No.137440

恋姫異聞録51 -西涼の英雄-

絶影さん


最近お仕事が忙しくなってきました。
更新遅くなってゴメンなさい、お待たせしました

次回はもう少し早く出来たら良いなぁ

続きを表示

2010-04-19 21:40:51 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:13279   閲覧ユーザー数:10733

キンッ!

 

鋭い金属音が響く、一度聞こえるとそこから激しい雨のように連続で金属音が鳴り響き

最後に落雷のような轟音で音が途切れる

 

対峙する英雄と覇王、二人は一歩も引くことが無く周りで見ている兵士達も二人の凄まじい打ち合いに

目を取られ、ココが戦場であることも忘れ、ただただ見惚れるだけになっていた

 

「流石に英雄と呼ばれるだけはあるわね」

 

「フフッ・・・己は少々拍子抜けだがな」

 

馬騰は槍を肩に担ぐと眼を伏せ笑みを浮かべる。それを見た華琳は顔をしかめて睨むが、微かに呼吸が乱れてきていた

 

こちらの攻撃をことごとく打ち払ってくる、私の攻撃が見えていると言うの?

あちらからの攻撃は隙を見ての重い一撃、一度でも防いだらそのままやられるっ

 

鎌を使い回転を利用して連続攻撃を叩き込むスタイルに対してまったく正反対の戦い方をする馬騰

動きが多い分どう見ても華琳が体力的に持たないのは誰の目にも明らかであったが、二人の戦いを

男は冷静に見つめているだけだった

 

「・・・フッ」

 

そんな男の目線に気が付いた馬騰は軽く男を横目で見ると笑みを作り、槍を構え腰を落とす

 

「随分と余裕ね、戦いの最中に余所見するなんて」

 

「悪かった、だがこれ以上お前に変化が無いなら次で出終わりだ」

 

やはり「絶」を巧く利用する戦い方に切り替えるしかない、でもその分相手の攻撃を受けることが多くなってしまう

・・・いや、弱気は駄目よ。昭と同じ覚悟を、私も鉄のようなあの強さを

 

「良い目だ、そんな目をする奴は中々いない」

 

華琳の瞳に強い意思の輝きを見た馬騰は嬉しそうに目を細め、連続攻撃をいなしていた時とは違い

その身からあふれ出す殺気を押し込み、馬超に見せた構えを見せる

 

「答えよう、貴様の覚悟に・・・」

 

鋭い眼光、馬超とは違い迷い無く槍の穂先は華琳の喉を狙い、空中で固定されたように槍が止まる

その構えを見た華琳は臆する事無く鎌を後ろに引き、構え、そして

 

弾けるように地面を蹴る

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

身を低く、地面を滑るように馬騰に走っていく

 

「・・・・・・シッ」

 

反応するように射程距離に入った華琳の喉目掛け神速の槍が放たれた。その瞬間、華琳は横に構えた鎌を

槍の側面へ刈り取るように当てに行く、狙いは槍を側面から絡めとり鎌を槍に滑らせそのまま馬騰を討つ

 

ガキンッ

 

「よしっ!」

 

華琳の放つ横薙ぎの鎌が槍を捕らえ、槍を滑らせようとするが馬騰の突きは弾丸のような回転で鎌を弾き

華琳の喉に襲い掛かる

 

「くっ!」

 

鎌に当たったことで軌道がずれたのか身を捻った華琳の首の皮一枚を削り取り、回転で襟を斬り裂き

風圧で肩と頬までも傷をつけた

 

「ほう、避けたか・・・いや、ずらしたのだな」

 

「ちっ」

 

 

 

 

馬騰は槍を素早く戻し、同じ構えに戻ると華琳は更に距離をつぶし馬騰に攻撃を仕掛ける

 

まずい、このまま距離を縮めて接近戦にしなければ、あの技は次避ける事は出来ない

 

「接近戦か、己の槍がそれほど怖いか」

 

華琳は身体を宙に浮かせ、自分ごと回転させて上段から切りかかる。普通に柄などを受け止めれば鎌という特殊な武器

の為、受けた相手が確実に不利になる。しかし馬騰は槍を中ほどに持ち、回転する鎌へ前進し柄の中央を槍で受け止める

 

「このっ!」

 

受けられた華琳はとっさに鎌を自分の方へ引き寄せ、馬騰の顔に蹴りを放ち鎌の刃と合わせた

 

ガシィッ!

 

馬頭は左腕で華琳の蹴りを受け止めると、右手の槍で刃を受け止め笑みを見せると、動きの止まった

華琳の足を掴み、片腕で振り回して放り投げた

 

猫のように空中で身を捻り、地面に着地すると華琳の表情には余裕が無くなってきてしまっていた

 

「どうする、貴様の嫌いな距離だぞ」

 

「・・・」

 

追い詰められ、頬から血を流す華琳を見ていた馬騰はまた横に目線を移す

そこには地面に膝を着きながら秋蘭に頭を抱きしめられ、春蘭から手を握られる男の姿

 

「先ほどの殺気は貴様か舞王、お前のような男からそれほどの殺気が放てるとはな」

 

男の顔は強張り、握り締める剣からはギリギリと音が聞こえ両脇の二人はそんな男を押さえ、馬騰を睨みつける

 

「・・・大丈夫よ、心配しないで必ず勝つわ」

 

華琳は小さい溜息をつくと三人に軽く笑顔を作ると、鎌を構えなおして力を抜き横に引くように構えた

 

さて、アイツをこれ以上心配させたら駄目ね。まったくこんな時にまで私に心配をかけるんだから

でもおかげで心が少し軽くなった、まだ覚悟が足りない昭の覚悟はこんなものじゃない

 

もっと、もっと強くあの槍を恐れない強さを

 

「・・・・・・はぁぁぁぁぁぁ」

 

華琳の瞳に何かを感じたのか馬騰は息をゆっくり吐き出し、笑顔を消してその眼は鋭く華琳を捕らえる

そしてその身に押し込んだはずの殺気が押し込みきれずに漏れ出し、周りで見ている兵達の身をすくませる

 

「舞王、いやそれよりも強い覚悟か」

 

「勝つためのね・・・」

 

「良いだろう、それごと己の槍が貫いてやる」

 

槍は心臓に狙いを定め微動だにしなくなる、対峙する華琳も足を肩幅に広げ機をうかがう

馬騰の漏れ出す殺気と華琳の覇気で周りにいるものでさえヒリつく重圧感を感じ、口の中が乾いていってしまう

 

二人の間に重苦しい空気が流れ、お互いの動きが止まる。まるでそこだけ時間が止まってしまったように

次第に二人に差が出始める。静かに巨木のように構える馬騰に対し、華琳は少しずつ馬騰の重圧感に押され

額からは汗が流れ落ちた

 

次の瞬間

 

 

 

 

 

 

「ガフッ・・・」

 

「!?」

 

馬騰がいきなり口から血を吐き出し身体を折る、大量に吐き出された血は馬騰の足元に大きな血溜まりを作った

 

「ゴボッ・・・はぁっ、はぁっ・・・時間か」

 

「父様っ!」

 

駆け寄ろうとする馬超を手で止め、口をぬぐうと震えだす手で槍を構え先ほどと同じ構えを取る

 

「来るな、これが最後の己の姿だ、その目に焼き付けろ」

 

「そんなっ、病気は治ったんじゃ・・・おい、舞王っ!おまえの連れてきた医者が父様をあんなふうにっ!」

 

「翠っ!」

 

男に詰め寄ろうとする馬超を怒鳴り、真直ぐ馬超を見つめ、優しい娘を愛する父の瞳があった

 

「舞王の連れて来た医者には感謝している、何しろ己の身体をココまで持たせてくれた」

 

「父様、それじゃ・・・」

 

「ああ、すまなかったな翠、もう己には時間が無い。もう一度己の槍を見ろ」

 

馬騰は槍をゆっくり華琳の心臓に狙いを定める。体からは先ほどのように漏れ出す殺気を放ち

震える槍がピタリと動きを止めた

 

「どうした覇王、まだ終わりではないぞ」

 

口から血を流し不敵に笑うその姿は正に英雄、死の崖に立ちながら眼はなお輝きを放ち闘志を燃やす

 

「・・・わかったわ、次で貴方を倒す」

 

華琳は馬騰に答えるように鎌を構えなおし、馬騰の吐血を見て動揺していた瞳は覚悟の火を灯す

 

「フフフッ楽しいなぁ、最後の最後まで己は戦いの中で、なんと素晴らしい生か」

 

「悪いけど、貴方は私が前線で使うと言ったでしょう?勝手に死なせないわよ」

 

「はっはっはっはっはっ、それは実に楽しいことだ。己を使いこなせるかな?覇王よ」

 

馬騰は嬉しそうに、心から嬉しそうに笑うと眼光鋭く握る槍に力を込めた

それを確認すると華琳は地を蹴り走り出す。英雄と呼ばれる男と決着を着けるために

 

 

 

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
90
24

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択