No.133745

恋姫異聞録42

絶影さん

涼州攻略準備中です

内容は準備話、次回は涼州へと向かいます

今回は短めですが申し訳ありません

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2010-04-01 23:40:54 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:17720   閲覧ユーザー数:13677

 

 

「それで、劉備の動きはどうなんだ?」

 

周りでは沢山の人たちがあちこちで卓を囲み、料理に舌鼓を打ちながら話しに花を咲かせ

手に持った酒をうまそうに煽っている。ここのところ酒も華琳の研究のお陰で随分と安く飲めるように

なってきたためか、酒家に集まる人々も増えてきたようだ

 

「大きな動きは無いわね、あの時の敗戦がよほど響いているみたい、でも黄忠と厳顔を引き入れたという話は

聞いたわよ」

 

そういうと詠は酒をぐびぐびと飲むと「ぷはっ」と言いながら口から酒を放すと俺のほうに視線を向けて

にやりといつもの笑い顔をしてきた。黄忠と厳顔かなるほど、どうやって仲間に引き入れたかは知らないが

やはり大きくなるな。 次に見えるときは華琳の相手として不足が無いと思った方が良い

 

「腕の方はどうなの?」

 

「大丈夫だよ」

 

「無理してるのバレバレよ、華佗と一緒に診療してるんだから耳に入るわ。針を打ってもらってるんでしょう?」

 

正面に座る詠は俺の腕に魚の骨を飛ばしてくる。酔っ払ってるなまったく、しかし気が付いていたというか

耳に入っていたか、俺の腕に微かに痺れがあることを

 

「この間も舞を試したって秋蘭から聞いたわよ、腕を心配していたから適当にごまかしておいた」

 

「ありがとう、俺ではすぐに顔に出るから」

 

「まったく!」そういって溜息を吐き、またグビグビと酒を煽っている。本当に感謝している詠、秋蘭が

知ってしまったらきっと驚くほど悲しませてしまう。そんな顔は絶対に見たくは無いんだ

 

「そういえば何でアンタは天子様奉戴の時一緒に来なかったのよ」

 

「あたり前だろう?俺は何の位ももっていないし、天子様と顔を合わせたのも節句の時に舞を見せたくらいだ」

 

「そうだったの?天の御使いって言うくらいだから封爵ぐらいされてるかと思った」

 

確かに普通ならそう思うだろうが、曹騰様が俺を守る為に封爵することを断り続けた。まだ力の無い俺が下手に

位など着けば周りの欲望に翻弄されそれこそ道具のように利用されると考えてくださったのだ。

 

「変に位などあれば動きづらくて仕方が無いよ、それよりも流石だな天子様をあれほど早く奉戴するとは」

 

「まあね、僕と月は洛陽を守っていた時から劉弁様と劉協様とは話しの御相手をさせていただいていたわ」

 

詠は自慢げに言うと俺の分の肉団子を奪い去り、その口にいれてうまそうに食べていた。話してあげるから

これは話しの代金よと目が語っている、俺はそれをやれやれと溜息で返した

 

「御二人姉妹はとても聡明で、劉弁様にいたっては何進の血筋とは思えないほど物分りの良いお方。

なのにもかかわらず自分には能力がないと妹の劉協様に位を譲ったのよ!すごいと思わない?」

 

一気に語り着るとまた酒を笑顔でぐびぐびと煽り始めた。呑みすぎじゃないのか詠、いつものニヤリとした

笑顔ではなくニコニコとした笑顔になっている。これはこれで可愛いものだとは思うが大丈夫なのか?

 

「だから私達が洛陽に行った時にはもうどういった話をされるのか御想像されていたようで、華琳の話を

すぐに承諾して下さったわ!詠と月が信頼を置いているのならばとね!!」

 

なるほど、詠は自分のことをそこまで御二人が信頼してくれたのが嬉しくて仕方が無かったんだな

「呑みに行くわよ」といわれた時はいつもの月の話しかと思っていたんだが、今日はそういうことだったのか

 

「詠とはよく呑みに来るが、月以外の人物の話を詠から聞くのは初めてだ」

 

「そう・・・?たまにはいいじゃない!」

 

魏に降ってから詠とは良く呑みに行っている。何と言うか気が合う、秋蘭たち以外にこんな風に二人で

呑みに行くなど華佗と詠くらいだ、詠から言わせると俺にはどうせ見抜かれるし色々気を使わなくて楽だし

嫁がいるから変に手を出される事はないからということらしい、秋蘭も詠に対しては呑みに行っても何も言わない

まったく心配が要らないと思っているんだろう

 

「それでこれからなんだが」

 

「戦になるわよ」

 

そういうとまた酒を煽り始める。帰りは背負って帰るようだな、月に謝らないといけないなこんなになるまで

飲ませてしまったのだから

 

「そうか・・・」

 

「そんな顔しないでよ、予想は着いていたでしょう?馬騰が黙っていないって」

 

「ああ、解ってはいるんだがな」

 

「戦はそれほど長くはならないわ、涼州の半分は僕達のものになったから」

 

俺は詠の言葉に驚いた、涼州がいきなり何もせず半分手に入っただと!どういうことだ?

 

詠の話しによると元々は天水に拠点を置いていたが、洛陽を守る為に軍を移してがら空きになった天水に

反董卓連合が押し寄せ、全てが終わった後は西涼の馬騰が天子様に地をお返ししますと言い、今は劉弁様が

禁軍の数を増やし天水に至るまで涼州の半分を御二人が統治なされていたようだ

 

「太守も立てずにか!すごいな御二人は!」

 

「そうでしょう!でもそのせいで馬騰達との戦いは避けられない物となったわ、使者は送るけど意味が無いでしょうね」

 

「・・・納得しないだろう、馬騰殿達は天子様を華琳が独り占めし、狡賢く土地を奪ったと見えるだろうな」

 

俺は目の前の酒に移る光を見ながら少し考え込んだ、戦は避けられないだろうし華琳はその戦いを

望むだろう。ならば俺がする事は何だ?兵を少しでも死なないようにしたい、それと同時に華琳の望みを

かなえたい、相反するこの思いはどうしたら良い・・・・・・

 

「・・・なぁ詠」

 

「くかぁー・・・くかぁー・・・」

 

詠の方に視線を向けるとそこにはだらしない顔で卓に突っ伏す詠がいた

まったく、仕方ないな孤児院まで背負って帰るか

 

俺は詠を背負いながら孤児院へと歩く、空には美しい満月が夜道を照らしている

 

「行ってみるか使者として・・・・・・」

 

魏王と同じ身分の俺が行けば少しは変わるかもしれない、いや最悪でも一度の戦で済むように

出来れば良い、交渉しだいでは納得するかもしれない。いまや魏は大国といっても過言ではないし

相手も単純に兵力を比べてしまったら勝てる見込みは少ないだろうから乗ってくるかもしれない

 

「むにゃ・・・好きなように・・・やりなさいよぉ」

 

「クックック・・・解ったよ、好きなようにやるさ」

 

寝ぼけている詠を背負いなおし孤児院へと歩く、愛する者の為、守る者の為に生き残るそれが俺たち覇王の兵

だからこそ俺は全力を尽くす。たとえ交渉が失敗し馬騰の目の前でこの命を狙われようと生き残ってみせる

 

 

「起きてくれ、朝だぞ」

 

「・・・あぁ秋蘭、おはよう」

 

いつものように優しい掌の感触で起きる。一日の中で一番至福の時かもしれない、愛する人の優しい

手で俺は眼を覚ます。夢の中で俺の現実としてあった時には味わえなかったこの僅かな幸せ

愛する人を守る為ここに居るのだと俺は実感できる

 

「昨日帰ってきてから私に話したこと、本当にするつもりか?」

 

「・・・ああ、使者として馬騰殿のもとへ行ってくる」

 

「止めても無駄だろうな、それならば姉者を連れて行け。それが条件だ」

 

起き上がろうとする俺の肩を手で押さえつけて、覗き込み困ったような笑顔を俺に向けてくる

心配なのに、俺の気持ちをいつも大事にしてくれる。だからこそ俺は頑張れるんだ

 

「ありがとう、それからゴメン」

 

秋蘭は首を振ると目をつぶって俺の額に自分の額を当てる・・・・・・しばらく柔らかい時間が流れ

額を離すと、秋蘭は俺と一緒にいない、部下と会っている時のクールな顔を見せた

 

「行って来い、華琳様の将に失敗は許されんぞ」

 

「・・・ああ、行ってくる!」

 

俺は身体に力が漲ってくる、秋蘭が俺を信じてくれている。それだけで力が湧いてくる。

死ぬものか、俺は絶対にここに帰ってくる

 

 

「華琳、馬騰殿との・・・」

 

「解ってるわ、行ってきなさい」

 

「華琳」

 

玉座の間には俺と華琳の二人、玉座に座る華琳は俺を柔らかく微笑みながら、その眼は俺を信じている目だ

 

「ああ、春蘭と華佗を連れて行く」

 

「華佗を?」

 

「おそらく馬騰殿は身体を患っている」

 

「天の知識ね、解ったわ。私も馬騰殿とは正面から何の邪魔も無く雌雄を決したい」

 

「解っている。華琳の願い、そして兵の命、俺は両方を全てとる事は出来ない。だがいずれ戦わなくてはいけないならば

せめて兵達を、兄弟達を失わぬよう一度の戦で終わらせて見せる」

 

それで十分と良い笑顔を見せてくれた、やはり華琳も兵達のことを心配していたのだろう。戦の回数が多くなれば

死ぬ兵が多くなる。ならば総力戦で、一度の戦で、出来ることなら将の一騎打ちだけで戦を終わらせたい

 

「失敗したら御仕置きよ」

 

「そいつは嫌だ、だから失敗しないよう頑張るよ」

 

そういうと玉座の間を後にする。後ろで華琳が優しく微笑み俺を見送っていた

 

さて春蘭に話しに良くか、華佗にも着いてきてもらわなくては、馬騰か・・・・・・

クックックックッ、また悪い癖が出てきた。英傑に会えるのか、見抜いてやる

馬騰という人間を、やはりいつまでたっても英傑に会える楽しみはなくならないな

 

 

 


 
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