞろと集まって来た。
「北郷、循とも遊んでくれると聞いていたのだが?」
冥琳と手を繋いでいる少女は、冥琳に良く似ていて綺麗な黒髪をしている。というか一刀の娘たちは全員母親似だった。
「も、もちろんだとも!」
「あ、ありがとうございますお父様」
周循は嬉しそうに顔を赤らめる。
そして他の子供たちもわらわらと一刀の周りに集まる。
孫登、甘述、黄丙、周邵、陸延、呂琮。それぞれ蓮華、思春、祭、明命、穏、亜莎の娘たちである。
「シャオも一緒に遊ぶー!」
唯一、シャオだけにはまだ子供はいなかった。
八人の娘たちとシャオに囲まれた一刀はあっという間に中庭に連れて行かれてしまった。ちなみに赤ん坊に近い呂琮はシャオがかかえている。
「ふふっ、一刀も立派なお父さんねー」
「そうだな。まさかあんな小さな父親が存在するなんて夢にも思わなかったぞ」
雪蓮と冥琳は並んで座りながら子供たちの様子を見つめている。
それは別の外史で叶うことのなかった光景。
「昼は子供でも、夜は凄いのよねー♪」
「ね、姉様! 子供たちの前ではしたないですよ!」
蓮華は顔を真っ赤にさせながら雪蓮を諌める。
「なによー、蓮華だって夜は一刀にひぃひぃ言わされてるじゃない!」
「なっ!」
「この前の夜に蓮華の部屋から凄い声が――――」
「きゃー! そ、そんなことは!」
雪蓮のからかいに恥ずかしさが爆発する蓮華だった。
「あははっ…………蓮華ってば王様なんだからもっと余裕をもたないとダメよー?」
「ね、姉様がそんなこと言うからです!」
雪蓮の言うとおり現在の孫呉の王は蓮華だった。雪蓮は三国同盟を組んで一周年の式典でいきなり蓮華に王位を譲ったのであった。
『今日から呉の王様は妹の蓮華になるからよろしくねー♪』
こんな感じで軽く譲ってしまったのだ。
そのことをいきなり知らされた蓮華は拒否するのだったが雪蓮に諭されて王位を継承することを決意したのであった。
「こういうのが平和って言うのねー」
雪蓮が子供たちを見ながらしみじみ呟く。
「……そうですね。姉様が目指していた世界は確かにここにありますよ」
「好きな人の子供までいるのは予想外だったけどね♪」
雪蓮たち王族は子孫を残すために子供を産まなければならない。そこには自分の意志はほとんどないと言っても過言ではない。ある程度の地位や身分が必要となるので政略結婚などは当たり前である。しかし天の御遣いという肩書きを持った一刀が現れたことにより、雪蓮たちは好きな男の子供を産むことが出来たのである。
「儂のような老躯まで孕ませるんじゃからのう」
「それに呉に限らず魏と蜀にもお子さんがいますからね~」
「一刀様が平和の架け橋なのです!」
「凄いですだんな様」
穏の言ったように他国に一刀の子供はいるのである。
「北郷の可愛さに他国の将たちは骨抜きだからな。…………まあ我らもだが」
冥琳は自分で言いながら顔を赤らめる。
「まさに天下無双ね♪」
「違いありませんね」
そして母親たちは子供たちにもみくちゃにされている一刀を見る。
「こ、こら紹! 抱きつくんじゃなーい!」
「登も紹の真似しないの!」
「循も止めてくれー!」
「述も丙もまで!?」
「邵! モフモフするなぁ!」
「延は寝るなー!」
「琮は良い子だな―大人しくて」
子供たちから大人気の子供一刀は疲れたような表情ながらも決して不快ではなく大きな幸せを感じていた。
「くそー! でかくなってやるー!」
一刀は元の身体に戻って、子供たちの相手をするのであった……。
完。
<あとがき>
とりあえず完結しました/(^o^)\
応援してくださった皆さんありがとうございました!
書きはじめの頃は、雪蓮と冥琳生存、星の単騎駆けしか考えてなかったのw
あとはノリでなんとか頑張りましたwww
初めはちょっと真面目に書いてたのに、明命のモフモフあたりからおかしくなってきた希ガスw
後悔はない!
皆さんのコメントを毎回楽しみに書いていました。
ありがとうございます!
誤字脱字報告もあざっす(*/∀\*)
次の作品のネタは少し浮かんでいます。
ただ、更新は遅くなると思いましゅ!
頑張れ一刀くんシリーズは番外編でちょこちょこ書くかも?
もしかすると伝説の戦い、月VS風も書くかも?笑
書かないかも|ω・`)
気分次第です( ゚∀゚)ノ
私の拙い文章をお読みくださってありがとうございました。
それでは皆さん、へぅっ!
<おまけ>
三国同盟を組んで少しした頃の蜀
「おかーさーん!」
「あら、どうしたの璃々?」
「なんかねー、お腹が大きくなってきたのー!」
「お腹が? 何かの病気かしら…………」
完。
完。
完。
これは完全にフィクションです(笑)
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ついに完結となります。
皆ありがとう!
へぅっ!