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真恋姫無双~風の行くまま雲は流れて~第28話

第28話です。

ホントに4月か!?って位寒いですけど皆様風邪等ひかぬようお気をつけて~

2010-04-18 16:54:00 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:8275   閲覧ユーザー数:7426

はじめに

 

この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です、

 

原作重視、歴史改変反対の方

 

ご注意ください。

 

詠が言ってた

 

赤ちゃんは泣いて自分の言を伝えることしかできないって

 

お腹がすいたときも

 

おしっこのときも

 

一人のときも

 

誰かにいて欲しいときも

 

泣いて伝えることしかできないって

 

でも

 

月がそばにいたとき

 

赤ちゃん笑ってた

 

月に抱っこされて

 

月の顔を見て

 

赤ちゃんは笑ってた

 

だけど

 

月は泣いてた

 

ちんきゅも

 

霞も

 

詠も

 

華雄も

 

何でこうなっちゃたんだろうって

 

赤ちゃんが泣いてるときに

 

みんな笑って

 

赤ちゃんが笑っているときに

 

みんな泣いてた

 

恋は

 

それがとても

 

かなしい

 

みんないっしょに

 

笑えたらいいのに

 

…みんないっしょに

 

 

「少し…疲れた」

 

遠く流れる雲に視線を向け

遠く洛陽にいる家族を思う

遠くに聞こえるは戦場の喧騒

遠くに聞こえるは生の限りに生き残らんとする声

遠くに聞こえるのは今当に散って逝く者の声

 

此処は戦場だというのにやけに静かで

此処は戦場だというのに向けられる殺気は近くにない

彼女と共に戦っていた味方ですら

遠く砂塵を巻き上げ

やはり遠く敵兵と命を奪い合っている

 

彼女には何もかもが遠い物に感じた

 

彼女の周りには

彼女の近くには

もはや立つ者はなく、誰もが彼女の周りに倒れ伏せていた

 

「…化け物め」

 

ようやく近場から聞こえた声に視線を空から地上に落とす

見れば視線の先には先程まで彼女と刃を交えていた黒髪の少女が

ボロボロになった衣服を纏い

やはりボロボロになった青龍刀を支えに立ち上がろうとしていた

 

「でも少し…疲れた」

 

乾いた恋の声

 

「これだけ暴れて少しとはな…恐れ入る」

 

振り向けば蝶をあしらった服の袖で口の血を拭いながら立ち上がる青い髪の少女

 

「お腹もすいた」

 

恋が自分の腹部を擦れば

 

「鈴々もお腹すいたのだ…」

 

自身の背丈の倍はあろうかという矛を構えるも、腹を擦り舌を出す赤毛の少女

 

「まだ…やるの?」

 

屍累々の中で立ち上がる少女達に恋の瞳が見開かれる

 

「当たり前やないかい…五体満足なうちは…なんぼでも立ち上がるで」

「…どうして?」

 

首を傾げてみせる恋、彼女等に勝ち目は無いというのに

 

「意地だ…武を誇るものとしての」

「…」

「此処まで来て疲れたと寝転んでいるわけにはいかないのでな」

「…」

「このまま帰ったら…ご飯が美味しくないのだ」

「…」

「あそこにはウチの大切なモンがある…行かせるわけにはいかんのや」

 

もはや立っているだけ…震える膝が彼女達の限界を物語っている。

それでも

恋にこの先には行かすまいと立ちはだかる武将達

 

 

その姿に

恋は

 

「恋も…多分同じ」

「「「「…?」」」」

 

初めて相対する者達を『見据える』

 

「恋も大事な物…守りたい」

 

足元に転がる血まみれの剣に視線を落とす

 

「ならば武でか…」

「何を守りたい?」

「星!?」

 

戦場では武で語れと言わんとした愛紗の言葉を星が遮る

 

「呂布殿は何故に此処に立つ?…何を守りたい?」

 

恋の内の変化に気づき…呂布という勇将の本意に初めて興味が沸く

 

「貴公の武は十二分に理解した」

「……」

「貴公の武を振るう理由に…興味が沸いた」

「……」

「聞かせてはくれまいか?…『恋』殿は何故にその武を振るう?」

「…!?」

 

見開いた瞳を瞬かせて驚く恋

 

「星!?」

 

突然の真名に愛紗も驚く

敵なのだぞコイツは、と

 

「先程に真名を名乗ったではないか?あいや失礼…某は趙雲、真名を星と申す」

 

真紅の瞳を紫の瞳が真正面に見据える

その瞳に吸い込まれるように

恋は初めて『戦場』で『戦場』を忘れる

 

「恋はずっと…一人だった

 ずっと一人でいたときに

 セキトと会ってちんきゅと会った」

 

ねねはずっと恋殿のお傍におりますぞ~!

わんっ!

 

「それから三人で洛陽で住んでた

 でもお金も食べる物も無くて

 ずっと困ってた…華雄に会ったのはそのとき」

 

店の前に突っ立っていては商売の邪魔になろう?

いいから座れ…店主!

点心を四つ…いや十個頼む!

え?足りない?

ええい!店主よ!

店にある分全部持って来い!

 

「霞に会ったのもそのとき」

 

なんや華雄?金貸してくれなんて珍しいやん?

どないしたんや?

…そないに動物仰山引き連れて

 

「月と詠に会ったのもそのとき」

 

はあ~!?

給料前借ぃ~?

だからあれ程使い込みはするなって言ってたしょうが!

唯でさえ財政が厳しいこの時に将軍二人だけ特別扱いするわけには

いかないのよ!!

却下よ、却下!!

 

詠ちゃん

通りのお店から請求書が来てるって御使いさんが…

 

「恋…人よりちょっと強い

 今までも皆恋のこと避けてた

 でも月はそんなことよりも一緒の家族になろうって言ってくれた」

 

恋さん

これからは一緒にご飯を食べませんか?

恋さんと一緒にご飯を食べると私もなんだか

幸せな気持ちになるんです。

こうして皆一緒にいると…

なんだか家族みたいですね、ふふ♪

 

「恋…いつの間にか一人じゃなくなってた

 みんなでご飯を食べて

 みんなでお昼寝して

 みんなでお風呂に入って

 恋…いつの間にか一人じゃいられなくなっていた」

 

天下無双の飛将軍の瞳からポロポロと涙が零れる

 

「月が恋に言ってきた

 初めて…力を貸して欲しいって

 月が泣いてた

 月の赤ちゃんが笑ってるのに

 みんなで楽しくしてたいのに」

 

いつしか嗚咽も止まらなくなり

フルフルと小刻みに肩が震える

 

「恋…もう…ひとりになりたくない」

 

彼女の周りに立つ誰もが声を掛けれずにいた

飛将軍と詠われ

天下無双と恐れられ

大陸最強の名を欲しいままにしていた少女の涙に

何を言ってやればいいのか

声を掛ける事も侭ならず

唯立ち尽くしていた

 

 

「ならば守り抜いてみなさい!貴女の大切な人を!

 貴女の望む場所を!」

 

 

沈黙を破って現れたのは覇王曹操

この戦で世に自らの覇を唱える足掛りを得ようとする少女

 

「貴女には悪いけど…もう止まらないわ

 貴女を倒し、董卓の首を執り

 私達は進むわ!

 奪われたくないのなら…抵抗してみなさい」

 

曹の旗の下、彼女の誇る精鋭達が集結する

 

魏武の大剣が

曹操の片腕と称される弓使いが

曹魏の牙門旗を一人片手で支える少女が

彼女等に絶対の信頼と忠誠を誓う兵が

 

呂布を取り囲むように陣取っていた

 

「曹操殿!?…これは一体?」

 

恋一人に対してのこの陣構えに愛紗が叫ぶ

 

「悪いけど形振り構ってられないのよ…呂布一人とはいえこの有様にはね」

 

中央に構える華琳は絶影を肩に担ぎ、顎で愛紗の視線を促す

視線の先、虎牢関の城門には雪崩込むように進む一団

 

「袁術軍が…いや、あれは?」

「孫策が右翼を突破、さらに袁術を見限ったのよ…そして董卓を捕らえにね」

 

城門を突破せんと打ち付ける杭の音が鳴り響く

 

「時間が無いわ…飛将軍並びに貴女の兵達

 全力で潰させてもらうわ」

 

華琳の声に恋は静かに目を伏せる

 

「降参すると言うなら…聞いてあげないこともないけど?」

 

覇王の問いに飛将軍は

 

「いい…恋は…家族を守る為に此処にいる」

 

ゆっくりと瞼を押し上げた彼女の瞳に強い意志と光が宿る

方天画戟を華琳に向け

 

「来い…何回来ても…何人来ても

 恋が勝つ」

 

真直ぐに向けていた方天画戟を横に振るって促す

 

「良くぞ言ったああ!」

 

開口一番に春蘭が飛び出す、が

 

ヒュン…ドスっ

 

「があああ!」

「姉者!?」

「春蘭!?」

 

どこからか飛んできた矢が春蘭の目を捕え

彼女が蹲る

 

 

「おのれ!何処から!?」

 

騒然となる兵達の中で秋蘭は矢の飛んできた方角に意識を向けるが

 

「隙だらけや!っちゅうねん!!!」

 

正しくその隙を突くように飛び込んできた霞が飛龍偃月刀を彼女に向けて振り下ろす

 

「くっ!?」

 

紙一重にそれを交わし擦れ違い様に矢を放とうとするが

 

「遅いわボケぇ!」

 

読んでいた霞は自身に向けられる矢を弓ごと蹴り上げる

 

「何っ!?」

 

弓こそ飛ばされなかったものの反撃を許さぬ霞の一撃に後ろに飛んで距離を取る

 

「張遼!?…貴様ぁ!」

 

奥歯をかみ締め、目の前に現れた霞を睨みつける秋蘭

 

「一人の将相手に大層な陣構えやんか?あ~ん!?」

 

ぺっ!と唾を吐き捨て自身の武器を身構える霞

 

「…霞?」

 

状況を飲み込めずにいる恋

その耳に

 

ピュイっ♪

!?

ヒヒィン

 

突然近くにいた赤兎馬が何かに反応し、駆け出していく

 

「せきとの…おともだち…?」

 

虎牢関へと駆けて行く赤兎馬に飛び乗る影が一つ

 

「さあて…恋!ウチも交ざってええな!?」

 

霞の声にはっ!と振り返り

にししと笑いかける霞にコクンと頷く

 

「よっしゃ!…ちゅうわけで第二幕や」

 

目の前に立ちふさがる曹魏の軍団にぶるると武者振るいを一つ

 

「あんたらに月は…ウチの家族には手ぇ出させへんで!」

 

秋蘭の後方

兵達の中央に立つ華琳に向けて眼を飛ばす

 

「大した余裕ね…この戦力を前にして」

 

霞の視線を受け、華琳もそれに応じようとするが

 

「啖呵切っても無駄やで…焦ってるのがバレバレやん?」

「…なんですって?」

 

霞の満面の笑みに華琳は眉を顰める

 

まさか?

 

華琳の心の内を見透かしたように霞は笑い

 

 

「天の御使いに逃げられたんがそんなに効いたんか?曹孟徳にいつもの余裕がないで?」

 

 

「っ!?」

 

華琳の顔が引き攣る

その表情に霞は声を上げて笑う

 

「精々付き合ってもらうで?この状況…ツキはうち等にある」

「ほざけ!」

 

見れば春蘭が目に刺さった矢を自身の目玉ごと引き抜き

 

「貴様如きに我が主が覇道の邪魔などさせるものか!」

 

矢の先端に突き刺さった目玉を自身の怒りそのままに食らって見せる

 

「春蘭!?」

「姉者!?」

 

驚く二人を他所に

 

「ほっほ~大した気概やんか…で?次は何を見せてくれるんや?」

「貴様を倒す!!」

 

矢を投げ捨て七星餓狼を構える春蘭

ドクドクと流れる血を拭いもせず

片目に全ての殺気を込めて霞を睨みつける

 

「片目でウチとやり合おうってかい?」

「無論だ!片目が無くても貴様如きに遅れをとるものか!」

 

春蘭の宣言に霞はふうっと息を吐き

 

「…いてこますぞわれ」

「上等だ…来い!」

 

互いに相手を睨みつけ身構える二人

 

「真桜、劉備の将達よ…下がってなさい」

「「「…」」」

 

華琳の声に反論も出来ずに下がる真桜と武将達

 

「覚悟はいいわね?」

 

その声に恋と霞が頷いた

 

足止めはしといたる

月を頼んだで

 

 

あとがき

 

此処までお読み頂き有難う御座います。

 

ねこじゃらしです

 

というわけで近付いてきました

董卓の乱編の終わりが

 

ちょいと飛ばし気味ですが後でちゃんと保管話だs…

どうしよう?

 

…それでは次の講釈で


 
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