俺は、今際の際に華琳達と再会することが出来た。
あの時は、本当に嬉しかったんだ。
どれほど望んでも、会うことが叶わなかったから。
なのに俺は、一人で何もない暗い空間を漂っていた。
そう、俺は今一人だった……。
もう二度と離れないと。皆の傍を離れないと約束したのに。
やっぱり、あれは幻だったのか。
――いや、あれは幻なんかじゃない!
頭じゃなくて、俺の心がそう叫んでいるのが分かるから。
なら、俺はまた華琳達との約束を守れなかったのか。
本当にごめん。ごめ、ん、華琳……皆。
『想いの残照……数多の乙女の願い……願いの欠片……』
誰、だ……? いや、もういい。
華琳達との約束を二度も破ってしまったんだ。
このまま一人で、この死後の世界にいるのもいいさ……。
『乙女の願い、発端者の願い。それは、新たなる外史の世界の創造の鍵。
外史であり、正史である世界の創造。
死に行く瞬間の願い、永久の別れの瞬間の願い。
汝らの願いは、一つの世界を創るに値する想いなり』
外史? 正史? ……一体、この声はなんだ?
幻聴じゃないのか?
『悲しみに暮れる乙女達の願い。今際の際の乙女達の願い。
今、それが一つの世界を創造する。一つの世界の扉を、今開かん――』
声が途切れると同時に、俺は――空間は光に包まれた。
その瞬間、俺は自分という意識が途切れたのが、なぜか分かった。
『二度と、汝らが離れることはない。死が汝らを引き離すこともない。
世界たる我は、汝らの想いを認めよう――』
ある世界のある大陸で、一つの噂が大陸に広まった。
『後に、光に包まれた男児が産声を挙げる。
産声の主は、後に起こる乱世を優しさと力で包み込み、大陸に永久の平和を齎(もたら)すであろう』
という噂が。
誰がその予言を口にしたのかは、誰も知ることはなかった。
気付けばその噂を一人、また一人と口にしていたのだから。
その噂を耳にした人は、恐怖に慄(おのの)いた。
今の平和が崩れ、戦乱の世になるのではないかと。
この噂の出所が分からない王朝は、人々に緘口令を敷くこととした。
『噂を口にした者は、どんな立場の者でも刑に処す』と。
同時に、昼間に生まれた男児を隠す者達も出てきた。
光に包まれた男児とは、昼間に生まれた男児ではないかと考えた結果だった。
緘口令が敷かれてから、数ヵ月後。
一つの家で、一人の男児が産声を挙げた。
満月の光を浴びながら――。
そして物語は、男児が生まれから七年後から記されていく。
――今、外史の扉は開かれた。
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アンケート、本当にありがとうございました。
アンケートを下さった皆様、『想いの帰る場所』をご覧下さった皆様に、心からの感謝をこの場をお借りして贈らさせて頂きます。
以下、作品の説明をさせて頂きます。
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