No.138790

双天演義 ~真・恋姫†無双~ 十四半の章

Chillyさん

双天第十四半話です。

14.5話ということで15話とは言えないけど、14話の終わりから15話に繋げる為の一話です。

前回同様料理話。二話続けるのはどうかと思いましたが、どうしても話が続かなかったので書いてしまいました。越ちゃんの料理の腕は関羽、袁紹と同Lvです。きっと食べたら記憶を無くします。(マテ

2010-04-25 21:48:07 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1979   閲覧ユーザー数:1825

 平穏無事に一ヶ月過ごすことができたらならどんなに良かっただろうか。

 

 やはり激動の時代は待ってはくれず、漢の皇帝劉宏の死から始まる宮廷闘争が本格化を見せ始めた。

 

 後継者を明確に実子の劉弁と劉協のどちらにするか決めていなかったため、後継者争いが大将軍何進と張譲ら十常侍との間で起こってしまったのである。

 

 劉弁を擁立する何進は自身が身分の低いことを自覚していた。そのため死後霊帝と諡号された劉宏の死後すぐに袁家と手を結び、その政治力と軍事力を支配下に治めることに成功した。

 

 袁家の力を手にいれた何進は、じわじわと十常侍を追い詰め、その勢力をそぎ落としていく。

 

 十常侍も黙ってそれを受け入れるはずもなく、得意の謀略を駆使して何進に反撃を試みるが、そのことごとくを袁紹配下の男に防がれてしまう。

 

 一人、また一人を討ち取られていく十常侍の勢力は追い詰められ窮鼠と化した。

 

 何進が擁立する劉弁の母、そして何進の妹たる何太后の名を使い、何進を後宮に呼び出した。

 

 罠であると後宮に行くことを止める袁家を無視する形で、何進は妹のため後宮へと少ない手勢で向かった。

 

 もちろん罠であったこの呼び出しは、後宮を進む何進に十常侍配下の兵たちが放つ矢による死を与えることになる。

 

 しかしこれを好機と袁家は考え、後宮に大将軍の敵討ちを名目に攻めあがった。

 

 袁家の大軍の前に次々と討ち取られていく宦官と兵士たち。

 

 だが、この袁家の攻勢はたった一人の宦官、張譲を劉弁と劉協とともに逃がしてしまったことで終わりを迎える。

 

 劉弁と劉協を連れた張譲は軍事力で袁家と対抗するため、并州の董卓を皇帝の名の下にその力を召し上げ、首都洛陽に軍を進めさせる。このとき袁家は根拠地にて叛乱の兆しあると軍をそれぞれの支配地へと戻していたため、董卓はその勢力を失うことなく首都洛陽を制圧することができた。

 

 張譲は落陽につくや否や劉弁を廃位、弘農王に封じる。そして異母弟劉協を即位させた。新体制を固めていく張譲に、自分達の仕事は終わったと帰ろうとする董卓を張譲はやれ治安の維持だ、賊討伐だと落陽に留まり続けさせているらしい。

 

 ここまでがこの大陸に起こった大きな出来事であって、間接的には関わってくるが直接この公孫賛が納めるこの地に関わることではない。

 

 問題なのは、ここ最近響き渡る厨房からの悲鳴と呻き声。

 

 今のところオレが直接被害を受けているわけではないが、城内を歩くたび武官、文官、兵士達からの視線が痛い。

 

 さらに言うなら伯珪さんの視線が一番痛いし、恨み言を延々耳元で言われるのが一番精神に来る。

 

 あと子龍さんなんだけど、黄巾党討伐が終わったらすぐにでも旅に出るつもりだったらしいけど、まだここにいます。彼女いわく、

 

「こんな酒がおいしく飲めそうなことが起こるのに、なぜすぐに出なければいけないのですかな?」

 

 ということらしい。

 

 かなり裏でいろいろ動いているみたいだけど、何をやっているかとことん秘密主義で不明なのが今一不安を誘っている。

 

 何のことかといえば、越ちゃんとの料理勝負である。

 

 厨房の一件以来、越ちゃんは厨房をたびたび占拠し、悲鳴と呻き声を発生させつつ練習に励んでいた。だからこそのオレを見る目が皆、厳しくなっていたのであったが、オレのせいじゃないのになぁ。

 

 この城で一番調子に乗らせたらいけない人と一番生真面目な人が中心になって行う行事? なだけに誰にも、たとえ伯珪さんでも止めることは不可能らしい。

 

 その一番調子に乗らせたらいけない人が考えた今回の料理勝負のレギュレーションを説明しよう。

 

 審査員、公孫伯珪ただ一人による試食勝負。当初子龍さんも審査員予定だったが全力で逃げたらしい。さすがに自身にかかる火の粉は払ったのか、いつの間にやら司会兼解説、実況と三役やることにしていた。

 

 料理の品目は炒飯で具材は自由。そして料理人はオレと越ちゃんで同時に調理開始し、伯珪さんが出来上がった順番に試食することになっている。

 

 はっきり言って、負ける気はしないが勝っても絶対うれしくない状況になるのはわかりきっている。

「諏訪! 覚悟しなさい。あのときの上からの物言い、きっと謝らせます」

 

 オレが現実逃避している間に、目の前で闘志を燃やす越ちゃんはどんどんヒートアップしていたようだ。手に持った包丁を向けてくるし、その目に炎が宿っているのがとても怖い。なんかあそこまで越ちゃんが燃えているところって初めて見たかも……。

 

「さぁ始まりました、第一回公孫伯珪杯文武百官料理勝負。司会、解説、実況は……」

 

 なんか向こうのほうで何故かいる観客相手にパフォーマンスしている子龍さんは置いておくにしても、何この会場? いつの間に城の中庭にこんな料理スタジアム作り出したの?

 

 オレと越ちゃんが向かい合うように調理台と竈などが用意されて、上座の一段高いところに椅子に縛られ、猿轡をかまされた伯珪さんが言葉にはなっていないけど何か喚いている。仮にも刺史でこの城の一番えらい人にする仕打ちじゃないよね。きっとギリギリまで逃げ出そうと必死の抵抗したんだろうな。

 

 伯珪さんの涙目と一瞬目があったけど、速攻目をそらしました。目の前で燃えている越ちゃんに向こうで悪乗りしている子龍さんを止めるなんて、とてもじゃないけどオレにはできません。

 

「さぁ、選手両名の実力はいかに! この料理対決の勝者はどちらだ。伯珪殿はこの勝負をはたして生きて乗り切れるのか? 楽しみになってまいりました。それでは、両者そろそろ調理開始してくだされ」

 

 段々と投げやりになっていった子龍さんの楽しみは、伯珪さんが嫌がって逃げるのをどうやって防ぐか、料理を食べたときいかに苦しむかになっているような気がする。

 

 とりあえず料理は真面目にしますかね。

 

 炒飯は手早くパラっと仕上げるのが一番だから、事前に準備はしっかりとやっておく。具材を同じ大きさに切りそろえ、火の通りを均一にしておくのはもちろん、先に火を通しておいたほうがいいものは火を通しておく。

 

 オレが選んだ具材は椎茸、長ネギ、豚肉で椎茸と豚肉は塩胡椒で多少味付けしながら先に炒めておく。

 

 それからとき卵を用意して、その中に茶碗一膳分のご飯を投入して、良く混ぜ合わせる。

 

 こうするとご飯の一粒々々を卵がコーティングした黄金炒飯を手軽に作ることができる。

 

 ササッと手早く中華なべでご飯を炒めて、具材をあわせる。

 

 具材のほうに味付けをしてあるので、ここでの味付けは調整程度の塩胡椒。あおって余計な水分を飛ばして、パラッと仕上げて、香り付けにお酒を軽く振って出来上がり。

 

 越ちゃんのほうを見てみれば、あっちへふらふらこっちへふらふらと手際が悪い。

 

 まぁもうすぐできるようだけど、うん、あおりが足りず水分が多いかなぁというパッと見の印章だね。

 

「はい、伯珪さん。おまたせしました」

 

 中央の壇上で縛り付けられている伯珪さんの前に炒飯を置く。

 

「頼む、諏訪。逃がしてくれ」

 

 何とか両手の自由を確保して猿轡を解いた伯珪さんの願いだけど、オレには無理です。

 

 目を逸らして謝るくらいしかできない。あとは最期の食事においしいものをと、がんばって作った炒飯を差し出すことだけ。

 

「伯珪さん、諦めてください。あの二人を止めるのはオレには無理です」

 

 そしてきっぱりと断ってから、レンゲを伯珪さんに渡して炒飯を食べてもらう。

 

 我ながら今回もうまくできたと思う。パラッと仕上がっているし、卵がご飯にしっかりとコーティングされて黄色が鮮やか。欲を言えばグリーンピースなりなんなりで彩をもっと鮮やかにしたかったが、味に関しては大丈夫だろう。

 

 伯珪さん、泣きながら食べてるし。

 

「できました!」

 

 下で越ちゃんの声が聞こえると、思いっきりビクンと震える伯珪さんが哀れです。どれだけ実験台になって悲惨な目にあったんですか。

 

 越ちゃんの完成品を見てみると、油が多かったのかギトギトしていそうでなおかつご飯がベチャっと皿にのり、黒いものって卵の消し炭? それとも別の具材? という感じのものがご飯の隙間からところどころ顔を出している。

 

 一番上に川魚のフライ見たいのがドーンと乗っていて、その目が恨めしそうにこちらを睨んでいる。

 

 えぇと、それにこの壇上にまで臭ってくる焦げ臭さ。

 

 とりあえず越ちゃんには今後料理をしてもらわないほうがいいかもしれない。

 

 ぎこちない笑みでその失敗作といっても良い料理を載せた皿を伯珪さんの前に置く。

 

 涙目で懇願するように見てくる伯珪さんをオレは見ることができない。本当に力のないオレでごめんなさい。

 

 オレの作った炒飯を食べ終えた伯珪さんは、プルプルと震える手でレンゲを越ちゃんの作った炒飯に向かわせる。

 

 レンゲが炒飯に差し込まれるそのとき、会場に伝令兵が駆け込んできた。

 

「伝令!伝令にございます。伯珪様、袁本初殿、袁公路殿より使者にございます。いかがいたしますか?」

 

 伝令の告げる相手が相手だけに無視することはできない。

 

 伯珪さんはこれ幸いとばかりに縄を解かせると、即座に城へと戻っていった。さすがに越ちゃんにしても子龍さんにしても、これを妨害することはしなかった。

 

 チラッとこちらを越ちゃんは見たけど、そのまま伯珪さんを追って駆け出している。

 

「ふむ、なにやらきな臭いですな。もうしばらくこちらにいたほうが良さそうだ」

 

 子龍さんも城へと歩を進めるが、すぐに振り返って、

 

「諏訪殿も行ったほうがいいでしょう。多少は言い訳を考えておきますが、遅れめさるな?」

 

 そう言って城へと走り去っていった。

 

 さすがは趙子龍だね。オレの行動を読んでるよ。

 

 オレは遅れて謁見の間に着いて、越ちゃんにかなり絞られました。ただ、その後に乱暴に手ぬぐいでオレの口元の油を拭ってくれたのは感謝してくれたのかな?


 
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