No.135872

身も心も狼に 第20話:転校初日・後編

MiTiさん

ん~…この短さなら前後編に分けなくても、と思うかもですが、
まぁ、気にしない方向でお願いします。

では、昼休みから後の話をどうぞ

2010-04-11 22:58:14 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:3578   閲覧ユーザー数:3208

五時間目、科目は英語。

神界又は魔界から来た人達の多くに取って苦手とされている科目だ。

 

門がある遺跡は日本に在る為か、日本語は三世界の共通語として普及して来ている。

世界を跨いで引っ越しを考えている人も、引っ越し先は大体が日本なので、

世界を渡る人達の多くは人間界に来る際日本語の勉強をする。

 

神界・魔界は共に王政で扱う言語は(古代語等を除いて)一つ。

が、人間界は日本語の他に多くの国の言葉があり、

どこの中学高校でも日本語現代語の他に英語の授業がある。

 

会話だけならば、最悪翻訳魔法で、という考えも無くは無いが、

相手に失礼だからという理由で、皆必死に勉強して話せるようになろうとするのだ。

 

もちろん一朝一夕で身につく者はかなり少ない。

ネリネのようなタイプはごく希だ。

 

英語の授業は教科書を読んでするタイプと外人と実際英会話するタイプがあり、今回は後者だ。

授業の方針で教師はよほどの事が無い限り日本語を話さないようにしているので、

授業中は教師の話す英語を全て聞き取り理解しなければならない。

 

英語はフィーリングとは良く言ったもので、

文法などを理解出来なくとも言っていること言いたい事は何となく分かる、

と言う者も中にはいて、そういった人達はこの授業で良い成績を取る。

そして、その中に彼女も入っている。

 

英会話の授業は一班5、6に分かれて行われる。

シアとネリネが入学したての頃は、稟・楓・シア・ネリネ・麻弓・樹の6人だったが、

ルビナスが来てからは、彼女と樹が入れ替わる事になった。

 

「何故俺様が~♯替わるなら稟だろう!♯」

 

と叫ぶが、多数決1:5、そして女性陣の希望から樹の案は却下された。

が、それでも樹は反抗する。

 

「しかしだな稟、人間界に来てまだ間もないルビナスちゃんは英語が苦手だろうから、頭脳明晰なこの俺様が手取り足取り…」

 

なおも引き下がらない樹を眺めながら、皆が、何より稟がいい加減うっとうしそうにしているのを見たルビナスが止めに入る。

 

「あ~樹。この授業に関してはアドバイスとかそういうのいらないから」

 

「…何故に?」

 

「理由は…私だから、かな。まぁ詳しい理由はともかく、今この場では私の英語の教師役は必要なし。

 てことで、最高人数に達してるから退場ヨロシク~」

 

「ぐぅう!ならば他の」

 

「教師:教生=1:1×3でバランスよくなってるからそれも入らないわよ。

 具体的に言うと私:稟、楓:麻弓、ネリネ:シアって感じで」

 

「そ、そうかい。わかった…」

 

ここまで言われてまだ噛み付いては無様と思い、樹は雨雲を背負いながら別の班に移った。

 

そんなやり取りを終えた後、授業が始まる。

 

 

滞りなく、本当に滞りなく授業が終了した。

 

クラスの誰もが転校してきた、と言うより魔界から人間界に引っ越してきたばかりのルビナスであれば、

翻訳魔法もなしに英語で会話するのは苦労するだろうと予想していたが、結果は真逆だった。

 

ルビナスが話す英語は教師のレベルと同等。聞き取りに関しても完璧で、

教師が英語を話した直ぐ傍で日本語に和訳して稟達に教えている。

 

授業終了間際、若干早口の英語でルビナスを褒める教師に対して、ルビナスは英語で礼を言い、終了。

そして、クラスメイトがルビナスに英語が上手かったことを褒めに来るより早く、稟達が近寄る。

 

「いや~、ルビナス凄かったな。樹にあんだけ言ってたから信じちゃいたけど、

 正直予想以上だった」

 

「ありがとね稟。まぁ、この授業に関しては正直チート的な所もあるんだけどね」

 

「チート?」

 

「ほら、昼休みに話した私特有の魔法。ぶっちゃけ”先生の英語”を理解してたんじゃなくて、

 ”先生が私達に言いたいこと”を読んでいたわけ」

 

「あれ?でも、授業中魔法が使われた気配はなかったけど…」

 

「シアでも感じなかったんだ。まぁ私も使ってる自覚は無いんだけどね。

 この魔法は無意識無自覚自動的に働くから、感知もされないらしいわ」

 

「そんな…そんなカンニング能力、羨ましいのですよ~!!」

 

「本当っす!稟君と話す為に日本語は頑張ったけど、更に苦労する英語を使えるなんて、羨ましいっすー!!」

 

英語が苦手なことを嘆き、会話に関してはチート魔法を有するルビナスを羨むシアと麻弓。

そんな二人に苦笑しながら、楓はふと思ったことを聞く。

 

「でも、言っている言葉を理解したのも凄かったですけど、英語も上手でしたね」

 

「う~ん、実は話す言葉に関してもこの魔法が働いてるのよね」

 

「と言うと?」

 

「この魔法は話したい相手と会話する為の魔法でね。

 話したい相手に対しては表層心理を読んで私の中にオートで入ってくる感じ。

 で、私が相手に伝えたい時は、相手に伝わる形で言葉が発せられるようになるの」

 

「お父様から聞いていましたが、すばらしい魔法ですね。

 …と言うことは、ルビナスさんが望めば言葉の壁は無いに等しいと?」

 

「そゆこと」

 

またしてもシアと麻弓が嘆いた所で、次の授業は体育で着替えなければいけないので、

会話そこそこに解散となった。

 

 

英語の次は体育の授業。例外を除き、多くの勉強を不得意とする者達が得意とする科目。

種目は男女両方ともバスケット。かなり広い体育館を半分に区切って男女分かれて行われる。

 

男子の方では、諸々の理由で運動神経が良い稟と、自称は伊達では無くこちらも運動神経が良い樹が大活躍。

時々女子の方から黄色い声も投げられる。

 

一方女子は。こちらにも黄色い声を投げられ、男女からの注目を浴びる者がいた。

ルビナスだ。モデル顔負な美貌とスタイルを有するルビナス。

その運動神経はこの場にいる全員より遥に上。

バスケは初めてだと言っておきながら、男子顔負けのプレーを見せている。

 

お陰で試合をしていないチームは例外なくルビナスの事を見ている。

 

女子全員の頭一つ分は高い長身、すらりと伸びる長い手足、

激しく動くたびに流れたなびくさらりとした銀髪、動くたびに揺れ動く肢体。

そのどれもが全員の視線をひきつける。

 

ルビナスが参加するチームも注目を集めている理由になる。

自分のこと以外は、特に稟に対してなら完璧超人の楓、

勉強は苦手でも身体を動かすなら得意であるシア、

前半身に重りとなるものがほとんどなく、ルビナスほどではないが背の高い麻弓、

運動は苦手でありながら必死に参加し、かえって萌え要素を振りまきまくっているネリネ。

稟のクラスの五大美女生徒が勢揃いしているのだ。

 

普段良く一緒にいるお陰か5人(ネリネは余り動けないから4人?)はかなり息が合い、

何をするのかを言わずとも視線だけで互いの意図を察して動いている。

 

しかし、やはり一番活躍しているのが、

 

「ルビナスさん!」

 

だ。背が一番高い為ゴールに入り損ねた球を拾うリバウンド役をしている。

楓がシュートした球は惜しくもゴールリングを転がり、入ることはなかった。

が、零れ落ちた球はルビナスが跳んで受け止め、それでもジャンプの勢いは衰えず、

そのまま上昇し、ゴールのボードの下端の高さまで頭が来たところで、

 

「はぁぁあああ!!」

 

リングを曲げんばかりの力で腕を振り、その輪の中にボールを突っ込む。

ルビナスはダンクシュートを決めた。

 

男子でも出来るものは少ないとされるダンクを、女子のルビナスが決めてしまった。

全員が唖然とする中、着地したルビナスは少し息を吐いてから振り向き、

達成感で満ち溢れた笑みを見せる。

 

直後、女子から黄色い声が上がった。

男子のほうでは、男子が女子に負けてなるかとダンクに挑戦しようとし、

しかし結局一人も出来ずに終わった。

 

 

この日の最後の授業は数学。

法則性を見つけ、それに則って公式を当てはめればできると言われる科目であるが、

その過程が困難であり、出来るできないの差が生まれるものである。

 

このクラスの出来る組である楓、ネリネ、樹etc…は出される問題をすらすらと解いていき、

当てられ黒板に書くように指示を受けても慌てることなく解答を書いていく。

 

そこそこ出来る組の稟、シアetc…は時々相談したり楓たちに質問したりしながら解いていく。

 

出来ない組の麻弓、etc…は反応様々。麻弓の場合は涙目で頭上から煙を出している。

 

そして、気になるルビナスはと言うと…これまた以外にも、出来る組であった。

来たばかりなのだから、という予想はことごとく外れていた。

 

滞りなく授業時間は過ぎて行き、やがて終了。

 

またしても質問の雨霰になるより前に、稟が傍によっていく。

 

「凄かったなルビナス。あんなに勉強できるなんて」

 

「そりゃあね。私と稟が再会したその2日後から今まで猛勉強したから」

 

「ぅぇえ!?た、確かルビナスが来たのって一週間と一寸前って言ってたわよね?」

 

「ええ」

 

「てことは…ルビナスさんってそんな短期間で今までの分の勉強をこなしたんですか?」

 

「そ。文型科目はともかく、理系科目に関しては優秀な先生が二人も一緒に暮らしてるから。

 ハリーもマオも現役の学者だから、教え方も分りやすかったし覚えやすかったわ」

 

「それでも、こんな短期間で授業に追いつけるほどまで出来るなんてすごいです」

 

「うん、頑張ったから。マオの言い方をすれば…」

 

「すれば?」

 

「愛故に!!」

 

「!?」

 

ルビナスの愛宣言に、それを聞いていた女性人の脳内に稲妻が走った。

目の前にいる美女は、僅か一週間と数日で自分達と同レベルの勉学知識を身につけた。

不可能と思われていたことを可能にした、その原動力が…愛。

 

ラバーズはこれを聞いて戦慄する。自分はここまで出来るのかと、

稟とこれ程までに強い絆が築けるのかと。

 

いや、してみせると。彼女達は愛への道に闘志を燃やすのであった…

 

 

~あとがき~

 

第20話『転校初日・後編』いかがでしたでしょうか?

 

前回は休み時間などのルビナスの周囲の光景に対し、

 

今回は授業時間に繰り広げられるルビナスの勉学スペックの話。

 

体育系はダントツトップ、理系は楓と同等、文系はそこそこ、英会話に関しては魔法のお陰で完璧。

 

正直チート設定はあまり好きではないのですが…

 

ここは”愛ゆえに!”と言うことでヨロシクです。

 

とりあえずこの辺で。

 

次回、第21話『放課後のドタバタ』お楽しみに。

 

ps.近々、ショタ一刀シリーズの番外編を出します。残念ながら本編とは無関係の、所謂妨害電波ネタです…スマソン

 

 


 
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