黄巾党分隊の戦いの後、孫権達と合流した雪蓮達の軍はその規模を大幅に膨らませ、初戦の勢いをそのままに、
黄巾党本隊が立てこもる城に到着した。
「集まりすぎだろ・・・」
一刀の目にはこの先の乱世を彩る諸侯の軍勢が
城を囲むように配置されていた。
「曹、袁、公孫、それに劉。・・・いい感じに集まってきてるわね」
目の前にある軍勢を見ながら、雪蓮は満足そうに頷く。
「計算どうりだな。これだけ集まっていれば、敵とは互角に戦えるだろう」
そう言う冥琳の顔にも余裕の色が見られる。
「じゃが、儂らの参戦する場所がなければ功名も立てられんぞ?」
「祭の言う通りね。・・・諸侯が集まっている以上、時間をかけるわけにもいかないし」
雪蓮の目は既に敵城に向いていた。
「かといって力押しでは落ちんじゃろうな」
そう言う祭の目も敵城に向いていた。
「ふむ。・・・穏。確か城内の地図があったはずだが」
そう冥琳が問いかけようとするが、既に穏は袋をあさっていた。
「あ!ありましたよ~一刀さん。はい、どうぞ」
袋の中から城の地図を取り出し、一刀に渡す
一刀は、地図を見て溜め息を吐きながら机に広げ
「はあぁ~また、めんどくさい城だな。兵法の教科書に出てきそうだ」
「全軍を展開できるのは前面のみ。左右は狭く、大軍で攻めるには無理がある、か。」
孫権は顎に手を添えて呟く
「後ろには絶壁がそびえていて、回り込むことは不可能でしょう。」
思春の意見に祭、雪蓮以外が頷く
「めんどくさいから~真正面から突撃だ~!」
雪蓮は考えるのが嫌みたいで地図とのにらめっこから誰より早く
地図から目を離す
「うむ。儂も策殿の意見に賛成じゃ」
次に、祭が目を離す
「まあまあ二人とも、こっちもめんどくさいんだから。それとも俺達に考えさせる気?」
一刀は地図から目を離し二人を若干睨む
「だ、だったら一刀何か策を出しなさいよ」
「そ、そうじゃ!そうじゃ!」
一刀の睨みが利いたのか二人は多少ビクビクしながら
反発する
「う~ん。そうだな~。この中心の建物が敵部隊の中心って思っていいんだよね?」
地図に目を戻した一刀は地図の一箇所を指差しながら、冥琳に確認する
「そうだな。」
「じゃあこっちは?」
今度は、別の建物を指差す
「たぶん、蔵か何かだろう」
「ふ~ん・・・」
答えを聞くと、一刀は地図を見つめたまま固まる
そして、一箇所を指指す
「じゃあ、この辺りが死角になっているね」
そこは、蔵が並んでいて確かに死角になっている
「たしかに・・・で、どうする?」
「見張り台も極端に少ない・・・ここに放火して、敵を混乱させ、それに乗じて
一気に攻め込む。って言うのが最善かな?」
そう言いながら冥琳に視線を向ける
「そうだな。それなら被害も少なくて済むか。
・・・よし、その策で行こう。雪蓮も異論は無いな?」
冥琳は雪蓮に確認を取る
「いいわねえ・・・私、炎って好きよ」
雪蓮は目を細め、薄く笑いながら頷く
「では決まりだな。雪蓮と祭殿は正面で敵の陽動を担当してください。城への潜入は・・・」
冥琳が皆を見回す前に声が上がる
「なら、甘寧さんと、周泰さんでいいんじゃない?隠密行動得意そうだし」
声の主は一刀であった。
「そうだな。では、思春、明命頼めるか?」
「「御意」」
(やった!)
潜入の担当が決まると同時に一刀の顔に安堵の色が見えたのを
冥琳は見逃さなかった。
「念のために、一刀。お前も二人と一緒に城へ行け」
「ええっ!なんでおr『なぜですか!?』・・・」
一刀が話し終わる前に甘寧が反対意見を述べてきた
「私と明命だけでは心配と言う事ですか?!しかも、このようなひょろひょろな男がいては足手まといです!」
そう言いながら一刀をキッと睨む。
(ま、またですか・・・)
「足手まといかは連れて行けば分かる。それに、念のためだ」
「そ、そうですか・・・」
仕方ないという顔で甘寧は引き下がる。
「では、蓮華様は後方で待機、穏は蓮華様の補佐を。私は本隊を指揮。雪蓮と祭殿は前衛で敵を陽動。
一刀と明命、思春は城への潜入。」
冥琳は孫権、穏、甘寧、周泰に視線を向ける。
しかし、今度は孫権も反対意見を述べてきた。
「絶対に成功するという保障が無い以上、お姉さまが前に出るのは反対です」
そう言う孫権の顔は険しいものだった。
「?孫権さん、あなた変な事をいうもんだな」
「なに?」
一刀の言葉で険しかった孫権の顔がさらに険しくなる
「それはどういう事だ?」
「成功するって保証が無いけど、失敗するって保障もどこにも無いだろ?」
そう言われた孫権だが、まだ納得のいかないような顔だ
「だがっ!」
「は~いそこまで。蓮華、あなたの負け。この世界に絶対なんて無いんだから」
そう雪蓮に言われた孫権はしぶしぶ引き下がる
「では、明命と思春は潜入部隊の構築を。それ以外は各自、自分の仕事を」
冥琳の言葉でその場は解散となった
その夜、一刀、周泰、思春は少数部隊と共に城のそばに来ていた
「城壁の上には見張りが三人。今、交代したからしばらく交代はないな」
城壁を見上げながら一刀は呟く。
「弓矢でドスッっといくか」
「貴様は馬鹿か?それとも脳なしか?もう少しで、雪蓮様達が敵を陽動してくれる。その隙に潜入すればいいだろう」
その隣の周泰も同じ意見のようでコクコク頷いている
「でも、見張りに見つかっちゃ終わりでしょ?だから、潰す」
「貴様、私の言うこt(静かに)」
そう一言言うと持っていた袋から弓と矢を取り出す
「一刀様は弓矢もできるのですか?!」
周泰が、興味津々の顔で聞いてきた
「ああ~どうだろ?俺、初めて使うんだよね~」
そう言いながら弓矢を構える
そして、
「よっと!『ヒュッ!』」
一刀の手から放たれた矢は一直線に三人の見張りの
首に吸い込まれていき、突き刺さる
「うん。見張りはもういないかな」
弓と矢をしまい袋を担ぐ
「それじゃ行こうか」
一刀の言葉で固まっていた周りの兵士は動き出す
「すごいですね!北郷様!」
そう言う周泰の目は輝いていて、まるで子供のようであった
「うん。成功してよかったよ~」
本当に始めてだったようで、顔に安堵の色が見える
「さて、向こうも始まったようだから、こっちも始めようか」
一刀の見つめる先は、少し明るく、兵士達の雄叫びが響いていた
「また・・・厄介な事に・・・」
城壁の上に到着した一刀達はすぐに蔵に到着した。しかし、蔵の入り口付近に2人、蔵の後ろの角に2人ずつ、計6人ほどの兵士が配置されており、
それに加えて見張り台が二つ、そこにも二人の兵士が配置されていた
「地上の敵を片付ける間に確実に見張り台の奴に気が付かれるな」
そう言いながら甘寧は『鈴音』を抜く
「でも、ほかの兵士さんたちは別の見張りに向かわせていて私達だけですよ。どうしましょう?」
周泰も『魂切』を抜きながら呟く
「見張り台と下の入り口の敵は任せろ・・・んじゃ、行きますか」
その言葉が言い終わると一刀の姿は消えた。それに続いて甘寧、周泰と姿が消えた
「ああ~疲れた」
「そんな事言ってると寝ちまうぞ」
「じゃあ、眠れば?」
「「ッ!!!」」
見張り台の上で話していた二人の兵士は、即座に後ろを振り向いた。
否、振り向こうとした。
だが、振り向く寸前で彼等の首と胴体の間にはあるはずの無い空間ができていた
そして、振り向く勢いで首が回る
「さて、ほかの場所も片付けますか」
そう言いながら弓矢を取り出す
「暗いな・・・できるか?」
今いる見張り台から、もう一つの見張り台にいる敵に狙いを合わせ、
矢から手を離す
「ふっ!『ドスッ!ドスッ!』よし、当たったね」
狙われた相手も、城壁の見張りと同じ運命を辿った
「後は下の敵だけか、二人ともうまくやってるかな?」
「暇だな」
「ああ、暇だ」
角の兵士二人がそんな話をしていると、
『ザッ!』
目の前の闇の奥に誰かが歩くような音がした
「おい、何か音がしなかったか?」
「・・・・・・・」
「おい!」
隣の仲間が何も言わないため肩を叩いてみる。
すると、
『ドサッ!』
仲間は何も言わず、崩れ落ちた。
崩れ落ちた仲間の死体は彼の恐怖を一気に増加させた。
「・・・ッ!」
だが、それもほんの一瞬。彼は、風を感じた瞬間に恐怖で歪んだ顔でその一生が幕を閉じた
「一刀様は終わったのですかね?」
『魂切』を鞘に収め、見張り台を見上げた周泰の目には自分に手を振っている一刀の姿が映っていた
「なあ、なんか音がしなかったか?」
「そうか?どんな音だ?」
「そうだな・・・鈴が鳴るようなおと?っていうのかな」
耳を澄ましてみても何も聞こえない。
「何も聞こえないじゃないか」
「そうか?」
二人はもう一度耳を澄ましてみる。すると、
『チリンッ』
確かに聞こえた鈴の音。だが、問題なのはその場所であった。
それは、今、誰もいないはずの自分達の背後だった。
「・・・ふん・・・」
振り下ろされた『鈴音』によって、二人の思考は途絶えた
そして、甘寧は血を振り払い鞘に収める
「うん、二人ともよくやってるね」
見張り台から降りて蔵の上に座っている一刀は二人の戦いを見ていた
「頑張っているね~じゃあ俺もやりますか」
そう言うと一刀は蔵の上からまっさかさまに落ちながら『子烏丸』と『春雨』を抜き
入り口の敵兵二人の首を切り落とす
「お~わりっと」
2本を鞘に収めると同時に甘寧と周泰の姿が現れる
「お疲れ様です、一刀様」
「お疲れ二人とも。さて、雪蓮の加勢に行きますか」
「そうだな。」
他の見張りの始末が終わった兵士達も加わり一刀達は城壁に向かう
城壁に向かう途中周泰は一刀がいないことに気付く
「あれ?一刀様はどこに?」
そう呟くと隣にいた兵士が
「北郷様なら先ほど別に行きたいところがある、と言って走っていきましたよ」
その答えを聞いて今度は『どこに?』という疑問が浮かぶ
「思春様一刀様はどこに?」
「さあな。だが、あいつの事だ放って置いても大丈夫だろ」
「えっ?」
「何か変だったか?」
「いえ、信頼しているのだな~と思って」
「ああ。おそらくあいつは私よりも強い。それに、この策もあいつのものだ。
これ以上怒るよりも、仲間として信頼を築ければ私も強くなれるのか?と思ってな」
苦笑いしながら言う甘寧の頬がほんのり赤みを帯びていた
そして、城門に到着した甘寧達が見たものは既に開いている城門と、掲げられた『孫』の牙門旗であった。
近くに居た祭の部隊の兵士に
「おい、なぜ城門が開いている?」
尋ねられた兵士は
「私達が城門を開ける寸前で北郷様が向こう側から開けてくれたのです。
それに、あの牙門旗も北郷様が掲げてくださったのです」
その兵士の答えに甘寧は驚愕の色を隠せなかった
「そうか。で、その一刀はどこに?」
「城の中央にいると思います」
「そうか。引き止めて悪かったな」
そういって甘寧は城の中央へと歩き出す。
甘寧が一刀を見つける頃には殆どの諸侯が城に侵入していた
そして、残党を狩りながら一刀を探していると、上から声がかかる
「お疲れ様。甘寧さん」
そう言いながら屋根から下りてきたのは一刀であった
「なあ一刀、一つ聞いていいか」
「なに?」
「お前はなぜ戦う?」
真剣な表情で尋ねてきた甘寧に一刀は
「この世界の皆が笑顔で暮らせるようにするため、かな?そのためには、誰一人欠けてはならない。
甘寧さんも、そこに隠れている周泰さんも、皆で幸せになるためにね」
と、笑顔で言い切った
「はうぁ!見つかっていましたか」
「うん。普通の人よりは隠れるのが上手いけど、まだまだかな?」
「なら、私と稽古しはて頂けないでしょうか?」
「私も頼む」
二人に頭を下げられ、恥ずかしいのか頬を掻きながらも
「ええ~っと、俺でよかったら」
「有難うございます!私の真名は明命といいます」
「すまんな。我が真名は思春だ」
「俺は一刀でいいよ。これからも宜しく」
この後、雪蓮達の部隊と合流し一刀達は皆から賛美を受けた
一刀達の活躍で呉の犠牲者はほぼ皆無だったという
こうして、雪蓮達の活躍で黄巾党は壊滅、
黄巾の乱は平定した
どうも、矛盾です
今回も読んでいただいて有難うございます。
作品はどうだったでしょうか?楽しんでいただけたでしょうか?
次回は反董卓連合に入ります。
これからもよろしくお願いします。
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過度な期待はせず温かい目で見守ってください。