No.136449 真・恋姫†無双 頑張れ一刀くん その142010-04-14 23:33:56 投稿 / 全11ページ 総閲覧数:19103 閲覧ユーザー数:13561 |
曹操軍を撃退することに成功した雪蓮たち。
曹操は一刀に見舞の使者を送ってたり、暗殺をした者の首の塩漬けを送ってきたりと謝罪の姿勢を見せていた。
今回は撃退できたものの、いつまた曹操が攻めてくるかも分からない。その時に備えて雪蓮たちはまず建業に本拠地を移した。
そして程なくして南征を開始した。
そこで南征の指揮を執ったのは蓮華だった。
蓮華は最初こそ戸惑っていたもののそこはやはり王家の者。雪蓮、冥琳、祭を建業の守備に置きながら、見事に南征を成功させた。
南征を成功させたことにより呉の国力はなかなかに充実していた。
しかしそれだけでは曹操軍には到底及ばない。
揚州から引きあげた曹操軍は、北方を支配していた袁紹との戦いに勝利し、北方を支配することとなった。
新たな兵を組み込んだ曹操軍の規模は大陸一に膨れ上がっていた。その数は数十万にも及ぶとされていた。
そして雪蓮たち呉は、さらに領土を広げるために荊州を次なる目的地とするのだった。
出陣に向けて軍備を整えていた雪蓮たちに曹操軍に忍ばせていた細作から情報が入った。
曹操軍、五十万の大軍を率いて徐州に向けて進軍というものだった。
「五十万とはどのように集めたのじゃ?」
報告を受けた雪蓮たちはすぐさま軍議を開いた。
「……わかりません。ただ曹操のことですから無理やり徴兵を行ったということはないでしょう」
その原因が三人の元旅芸人によるものとは欠片も思っていない冥琳。
「どのように集めたかは分からないけど同盟を組んでいるのだから桃香おね…………桃香たちを助けに行かなきゃ」
お姉ちゃんが定着しつつある一刀だった。
「このことはまだ桃香たちは知らないのよね?」
「はい! 細作さんの報告によると曹操軍はまだ徐州との国境にも達していないようなのでおそらく気付いてないと思われます」
雪蓮の質問に答えるのは明命。今回の情報を持ち帰ったのは明命の部下の細作であった。隠密行動の得意な明命の部隊であるからこそ早急に情報を持ち帰ることが出来たのである。
雪蓮は少し考えたあと口を開いた。
「一刀は桃香たちがこの後どういう行動をとるか分かる?」
雪蓮が天の国の知識を必要としていることに気付き、自分の記憶を掘り返す。
「……多分だけど、桃香たちは逃げると思うよ」
皆は一刀の答えに驚く。
桃香ほどの人物が民を置いて逃げるとは思わないからだ。
「それはどうしてかしら?」
「天の知識ってのもあるんだけど、決め手は桃香と曹操の性格かな」
天の知識のみに頼らず、自らも考えた上での答えだった。
「まず曹操軍五十万の軍勢を伏ぐ手立ては桃香たちにはない。そして桃香と曹操の考え方は相容れない。ならば降伏はせずに逃げて再起を図るはずだ」
一刀の考えを聞いて軍師たちはなるほどと思う。そして瞬時に桃香たちがどこに向かうかを予測する。
「逃げると言ってもどこに逃げるというのだ?」
「おそらく益州でしょうね。継承問題で内乱が勃発しているそうですからその隙をついて入蜀すると思われます」
「それに太守の劉璋さんの評判がよくありませんからね~」
「天下泰平を理想とする桃香殿たちには渡りに船ですからね」
蓮華の疑問に答える冥琳と穏。そんな先輩軍師を見た亜莎は感心すると共にもっと勉強しようと思うのだった。
そして一刀や軍師たちの考えを元に雪蓮の出した答えは、
「私と一刀で劉備軍のお手伝いに行くわ」
『えー!?』
劉備の逃亡の手助けだった。
「ななな、何故ですか姉様! 姉様だけならまだしも何故一刀まで!?」
「……なんかその言い方だと、私はどうなってもいいみたいじゃないー!」
「……そ、そんなことありません!」
妹の見え隠れする本音に苦笑いするしかなかった。
「一刀を連れて行くのは劉備軍との話を円滑にするためよ」
一刀大好き軍団には一番効果のある方法だ。
「他の将を連れて行かないのは逃げた桃香たちを追わず揚州に攻めてくる可能性があるからよ。……まあおそらくそれは大丈夫でしょうけど」
さすがに攻めてくるには早すぎると、そこまで警戒はしていないが念のためということだ。
「し、しかし別に姉様たちがいかなくても……」
姉と一刀を心底心配している蓮華。
「桃香たちには袁術からの独立を手伝ってもらったから。その恩を返さないのは王として失格よ」
それを言われると何も言えなくなるのだった。
そんな蓮華を見て優しく頭を撫でる雪蓮。
「大丈夫よ蓮華。ちょっと曹操にひと泡吹かせてくるだけだから。……それに一刀は必ず守るわ」
頭を撫でる雪蓮の手から強い意志を感じた蓮華からは不安などは消え去っていた。
「はあ。止めても無駄なのだな?」
「ええ。ここで桃香たちを失えばそれこそ曹操に一気に攻め滅ぼされてしまうわ」
軍師としては桃香たちの手助けには賛成だったが、親友として……そして一刀の保護者としては反対だった。
しかし何より二人の意志を尊重することにしたのだった。
「分かったわ。……気をつけてね」
「ええ。必ず一刀と共に戻ってくるわ」
雪蓮と蓮華、雪蓮と冥琳のやりとりを祭、穏、明命、亜莎、シャオは温かく見守っていた。
そして思春は、
「必ず戻ってくるのだぞ!」
「う、うん」
激しく一刀に詰め寄っていた。
「かーずと! 戻ってきたらシャオと遊んでよね!」
「おう! 俺も楽しみにしとくよ」
「か、一刀様。また一緒にお勉強しましょうね」
「うん。頑張ろうね!」
城門前で将たちは雪蓮と一刀を見送りに来ていた。
次々に雪蓮と一刀に声をかけていく将たち。
「か、かずと!」
「どうしたの蓮華?」
なぜか顔の赤い蓮華を不思議に思う一刀。
「えっと……そのね」
「うん?」
なかなか煮え切らない態度の蓮華。
「目を瞑りなさい!」
「……? わかった」
蓮華に言われたとおりに目を瞑る一刀。それを見た蓮華は一刀の前にしゃがみこみ一刀の頬に手を当てる。
「……ちゅ」
「っ!」
蓮華は自らの整った唇を一刀のそれに当てた。蓮華にキスされたことを理解した一刀はカッと目を開く。
「れ、蓮華?」
「お、おまじないよ! か、一刀が無事に帰ってこれるように……」
顔を真っ赤にさせそっぽを向く蓮華に一刀は思わず笑みがこぼれた。
「必ず帰ってくるよ。だから心配しないで?」
「一刀……」
優しい雰囲気が二人の間に流れ、再び二人の距離が近づく。
「こらーー! いつまでいちゃついてるのよー!」
雪蓮の怒声により二人は距離をとるのだった。
「一刀くん! ………………と雪蓮さん!」
「……相変わらずね桃香」
こめかみをピクピクされる雪蓮だった。
「怪我は大じょ――――」
「一刀くん! 怪我は大丈夫なのか!?」
桃香が一刀に話しかけようとすると愛紗が勢いよく玉座の扉を開け、そのまま一刀を抱きかかえた。
「だ、大丈夫だよ愛紗お姉ちゃん」
「本当か? それならいいのだが、心配で夜も眠れなかったのだぞ!」
「ご、ごめんなさい」
一刀と愛紗のやりとりを見た雪蓮は桃香がマシに思えた。桃香は自分に気付いたが愛紗は見向きもしなかったからだ。
「……私って一体なんなの?」
雪蓮の呟きは誰の耳にも入ることがなかった…………と思われたが。
「わ、分かるぞその気持ち」
雪蓮の肩を叩く人物がいた。
「あ、あなたは――――」
「知ってるのか!?」
「誰?」
「ちくしょー!」
その人物、公孫賛はその場から走って逃げだした。
「……なんだったのかしら」
愛紗の後からも次々に将たちがやってきて一刀を心配した。雪蓮に気付かなかったのは愛紗だけだった。
やっと落ち着いたところで雪蓮は話を始める。
「時間がないから単刀直入に言うわ。曹操が五十万の大軍を率いてこの徐州に向かってきているわ」
それを聞いた劉備軍の面々は一様に大声をあげて驚く。
「それは本当ですか!?」
「ええ。たぶんそろそろ――――」
「も、申し上げます!」
雪蓮の言葉を遮って兵が報告をする。その内容はたったいま雪蓮が教えてくれた情報とほぼ同じものだった。曹操軍が国境を越えたのである。
「我が軍の規模は約三万。義勇兵を募るなどすれば五万人には届きますけど……」
「……勝負にならんぞ、これは」
朱里の分析に、星が冷静に判断をする。
「しかし我が国の住民を守るためにも、曹操軍を止めなければ……」
愛紗はこう言うが、五万人で五十万人の大軍を防ぐ手立てなどは今ここには存在しない。
ああだこうだと意見を出していくが考えはまとまらない。
「なら、逃げちゃおう」
「はっ!? と、桃香様っ!?」
笑顔で逃亡を選択する桃香に愛紗が反応する。
しかし桃香は意外にも考えていた。このまま戦うと住民にも大きな被害が及ぶ。それならいっそのこと逃げればいい。曹操軍なら住民を無碍に扱うこともないだろうということも考えた上での選択だった。
住民を守るために逃げ出す。矛盾している様だったが結果としてこの行動は徐州の民を傷付けることなくすんだのだった。それには呉に侵略した時の暗殺という愚挙を犯してしまったことが少なからず影響していた。あれ以来曹操軍の軍律はさらに厳しいものになっていた。……二度とあんなことがおこらないようにと。
桃香は住民たちに説明をしに行ったのだがそれでも桃香についていくという住民が大半だった。こうして桃香たちは大勢の民を引き連れて徐州を脱出するのだった。
<おまけ>
「かーずと!」
「どうしたの雪蓮?」
「ひまーー!」
「暇って言われても、俺仕事中なんだけど……」
「そんなの関係ないわよー!」
「だーめ」
ぶーぶーと駄々をこねる雪蓮だが一刀は無視して仕事を続ける。そして雪蓮が何気なく部屋を見渡すと一刀が貂蝉にもらった瓶を発見した。
「ねー、一刀。これって私が飲むとどうなるのかな?」
「あー、貂蝉が言うには大人が飲んでも何の効果もないらしいよ」
「なーんだ、つまんなーい」
そう言って雪蓮は瓶を覗くと一粒だけ明らかに色の違う錠剤を見つけた。
「ねえ一刀。他のはみんな黄色なのにこれだけ桃色なんだけど」
「本当だ。なんだろ?」
一刀にも分からないようだったので雪蓮は飲んでみることにした。
「あ~ん」
「雪蓮!?」
「飲んじゃった♪」
ぺろっと舌を出して悪びれる様子の無い雪蓮。だが次第に雪蓮の身体に異変が起こる。
「か、身体が熱い……」
「雪蓮、大丈夫か!」
「はぁ、はぁ」
だんだん息遣いも荒くなっていく雪蓮。そしてだんだん雪蓮の身体は縮んでいった。
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁーーーーー!? 俺と身長かわらねえぇぇぇぇ!?」
「うるしゃいわよかじゅと」
思い切り舌足らずな雪蓮。
「なんで縮んだの!?」
「わからにゃいわ。たびゅんあの薬のせいだとおもうわ」
「ということは一刻だけということか」
「おしょりゃくね」
「なんか可愛いな」
歳の離れた雪蓮より歳の近い雪蓮の方が今の一刀には好ましかった。
「よしっ! 街に行くわよ!」
「えっ? って引っ張るなぁー」
「いいからいいから♪」
雪蓮は一刀の手を引いて執務室を出て行った。
「ん? 今のは北郷か? しかし誰かと居たような……」
冥琳は雪蓮だとは気付かなかった。
街に繰り出した二人は手を繋いでデートのようなことをしていた。
「わー、かじゅとっていちゅもこんにゃに低い目線だったのにぇ」
「初めは大変だったけど慣れたらそうでもないよ」
楽しく雑談しながら歩く二人を街の人は温かく見守っていた。
「あら一刀ちゃん、今日は恋人と一緒かしら?」
「こんにちはお姉さん。この娘はそんなんじゃ――――」
「こんにちはー♪ かじゅとの恋人の孫策でぇーしゅ」
「まあ、元気な娘ね。よし、お姉さんが肉まんをおごってあげるわ」
「わーい♪ ありがとーお姉さん!」
無邪気に笑う雪蓮に癒される肉まん屋のお姉さん。
そんな雪蓮を見て、恋人というのも悪い気はしなかった。
「はい、お待ちどう。出来たてだから気をつけてね」
「ありがとうお姉さん」
「わー、美味ししょー!」
一刀と雪蓮は肉まんを受け取って店をあとにした。
「それにしてもあの娘誰かに似てたわね。孫策ちゃんって言ったわね…………そんさくそんさくそんさく。…………孫策様!!?」
二人の姿を探すがすでにいなくなっていたのだった。
「小しゃいと色々おまけしてくれるのねー」
「そうだね。俺もいろんな人にもらってるよ」
街を歩くと店の人がたくさんサービスしてくれて、二人のお腹は満たされていった。
「食い逃げだーー!」
突然誰かの叫びが聞こえて、街はざわめく。
人ごみをかき分けるように黄色の布を巻いた男が二人の元に駆け寄り、雪蓮を羽交い絞めにする。
「雪蓮!」
「へへっ、こいつを殺されたくなかった大人しくしな」
黄巾党の残党であるこの男はたったいま食い逃げで店主に追いかけられていたところ、雪蓮を見つけて人質にとったのだ。
「きゃー♪ かじゅとたしゅけてー!」
楽しんでるだろ! 心の中で突っ込みを入れる一刀。
実際に雪蓮は楽しんでいた。普段なら人質になるようなことはありえないので貴重な体験を楽しんでいた。
「今だ!」
「ちっ! くらえ!」
「ぐわぁ!」
近くにいた勇気ある若者が隙を見て飛びかかったが、男は寸前で気付いて短刀で若者の腕を切りつけた。
それを見た雪蓮の表情は非常に冷たいモノになっていた。
「貴様は私の愛すべき民を傷付けた」
「あん? 何言ってんだガキ?」
羽交い絞めにされていた雪蓮は素早く腕を解き、男の顔面に拳をいれた。
「かぺ!?」
「許さないわ」
男は一瞬何をされたか理解できなかったが目の前の少女にやられたと分かると怒りが湧いてくる。
「ガキだからって容赦はしねえぞ」
「ふん。いいからかかって来なさい」
男は雪蓮に掴みかかろうとするが軽く避け、股間に蹴りをくらわす。
「ぐぅぅぅぅぅ! こ、こんなガキに」
「相手を見た目で判断するなんて愚の骨頂ね」
そこで一刀が呼んできた警備隊がかけつけ男は連行された。
「まったく、驚かさないでくれよ」
「えへっ、ごめんね」
二人は盛り上げる民衆から逃げ出して森に来ていた。
「まぁ怪我がなくてよかったよ」
「ありゃ、しんぴゃいしてくりぇたの?」
「当たり前だろ。…………恋人なんだし」
恥ずかしながらそっぽを向く一刀。
そんな一刀を見て雪蓮は笑顔で抱きつく。
「な、なんだよ?」
「にゃんとにゃくこうしたかったにょよ」
なんじゃそりゃと言いながらも拒まない一刀。そして雪蓮は一刀から離れ今度は顔を近づけた。
「…………ちゅ」
子供同士の可愛いキス。しかしそれは一刀と雪蓮の忘れられない思い出となった。
その瞬間、雪蓮の身体が元に戻った。
「あ~あ。元に戻っちゃったわね」
「……あっという間だったな」
なんとなく一刀は残念そうだった。
「もう少し楽しみたかったな~」
「まあ、大きくても小さくても雪蓮は雪蓮だよ」
それは一刀の本心。どちらの雪蓮も心から愛している。それだけは間違いなかった。
「それじゃあ帰ろうっか」
「そうだな」
二人は手を繋いで城に帰るのだった。
完。
何も言うな!笑
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今回は無理やりな希ガス(´Д⊂
でもでも気にしないで!