No.134923

真・恋姫†無双if story 「赤壁の前」

miroroさん

赤壁前、もしも一刀が桂花に……のif storyです。

2010-04-07 14:05:40 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:3372   閲覧ユーザー数:2898

 

呉への侵攻が決定してから数日。

 

一刀はある決意を持ってその軍師の部屋へ赴いた。

 

「桂花、俺だ。話があるんだけどちょっと良いかな?」

 

「何しに来たのよ!全身精液男!!私の部屋に近寄らないで!!」

 

「……、大事な話なんだ。筆頭軍師旬文若殿。頼むよ」

 

しばしの静寂の後、扉がゆっくりと開くと見慣れた猫耳フードが顔を出す。

 

「入りなさいよ。くだらない話だったらたたき出すわよ」

 

言葉とは裏腹に桂花の表情は優れない様に見えた。

「で?話って何?」

 

そう言いながら手ずから淹れた茶を一刀に差し出した。

 

「桂花が俺に茶を淹れてくれるなんて、ちょっと意外だな」

 

一刀が嬉しそうに湯飲みを取り茶をすすると桂花は少し俯いた。

 

一刀からは見えない様にしているが少し顔が赤らんでいる。

 

「う、うるさいわね!それぐらいの礼儀はわきまえているわ!

 

 それと、その湯飲みはもう使えないから持って帰ってよね!!」

 

一刀は苦笑しながら肯いた。

 

「それで?早く話しなさい。あんたとあんまり長くいると孕んでしまうわ」

 

「分かったよ。……、これは天の知識なんだけど、今度の呉との戦いは

 

 魏が負けるんだ」

 

桂花は一瞬驚きの表情を浮かべ何かを言おうとしたが一息つくと目で続きを

 

促した。

 

そこで一刀は知っている限りの事を桂花に話した。

 

黄蓋の偽降、兵士の水中り船酔いやそれに絡んだホウ統の連環の計、風向き

 

が変わる事やそこからの火計も。

 

それを真剣な表情で聞いていた桂花はすっかり冷めてしまった茶でのどを

 

湿らせ、目を閉じた。

 

しばしの静寂が二人を包む。

 

その沈黙に耐えられなくなった一刀が言葉を発そうとしたその時、桂花は

 

目を開いた。

 

「わかったわ。癪だけどあんたの話は筋が通ってる。風向きの事は調べて

 

 見てからだけど、それらにも対応出来る策を考えて華琳様に献策するわ」

 

「ありがとう」

 

一刀はそう言うと脱力した。

 

そこには何かをやり遂げたような満足した笑顔があった。

 

「なんで?」

 

「ん?」

 

「なんで華琳様に直接言わなかったの?いつもはそうするじゃない?」

 

「そうだな」

 

一刀はどこか寂しげな表情を浮かべて続けた。

 

「定軍山の事は覚えてる?」

 

「当たり前じゃない。それがどうしたのよ?」

 

「そう怒るなって。その時俺、体調が悪くなったろ?

 

 それで華琳は察したと思うんだ」

 

「何をよ?」

 

「大局に逆らった時に俺の身に何が起こるのかを。あの時は秋蘭個人の事

 

 だったけど今度はもっと大きく歴史がかわる。おそらく世界は俺の存在を

 

 ゆるさないだろう。そんな予感、いや確信が有るんだ。

 

 俺には、そしてきっと華琳にも」

 

「何?それで華琳様の判断が鈍るとでも言うの?馬鹿にするんじゃないわよ!」

 

桂花は怒りを露に怒鳴りつけてくる。

 

そんな事も分からないのかと。

 

「いや、覇王曹孟徳は間違わない。きっと最適な判断をして魏を勝利に導く

 

 だろう」

 

「じゃあ、何が問題なのよ?」

 

「覇王曹孟徳はね。でも寂しがりやの女の子はどうなるだろう?

 

 きっと華琳は呉を、そして蜀をも打ち破って大陸を制覇すると思う。

 

 でも……」

 

桂花は何か言おうとしたが口をつぐみ、そして別の事を口にした。

 

「どうして?風や稟では無くわたしに?あんたなら風を選びそうなのに」

 

「いや、俺も色々考えたんだぜ。それで桂花が1番だって思ったんだ」

 

桂花は大仰に胸をそらすと

 

「ふ、ふんっ。あんたにしては賢明な判断ね。任せておきなさい。

 

 華琳様に勝利を捧げるついでにあんたも天だかどっかに送ってやるわ!」

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

「さあ、分かったからさっさと出て行きなさい。変な噂でも立ったら生きて

 

 いけないわ。この全身精液孕ませ男なんかと!」

 

「はいはい」

 

そういって一刀は部屋を出て行った。

 

残ったのは桂花と二人が使った湯飲み。

 

桂花は一刀の使った湯飲みを両手で包み込むように胸に抱いた。

 

「あの馬鹿。持って帰りなさいって言ったのに何を聞いているのかしら」

 

しばしの静寂の中、桂花の呟きがもれる。

 

 

「どうして、わたしなのよ」

 

 
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