よい子の童話劇場2『狼と7匹の子アルパカ』
とあるところに、アルパカの一家が住んでいました。
ある日、アルパカ母さんが食料(アルパカ父用・スイセンの葉)を買いに街へと出かけることになりました。
アルパカ父の保険金を貰うための毒薬を買いに行くので、こどもたちはお留守番させることにしました。
「いい? 母さん以外の人が扉をノックしても開けておうちに入れてはいけませんよ? 父さんでも入れてはいけませんよ? いい? 絶対に父さんはダメですからね」
「「「「「「「はーーーーーーーい」」」」」」」
こどもたちの返事に安心してアルパカ母は街へと出かけました。
「しめしめ……アルパカ母は出かけたな。今がチャーンス!」
物陰から狼がアルパカ母の出かける姿を目撃していました。狼はお腹をすかせていた様子で、子アルパカを食べてしまおうと目論んでいました。
狼がそう企んでいるとは知らず、子アルパカ達は家の中でのんきに遊んでいました。
すると、その時……
トントン
とノック音が聞こえてきました。長男のアルパカ太郎が扉の先に問います。
「どなたですか? 父アルパカは家庭裁判所からちゃんと許可書を持ってくるまで入れませんよ?」
「父アルパカじゃないわ、母さんよ。扉をあけて頂戴」
明らかに声はしゃがれていて、アルパカ母の声ではありませんでしたが、子アルパカ達は扉を開けてしまいました。
「よし、扉が開いたぞ! いただきまーす!」
と狼が口を大きく開けたそのときです。
『ねぇねぇ? 君、毛深いけど暑くない? 僕も暑いんだけどさ』
『ねー? 俺、コールスロー派なんだけど、おめぇ、何派よ?』
ずずいっと、狼に迫り来て質問責めにする子アルパカ達。狼は現状を飲み込めずにいました。
『アンタは、目玉焼きにソースかける? 私は醤油じゃないと許せないんだよねぇ』
『ピラフの彩りってさぁ、いんげん入れる? それともピーマン?』
『趣味はなんでちゅか? 僕は絶対王政でしゅ』
『ってか、俺の話聞いてる? お前もコールスロー派かって聞いてるんだよ!』
『こんな馬鹿の相手はせずに、ねぇねぇ。貴方はヘミングウェイ式自殺って素晴らしいとか思わない?』
止むことのない子アルパカ達の猛攻に狼は後ずさることしか出来ないでいました。
『なぁなぁ? どんな気分? 今、どんな気分?』
『メシウマとか経験したことある?』
『拙者、こう見えてもアルパカでござんすが……』
『月極って会社じゃなかったらしいよ、知ってた?』
狼は子アルパカ達の質問がだんだんとうざったくなり、
「うるせー!お前ら静かにしろ!」
と立ち上がり叫んだその時……
ピシッ
「え?」
なんと狼が立ち上がったいたのは脆い崖だったのです。立ち上がった衝撃で崖が崩れ、狼は、谷底へ消えていきました。
谷底へ消えていった狼を見届けた子アルパカ達は、
「計画通り」
とボソッと呟き、おうちへと帰っていきました。
そのあと、アルパカ一家はアルパカ父の多額の保険金で幸せに暮らしましたとさ。
【めでたしめでたし】
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