No.134197

恋姫異聞録43

絶影さん

涼州攻略使者交渉

現在旅館で酔っ払いながら執筆しました
誤字脱字がありましたら申し訳ない

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2010-04-03 21:53:21 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:18423   閲覧ユーザー数:14020

 

 

「昭、秋蘭からこれを預かった。新しい鏃だ、前のものは関羽に斬られてしまったろう?」

 

春蘭は俺に小さな鉄の固まりを手渡してきた。秋蘭のくれた鏃は俺の命を救ってくれた、今回も俺のことを

思って春蘭に渡しておいたのだろう、俺はそれを受け取ると懐に仕舞い込んだ

 

「それほど嬉しいものか?」

 

「ああ、お前も嫁をもらえば解るさ」

 

華佗は「俺はまだまだ先になるだろう」と笑っている。その答えに俺は納得してしまった、華佗はそんなこと

といっては何だが多くの人々を病から怪我から救うことに全てを賭けるだろうから妻を娶るというのはまだまだ先の話だろう

 

「お待たせいたしました、馬騰様がお会いになられます。こちらへどうぞ」

 

俺達はあの後すぐに準備を整え隴西へと向かい、金城の馬騰へ面会の許可を書状で国境の兵に

手渡した。その後、大した日にちも経たず返事が俺たちの元へ届き、馬騰との面会直前というわけだ

 

「私は黙っている。それで良いだろう?」

 

「かまわない、俺が話をするし秋蘭からは俺のことを頼まれただけだろう?」

 

春蘭は事前に確認したことをもう一度俺に問うと、いつもの兵達の前に立つ凛々しい姿を見せてくれた

俺はその姿に安心をおぼえた、そうしていてくれれば俺は強くなれる。秋蘭だけではなく春蘭もこうやって

俺を支えてくれるのだ

 

案内され玉座の前に通されると俺は驚いてしまった!この覇気・・・華琳に引けをとらない!いや!

華琳以上だと!!

 

目の前の玉座に座る男は正しく 「英雄」 俺の背筋に鳥肌が立つ、その眼光は鋭く、熱をもち

包み込むような優しさが有りながら圧倒的な重圧感を感じさせた

 

「己が馬騰だ、魏の舞王で間違いないな」

 

「はい、私が魏の将、夏候昭でございます。この度は・・・」

 

俺は書状を開こうとすると馬騰は止めるように手を俺のほうに向けた。そしてゆっくりと手を戻し

俺を真直ぐに見つめてくる。強い・・・その一言しか出てこない馬騰の眼、俺にこの男を見抜けるのか

 

「己は面倒な事は嫌いだ、それに言葉も堅苦しいのは好まん。己のところに来たという事は戦だろう」

 

「ええ、俺達は馬騰殿と雌雄を決する為此処に着た」

 

俺の答えに馬騰は大笑いをする。そしてまた強くそして重圧感を持った眼を向けてくる。

この男は、英雄であると共に侠であるのか馬騰の眼からは天子さまに対する忠義心が俺に流れてくる

 

「良いだろう、西涼の力を見せてやる。なぁ兄弟」

 

「そうだな鉄心。天子様を独り占めし、この西涼にまで手を伸ばしてきた侵略者を天は許しはしない」

 

馬騰の隣で同じような覇気を持ちこちらに視線を向けてくるのは・・・韓遂か!なんて奴らだ!

冷たい汗が流れる。重圧で心が押しつぶされそうだ、何人もの英雄を見てきたがこれほどの

人物は見たことが無い

 

「クックックッ、兄弟!この男笑っていやがる」

 

「ほぉ、我等の前に立ち他の二人は強張っているというのに、貴様は笑うのか流石は舞王」

 

馬騰達に言われて俺は気が付いた、笑っているのか俺は?

 

そうだ・・・俺は狂喜している。英雄というのに相応しい二人、その二人に会えて俺は嬉しくて仕方が無い

超えてやる、この二人を華琳達と共に!曹騰様の悪い癖が俺にもあるのだ、こんな場面で楽しいと感じてしまう

 

「中央で見かけた時から面白いと思っていたが、敵でなければ己の娘を嫁にやっても良かったな」

 

「翠をか?それは面白いな、ならば西涼の舞王と言うことか」

 

その言葉で俺の頭に秋蘭が浮かぶ、そして俺の心にガチリと音を立て強固な鉄の支えが出来た

 

・・・・・・もう英雄二人の覇気は受けとめられる。俺は負けない

 

 

 

 

「・・・良い顔だ、貴様も侠か」

 

「侠かどうかは知らない、俺は自分の評価は出来ないからな」

 

「はっはっはっ!ようやく本当の顔を見せたというわけだ!生きる意志に満ちている!」

 

馬騰はよほど嬉しかったのか無邪気に笑っている。その隣では韓遂も楽しそうに笑っていた

俺は試されたのか、だが孫策の時のような気持ちではない。俺はそれが楽しいと感じてしまう

 

「俺が来た理由は何度も戦をする事無く、一度の総力戦で決着を着けたいと話しに来たんだ」

 

俺の言葉をきいて柔らかい笑みを見せた。そして韓遂のほうを見ると韓遂も同じように柔らかい笑みと

安堵が俺に眼を通して流れてくる。もしかして・・・

 

「・・・兵を考えてか、やはり侠だ。良いだろう」

 

俺は少し驚いてしまった。何も俺は条件を出していない、今のままなら必ず俺たちが勝つ

今の馬騰達には兵を出せて二万、それに対して俺達は四万は出すことが出来るのに

 

「はっはっはっ!己が何も条件を出さぬのが不思議か、慧眼ではそこまで読みとれんか」

 

「いや、貴方は俺達が兵を合わせてくると思った・・・いや、信じて・・・信じているのか!その眼はっ!」

 

更に驚いてしまった。当たり前だ、敵を今から血で血を洗う戦をするのにも関わらず、馬騰は敵を

俺を信じてしまっている。これが英雄というものか・・・

 

いや天子様に対する忠義心だ、敵対する俺達は天子さまを奉戴している

馬騰達の忠義は天子様に向けられているのだから、奉戴した俺達を通して天子様に忠義と信頼を見せているのだ

 

「己達が頂くのは天子様のみよ、どのようなことが起ころうとも己達の忠義は変わらん」

 

「狡賢く土地を奪ったとは思っていないと?」

 

「はっはっはっ!そう思うのは他の者達、だが他の者の心を蔑ろにしては盟主と言えん、そうだろう?」

 

大きい、劉備に近い器の大きさを持っている。そして揺るがぬ忠義心、俺達の敵になる相手はこれほどの者か

 

「兵科は騎馬だ、場所も平原にしてやる。己を超えようとする者よ、存分に相手をしてやろう」

 

「兵科を教えるどころか場所まで、まるでこっちが小国のようだ」

 

馬騰はまた大笑いをする、心に少し余裕のできた俺は隣を見てみれば春蘭と華佗はあっけにとられていた

無理も無い、今から相手にする敵がこれほどの者だとは思っていなかったのだろう

 

「話を聞いてもらったお礼に貴方の身体に巣食う病魔を取り除こう、我等には神医がいる」

 

「なっ!鉄心おまえっ!」

 

俺の言葉に韓遂は驚き馬騰に振り向く、馬騰は柔らかく笑うと韓遂に向けた視線を俺にもどし

 

「・・・ここしばらく血を吐くのが治まらん、黙っていて悪かった銅心」

 

「昔からそうだな鉄心よ、俺に心配をかけたくないなら正直に何でも話せ」

 

歯を見せて笑う馬騰はとてもよい笑顔で、本当に仲の良い兄弟だと思ってしまう。義兄弟だというのに

まるで俺たちのようだ

 

「流石は慧眼、己の病を見破るとはな。ありがたく受けよう、これで存分に槍を振えるというものだ」

 

「まてっ!」

 

馬騰が話を受けると部屋の外で聞いていたのか、一人の女性が扉を大きな音を立てて開き

ずかずかと中に入ってくると俺に詰め寄ってきた。腰にしがみ付き止め様とする少女が引きずられている

 

「敵の医者なんかに診せたら何をされるか解らないっ!もしかしたらそのまま殺される事だってっ!」

 

「ちょ、お姉さま!まずいって」

 

この娘は馬超!盗み聞きしていたのか?俺に詰め寄る馬超を見て春蘭が素早く腰の剣を掴む様子が眼に入った

まずいっ!

 

「翠、下がれ」

 

「だけどっ!」

 

「二度言わん、己の言葉が聴けんのか?」

 

馬騰が一睨みすると馬超は顔が青ざめブルブルと震えてしまう、隣の少女もガタガタと震えだし萎縮してしまう

俺はつい振える少女が季衣と流流に重なってしまい、気が付いたら馬騰との間に立ち怒気から守っていた

 

「ほぅ、面白い。貴様、守る者の気迫を纏うのか」

 

「子が親を思うのは当然の事、この子等に何も罪は無い」

 

「・・・はっはっはっはっ!!まったくその通りだ!翠よ己が悪かった、だがこの男は嘘を吐くような男ではない」

 

そういって柔らかく笑うと後ろの馬超達は深く息を漏らして安堵していた、よほど怒ったら怖いのだろうな

馬騰という人間は、親として少し見習うところがあるのかもしれない。俺は甘すぎるからな

 

「おじ様がああいうんだから大丈夫だよ」

 

「あ、ああ。久しぶりにあせったよ、ありがとう」

 

 

 

 

俺にお礼を言う馬超を見て、馬騰は嬉しそうに笑うと韓遂の方に顔を向けると俺に指をさしてくる

 

「な、良いだろう?あれは己がもらう、かまわんよな銅心」

 

「俺も欲しいが仕方あるまい、お前は言い出したら聴かんからな」

 

もう勝ったときの話をしているのか、それも俺を配下に置くつもりだ。だがそれが容易く行かないことを

思い知らせてやる。華琳は・・・覇王は絶対に負けない、俺達が必ず勝つ

 

どすっ

 

いきなり脚に軽い衝撃が走る。何だとおもい脚の方に視線を向けると、髪をぼさぼさに伸ばした少女がしがみ付いていた

髪は腰まで長く白く薄い紫、眉毛も長く真っ白、眼は濃く黒に近い紫色で緑色の長衣を着ている

 

「??」

 

「・・・・・・その男が気に入ったか扁風」

 

扁風と呼ばれた少女は首をコクリと馬騰を見て頷いた

 

俺を気に入った?この子は一体誰なんだ?まてよ、白い眉毛で馬家の者・・・もしかして

 

「えっ!いきなりどうしたのフェイ!しかもその」

 

パチン!

 

何か言おうとしたサイドポニー気味の少女の口を塞ぐように思いっきり叩いた、あれは痛いな・・・

 

「そいつは馬良、己の子だ。変わり者だが中々頭が回る」

 

子だって?俺の知っている馬良は馬騰と血のつながりなど無かったと思ったが、いやもうすでに俺の知っている

歴史と離れているんだ何が起こっても不思議は無い、信じるのは仲間と俺自身の眼だ

 

「そいつを連れて行ってくれ、魏の舞王を気に入ったようだ」

 

「なっ!自分の娘を敵に渡すのか?」

 

「己の娘の道は娘自信に決めさせる。それが間違っているならば止めるがな」

 

俺は脚にしがみ付く少女を見ると真直ぐ俺を見ている、やはり扁風という真名で心を読めないが

何か決意をしているようには見えた

 

「うぅ・・・」

 

馬超は何か良いたそうだが父親に逆らうことが出来ないのだろう、さっきの様を見たら納得はいくが・・・

 

「己の娘を心配してくれるのは嬉しいが、そいつは舞王を気に入っただけで着いていくのではない」

 

「鉄心の娘は馬家が生き残る為に魏に行こうとしているのだ」

 

俺は言葉を失ってしまった。なんと言うことを考えるんだこの少女は、どちらが勝ち残っても馬家がなくならない

ように自分を魏に置こうとしているのか!確かにそうなれば馬家の血筋は絶えることが無い、しかしそのためには

父親と戦わなくてはならないというのに、だからこそあの決意の眼か!そう思ったら俺は馬良の頭を優しく撫でていた

 

「解った、この少女の心を無にする事はしない」

 

「娘を頼む、話は終わりだ。滅ぼしてやろう覇王、そして舞王よ」

 

馬騰と韓遂は口の端を吊り上げ笑みを作り先ほど同じように覇気を放つ、しかし俺はもう怯む事はない

秋蘭が、春蘭がそして遠くから華琳達が俺の心を支えてくれているのだから

 

「俺達は貴方達を超える、西涼盟主馬騰そして韓遂」

 

そうだ、負けはしない必ず超えてみせる。華琳こそ、俺達の覇王こそ皆を平和に導くことが出来るのだから

馬騰よ、いかに英雄であろうとも覇王が雄飛する為の踏み台にしかならないことを証明してやる

 

 


 
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