不幸の手紙
[これは、不幸の手紙です。
誠に申し訳ございませんが、あなた様が受け取りましたこの手紙と同じ文章の手紙を、お知り合いのご友人、二名様以上にお送り下さいますようよろしくお願い致します。
お忙しい中、誠にご面倒とは存じますが「チェーンレターを切ると不幸が訪れる」と古くから伝えられております。悪戯と考えてゴミ箱に捨てることだけは、ご遠慮下さい。
最後に、続きの手紙は、きちんと手書きの文章を、郵便で三日以内に投函いただけますよう、よろしくお願い致します。かしこ。]
俺はいかにもかしこまった封筒にはいった不幸の手紙を見て、ついに来たかと思った。
近頃、うちの高校では不幸の手紙が流行っていた。誰が始めたか知らないが、誠にもって迷惑な話しだ。
たかが不幸の手紙、そんなもの無視すればいいと思うのだが、以前、馬鹿にしてみんなの前で破りてたクラスメイトがその日の帰りに交通事故にあって以来、不幸の手紙は大繁殖をはじめた。
友達付き合いの多い連中は一日に十通も書かないといけないと嘆いていた。俺は友人の少ない方だからと安心していたのだが、ついに俺の元にも来てしまったようだ。
考えていても差し出し人は分からない。仕方ないのでさっさと不幸の手紙を書いてしまうことにした。問題はこの手紙を誰に出すかだ。一人ずつ知り合いの顔を思い浮かべる。
「そうだ、あの二人だ」
俺が思いついたのは先生も手を焼く不良たちだった。かく言うこの俺も痛手を被ったことは数知れない。
「これまでの恨み、この手紙にこめてやる」
クラス名簿から二人の住所を探し出し、素早くペンを走らせ、ポストに投函した。俺は重大な仕事をやり遂げたことで、爽やかな気分で家に帰った。
二日後
例の二人に呼び出された俺は、人気のない場所でぼこぼこに殴られていた。
理由はもちろん俺が出した不幸の手紙。なんでばれたかと言えば、手紙なんて懸賞くらいしか出さないから、住所・氏名・年齢・電話番号まできっちり書いてしまっていたためだ。何とか家まで逃げ帰り一人反省する俺だったが、一方ではこれでまた普通の生活に戻れると安心もしていた。
しかし、この考えは甘かった。
次の日、俺の元にまたも不幸の手紙が届いた。封筒を破くように開くと、中の便箋を取り出した。
[お久しぶりでございます。私は先日不幸の手紙をお送りさせていただいたものでございます。たびたびご迷惑かとは思いましたが、こうして筆を取らせていただきました。
このたびは不幸の手紙の発送を行っていただき、誠にありがとうございました。今回お手紙させていただきましたのは、その不幸の手紙についてでございます。
残念ながらあなた様のお出しになりました不幸の手紙は、相手の方々に差出人があなただと言うことがばれてしまいました。つまりこれは不幸の手紙の発送に失敗した、ということになります。
《不幸の手紙取締法第二十一条第二項》によりますと、『差出人の素性がばれたものには出すべきだった不幸の手紙数の、十倍を出す義務を負ふ』となっております。
これにより、先の文章と同じものを二十名に出していただかなくてはいけないことになってしまいました。
お忙しい中、本当にご迷惑とは存じますが、貴方様のためにも三日以内に必ず、お出しになられますように、よろしくお願いいたします。くどいようですが、絶対にチェーンレターの輪を切るようなことはおやめください。
不幸の手紙管理委員会より]
またもあの綺麗な字で長々と書かれている。
「三日以内に二十枚だと!?ふざけやがって、何が不幸の手紙管理委員会だ。不幸でも何でも持って来いってんだ」
俺は手紙を丸めてゴミ箱に放り投げた。
それから一週間。
不幸の手紙のことなどすっかり忘れかけたある日。乱暴に玄関を叩く音が、二階のオレの部屋まで響いた。すぐさまスーツの男が部屋に乗り込んでくる。男たちは黙ってゴミ箱をあさり、俺の捨てた不幸の手紙を取り出すと俺に突きつけて言った。
「これは不幸の手紙管理委員会からの催促状だな不幸の手紙取締法違反の容疑でお前を逮捕する」
こうして俺は少年院に送られることになった。もしも貴方に『不幸の手紙』が届いたら、それを止めるような危険なことだけは決してしないでください。
最後に、この小説は不幸の小説です。
三日以内に友人、五人以上にこの小説を読ませてください。この約束を守れない場合、貴方は不幸のどん底に落ちていくことでしょう……
ENDLESS
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ある日僕の手元に差出人不明の手紙が届いた。
それは僕を不幸に導く、不幸の手紙だった。