真・恋姫無双 二次創作小説 明命√
『 舞い踊る季節の中で 』
第33話 ~ 怒りに踊らされる魂、泥沼で舞う魂 ~
(はじめに)
キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助
かります。
この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。
北郷一刀:
姓 :北郷 名 :一刀 字 :なし 真名:なし(敢えて言うなら"一刀")
武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇
:●●●●
得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(ただし本人は無自覚)
気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)
神の手のマッサージ(若い女性には危険です)
(今後順序公開)
★オリキャラ紹介:
諸葛瑾:
姓 :諸葛 名 :瑾 字 :子瑜 真名:翡翠
武器:"双天" 対の双剣
武力:52(平均的な将を60とした場合)
智力:81
政治:89
家事:92
魅力:想像にお任せします(w
焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です
性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性
だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)
警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。
妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配してよく
食事を差し入れていた。
やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯を仕
掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。
家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕を見
て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。
武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。
姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。
自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、現
実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗脳する
も、基本的には周りには秘密にしている。そのうち執筆も行うようになり、掲載されるようになる。
数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっている。
黄巾の乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。
一刀視点:
「では、我等は前曲に戻り、時期を待ちましょう」
「頼むわね。 後は作戦の結果によって臨機応変に対応しましょ」
「はっ」
孫策の言葉に、思春は短く返事をした後、姿を消す。
「一刀さんは、どうやってお守りしましょうか?」
「一刀にはまだ、武将として働いてもらう訳には行かないから、
・・・・・・どうする? 蓮華と一緒に後ろに下がっておく?」
明命の心配そうな声に、孫策はしばし考えた後、俺に尋ねてくるが、俺の答えは決まっている。
「俺も前に居るよ。 孫策の横で、この戦を見届ける。 そうしなければいけない気がするから」
「そう・・・・・・。 乱戦になったら、守って上げられなくなるから、直ぐに後ろに下がってよ?
幾ら一刀が強くたって、乱戦の空気は、今の一刀には刺激が強いんだからね」
「ああ。 その辺りは心得ているよ」
幾ら覚悟を決めたって、命を奪おうと襲い掛かってくる兵士の命を、ひたすら刈り取って行くなんて真似は、まだ出来やしない事は、自分が一番分かっている。
相手の命を奪う事を考えると、あの時の感触を思い出すと、自分の手が震えるのが分かる。
まったく、欺瞞だな・・・・・・直接戦うより、多くの命を奪う方を選んでおいて、より少ない命を直接刈り取る事を、こうも怖がるだなんて・・・・・・なんて惰弱・・・・・・、
でも、此処で怯えているわけにも、自己嫌悪に陥っているわけにもいかない。
そんな事をすれば、より多くの命を失いかねないのだから・・・・・・、
「足を引っ張らないようにはするから、安心して欲しい」
「・・・・・分かったわ、明命貴女も、もう自分の隊に戻りなさい。 一刀は私達が見ておくわ」
「はいっ、 一刀さん、くれぐれも無理をしないでくださいね」
「ああ、明命もな」
そう、心配そうな顔を向けてから、自分の部隊へと姿を消していく。
(無事帰って来てくれよ)
そう心の底から、思っていると、最前線の方で単騎がゆっくりと前に出ていく。
「とうとう始まるのか」
自分の出した言葉と共に、体内で水位を上げていく緊張感と恐怖。 だけど、前回程恐怖は感じ無い。
・・・・・・これが慣れだとしたら、俺は自分を唾棄すべきだな。
そして、号令とともに、前進する劉備の部隊、それが、やがて一定の位置まで来ると、城壁の上から弓矢が浴びせかけられる。
だが、部隊の殆どが手に持ち、表面に泥を塗り、木の板を数層に重ねただけの簡易の盾を頭上に掲げた事によって、その被害は殆ど無い。 そしてもう少し近づいた所で、今度は劉備の隊が一斉に弓を引く、・・・・・・だが、その殆どは、頭を低くし、壁に隠れた相手には効果が無かった。
そして、お返しとばかりに、再び弓矢を浴びせかけるが、その殆どを、盾に防がれてしまう。 劉備軍は、今度は弓を一射する暇などなく、どんどん降り注ぐ矢を盾で防ぎながら後退する。
そして、敵の射程距離から離脱したと思ったら、少し休息した後、再び前進する。
その劉備軍に、今度は一射もさせる隙など与えない、とばかりに城壁の上から、どんどん矢の雨を降り注がれている。
そんな事を数度繰り返すうちに、劉備の軍の盾は、突き刺さった矢で一杯になり、まるで巨大な剣山のようになっていた。
「どうやら、一刀の言った作戦が上手くいっているようね」
「そうだね、今のところは被害も殆ど無いようだし、上手くいっていると思う」
そう、劉備の隊が今やっているのは、後から俺が提案した策の一つ、
やがて、劉備の隊は、再び敵の射程距離を離れると、おもむろに、其処で相手に見えるように、盾に刺さった矢を抜き始め、纏めて行く。 そして、相手に分かるように、束ねた束を山にして積み上げる。
そして、それと同時に、再び単騎で前に出て、贈呈品に感謝する旨を述べてから、舌戦を始めだす。
「あっ、相手の牙門旗が一瞬、ブワァーッって動きましたねぇ。
きっと華雄さんが出ようとしたのを、張遼さんが止めたのでしょうねぇ~」
陸遜の声に、孫策は苦笑を浮かべ、
「一刀も結構性悪よねー、あんな手を目の前でやられれば、私だって頭に来るわよ」
「しかも、劉備の軍は、相手の矢を殆どタダで、あんなに手に入れられたのですから、相手を挑発する事を抜き
にしても美味しいお話だったでしょうねぇ~」
「でもあれから動かないわね」
「そうですね~」
「今回は出てきてもらわねば、意味が無い。 張遼のやつめ、華雄の手綱を上手く握っているようだな。
雪蓮、どうする?」
何度か出陣しそうな気配を見せるものの、
一向に出て来ない相手に、やや苛立つ冥琳に、孫策はいつもの笑みを浮かべ、
「そうね、予定通り、私が劉備に加担して華雄を引っ張り出すわ。
袁術ちゃんには、前もって了承を得ている事だし、問題は無いわ」
冥琳の問いに、孫策はそう返事をする、まぁこの辺りは予定通りといえば、予定通りだから良いんだけどね。
俺は、近くの兵に頼んで、大き目の弓矢を一式借りると、
「あら、一刀もついてくる気?」
「言ったろ、今日は孫策の傍に居るって、勉強させてもらうよ」
「その弓は? というか使えるの?」
「保険さ。 それに、相手に当たらなくても、射つだけくらいなら出来るよ」
霞(張遼)視点:
「離せ張遼! あれほど虚仮にされて、黙っているなど私には出来ん!」
「待ちってば! あんなん見え透いた手ぇや! それに乗ってもーたら、それこそ敵の思う壺やで!」
怒り心頭の華雄の前に立ち塞がり、華雄の暴走を引き止める。
「くっ・・・・・・だが、奴らはあんな手で、我らの武を嘲笑うかのように、矢を掠め取り、礼を述べたのだぞ!
それを許せるとでも言うのか! しかもその後の数々の暴言! 私は決して奴らを許さん!」
「そんなもんウチも一緒や! 許せん、許せんよ!
せやけどウチらはなんとしても汜水関を守らんとアカンねん!」
「くっ!」
「そのためなら、月達を守るためなら、罵声くらい幾らでも耐えたる!
だから、お前も耐えてくれっ!」
「くっ・・・・・うあぁぁぁぁぁぁ!」
ウチの言葉に、華雄は悔しげに声を上げながらも、何とか耐えてくれた。
華雄には、ああは言ったけど、ウチは正直感心していた。
本来劉備が行った手は、名を貶めかねない行為や、だけど、それをその後の堂々と大声で礼を述べる事で帳消しにした。 それどころか、大き目の使い捨ての盾を使うとるとは言え、危険な行為を堂々とやり、その上此方を効果的に挑発しとる。 周りには、勇敢で大胆の行為と映るに違いない。 しかも、あれだけの矢を手に入れることが出来た。
それだけやあらへん、あんな盾がいつまでも保つとは思わへんが、兵達はそうは思わん。 これで心理的に弓を射っても、無意味どころか敵に力を与えてしまうと、刷り込まれてしもうた。
かなり頭の回る奴がおるな・・・・・・、そんな奴が、このまま終わらせるとは思えへん。
次はどんなん手で、挑発してくる?
「華雄将軍! 連合軍先鋒に新たな部隊! 旗標は・・・・・・孫と十の一文字です!」
「なにぃっ! 孫だとっ!」
孫・・・・・・孫策か! 華雄の様子だとなにやら因縁があるようやが、絶対暴走は止めてみせるっ、
しかし、十文字・・・・・・聞いた事あらへんな?
華雄の様子と、聞いた事も無い牙門旗に興味を引かれ、覗き込む。
先程の関羽と名乗った将も、ごっつう強そうだったが、今度の姉ちゃんも強そうや、
専守防衛を指示されておらなんだら、ごっつう楽しめたかも知れんと思うと、悔しうてしょうがない。
だけど、あれはなんや?
孫策の横にいる男、あれがおそらく、十文字の牙門旗の持ち主何やろうけど、・・・・・・拍子抜けやっ
何で、あんなんが、あんな所におんねん? 軍師のねねにしたって、戦場に立てば威厳があるって言うのに、あれは、はっきり言って雑魚やっ、
あんなんを傍に置いておくなんて、孫策の器が知れてるわ・・・・・・がっかりやわっ・・・・・・
『汜水関守将・華雄に告げる!
我が母、孫堅に破られた貴様が、再び我らの前にたちはだかってくれるとは有り難し!』
「なっ!」
孫策の口上に、隣に立つ華雄から、そんな声が洩れる。
成る程、そういう関係かいな・・・・・・しっかり気合入れて押さえなあかんなっ
『その頸もらうに、いかほどの難儀があろう? ・・・・・・無いな、 稲を刈るぐらいたやすい事だろう!』
ギリッ
歯軋りがウチの所まで聞こえる。
そうや、その調子で耐えるんや、耐える事が今のウチらの仕事やっ、
『どうした華雄。 反論は無いのか? それとも江東の虎、孫堅に敗れた事がよほど怖かったのか?』
「言わせておけばっ!」
「あかんっ!、言わせておけばええっ、今は言わしておくんやっ!
何時か、この悔しさを晴らす時が来る! 賈駆っちを信じんでどうするんや、きっと賈駆っちが、此方から打
って出る機会を作ってくれる! その時まで耐えるんや!」
「ぐっ・・・ぐぐっ」
挑発に乗りそうになった華雄を、ウチの言葉が何とか華雄を思い止まらせる。
『そうか怖かったか。 ならば致し方なし。・・・・・・・・・・孫堅の娘、孫策が、貴様に再戦の機会を与えてやろうと
思ったのだがな!』
バキッ
「・・・・・・貴様こそ、そんな雑魚を横において、良くそんな事が言えるな!」
華雄は城壁の壁の一部を握りつぶしながら、そう言葉を漏らす。
「よう耐えた! 城壁を握りつぶすくらい、幾らでも目瞑ったる! その代わり絶対に耐えるんや!」
バキッ
ウチの言葉に、華雄は、もう片方の手を城壁に付いて、其方も握り潰す。
・・・・・・あまり潰してもらっても困るんやけど、今はしゃあないか・・・・・・
『それも怖いと見える。 いやはや・・・・・・それほど臆病者、戦場に居て何になる?
さっさと尻尾を巻いて逃げるが良い!』
「い・・・・・・言わせておけばぁ・・・・・・!」
「待て待て待て待て! 落ち着け! 落ち着かんとアカンって!
あんな見え透いた手に乗ってどうすんねんな!」
城壁から手を離し、出撃しようと後ろを振り向いた華雄を、ウチは羽交い絞めで止める。
正面からなら、力負けするが、後ろからなら、ウチでも止められる。
「我が誇りが傷つけられているのだ! たとえ何らかの策があったとて、罠など食い破ってみせる! だから
止めるな張遼!」
「アカンって! 賈駆っちにも言われたやろ! 長期戦に持ち込めばこっちの勝ちやって ここで華雄が出て行
ってどうすんねん!」
「奴らを蹴散らす!」
「そんな必要ないねんて!」
「煩い! 離せ張遼!」
「アカンっ! ウチかて悔しいの我慢して耐えとるねん! 華雄ももうちょっと我慢してくれ!」
「うぅ・・・・・・あぁぁぁぁぁぁ!」
華雄がウチの腕の中で暴れながら、雄たけびをあげる。
あぁ、あげたらええ、それで悔しさを、吐き出すんねん
『そうか、そうやって、隅で震えながら尻尾でも丸めているのだな。 負け犬・華・雄・殿・!』
「華雄将軍! 連合軍の一部の部隊が、城壁間近まで寄せて参りました!」
「この状況で寄せてくるだと・・・・・・! やはり我等を舐めているんだ、奴らは!」
兵の言葉に、華雄の怒りに再び、火が点いた。
ウチはそれを必死に、止めながら、城壁の外を確認すると、確かに寄せてきている。
先程の矢の件もあって、下手に射掛けさせるわけにもあかん、・・・・・・やってくれるやないか、
「華雄将軍! 我らは・・・・・・我らはもはや限界です! このような謂れのない罵倒など、奴らの息の根と共に、
止めてしまいましょう!」
「そうです! あんな戯れ言、いますぐに吐けなくしてやりましょう!」
とうとう、華雄の怒りが伝染したのか、華雄の兵までそう声を上げ始める。
「わーー! アホッ! 何言うてんねんおまえら!」
「よく申した! それこそ華雄隊の兵だ! 我等が臆病者等ではないと言う事を、天下に示そうではないか!」
そう言って、ウチを力ずくで、引き剥がす。
アカンっ! このままでは敵の思う壺や!
なら、仕方ない、恨むんなら、アホな事を言い出した自分を恨むんやで
ザンッ
「なっ!」
華雄隊の兵が、華雄の言葉に応じる前に、ウチは最初に華雄を焚きつけたアホの頸を、空高く刎ね飛ばす。
そんなウチの行動に、華雄隊は固まり、
華雄本人は、ウチを怒りの表情で睨みつける。
「貴様っ! よくも我が兵士を」
「黙れっ!! 言うたはずや、ウチらはなんとしても、汜水関を守らんとアカンってな!
それを脅かすなら、例え味方と言えども、その頸を刎ねるのは当たり前やっ! それとも、華雄は・」
ヒュッ
パシッ
ウチが華雄を睨みつけ、押し止めていると、矢が飛んできた。
それを華雄は、無造作に掴み取る。
なんや! 人が話している時に、礼儀の無い事するアホはっ!
ウチが飛んできた方を見ると、孫策の横に居たとっぽい兄ちゃんが、弓を射掛けた姿勢で、こちらを見ている。
あの餓鬼! いい所を邪魔しおってからに、何時か戦場でおうたら、真っ先に頸を獲ったる。
まぁええ、今は華雄の事の方が大事や、そう思うて、視線を戻すと、華雄は矢から何かを外していた。
「なんや、矢文かいな」
「なっ・・・・・・・!」
華雄は、矢文を見るなり、獰猛な顔をしながら、体中をぶるぶると震わす。
アカンっ!
ウチは、華雄の反応から、不味いと判断し、またも華雄を後ろから羽交い絞めするが、その時、矢文に書かれた内容がウチの目にも入ってきた。
「んなっ!」
その手紙に書かれた、あまりの内容に驚いた隙を狙って、
「・・・・・・!」
ドスンっ!
「くぅーーっ!」
華雄は無言で、ウチを馬鹿力に任せて、城壁に自分ごと叩きつけて、ウチを強引に引き剥がすと、
「全軍出撃の準備をしろ! 口先だけの敵なんぞ、鎧袖一触で吹き飛ばすぞ!!」
「「「「 うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉおぉーーーーーーーっ!! 」」」」
手紙を金剛爆斧で細微塵に斬り捨て、兵達を連れて行く。
「くっ、アカン、これはもう止められん・・・・・・! 誰かおるか!」
「はっ!」
「虎牢関の賈駆っちに、汜水関はもう保たん、と伝えてくれ。 おいおい状況は伝令で送るから言うてな」
「御意!」
「華雄を見捨てる訳にはいかん。・・・・・張遼隊! ウチらもでんぞ!」
「「「「 応っ! 」」」」
一刀視点:
城門が開き、敵軍が次々出てくるのを確認すると、俺と孫策は馬を下がらせ、自分の隊へと向かう。
「一刀、よくあんな内容書けるわね。 上手くいったから文句は無いけど、正直あの内容には幻滅したわよ」
孫策が、そう言って、白い目を向けてくる。
まぁ、気持は分かる。 正直俺も自分で書いてて、これは無いなと思っていた。
でも
「俺の悪友で、女性を怒らすなら、世界一と豪語するアホが居てね。 そいつの手管を真似ただけだよ」
「・・・・・・友達は選んだ方がいいわよ」
「俺も時々、そう思ってた。 何であんな奴と友達なのかなって、
でもまぁそれでも、分別はあってね、怒らせる時は、まず相手が一方的に悪い時だけだったから、女子達に
は、そんなに嫌われて無かったかな」
本当、俺よくあんな奴と悪友やって居られたなぁと、今更ながら思う。
さっき書いた手紙の内容も、華雄を見て、その様子から、あのアホが起こした騒動の中で、当てはまりそうなものを引き出して来たに過ぎない。
あのアホには、よく
『かずピーは、女心が分かってないなぁ』
なんて言われていたが、例え女心が分かったとしても、あのアホみたいに、此処まで的確に相手を怒らす事に使われていたら、まだ分からない方がマシと思えていたから不思議だ。
「でも、いい事を知ったわ。 明命と翡翠があの内容知ったらどう思うかしらねぇ~」
懐かしい顔を思い出していると、孫策が悪戯っぽい笑みを浮かべて、そんな事を言ってくる。
なんだ、そんな事か・・・・・・、
「二人が、その内容を信じればね」
「・・・・・・・・・・一刀、けっこう腹黒かったのね・・・・」
「酷いな、孫策と一緒にしないでくれ、俺は俺だよ。 今回は特別、普段こんな事する気なんて無いさ」
「・・・・・・そっ」
絶対なんか言い返してくると思ったのだが、何故か、一度目を瞑り・・・・・・さびしげな顔を、だけど優しげな眼差しを俺に向けて、静かに頷いた。
・・・・・・孫策に、そんな態度取られると、なんか見抜かれたみたいで、落ち着かないなぁ
そう思っていると、今度は楽しげな笑みを浮かべ
「じゃあ、一刀と私だけの秘密って事になるわね。 なんか二人の秘密って言葉の響きが、何か甘美よねぇ~」
「ちょっ! 待て、なんかそれはやばい気がしてきたっ、何故か知らんがそう思うぞ」
ころころ変わる表情が面白いなぁ、と思っていたら、言葉だけを聞いたら、とんでもない事を言い出す孫策。
別に俺自身、何もやましい事は無いが、何故か本能的にやばいと感じた。
理由は分からないが、この言葉を、あの二人にだけは聞かせてはいけないと、俺の本能が警告する。
「あっ、そうだ、華雄が知っているから、二人の秘密って事にはならないぞ」
「そうね、華雄の性格なら、きっと破り捨ててるだろうから、頸を獲っちゃえば問題は無いわね」
「待てっ、そういう物騒な考えはやめてくれ」
「何よー、物騒も何も、華雄の運命なんて決まっているんだから、問題ないじゃない」
「意義ありだーーーーーーっ!」
雪蓮(孫策)視点:
馬の踵を返しながら、先程の一刀の華雄に宛てた手紙の内容を思い出す。
いきなり、隣で何を書き出すのかと、最初は驚いたが、その内容は、もっととんでもなかった。
よくあんな相手を、華雄の心を抉るような言葉を思いつく、と感心すると共に呆れ果てた。
正直あの手紙の内容には、華雄には、同情する。
一刀は、知人の手管を真似たと言ってはいるけど、それが出来るという事は、その素質は十分あるという事。
この事を、あの二人が知ったらどう思うかしら? それに一刀は、その事をどう思うかなと
「でも、いい事知ったわ。 明命と翡翠があの内容知ったらどう思うかしらねぇ~」
「二人が、その内容を信じればね」
悪戯心も刺激したため、一刀に軽い脅し風に言ってみるが、一刀はあっさりと、そんな言葉を、涼しい顔で言ってくる。
たしかに、普段の一刀を知っていたら、あんな事するとは思わないだろう。
ましてや、一刀は二人を大切に扱っている。 そんな扱いを受けている二人なら尚更だろう。
そして、その事実に
「・・・・・・・・・・一刀、けっこう腹黒かったのね・・・・」
と呆れ気味に言ってやるが、
「酷いな、孫策と一緒にしないでくれ、俺は俺だよ。 今回は特別、普段こんな事する気なんて無いさ」
その言葉で、一刀の一瞬見せた物憂げな顔で、確信した。
やっぱり、一刀は無理をしていると、
そして、普段考えないような事までする程、一刀は自分を追い込んでいるのだと、
あの手紙の内容を読んだ華雄は、怒り心頭、おそらくこっちに真っ直ぐ突っ込んでくるに違いない。
そして冷静さを欠いた猪を、狩るのは関羽と張飛にとっては簡単なこと、
一刀は、被害を少しでも減らすため、自分を標的にしたのだ。
自分を恨ませる事で、相手の冷静さを奪う事で、此方の被害を減らす道を選んだのだ。
一刀が言うとおり、一刀は、普段だったら、あんな他人の尊厳を抉る様な考え方は、絶対にしない。
だけど、それをした。
あの優しい一刀が・・・・・・、茶館で赤の他人の心を、傷を癒す事を喜びとしている一刀が・・・・・・
最初は違和感だった。
劉備の部隊が、盾のおかげで幾ら被害が少ないと言っても、何人かの運のない兵士は、命を落としている。
それを見て、顔を白くしながらも、手を小さく震わせながらも、一刀は真っ直ぐと、その光景を目に焼き付けていた。
そして、華雄への手紙、
弓を撃つ時には、震えは収まっており、綺麗な姿勢で矢を放った。
舞の一環で、軽く学んだだけ、と言う一刀の言葉とは裏腹に、矢は風のある中、逸らされながらも、華雄と張遼の間に吸い込まれるように向かい、その矢は狙い違わず華雄の手に収まる。
・・・・・・風に逸らされながら? 違う、あれは逸らされる事を見越しての事だ。 この不規則な風の中を、ああも容易く、只の凡庸の一射でしかないと、思わせるほど簡単に・・・・・・・・・・祭が居たら、一体どう思ったかしらね。
一刀は、慣れてきている。
戦の空気に、人の死に、
本人は否定するだろうけど、間違いない。
弓は心に正直だと、迷いがあれば、戸惑いがあれば、おのずとそれが出てしまうと、祭はそう言っていた。
私も祭程ではないにしろ、それなりに扱う事が出来る。
・・・・・・だから、分かる。 一刀の心が分かってしまう。
一刀は、何も感じなくなって来ているのでは無いと、
心を、魂を、切り刻まれながらも、それを歯を食いしばって、立っているのだと、
私のように獣の心を持ち、制御するではなく、
あくまで人の心のまま、強くなろうとしている。 強くなってきている。
それがどれだけ苦しい道と、理解していてなお、その道を選んでいるのだと、
そしてその心の根源にあるのが、・・・・・・・明命と翡翠、
でも、茨の道を選ぼうと、耐性がつけば、それを慣れと言う。
それがどんなに、尊き道であったとしても、人は慣れと言う。
でも、安心しなさい一刀、あなたの想いは、苦しみは、私達家族がしっかりと心に刻んであげる。
翡翠と明命が、貴方の嘆きを、受け止めてくれる。
そう言えば翡翠が言っていたわね。
一刀は、弱い所を、弱いままにしておくほど弱くないと、
そして、悲しいまでに、優しい人だと
「・・・・・・そっ」
私は、そう呟く、
一刀の成長は、嬉しい、
でも同時に寂しさを感じる。
・・・・・・本当、失敗しちゃったなぁ
あの時の自分を殴りつけたくなる。
でも、過去を悔やむなんて事はしたくない。
だから、せめて今を、これからを楽しまなくては、
「じゃあ、一刀と私だけの秘密って事になるわね。 なんか二人の秘密って言葉の響きが、何か甘美よねぇ~」
自分で言っておいてなんだけど、本当にその言葉が心地よく感じた。
そんな私に、一刀がなにやら焦り出す。 ・・・・・・こういうのも悪くないわね。
一刀がなにやら色々言っているが、関係ない。
今の気持を、私は心の奥底に大切に保管し、気持を入れ替える事にする。
「おしゃべりは終わりよ一刀」
私は、馬の踵を返し汜水関の方を睨みつける。
其処には、華雄隊の一当を受け止め、奮戦している劉備の兵が居る。
劉備、しっかりと見ていなさい。
一刀の想いを無駄にしないためにも、孫呉の戦いぶり、しかと見せてあげる。
「孫呉の兵よ! 今、敵は、愚かにも守りを捨て、我らの前に立ち塞がろうとしている! 勇敢な孫呉の兵よ!
奴らに、孫呉の兵の勇猛さを! 孫呉に逆らう愚かさを、力を持って見せ付けてやるのだっ!」
「「「「 おおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!! 」」」」
霞(張遼)視点:
「くぅぅぅーーーー、アカンっ、完全に分断されてもうた」
ザンッ
悔しさに歯軋りしながらも、敵を斬り伏せる。
ウチの隊はともかく、華雄の隊はもう持ち堪えられへんやろ、
肝心の華雄は、遥か前方で、劉備の将と戦こうとるようだけど、例え勝ったとて、その後が保たん。
近づいてくる敵を突き、潰し、斬り伏せながら、其処まで思考がいった時、腹が決まった。
「華雄の隊はもうアカン、撤退するでっ!」
配下の兵に、そう指示を出し、馬を背後の汜水関に向ける。
華雄、恨むんなら、自分の感情を制御できへんかった自分を恨むんやな。
いくら、力が強かろうと、それがでけへんかったアンタは、其処までっちゅう事や。
もう、此処での勝負はついた。
汜水関に戻っても、今の状態じゃあ、無駄に兵を減らすだけや、
なら、このまま虎牢関に撤退して、今度こそ専守防衛してみせる。
悔しうけど、ここはアンタらに勝ちを譲ったる。 だけどな、アンタらとの決着は、何時か付けたる。
特に最後に華雄を穢したあの餓鬼は、例え素人でも全力で叩斬ってやるから、よう首を洗うて待っとき
つづく
こんにちは、うたまるです。
第33話 ~ 怒りに踊らされる魂、泥沼で舞う魂 ~ を此処にお送りしました。
いかん進み過ぎた・・・・・・。
本当は、華雄撤退までを二話に分けて書こうと思っていたのに、雪蓮がまたもや暴走して、予定していたプロットの分を喰ってしまう程、暴走されてしまいました。
仕方ないので、次回は大筋を変えないまま、出番の無い蓮華でも・・・・・・・・・・・・まぁ彼女を出さなくても何とかなるか(マテw
まぁ何処まで本気で、何処まで冗談かはさておいて、お楽しみいただけたでしょうか?
感想をどんどんお待ちしております。
そして、一刀が書いた華雄宛の手紙の内容とは・・・・・・・・・公開される事があるかどうか(w
そして、どんどん奇人変人化されていく、一刀の悪友(w いいのか?(w
さて、次回は虎牢関編に突入って事は無く、まだ汜水関編は終わりではありません。
では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。
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『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。
とうとう動き出す連合軍。
覚悟を決めた一刀は、どんな活躍を見せてくれるのか・・・・・・