No.134782

恋姫異聞録46 -西涼の英雄-

絶影さん

涼州攻略編

おっさん達の活躍をお楽しみください^^この話は長くなると思います

馬騰の一人称は己と書いてオレと読みますのでよろしくおねがいします

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2010-04-06 19:36:18 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:15164   閲覧ユーザー数:12170

 

見渡す限りの平地、そこには曹の旗と馬の旗がにらみ合うように立ち並ぶ

 

曹の旗の後方には心配をして付いてきた魏の将と兵士達、わざわざここまでついて来ていた

 

眼前に並ぶ二万の騎兵、兵の中にいても二人の男のはっきりとした存在感を感じる

 

鉄のような重さを持ちながら熱く、包み込むような重圧感、はっきりとそこに居ると解るほどだ

 

「馬騰は鋒矢の陣を敷いて来ています。おそらく先頭は馬超でしょう」

 

「フフフッ、いかにもといった陣を敷くわね。騎馬の勢いそのままに私の頸を取るつもりね」

 

秋蘭の言葉に楽しそうに答えると、敵陣に眼をむけ口の端を吊り上げて笑みを作る

 

「俺達の陣形はどうするんだ?」

 

「手を借りるわよ、秋蘭」

 

華琳は俺の指を右手で握るとブツブツと言いはじめ、眉根を寄せる。また何度も頭の中でシミュレートしているのだろう

 

「大丈夫か華琳?」

 

その時、華琳が頭を押さえ始めた。どうやらやりすぎたようだ、頭痛が少し酷くなってしまったらしい

 

「ええ、問題ないわ。昭の評価と合わせていたら少し変な考えが浮かんでしまってね」

 

「変な考え?」

 

「気にしないでそれも想定しておくから・・・我等は牡陣を敷く、右翼秋蘭、左翼春蘭、中央は私と昭よ」

 

「「御意」」

 

そういって春蘭と秋蘭は俺の腕を握りはなすと、左右へ兵を引きつれ走っていく。その姿を眼で追いながら

俺は華琳の言う変な考えというのが少し引っかかっていた

 

「じゃあ行って来るわね」

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

俺に軽く微笑むと馬に騎乗し一人で前へと出て行く、果たしてどんな舌戦をするのだろうか

 

馬を進めると馬騰の方も兵達が道を空け一人で前へと馬を進める。腕を組み、ゆっくりと、まるで華琳が

小物扱いされているように見えてしまう

 

「貴方が馬騰ね、嬉しいわ貴方と戦うことが出来て」

 

「いかにも己が馬騰だ、天子様を騙し土地を蹂躙することは正に天に唾する行為。我等は貴様を許しはしない」

 

「何を言うかと思えば、乱世において民を平和に導くには」

 

馬騰はゆっくり華琳の言葉を遮るように手を広げて向けた、華琳は言葉を途中で遮られ少し不満な顔を浮かべる

 

「そこまでが盟主としての己の言葉だ、ここからは己自身の言葉を」

 

「・・・あははははっ!なるほどね、建前と言うこと」

 

馬騰は軽く眼を閉じ、そしてゆっくりと開けると先ほどとは別人のような殺気と闘気を纏う、重く熱くまるで気迫だけで

人が殺せるような、色に例えるなら真紅その異様とも言える気に当てられ華琳の跨る絶影は暴れだしてしまう

 

「貴様らに明日は無い、滅ぼしてくれよう覇王」

 

華琳は馬騰の気迫に怯む事無く、優しく絶影を撫でると覇気を・・・・・・優しさと守る意志に包まれた柔らかい

気迫を纏う、その覇気に安心したのか絶影は落ち着きを取り戻し大人しくなった

 

「我等は貴方を超えてみせる、英雄馬騰」

 

その言葉を聞いて馬騰は笑い声をあげ心から楽しそうに笑う、華琳も同じように笑いまるで二人は前から知り合い

で久しぶりの再開を笑い合うように見えてしまう

 

「貴様まで守る者の気迫を纏うのか、しかも覇気も持ち合わせるとは面白い」

 

「隣に見本が居るからかしら、何時も見てるからね」

 

「はっはっはっ、やはり面白い!舞王は己が貰うぞ、己の跡継ぎにする」

 

「それは勝ってから言いなさい、私が勝ったら貴方を前線で使ってあげるわ」

 

二人はまた笑い合うと振り向き自陣へと帰っていく、その顔は笑顔で今から遊びに行くのではないかと思わされる

 

華琳と馬騰は己の兵達の前に立ち止まると優しい笑顔を向けた、そしてゆっくりと口を開き

 

「我等は今より涼州を手に入れる。この戦いは天下に平穏をもたらす為の重要な戦となる。我等は英雄

馬騰を打ち倒し、英雄などではこの乱世が治めることが出来ぬと証明するのだ!戦え、友の為に、愛するものの為に

己の守るべき者の為に、この覇王こそが乱世を治める者だと天に証明して見せなさいっ!」

 

「己達は勇敢なる西涼のつわもの、天子様に使える忠義の兵!天を恐れぬ愚か者に我等が負けるはずなど無い

進め、喰らえ、打ち滅ぼせ、お前達には己が、この馬騰が着いている。英雄の兵に敗北は無いっ!」

 

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」」」

 

 

兵達は二人の大将の言葉に声を上げる。とてもあわせて四万ほどしか居ないとは思えないほどの声をあげて

 

 

 

 

「ただいま」

 

「御帰り、随分と楽しかったようだな」

 

「ええ、貴方を跡継ぎにするらしいわよ」

 

「そりゃ面倒な話だ、何時もあの気迫に怯えながら仕事をするようだし・・・」

 

「秋蘭に怒られるしね、もちろん私にも春蘭にも」

 

「違いない」そう答えると華琳は少し涙を滲ませて笑い出した。緊張はしていないようだ、不安も無いこれならいける

我等の覇王は負けはしない

 

「曹操様っ!あれをご覧くださいっ!」

 

一人の兵士があわただしく指を指す方向を見てみると、そこには信じられない光景があった

いや、想像は着いていたが常識がそれを許さなかったのだ、華琳の言っていた変なこととはこれか

 

「・・・・・・やはり、馬騰は己と将が先頭に立つことで兵達の士気を爆発的にあげているわね」

 

なんて奴らだ、鋒矢の陣の一番先頭に馬騰、それに続くように韓遂、馬超、馬岱が並んでいる。

大将が一番先頭など誰がするものか、討ち取られればその場で決してしまう。しかしそれを平然と

やってのけるからこそ英雄・・・俺の眼に間違いは無かった

 

「笑っているわね昭、私もこんな時だというのに楽しいと感じてしまう」

 

「御互い曹騰様の悪いところが移ったな」

 

「フフフッそうね、伝令っ!秋蘭の右翼を前へ、弩弓隊が一斉射撃を行った後、後方へ下がり春蘭の左翼を

前進させる。我等中央はそのまま動かず陣を偃月陣へと変える」

 

すぐさま伝令を飛ばすと同時に馬騰達は声を上げ突き進んで来る、威圧感を撒き散らし声をあげ、率いられる兵達は

まるで一本の槍の如く

 

「敵は弩弓隊で馬を潰すつもりか、盾用意!」

 

「「おお!!」」

 

韓遂の指示で後ろの兵達が大きな盾を背中から外し、空に向かい構えながら腕を組む馬騰の前へ飛び出す

馬騰は速度を落とさず、盾を構える兵達の後ろで笑みを絶やさない

 

「敵の出鼻をくじく!構えっ・・・撃てぇっ!」

 

秋蘭の指示で横一列陣を変えた兵達が一斉に矢を放つ、大量の矢は空を覆い確実に馬騰達を飲み込んでいく

 

「銅心、曹操は己が貰うぞ」

 

「矢が飛んできているというのに、まったくお前と言うヤツは」

 

矢が雨のように襲い掛かり、それを盾で防がれる後ろでは相変わらず腕を組んで笑みを絶やさない、その隣で韓遂は

やれやれと溜息をつく、対照的に後ろの馬超達は必死に盾で矢を塞いでいる

 

「父様危ないっ!」

 

「・・・騒ぐな」

 

馬騰は盾からそれて襲い掛かってくる矢を手で掴むとそのままボキリとへし折る

 

「まさかこの程度ではあるまいな覇王、己を失望させるなよ」

 

「鉄心よ、敵は俺たちと正面からぶつかるつもりだ偃月陣に移行している」

 

韓遂の言葉に更に笑みを作ると背負う十文字槍「銀閃」を掴み構え、握る手からはギシリと音が立つ

それを見た韓遂も更に笑い、指示を飛ばし始めた

 

「翠は舞王へ、蒲公英は雷光を、俺は魏武の大剣を貰う」

 

「む?ずるいぞ銅心、夏候惇も己の獲物だ」

 

「ずるいのはお前だ、一人ぐらい俺にもよこせ」

 

二人はそういって矢が降り注ぐ中を笑い合いう、後ろで矢に翻弄される二人は唐突に任された二人の将相手に

対して何かを言いたそうだが、防ぐことが精一杯で話すことが出来ずに居る

 

「翠よ、舞王はお前の婿になるかも知れん。嫌なら頸を取って来い」

 

「なっななななんだってー!!」

 

「はっはっはっ鉄心よ、よほど気に入ったのだな。蒲公英は適当に当たって来い、無理はするな」

 

「は、はぁ~い・・・っと、うわわっ!」

 

子供達の返事を聞くと、馬騰は矢が降り注ぐ終わりが解っていたかのように盾を持つ兵の間から一人突出し

それに続くように韓遂も兵の間から飛び出す

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」

 

二人の男はゆっくり息を搾り出すように吐き出すと、眼光鋭く闘気を纏い入れ替わった槍を構える重装備兵に突進していく

 

「慌てるな、突出してきた二人を狙おうと考えず、後から来る兵たちを確実に抑えるのだ!将は私に任せろ」

 

春蘭の指示に兵たちは深く腰を落とし、槍を構える。将を任せろという春蘭の言葉は兵達に安心と勇気を与える

 

「まずは貴様だ、俺の相手をしてもらおう夏候惇」

 

 

 

 

二人は足並みをそろえて槍を構える兵の頭上を跳び越し、韓遂は馬から飛び降り春蘭へと槍を振り下ろす

 

ガギィッ!

 

鈍い音を立て強烈な韓遂の一撃を受けると、あまりの攻撃の重さに方膝を地に付いてしまう

その様を笑みと横目で見ながら馬騰は華琳の元へと馬を走らせていってしまった

 

「ぐうっ!なんて重さだっ!この私が・・・くっ!」

 

攻撃を受け止めた春蘭は韓遂の手を見て更に驚いてしまう、武器を持つ手は・・・片手なのだ

 

「なっ!片手でこのような一撃をっ!」

 

「わざわざ馬から下りてやったというのにこの程度か?期待はずれだ、やはり曹操は俺が貰うべきだった」

 

「ぬぅっ!華琳様には指一本触れさせんっ!」

 

春蘭は全力で韓遂の槍を弾くと、韓遂は嬉しそうに笑う、そして両手でしっかりと槍を構えるその姿は山のよう

 

「いいぞ、本気を出せ。さもなくばお前の主は俺に殺される」

 

「させるものかっ!」

 

大剣を構え、韓遂に上段から斬りかかるが瞬時に後ろに半歩引いた韓遂に槍でいなされてしまう

いなした剣を地面に押さえ込み、槍を跳ね上げて春蘭の顔を襲う

 

「はぁっ!」

 

「フフッ!」

 

襲い掛かる槍を素早く引き上げた剣で弾く、まだ二合しか打ち合っていないというのに春蘭からは汗が噴出し

始めた

 

強い、呂布とまではいかないが、力ではなく槍の使い方がうまいのか?

 

「フフフッ、そろそろ我らの兵とお前達の兵がぶつかるな。生き残ったほうが自軍の前線を守ったことになる」

 

「確かに、だが私は負けない。昔義弟に約束したのだ、お前は私が守ると」

 

「前線が崩れれば舞王は殺されるか、心配はいらん鉄心は、馬騰は舞王が欲しいらしいからな」

 

「ならば余計に負けられん、義弟は妹のものだ。誰にもくれてやるわけにはいかん!」

 

そういうと春蘭は激昂の気合と殺気を放つ、そして力をぬいて立つと手に持つ大剣を指先でクルクルと回し始める

 

「む・・・・・・ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

春蘭の回す剣に何かを感じたのか韓遂はまた息を細く束ねるようにして吐き出し、今度は槍をしっかりと両手で

持ち先ほどよりもしっかりとした中段の構えを取る

 

「貴様の本来の構えはそれか」

 

「そうだ、元々は我流の剣が私の武、義弟が恥ずかしくないよう剣術を学んだにすぎん」

 

韓遂の顔色が変わり、鬼のような形相になっていく。韓遂もまた己の力を全て出し切ろうと握る槍に力を込めた

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 

韓遂の痛烈な一撃が春蘭の頭を狙い打ち下ろされるが、それを回転する大剣でいなされる。ベクトルを変えられた

槍は地面にめり込み、回転した剣の刃を指先で掴んだ春蘭の攻撃が韓遂の顎を狙う

 

「ぐぅっ!」

 

おおよそ剣術と言いがたい攻撃、予想の付かない所から大剣を剣ではなく棒のように使い柄や峰、そして刃を当てにくる

春蘭は器用に指先で剣を掴み、時には両手で剣を握り剣術として斬りかかっていく

 

「ちぃっ!それが貴様の剣か、この俺が翻弄されるとはな」

 

「フンッ!私の攻撃は似ているのだ義弟とな、だから負けはしない」

 

「ならば俺の技も見せよう、フンッ!」

 

韓遂はまた顔を真っ赤にすると今度は凄まじい速さで突きを放ってくる

 

「なにっ!」

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 

途切れることの無い連続の突きに春蘭は裁ききれず後ろへと飛びのくがそれを逃さないとばかりに

韓遂の踏み込んだ槍が襲う

 

ドスッ!

 

音とともに韓遂の槍が地面をえぐる、春蘭は狙いを定め一つの線となった攻撃を間一髪でいなしていたのだ

 

「クククククッ、やるな。面白い、長く楽しめそうだ」

 

「貴様もな」

 

すみません華琳様この男を倒し、其方に直ぐに参りますので。

 

春蘭は心の中でそう呟くと目の前の男に対し更に殺気を強めていった

 

 

 


 
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