第一章
雨は嫌いだった。
肌に触れる冷たい感触が嫌で堪らない。
灰色の空も嫌い。
みにくいアヒルは他の仲間と紛れるために白い粉を塗す。
だが、雨は白い粉を落とす。
雨は嫌い。
嫌い。嫌い。嫌い。
雨は自分の嘘を暴きだす。
だから僕は雨が嫌い。
☆
鳴り響くパトカーのサイレン。
今日もどこがで誰かが死ぬだろう。
そんな物騒なことを思い浮かべながら歩く。
学校がうっすら見えてくる。
「おはよ~。」
「おはよ~」
校門を通り過ぎ、玄関とは逆方向え歩き出す。
「そう言えば部室にノート置きっぱなしだったな」
部活と言っても、ただ無駄話をするだけの部活。
略して『無駄部』
部員は瑠璃を入れて、四人。
いや、五人?四人?
約五人。
無駄に生徒数が多い学校にたったの五人。
「ん・・・?あれは?」
ひときは大きい桜の木に人影が一つ。
「全く・・・あの人は・・・」
その人影は木に登ってなにかしていた。
瑠璃は木の下に近寄った。
「何やってんすか、昼咲さん。死にますよ?」
「わっ!?瑠璃君!?」
「名前で呼ばないでください。怒りますよ?」
「むぅ。じゃぁ敬語やめてよぉ」
昼咲は涙目で太い枝にしがみ付いている。
昼咲柑菜。同級生で無駄部の部員。
栗色の髪にショートカット。
とにかく天然。お人好し。
子顔でそれなりに美人。
男子から人気があるらしい。
「それより何してるんすか?」
「えっとね!リボンが風で飛んじゃって引っかかっちゃったの」
よく見ると、枝の先にピンク色のリボンがひらひらと揺れている。
「ボーっとしてるからですよ。」
昼咲はじりじりリボンに近づく。
「見てなさい!絶対取るんだから・・・」
昼咲はリボンに手を伸ばす。
「あと・・・少し・・・!!」
瑠璃はリボンの真下に移動する。
「よし!取れた!・・・・うわっ!!!」
調子にのって昼咲はバランスを崩す。
「きゃあああぁぁぁぁぁ!!!」
案の定。瑠璃の所へ落ちて来る。
ドサッ!
「きゃあぁぁぁ!・・・あれ?」
昼咲は眼を白黒させている。
「昼咲さん。もう少し飯食べたほうがいーんじゃないっすか。軽すぎっすよ」
「瑠璃君?あれ?・・・・・・・・・・」
昼咲は自分の格好に気づいて赤面した。
いわゆる、お姫様だっこと言うやつ。
瑠璃はそっと昼咲を降ろす。
「有難うね。あと、瑠璃君大丈夫?骨折してない?」
「骨折より脱臼の心配をしてください。」
「脱臼大丈夫?」
「遅いです」
「むぅ・・・」
昼咲はまだ赤面している。
「ありがとね。瑠璃君がいなかったら、危なかったよ」
「あそこで落ちても自業自得です。」
「ひっどーい!!でも・・・助けてくれたよね?」
「魔が差しただけです。勘違いしないでください」
「むぅ・・・」
昼咲は押し黙ってしまった。
「ねぇ。瑠璃君。」
唐突に言い出した。
「瑠璃君の本当の笑顔見てみたいな」
「なんですか、いきなり」
「だって瑠璃君いっつも作り笑いなんだもの。なんか寂しくない?」
「寂しくないです」
瑠璃は即答で答えた。
それに加えるように
「本当の笑い方なんて忘れました」
無表情に告げ、足早に去っていた。
でも、昼咲は笑顔で瑠璃の後姿を見送った。
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人付き合いが嫌いな瑠璃はただ無駄話をするだけの部活、『無駄部』に入部する。そこで、昼咲柑菜と蒼神夢乃香と出会う。昼咲の提案で学園に纏わる七不思議と三人で解いていく物語。