No.133576

魏√アフター 想いの帰る場所――(試作品的に作ってみました)

夢幻さん

タイトルにあるように、試作品的な意味合いで書いてみました。
正史に戻り、天寿をまっとうしようとしている一刀が、最後に見るのはなんだろう?
と、彼方の面影を聞いてて思ってしまい、勢いで書いてしまった作品ですので、そんなにいい物ではないかもしれません。
元々、二次創作を書いていたのですが、最近は書いていなかったもので……。
なので、暖かい目で見てくれると嬉しいです。

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2010-04-01 06:48:59 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:7749   閲覧ユーザー数:5745

 

 ワシ――いや俺は、あの世界から帰ってきてしまった。

 生涯愛し続けると、ずっと傍にいると、心から約束した寂しがりやの女の子を置いて。

 置いてきてしまったのは、彼女だけじゃない。

 王佐の才と呼ばれ、彼女を心から愛している女の子も。

 妹と共に、寂しがりやの女の子の矛になり続けた女の子も。

 姉と共に、寂しがりやの女の子を支え続ける女の子も。

 俺を兄と慕ってくれた女の子達も。

 俺を隊長と慕い、ずっと着いてきてくれた女の子達も。

 心を開き、俺を支えてくれた女の子も。

 その女の子の親友であり、寂しがりやの女の子を愛している女の子も。

 戦が終わったら、一緒に旅をしようと約束した女の子も。

 心から楽しい想いをさせてくれる女の子達も。

 

 俺は――皆を置いてこの世界に帰ってきてしまった。

 皆の処に帰る手段を探し続けたけど、その手段は遂に見付ける事が出来なかった。

 じいちゃんの道場を継いで、時間に余裕も出来て、ずっと探し続けたんだけどな……。

 何週間も、何ヶ月も道場を空けているのに、それでも残ってくれた門下生には感謝してる。

そのおかげで、俺は世界中を旅する事が出来たのだから。

 だけど、今際の際が訪れた今まで、あの世界に戻ることが出来なかった。

 彼女達に会えたのは、今生の中でも最高の出来事だった。

 様々な人と会って、結婚をしないのかと聞かれたけど、俺にその選択肢は無かった。

 どんな女性と知り合っても、どこかで彼女達と比べてしまっていたから。

それはその女性にも失礼な事だし、俺自身にそんな気が起きなかったから。

 

 ああ、だけど。

 こうして自分の周りに、沢山の人がいてくれた。

 そのことだけは、こっち世界でも本当に嬉しい。

 もう皆の声は聞こえない。それでも、まだ近くにいてくれることが分かるから。

 

 少しでも彼女達に追いつきたいと思ってしていたことが、沢山の人と知り合わせてくれた。

 だから……許してくれるよな? 華琳。

 

『――どうしようかしら?』

 

 ……とうとう、お迎えが来たようだ。

 だけど、神様も酷いな。

 ずっと聞きたかった声で、迎えを寄越すなんて。

 

『本当にあなたは、相変わらずね。まあ、少しは見直したわ。

私達を置いて帰ったのに、何もしてなかったなら、その頸を斬ってるわよ?』

 

 そっか。俺も少しは華琳に認められたのかな。

 俺が求めてる言葉だとしても、華琳がそう言ってくれたんだから。

 

『はぁ……。いい加減、目を開けなさい!

態々、私が来てあげてるのよ?』

 

 おかしなことを言うなぁ。

 もう、俺には目を開ける力なんて、少しも残ってないのに。

 

『だから、目を開けなさいって言ってるのよ!

それとも、私の言うことなんて聞けないのかしら?』

 

 はいはい、分かりましたよ。

 目を開ければいいんでしょ。あけれ、ば……。

 

『まったく……。やっと私を見たわね、一刀。

私をここまで待たせる男なんて、あなたくらいよ?』

 

 本当に神様は残酷だ……。

 死神を華琳にするなんて……。いや、似合ってるって言えば似合ってるけど。

 

『死神? また私の知らない言葉で、言い逃れる気?

仕方ないわね。きちんと、お仕置きしなければいけないみたいね』

 

 ああ、本当に華琳みたいだ。

 これで、春蘭や秋蘭達がいれば完璧だな。

 

『……どうして、ここで春蘭達の名前が出るのかしら?

そう。一刀は私よりも、春蘭達の方が会いたかったのね。

ごめんなさいね、気が利かないで』

 

 そりゃあ、春蘭達にも会いたいさ。

 でも、華琳。

 例え幻だったとしても、俺は華琳を見れて、声が聞けた事が一番嬉しいよ。

 

『そ、そう。ならいいわ。

……それであなたは、天の国に戻ってから、どう過ごしていたの?』

 

 こっちに戻ってからか?

 恥ずかしい事に、最初は泣いたなぁ。

 華琳と別れる時はさ。何とか泣かないでいられたんだ。

 だけど、こっちに戻ってきて、もう華琳達に会えないって事を、

本当に理解した時に我慢できなくてね。

 それで、少しでも皆といた時間を無駄にしたくなくて、自分に出来ることをしようと思ったんだ。

 じいちゃんに一から鍛えなおしてもらったり、少しでも役立ちそうな物を覚えたりね。

 ……まあ、お世辞にも、そんなに強くなれなかったけど。

 でも、学校を卒業すると同時に、旅をすることを許されてさ。

 それから、皆の……華琳の処に帰る手段を探したんだ。

 見付けることは出来なかったけど……。

 その旅の時に、色々な人と知り合ったんだ。

 劉備さんみたいに、戦争を話し合いで止めようとする人。

 孫策さんみたいに、色々な人を嵐みたいな騒ぎの中心にいる人。

 それに――華琳みたいに寂しがりやなのに、周りにそれを見せないで、頑張る人とかね。

 本当に色々な人に会ったよ。

 

『そう……。あなたも、こっちに戻ってから、精進を忘れなかったのね。

なら、いいわ。本当に許してあげる。

それで、あなたは結婚したの?』

 

 おいおい。華琳までそれを聞くのか?

 まあ、してもいいかな? って思った人は一人いたけどさ。

 やっぱり、出来なかったよ。

 女々しいって言えばそれまでだけど、どうしても華琳達を忘れらなくてさ。

 

『本当に女々しいわ。

――でも、悪い気はしないわね』

 

 そっか。じゃあ、そうししてよかったよ。

 ――それで、いつあの世に連れて行ってくれるんだ?

 だけど、ありがとう。

 例え偽者でも、もう一度だけ華琳に会わせてくれて……。

 

『ちょっと、一刀! 私が偽者ってどういうことよ!』

 

 え? だって、華琳がこっちにいるわけないし、それに昔の姿のままだぞ?

 それに、俺は死に掛けてるんだ。本物の華琳と話せる訳ないだろ?

 

『こ、このバカ……! いい? 私は正真正銘、曹孟徳!

あなたと、あの乱世を共にした者!

……私を愛してたなら、本物か偽者かくらい見分けなさいよ。

ここで、あなたが来るのを待ってた私が、バカみたいじゃない……』

 

 ここで待ってた? じゃ、じゃあ本物の華琳なのか?

 

『そう言ったでしょ! ……本当にバカなんだから』

 

 ご、ごめん、華琳。でも、だってさ。

 あんなに会いたかった人と、今際の際に会えるなんて、思わないだろ普通。

 

『まあ、そうね。私も、本当に一刀と会えるなんて思いもしなかったもの。

……さてと。私だけ話してるのも不公平ね。そろそろ行くわよ』

 

 行くって、どこにだよ。

 

『あなたね……。この先で、あの子達も一刀を待ってるのよ。

まあ、王の権限で、最初に一刀と会うのを認めさせて、待たせるんだけど』

 

 華琳、それ職権乱用……。

 

『う、うるさいわね! こんなに長い間、私達を待たせたあなたがいけないのよ!

いいから、黙って着いて来なさい! ……少しは察しなさいよ、バカ』

 

 ちょ、華琳! そんなに引っ張るなよ!

 

 

 俺が華琳に腕を引かれて少し行くと、沢山の光が集まっていた。

 

『この馬鹿者! 何時まで華琳様や私達を待たせるんだ!

……ま、まあ。きちんと私達の処に帰ってきたからな。

仕方ないから許してやろう! まあ、なんだ……よく戻ったな!』

 

 ――春蘭。

 

『姉者はかわいいなぁ。

……遅刻したことは許してやる。だが、もういなくなるなよ?

私はもちろん、皆悲しかったんだからな? それと、お帰り』

 

 ――秋蘭。

 

『この屑! 華琳様を何時まで独り占めしてるのよ!

っていうか、こっちに来ないでよ! 孕むでしょ!

近付くなっていってるでしょ! この屑! 全身精液男!

ふんっ……まあ、よく戻ったわね』

 

 ――桂花。

 

『兄ちゃん、遅いよ! もう、待ちくたびれちゃったよ!

でも、帰ってきたから、許してあげるね! お帰りなさい!』

『兄様、遅いです! また、沢山のお料理を教えて下さいね?

お帰りなさい』

 

 ――季衣、流琉。

 

『隊長、遅いです。ですが、帰ってきてくれて、本当に嬉しいです。

お帰りなさい』

『隊長、遅いで! 皆、待ちくたびれてもうたわ!

しゃーないから、新しいカラクリで手を打つわ!

それから、お帰りや!』

『隊長、遅いの! 沙和、おばあちゃんになっちゃうと思ったの!

でも、帰ってきてくれたから、許してあげるの! お帰りなさいなの!』

 

 ――凪、真桜、沙和。

 

『一刀、遅いで! ウチをどんだけ待たせるんや!

まあ、遠乗り付き合ってや! それで許したる! それから、よー帰ったな!』

 

――霞。

 

『おにいさん、遅いです。風は、待たされて喜ぶ変態さんじゃないのですよ。

でも、風達の処に戻ってきたので、許してあげるのです。

おにいさん、お帰りなさい』

 

――風。

 

『一刀殿。皆をこれだけ待たせたのです。

戻ってから、たっぷりと仕事を手伝ってもらいますからね?

何はともあれ、お帰りなさい』

 

――稟。

 

『一刀~! 私達頑張って大陸制覇したんだからね!

その時に一刀はいなかったけど、帰ってきたから許してあげるね!

お帰り、一刀!』

『ちぃ達を置いていくなんて、バカ一刀くらいなんだからね!

で、でも、ちゃんと帰ってきたから、仕方ないから許してあげるわよ!

お帰り、バカ一刀!』

『一刀さん、また私達の歌を聴いてください。

それで、いなくなったことを許してあげます。

お帰りなさい、一刀さん』

 

――天和、地和、人和。

 

『ふふ。皆、一刀が来るのを待てなかったみないね。

さて、一刀。よく、私達の処に戻ってきてくれたわ。

これだけのいい女達が、皆あなたの帰りを待ってたのよ。

だから約束して。もう二度と、私達の前からいなくならないって』

 

 ああ、約束するよ、華琳。

 俺はもう二度と、皆と離れたりしない。

 俺はずっと、皆の傍にいる――。

 

『約束したわよ? ――じゃあ、私達の家に帰るわよ!』

『応!』

 

 俺は皆の処に帰ってこれた。

 これは俺の願望が見せてくれた、最後の夢かもしれない。

 それでも、皆が俺に言ってくれた言葉は、嘘でも幻でもない。

 そう感じるんだ。

 

『ちょっと、一刀! 早くこっちに来なさい!』

 

 華琳の言葉に皆が、俺を笑顔を浮かべて見ていてくれる。

 ああ、本当に帰ってきたんだ。

 だから俺は、皆にこう応えることが出来るんだ。

 

『皆、ただいま!』

 

 俺の言葉と同時に、俺達はあの暖かい場所へと戻っていった。

 苦しい時も、悲しい時も、嬉しい時も。

 皆で感じることが出来ていた、あの場所に――。

 

 
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