アクセル全開! 真・恋姫†無双 第13話 真実
一刀と美沙緒は警備の改善案の書類を華琳に直接に見せに来た。
その時の一刀の答えはどれも「やってみないとわからない」だったが、華琳はその答えの真意に気付いたのだ。
「一刀、一つだけ教えて頂戴。今のこの世界の流れ…あなたの知っている歴史と、どの程度変わっているのかしら?」
その華琳の質問に一刀は正直に答えた。
「正直、全部だな。もともと誤差はあったけどな…赤壁で俺達が勝ったから、完全に俺の知っている歴史じゃねえ」
「と言うよりあたし達が来た時点が既におかしかったよね」
「そう。だから?」
「俺達がこの世界に来た意味を前から考えてたけど、その理由が分かった気がするんだよな」
「私に天下を与えるための、天からの御遣い? その割には、随分と気が多かったように思うけど?」
「当の本人にそんな自覚がなかったからな。これが……」
「…とはいえ、あの赤壁で歴史は変わり、私はこうして生きている。大陸の覇権も、もう少しで私のものよ」
「うん」
「警備隊の引き継ぎは、凪と真桜に任せた。凪には俺達の技も一部教えたからな。この世界での俺達の役目も、そろそろ終わりだろうな」
「終わった後は、どうなるの?」
華琳が今一番気になることを聞く。
「さあな? いきなり消えるか、夢から覚めるのか、何かの導きで別の世界に行くのか、役立たずの道化として、この世界に残るのか分からねえな」
「好きになさい。もし道化として残ったのなら……そうね、側に置いて、慰み者くらいにはしてあげる」
「そいつは嬉しい申し出だな」
「もう、一刀ってば!」
美沙緒が怒った顔をする。
「ただ、どうなったとしても…この光景だけは覚えておきなさい」
「ああ……」
一刀と美沙緒、華琳は城壁から、街を見る。街は華琳が治め、一刀達が守っている。
「あなた達は役目を果たしたの。それは…人として誇るべきことよ」
「そうだな。でも、華琳と会えなくなるのは寂しいぜ」
「そう。でも、戦場で死んだ兵達が志半ばに倒れる事を考えれば、自らの役目を果たしきれたぶん、幸せなのではなくて?」
「幸せなんて、人それぞれだよ。昔の俺は役目を果たすことが大事だと思ってたさ。
だが今の俺は役目を果たすより、華琳達と一緒に日常を過ごせるほうが幸せだな」
「あたしも……。一刀と一緒に居たくて『ムーン・ロック』に入ったけどね……」
「そう…、でも昔言ったわよね。そういう世界に生きているのよ、私達…いいえ、私は」
「そうだな…」
「消えるのなら、勝手に消えてしまえばいいわ。後の事は、残った私達に任せておきなさい」
「その時は頼むぜ」
一刀と美沙緒は背を向けて手を振りながらその場を去る。
「…そうよ。あなた達が消えても……寂しくなんか、ないんだから」
それから一ヶ月強が過ぎた。
建業を完全制圧し、軍議が終わった後、一刀と美沙緒は華琳の用事に付き合えといわれた。
「一体、用事って何だろうな…」
「さあ?」
そんな時、突然爆発音が庭から聞こえた。
「隊長!」
凪が一刀の側に来る。
「今の音は何だ? 襲撃か?」
「分かりません、しかし、工房から……」
「ってことは……真桜か!」
一刀達が工房に行ってみるとそこにいたのは一刀の予想通り真桜であった。
「酷い有様だね」
「けふっ。けふっ!」
「何で爆発させた?」
「別に好きで爆発させたわけやないで…」
「だろうな」
一刀が爆発した跡を見る。そしてその周りにはばらばらになった工具やら、工房の炉やら……。
そこに遅れて春蘭と秋蘭が来た。
「何があった! 劉備の襲撃か!」
真桜は何があったのかを説明した。なにやら霞の偃月刀の改良をしていたら炉が熱に耐え切れず爆発してまい、
直すにしてもまた同じ事が起こるし、いつもの城にある炉のような改造をしたくても時間がかかり、城に戻ったほうがまだ早いという真桜に秋蘭はあることを言う。
「なら、戻ってくればよい」
「ええの?」
「あれ? 蜀の攻略って…」
一刀と美沙緒は呉の完全統一が終わったら間髪入れずに蜀への侵攻だと聞いていたので、その発言には驚いた。
その呉の完全統一はあと少しで終わるところにまで差し掛かっている。城に戻るにしても一刀だったらアクセルのバイクフォームを全速力で飛ばせば、今日明日でつくかもしれないが、他のものではまず無理である。
「華琳様が午後から国元にお戻りになる。その護衛として付いて行けば良い」
「………はい?」
「どうした、北郷」
「華琳が国元に戻ってどうした?」
「そうか…もうそんな季節か」
「北郷は華琳様に同行すると聞いていたが……違うのか?」
「なるほど、用事ってそのことか」
一刀達は華琳の考えが完全には分かってないが、自分も必要な用事だということだけは分かった。
そして華琳の護衛として、真桜と一刀と美沙緒以外には沙和、季衣、流琉が付いていった。
沙和は新作の服が出るから、それを買いたいとの事で付いてきた。
季衣と流琉は故郷に帰るためであった。途中で本国の親衛隊と合流し、季衣と流琉は一時故郷に帰った。
城についてすぐに真桜は工房へ、沙和は街に出掛けた。
そして一方は華琳に連れられてとある場所に行った。それは城の近くの森であった。
華琳が道の真ん中で止まり、あるものを見る。一刀と美沙緒はその視線の先を見る。
「お墓?」
「ええ。橋玄様の墓よ」
「橋玄?」
「私がまだ駆け出しの役人だった頃、春蘭達と一緒に、とてもお世話になった方よ」
「その割には小さい墓だな」
その墓は小さい石のかけらを積み上げている程度である。
「派手なことの嫌いな方だったの。何度か、私の所で働いて欲しいとお願いにも行ったのだけど…結局、最後まで首を縦に振ってはもらえなかったわ」
「じゃあ、今日は命日なのか?」
「亡くなられたと連絡を受けたのは、もう随分前のことよ。今まで忙しすぎて、挨拶にも来られなかったのだけれど…」
「そんな素振りは見なかったけど…」
「恩師とは言え、他人の死だもの。曹魏の運命を左右するというならまだしも、完全な私用だったしね」
華琳は手を合わせ、目を閉じる。一刀も美沙緒も華琳と一緒に手を合わせ、目を閉じた。
「ねえ一刀。覚えている? あなたと私が初めてあった頃、占い師の話を聞いたことがあった事を」
「ああ、よくな……」
「あの時の占い師も…実を言うと、橋玄様から紹介されていたの。確か名を、許子将と言ったはず」
「つまり最初っからあの占い師を知ってたんだな」
「視察の本来の目的は、許子将に会うことだったの。皆には言ってなかったけれどね。
今では許子将の言うとおり、乱世の奸雄よ。なるほど、言い得て妙だったわね」
「当たるものは当たるんだな」
「確か、一刀達も何か言われてなかった?」
「ああ、確か『記憶を取り戻すは流れに逆らうこと。
だが大局の示すまま、流れに従い、逆らわぬようになしされ。
さもなくば、待ち受けるのは身の破滅。くれぐれも、用心なされよ?』
だったな……」
「結構記憶戻ってるよね……」
その言葉でようやく二人はある事実に気付く。
それは二人の記憶は完全に戻りつつある。そして今は一刀達が知っている歴史とは全然違うのだと……。
(ちっ……)
(嫌な事分かっちゃったね)
(ああ……)
「どうしたの?」
「いや、何でもない……」
「………そう。橋玄さまへの報告も終わった事だし、帰りましょうか」
「ああ」
一刀と美沙緒はようやく気付いた真実を華琳に教えないまま帰っていった。
おまけ
作者「第13話なんだな。これが!」
一刀「本当に手抜きだな」
作者「本当なんだから仕方ねえ。だが私は謝らない!」
一刀「謝れ!」
作者「そして次回も若干手抜きだ。しかしその次の最終回はそうでないようにしておいた」
一刀「ほ~う」
作者「まあ明日には最終回までを投稿しようと思っている。それでは!」
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この作品の文章には仮面ライダー×真・恋姫†無双 魏編で使われたものが多々あります。
そして一刀の態度や口調が原作と違うことをご了承してください。
また本作の一刀の設定のため、一刀のパートナーとなるオリジナルキャラクターがいます。