アクセル全開! 真・恋姫†無双 最終話 これが…………さよなら!
魏軍は成都前まで到達した。
そして戦いの前に華琳と劉備の舌戦が始まり、二人の主張がぶつかりあい、舌戦が終わると同時に戦いは始まった。
一刀は既にアクセルに変身していた。
「一刀……」
「ヴァリュザの姿が見えねえな……」
「何か怖いね……」
「ああ、だけど……」
「やるしかないね」
「ああ! ショウダウンだ!!」
一刀と美沙緒は次々に兵士達を倒していく。一刀はエンジンブレードの刃を逆にし、峰打ちにしていた。
前線で戦っている春蘭の前に馬超が出てきた。
「見忘れたとは言わせないぜ!」
「面白い、さっきの雑魚二人よりは楽しませてもらえそうだ!」
「三人をたった一人で相手にする気か? いくらなんでも傲慢すぎるぜ!」
「一人じゃないさ」
「せやなぁ。ならウチらも混ぜてんか?」
そこに一刀&美沙緒と霞がやってくる。
「なんだ、来ずとも良かったのに」
「そういうな、これで三対三の良い勝負が出来るだろ」
「いや四対三やろ」
「美沙緒はあまり頭数に入れて欲しくないな~」
「……勝手にしろ! 私はこちらの強い方をやる!」
「いや、ここはじゃんけんで平等に決めよう」
「じゃんけん?」
一刀はじゃんけんで誰が誰を相手にするかと提案し、春蘭と霞もそれに乗った。
かなりの戦場なのに…。そして結果は一刀は馬超、春蘭は魏延、霞は馬岱になった。
「さあ、やろうか」
「お前達、定軍山であたしの槍を壊した奴だな」
馬超はその時のことをよく覚えている。あの時秋蘭を斃そうとした時、突然の乱黄龍で自身の槍を完全に破壊されたのだから……。
「あの時の借り、返させてもらうぜ!」
馬超と一刀の熾烈な打ち合いが始まる。
馬超が攻撃してくるのが……、一刀はエンジンブレードをトンファーモードにしてその攻撃を受け止める。
「俺はこんな状態でも攻撃できるんだよな」
「エレクトリック」
一刀がエンジンブレードのグリップトリガーを引いてエンジンブレードに電気を帯びせ、その電気が馬超を襲う。
「ぐわ!」
馬超は何とか一刀とエンジンブレードから槍を離す。
「ジェット!」
一刀はとっさにトリガーを引くと同時にエンジンブレードをソードモードにし、剣先からエネルギー弾を出す。
「ぐぅ!」
完全に馬超が押される戦いとなっていた。
「くそ、これじゃあ……」
馬超は防戦一方である。
そんな時第二陣の敵兵達がやって来た。
「邪魔が入るか……」
一刀は攻撃一方だったが、兵達を見て馬超との距離を置く。
「一刀……」
「本当に本気でいくぜ」
「エンジン! マキシマムドライブ!」
Aの字型のエネルギーの斬撃を射出する「エースラッシャー」を兵達に当てて、そのAの字が爆発した。馬超もその爆発によりダメージを受ける。
「くっ!」
「殺しはしねえよ」
「くそ!」
馬超達は一時撤退した。
そして少しして、成都から本隊が現れた。
「いよいよ本隊が来たわね」
「ああ、行こうか」
華琳と一緒に並ぶ一刀と美沙緒。
「聞けぃ! 魏武の精鋭たちよ!
長く苦しいこの遠征も、いよいよ最後の一戦となった!
黄巾の乱より始まった大陸の混乱も、半董卓連合、そして官渡から連綿と続くこの戦いによって、いよいよ収束を見る!
全ての戦いを思い出せ! その記憶、その痛みと苦しみ、経験と勇気の全てを、この一戦に叩き付けるのだ!
魏武の王としてではなく、この国を愛する者として皆に願う! 勝て! そして素晴らしき未来を手に入れるのだ!」
その様子は成都の城門でも見られており、劉備は対抗して兵の皆に言う。
「大陸の平和のために……」
そして華琳も…。
「大陸の繁栄のために……」
「「総員、突撃ぃぃぃぃっ!」
魏と蜀・呉の完全な総力戦が始まった。皆、それぞれ激戦を繰り広げる。
戦いを城壁から見守る劉備、そこにやってきたのは……。
「はあああああああああああああ!!!」
アクセルバイクフォームで門前から城壁を駆け昇って来た一刀と美沙緒そして華琳であった。
一刀は城壁を登り終えると同時にマキシマムクラッチレバーを引き、スロットルを捻った。
「アクセル! マキシマムドライブ!」
「アクセルグランツァー!!」
魏延が一刀の攻撃を己の武器で防ぐが、キックの力はすさまじく魏延の武器を完全に破壊し、その衝撃で魏延が吹き飛ぶ。
「大将が敵陣に乗り込むなど…一体どういうつもりだ!」
「どうもこうも。他に本陣に乗り込める子がいなかっただけのことよ。一刀は来れたみたいだけど…。
使える駒が無いなら、王を使えば良いだけ。違う?」
「それに王がいかなきゃいけないときもある」
「でもこっちにはまだ蒲公英たちが…」
馬岱が威勢を張る。
「ふふ…あなた達が私達の相手になると思っているのかしら?」
「今の俺には負ける気がしないんだな! これが!」
華琳の殺気、一刀の威圧感はものすごいもので劉備や孫権の護衛でいた者達でさえ、簡単には動けないでいた。
「こいつら、隙が無い」
「力量の差が分かったのなら下がりなさい。…私は蜀の王、劉備に用がある」
「だが私はそんなお前に用がある」
そこにヴァリュザがやって来る。
「ヴァリュザさん!」
「ようやく姿を現したな……ヴァリュザ!」
「今まであんた何してたの?」
「ふん、私は本来守護者。ここで待ちかまえるのが本来の私の役目だ」
「そうかい……華琳、悪いが俺と美沙緒はこいつの相手しないといけないようだ……」
「ええ、そうみたいね」
「面白い。ならば私と劉備、そちらは曹操、そして北郷一刀と睦月美沙緒お前達とそれぞれ一騎打ちをしようではないか」
「一騎打ちか……。おもしれぇ!」
「もし天の加護というものがあるならば、あなたはこの私に勝てるはず。その時は私を討って、この戦いを終わらせればいい。
それともあなたの貫きたい理想は、天も越えられないほどちっぽけなものなのしから?
さきほどの舌戦で見せたあの強さは、天幕の屋根一つ支えられないほどの弱々しい理想なの?」
「曹操さん…」
「そうでないなら、違うと証明なさい。御使いを倒し、私の首級を討ち取って、高らかに我ら曹魏の兵にその真実を示しなさい」
「……わかりました」
そして門前において、劉備対華琳、ヴァリュザ対一刀&美沙緒の一騎打ちが始まろうとする。
先に劉備と華琳の戦いが始まる。
華琳と劉備は戦うが、劉備は押される一方であった。
「もうおしまい?」
華琳が劉備に声をかける。
「はぁ、はぁ、はぁ…まだまだ!」
その時、遠くにいた関羽と孫策が来た。
「愛紗ちゃん……雪蓮さん……」
「そんなにボロボロになって……おのれ……曹操!」
「何かしら?」
関羽の方に華琳が向く。
「スキありぃっ!」
華琳の隙を劉備が攻めるが、華琳はすぐに劉備の方を向き、その剣を打ち返す。
「きゃああああああ!!」
「さっきの状態に隙はないわよ」
「はぁはぁ」
「桃香様、私にお任せください! このような輩、我が偃月刀で……」
「待ちなさい、関羽。…それ以上続ける事は、桃香に代わって私が許さないわ」
孫策が前に出て、関羽を止める。
「何ですと!?」
「分かっているようね、孫策。さすが呉の王」
「それはどうも」
「えええええええいっ!」
劉備が剣で突こうとするが、華琳は下から打ち上げるように絶を振るうが、劉備から剣は落ちない。
いや、華琳が手加減して落とさせなかったのだ。
「ひゃあ!」
「ダメだ! もう見てはおれん……!」
「それを見守るのが臣下の務めだろう」
今度は趙雲が関羽を止める。
「雪蓮さんや、星ちゃんの言うとおりだよ。愛紗ちゃん」
「桃香様!」
「曹操さんは、私に勝負しろって言ったの…。愛紗ちゃんでも、鈴々ちゃんでもなくて…この私に!」
「そう、それがあなたの全てを賭けて、私に挑みなさい。それが蜀の王としての務め。それとも、もうおしまいかしら?」
「まだ、まだ負けていません。ええええええい!」
劉備は剣を振りをするが、華琳も絶を横振りで返す。
「あなたにはまだ力があるはずよ。剣を取って構えなさい。足を踏ん張り、腰を入れて…あなたの思いを剣に籠めて、私を越えてみなさい」
「はあ、はあ、はあ」
「来なさい!」
「私は…曹操さんや雪蓮さんがうらやましかったのかもしれない」
「強くて、優しくて、何でも出来て…! 私……何にも出来ないから……!」
「何も出来ないという言葉は、自分が無能だという言い訳にしか聞こえないわ。剣も取らないで、かといって文官をすべるわけでもなく、何をしたかったんだ!?」
「それは……! 蜀のみんなの…王として!」
「それで皆仲良くと声を上げるだけ?」
「そうだよ!私は、皆が仲良くしてくれれば…それで良かった!」
劉備と華琳は話しながら激しく打ち合いをする。
「晴れた日は愛紗ちゃんと畑を耕して…雨が降ったら、朱里ちゃんや雛里ちゃんと、皆で鈴々ちゃんに勉強を教えて!
皆で笑って、仲良くすごせれば良かった!」
「だったら何故、戦う? それが出来る時まで待てば良いのに…。
何故剣を取った? 何故この時代に立つ覚悟を決めたの?」
「私達だけが笑って過ごせる世界なんて、無理だって知ったから!
この世界は、私が知っているよりももっともっと広いって、気付いたから!
星ちゃんが旅をして、翠ちゃんとたんぽぽちゃんが草原を駆け抜けて…!
美以ちゃんが森でお昼寝して…紫苑さんは、璃々ちゃんといろんなお話をしているの…。
けど、皆がそうして笑っていたい世界には、黄巾党もいて、盗賊や山賊もたくさんいて…朝廷だって、悪い人がたくさんいて! …だから、私は作りたいって思ったの!
皆が笑って暮らせる、優しい国を!」
「それで?」
「そんなの甘いって。幻想だって分かってる! けど幻想を幻想って笑ってるだけじゃ、ダメだって!
だから私は立ち上がれた! 願うだけで何も出来なかった自分を変えることが出来た!」
「それで?」
「私は…変われたと思ってる! 一人じゃ何も出来ないけど…愛紗ちゃんや鈴々ちゃん、朱里ちゃんがいれば、私一人じゃ出来ない、もっともっと大きな事だって出来るから!」
だから、それをさすまいとする曹操さんが許せないの! 邪魔なの! この泣いてる大陸を笑顔にするためには…曹操さんのやり方じゃ、ダメなの!」
「そんな事……誰が決めた?」
「!?」
その言葉を出したのはヴァリュザであった。
「確かにお前から見たら曹操のやり方は間違っていて、自分が正しいと思っているのはわかる。
だがそれは他の人間から見たら逆の時もある!
それにそんな理想だらけの考え、曹操が気に入るわけが無い。
理想を持つのはいいが、その理想を最後まで貫けばいい。
だがお前はそれを貫き通せなかった! だからあの時、曹操を襲った。違うか?」
「違う!」
「いや、俺から見たら違わない。もし違うのなら、王としてもっと現実を見ろ!」
「現実なんか朱里ちゃんや雛里ちゃんがいくらでも見てくれる! なら、上に立つ者はもっと遠くを見るべきでしょう?
そうしないと、いつまでたっても世界は良くなったりしない! 幸せになんかなれない!」
「そして目の前にある小石に気付かずにこけるのか。上に立つ人間が陥ることだな。それでは何の意味も無い。
俺から見たらお前は小石につまづいて諦めた人間にしか見えない。
それではお前は真の王にはなれない!」
「別に王じゃなくていい! 桃香様じゃなくて桃香でいい! 桃香がいてくれてよかったでそれでよかった!」
「王になんてなりたくなかった? だったら最初っから王になるな!!」
ヴァリュザが二人の間に割って入る。
「あなた何を!?」
「どけ!」
ヴァリュザが華琳を無理矢理どけさせる。
「きゃあ!」
「曹操さん!」
ヴァリュザは劉備の方に向き直す。
「所詮お前では天下を取れなかったか……」
ヴァリュザが殺意が込められた手刀を上にあげる。
「私の手であの世に行くがよい!」
ヴァリュザが勢いよく手刀を振り下ろす!
「桃香様!」
ヴァリュザの手刀はあまりに早く、少し距離のある関羽達は止めることが出来ない!
しかし止める者がいた。一刀であった。
一刀がヴァリュザの手首を持って止めたのだ!
「貴様……!」
「お前が出てくるなら、俺と美沙緒が相手してやらあ!」
ヴァリュザが何とか一刀の手を振りほどく!
「いい加減教えてくれないか? 何でお前が劉備の所にいた真の訳を……」
「ふんいいだろう。私は何度も言っているが、劉備の天下が見たかった。それは否定しきれん私の心だ」
「それだけじゃないでしょ?」
「その通りだ。そして劉備に教えようと思った。劉備の甘い考えでは世界はささえきれん。すぐに腐敗し、私達が居た世界以上の戦争が起こると言うことをな……」
「あれ以上は無いと思うぜ」
「どうかな……。そして世界に絶望した劉備をけしかけ、別の統治を考えたが……それももう終わりのようだな」
「ああ。俺達がお前を倒して終わらせてやるぜ」
「違うな。私が貴様らを葬り、この世界の王となり、私は元の世界に戻る。それだけだ!」
「元の世界に戻れる保証はあるの?」
「ない。だが大局から外れれば元の世界に戻ることになるだろうと推測はした」
「……同じような事を聞かされていたのか……」
「………貴様らも知っていたはずだ」
「………うん……」
「けどな、俺達は簡単に消える気はないぜ!」
一刀がエンジンブレードをトンファーモードにして構え、ヴァリュザも拳を構える。
「ふううううううん!」
「おおおおおおりゃああああああ!!」
二人は走り出し、互いの拳を前にしてかすめる!
「ふん!」
「そい!」
拳がかすったのと同時に二人は足を出し、互いの出された足の裏を蹴り、距離を置く。
「地斬疾風刀!」
一刀が牽制技として地斬疾風刀でヴァリュザを攻撃する。
「ふん!」
ヴァリュザは簡単に避ける。
「玄武剛弾!」
一刀の手から氣の渦が放たれ、ヴァリュザを飲み込む。
「…………!」
ヴァリュザはそのまま上空へと上げられる。
「「乱黄龍!」」
一刀の地斬疾風刀の氣と美沙緒の手から放たれる氣が混ざり合い、黄色い龍が生み出され、上空にいるヴァリュザに向かう。
「一度見た技は見切るぞ! グルトップ!」
ヴァリュザの手からエネルギー波が放たれ、乱黄龍とぶつかり小さな爆発が起こる。
「くっ!」
「きゃ!」
その爆発の煙が周りを包み、思わず皆が腕を顔に近づける。
しかし一刀と美沙緒、そしてヴァリュザはお構いなしに攻撃を続ける。
ヴァリュザが地上に着地する。まだ煙は晴れていないにも関わらず一刀はヴァリュザに詰め寄る。
「いくぞ!」
「ふん!」
一刀とヴァリュザは互いの拳をぶつけ合う!
「仕方ねえ!」
「シュラ・ナックル!」
「舞朱雀!」
二人は通り過ぎると同時に互いの拳をぶつけ合う!
「ちっ!」
「ぬっ!」
二人の肩の部分には少しかすめた痕がある。
そんな時、ようやく煙が晴れる。
「一刀……」
「あの者に賭けるしかないのか……」
一刀達の戦いをただ見守るだけの華琳達。
二人はしばらく膠着状態になる。
そして二人は同時に動きだした。
一刀は跳び上がり、後ろ回転をしながら地上に落下する!
ヴァリュザは一刀が跳び上がると同時にキックを放とうとする体勢を取り、一刀が落下すると同時にヴァリュザは跳び上がる!
「コード……麒麟!!」
「ギャラー・ホーン!!」
麒麟とギャラー・ホーンが激突する!
その二つの技が激突し、先ほどよりも強い爆発を起こす!
「ぐわ!」
「ぬうう!」
二人は地に落下する。
「くそ……」
「やるな……だが……」
ヴァリュザは立ちあがる。
「私は負けるわけにはいかんのでな……」
「そんなの俺だって……」
ヴァリュザは跳び上がりキックの体勢を取る!
「ギャラー・ホーンだ!!」
ヴァリュザは空中ギャラー・ホーンを放ち、一刀に向かって一気に落下してくる!
「一刀!」
美沙緒が一刀の前に出ようとするが……。
「美沙緒! 離れろ!」
一刀はマキシマムクラッチレバーを引く。
「アクセル! マキシマムドライブ!」
「そいえぃ!」
一刀が倒れながらも何とかアクセルグランツァーを放つ足をギャラー・ホーンの足にぶつける!
「「「!!!」」」
一刀はさらに後方に引きずられるもその勢いで立ち上がる。
ヴァリュザは何とか着地する。
「どうする? お前にはもう打つ手がないはずだ?
あの時のような無茶でもするつもりか?」
「………」
一刀は考える。
「一刀……」
美沙緒が一刀の側に立つ。
「美沙緒、少し力を貸してくれないか?」
「………何かする気?」
「……ああ」
「…………馬鹿だね」
「いつものことだろ」
一刀と美沙緒は何かを決意したかのような顔つきをする。
「? 何をする気だ?」
ヴァリュザは不審がり、構える。
一刀はエンジンブレードのエンジンメモリを抜く。そしてメモリを抜かれたエンジンブレードを美沙緒に持たせる。
そしてアクセルドライバーからアクセルメモリを抜く。
「美沙緒」
「うん」
美沙緒はエンジンブレードにアクセルメモリを差し込み、一刀アクセルドライバーにエンジンメモリを差し込む。
そして二人はマキシマムドライブの発動をさせるため、美沙緒はエンジンブレードのトリガーを引き、一刀はドライバーのマキシマムクラッチレバー引く!
「アクセル! マキシマムドライブ!」
「エンジン! マキシマムドライブ!」
本来規格が合わないメモリと武器とドライバーでのマキシマムドライブをしたため、二つの物が熱暴走を起こす!
「一刀!」
「耐えるんだ……」
「今楽にしてやる! ギャラー・ホーン!!」
ヴァリュザは両足に氣を溜めたギャラー・ホーンを二人に当てようと突撃する!
「コード……」
「ハイパー……」
「エース……」
二人はつぶやくように何か言う。
「アクセル……」
「「クラッシャーーーーーーーー!!」」
ギャラー・ホーンで飛び蹴りを放っているヴァリュザに向かって二人は駆けだす!
「「おおおおおおおおお!!」」
一刀の両足にエンジンの力が溜まった足がヴァリュザのギャラー・ホーンの両足を止める。
そして一刀は残った手で美沙緒を掴み、美沙緒はヴァリュザの体に向かってエンジンブレードを切り裂くように斬り、美沙緒がエンジンブレードを後ろの一刀に投げ渡し、一刀は受け取る!
「麒麟!」
その言葉と共に一刀は先ほど美沙緒が斬りつけた場所を再び斬り、ヴァリュザの体はその傷口から完全に斬れた。
「ぐううううううううううううう!!」
ヴァリュザはそのまま地面に落ち、一刀と美沙緒は前に倒れる。
「はあ! はあ!」
「はあ……はあ……」
二人は何とかそれぞれのメモリを抜き、一刀は変身を解く。
「どうだ……」
「負けだな……。完全に私の負けだ」
そう言うとヴァリュザの体が少しだけ光りだし、光の粒子となりかけていた。
「これは……」
「どうやら…私の命は……もう終わるようだな……」
そんな時ヴァリュザの取れないはずの仮面にひびが入り、仮面が割れた。
そこからはヴァリュザの素顔が現れた。その素顔は美男子と呼べる顔立ちで長い紫色の髪をしていた。
「………」
「久しぶりに……空を……素顔のままで見たな……」
「良い顔だね」
「それは……感謝する……」
ヴァリュザの目からは涙が流れていた。
「お前達は……これから……どうする……」
「さあな……」
「なるようになれかな」
「元の世界に……戻っても……俺はいない……。
そして……恐らくアルハイムは………壊滅しているだろう」
「何だと?」
「………元々あの世界に戦争を仕掛けてきたのはアルハイムだ。アルハイムが無い以上…あの世界も平和になるだろう……。さらばだ……」
全てを言い終えると完全に光の粒子となり、そこから完全に姿を消した。
「完全に終わったな……」
「うん……」
一刀と美沙緒は脱力したかのように息を吐く。
「それよりもあっちだな……」
一刀は少し離れて地に膝を付けている劉備の方を見る。
「桃香様!」
「大事は無い、気力を消耗しすぎただけだろう」
「ごめん、愛紗ちゃん」
「いいのです……桃香様……。よくぞ、ここまで……」
一刀はその様子を見て華琳に言う。
「華琳、後は任せる」
「ええ……」
一刀は下がり、再び華琳が出る。
「さて、劉備」
華琳の前に立ちはだかる、関羽、張飛、趙雲。しかし華琳は劉備を討つ気が最初からないと皆に言う。
「なに?」
そして華琳は劉備と孫策に今までどおり自分達の土地を治めるようにお願いをし、それを二人は承諾。
「ここに永きにわたる戦いの終結を宣言する!」
その言葉と共に歓喜の声が上がる。
「ようやく、全てが終わったようじゃの…」
孫策達、呉の陣営が聞き覚えのある声を聞き、その声の方を見るとそこにいたのは赤壁で死んだとされていた黄蓋の姿があった。
『祭!?』
『祭さま!?』
『黄蓋!?』
呉の面々だけでなく、その場にいたもの全員が狐につままれたという顔をする。
「うん? どうした皆の者?」
「いや、だって祭……」
「あんたは俺が斬って、そのまま海に……」
「ああ、あれか。確かにわしはお主に斬られ、そのまま海に落ちた。
だがその時はまだ死んでおらんかった。お主はどこかで手加減していた。違うか?」
「そうなの? 一刀」
「………ああ。実はあの時致命傷は避けてた」
「だろうね。あの切り傷、一刀が手加減してるなって思ったもんね」
「わしは海の中で意識を失くしていった。そして次に目を覚ましたらこの近くに居た医者の家だった」
「? じゃあ祭を運んだのって誰?」
「医者の話によると、その男より少し背が高い男と言っていたな。そして名を名乗らず、あえて通りすがりと言っておったそうだ」
「通りすがり……」
「誰なんだろうね?」
その様子を遠くから見ていた男が一人だけいた。
その男は黄蓋を助けた男である。
「これでいいはずだ。これが通りすがりの仮面ライダーなのさ……」
その男は誰にも気付かれないようにその場を去っていった。
永きに渡る戦いがようやく終結し、その日は成都で大宴会。
味方もかつての敵も関係なく、皆が大騒ぎ。
しかしその宴会に一刀の姿は無い。
一刀と美沙緒はその城壁で座り込みながら外を眺めていた。
「ふう~う」
「こんな所にいたの?」
一刀が一息ついている所に華琳が来た。
「華琳さんか。どうしたの。大陸連合の立案者が」
「まったく。桃香があんなに酒癖が悪いなんて知らなかったわ。抱き付いてきて……勝手に胸を触ろうとしてくるのよ?」
「お前がいつもやってる事だろ」
「私が桃香を触るのはいいけど、桃香が勝手に触ってくるのは嫌なのよ」
「なんだそりゃ」
「だって、そんな、他人に無理矢理触られた事なんかないんだもの……」
「やっぱり自分主導なんだ」
「当たり前でしょう。私は王よ?」
「でも、劉備さんも王でしょ?」
「……むぅ」
華琳は屁理屈を言われたようで少々機嫌を損ねた様子。
「まあそんなことより、これからどうするつもりなんだ?」
「そうね。まず、数日はここで休んで…国に戻るわ。後は呉の制圧部隊を引き上げさせて、街道と宿場の整備かしら。
桃香と雪蓮の統治が安定するまでは兵は貸しておいても良いけれど……」
「あの二人なら、すぐにいらないって言うだろ。先に戻しても良いんじゃないか?」
「かもしれないわね。しばらくは屯田と土木作業に人手がいるだろうから、そちらに回ってもらうわ」
そんな時、べろんべろんに酔っ払った劉備と孫策が下から声をかけてきた。
「あーっ! 華琳さーん! 何でそんな所にいるのよーっ! みんないるから、こっちおいでよー! ほら、お兄さんもーっ!」
「そうそう! 華琳だって嫌いじゃないんでしょ? 凄く美味しいお酒の作り方の研究もしてって、春蘭から聞いたわよー!」
「……まったくぶち壊しだわ」
華琳は二人の酔っ払いに対してため息をついた。
「とんだ酔っ払いだね。……行かないの?」
「行かないわよ」
「大陸全土を巻き込んだ大宴会だぞ。これが見たかったから、今まで戦ってきたんじゃないのか?」
「見たいところはちゃんと見たわよ。これ以上酔っ払いに絡まれるのはごめん被るわね。
さっさと行くわよ、一刀、美沙緒」
「分かった」
三人は成都の川のほとりに来た。
そして三人は空に浮かぶ月を眺める。
「綺麗な月ね」
「うん。この世界の月があんなに大きな月だったなんて知らなかった」
「落ちついて見てないからな……」
「そうね…。戦っている間は、こんなに落ち着いて月を見た事なかった気がするわ…」
「華琳でも余裕がなかったんだな」
「私だって人の子よ。そうそう上ばかりは見てられないわ」
「そうか……そうだな。しかし俺達は本当に華琳に拾われて良かったと思うよ」
「その恩はこれから返してもらえるのでしょう? あなたの天界の知識、むしろ今からの方が意味を持ってくるはずよ」
「ああ、確かにこれからの方に意味があるが……」
突然、一刀と美沙緒の体がヴァリュザのように光の粒子となり始めた。
「………」
「………」
「帰るの?」
「分からねえよ」
「もしかしたらヴァリュザみたいにいなくなっちゃうかも……」
「そうなるのにあなた達は随分落ち着いているわね」
「ふん、少し前に気付いちまったからな」
「それは橋玄様への墓参りに行ったときかしら?」
「何でもお見通しってことか。ああ、そのときにはっきり分かった。しかしよく分かったな」
「春蘭じゃあるまいし…。それにヴァリュザが言っていたわ」
「覚えてたのか」
「他の者は知らないけど、私が大事な事を聞き逃すことなんてないわ」
「そうだね……」
「大局……あなた達の知る歴史から外れきったとき、あなた達は……」
「ああ、きっとな…。だが俺は後悔していない」
「美沙緒も後悔してないよ」
「私も後悔してないわ。私は私の欲しいものを求めて…歩むべき道を歩んだだけ。誰に恥じる事も、悔いる事もしない」
「やはりな……」
一刀と美沙緒の体はさらに光の粒子となっていく。
「そろそろ限界か?」
「…ダメよ。そんなの認めないわ」
「認めたくないのは俺も同じだ」
「美沙緒もあんまり認めたくない」
「だがこればかりは俺達でも無理だからな…」
「どうしても……行くの?」
「うん」
「そう……恨んでやるから」
「ふ、華琳から恨まれるなんて幸せだな」
「もう一刀ったら…」
「行かないで」
「ごめんな、華琳」
「一刀……」
「なに、俺達の世界の技術がさらに向上すればまた会えるかもしれないんだ。俺はその時を楽しみに待っているさ」
「………」
一刀と美沙緒は空を眺める。
「また会おうね……誇り高き王様……」
「……美沙緒」
「……そして寂しがりな女の子」
「一刀!」
「そして、そして………」
「「好きだったよ、華琳(さん)……」」
そして一刀と美沙緒は華琳の目の前から姿を完全に消した。
「………一刀? 美沙緒?」
華琳がその名を呼んでも返事など来ない。
「………ばか。…ばかぁ!
本当に消えるなんて……なんで、私の側にいてくれないの……!
認めないって……言ったじゃない! ばかぁ!」
その日、華琳は心の奥底から初めて泣いた。
許昌では、久々に三国同盟を祝っての宴会ならぬパーティが開かれていた。
これは前に華琳が一刀から聞いたもので、今日は華琳が主催の回で華琳がパーティ形式でしたいと言って来たのだ。
その理由は今日が、一刀と美沙緒がいなくなってちょうど一年なのだ。
そしてその準備に追われる武将達。
春蘭や関羽、諸葛亮、鳳統、呂蒙、月、詠、黄忠と秋蘭と黄蓋、流琉などがさまざまな料理を作ったり、
周泰が会場にやって来た猫や孟獲を見て、恋と一緒に和んだり、
街では張飛と孫尚香と季衣が遊んでいたり、張三姉妹のライブ準備を袁紹、顔良、文醜がいやいややらせていたり、
袁術と張勲が街の外で華雄と一緒に迷惑な事をしているのを、霞や孫権や馬超が阻止したりなどである。
(一刀、美沙緒、元気にしてる? 私はあの後、国をよりよくしたわ。あなた達がいなくなった後、悔しがるほどにね……)
華琳は一刀と美沙緒との思い出を思い出す。
(一刀、美沙緒、早く帰ってきなさいよ)
そして一刀達は……。
「もっと力を入れな!」
『はい! 北郷教導官!』
一刀は新生「ムーン・ロック」の隊員を育てる教導官となった。
そして美沙緒は……。
「もう時間だよ~」
「そんな時間……だな……。よし、今日の俺の訓練はここまでだ!」
『はい!』
ムーン・ロックの新しい隊員達が一刀と美沙緒に対して頭を下げ、部屋を去る。
「皆、良くなったね」
「ああ。お前もかなり様になってるじゃねえか、その服はよ」
一刀が美沙緒の格好を指摘する。美沙緒の今の格好は白衣に身を包んだものであった。
「格好だけじゃないもん! ちゃんとお仕事がんばってるもん!」
美沙緒は幻影体から元の生身に戻り、一刀と同じように自分達の世界に戻ってから前線を離れ、今は「ムーン・ロック」専属の医者兼科学者であった。
専門としては幻影体の研究である。
「分かってる分かってる」
「その顔、本当に分かってる顔じゃない!」
「そう言うな…。俺は専門じゃないから良く分からないだけだ……」
「まあそうかもしれないけど……」
「しかしあれから一年くらい経つよな……」
「だね……」
一刀達がこの世界に戻って来た時は、この世界では一刀達がいなくなってからまだ1週間ほどしか経っていなかった。
しかしヴァリュザの言った通り、アルハイムは壊滅していた。
そして「ムーン・ロック」と共に戦っていた部隊皆がその時の戦死者達を葬儀を開いており、その戦死者の中には一刀と美沙緒も入っていた。
一刀達がそれを知った時は……。
「「勝手に殺すなーーーーーー!!」」
っと怒鳴りこんだのだ。
「あの時は驚きだったよね」
「勝手に殺されたからな。まあ無理ねえけど……。それと美沙緒、あれはまだ出来ねえのか?」
「まだだよ……。そりゃあ理論だけならもう出来てたけど……」
美沙緒と一刀の言うあれと言うのは、並行世界や別の世界を行くことが出来ると言われる「次元跳躍機」の事である。
「そうか……」
「でも他の皆も頑張ってるから、後一年くらいかな」
「そうか……。あっちの世界だとどのくらいになるんだろうな」
「それは分かんないよ」
「まあでも言えることはあるよな」
「うん」
二人が部屋から出て、青空の出ている外に出る。
そして二人は空を見上げてつぶやく。
「華琳、俺達は何とかうまくやってるぜ」
「そっちに行くのにはまだ時間がかかるけど……」
「「絶対にそっちにまた行くからな(ね)!!」」
アクセル全開! 真・恋姫†無双 完
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この作品の文章には仮面ライダー×真・恋姫†無双 魏編で使われたものが多々あります。
そして一刀の態度や口調が原作と違うことをご了承してください。
また本作の一刀の設定のため、一刀のパートナーとなるオリジナルキャラクターがいます。