No.133140

テスラおーばーふろー

ナインとクルミのほのぼのハートフルストーリー、
を目指していたつもりが、どうしてこうなった?

メインがいつの間にかテスラねーさんに入れ替わり、コメディになりましたorz

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2010-03-29 23:48:44 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1166   閲覧ユーザー数:1134

 

『なっちゃんと3ひきのこねこ』

それは、おひさまがときおりくもにかくれるようなあるひのごご、なっちゃんはみちばたでダンボールに入れられた、2ひきのしろいこねこをみつけました。

「わぁ、かわいい」

かわいそうに、すてられてしまったようです。

なっちゃんはかんがえました。

「おうちではかえないし、どうしよう……」

にゃーにゃーとないているこねこのまえで、なっちゃんはいっしょうけんめいかんがえましたが、いいかんがえがうかびません。

ぽつ…ぽつ…

そのうちに、あめがふりだしてきました。

「あっ大変」

やさしいなっちゃんは、もっていたかさをこねこにさしてあげます。

「うーん、こまったなあ」

そのまま4じかんくらい、なっちゃんはこねこにかさをさしたまましゃがんでいました。

そこへ、ひとりのねこみみをつけたようじょが、ぷんぷんおこりながらとおりすがりました。

「もう!こんなにおおあめになるなんて、そらにもんくいいたいわね!」

そのようじょは、いつもなっちゃんときれいなあねのじゃまをする、いじわるな3にんぐみのひとり、クルミちゃんでした。

クルミちゃんはなっちゃんにきがつくと、ちかずいてきました。

「ちょっとあんた!こんなとこでいったいなにしてるのよ?」

クルミちゃんはたかびしゃにきいてきます。

「クルミちゃん?あのね、ねこさんたちがこまっているの」

なっちゃんはふりかえると、そうこたえました。

「たしかにねこさんね……えっ?もしかしてあんた、このおおあめのなかずっとそうしてたわけ!?」

「うん、だってかさがないと、ねこさんぬれちゃうもの」

ながいあいだ、こねこのうえにかさをさしていたので、なっちゃんのからだはびしょぬれになっていました。

「それじゃ、あんたのほうがかぜひいちゃうでしょ!」

「うん、でも……」

なっちゃんはこまったかおで、こねこをみています。

それをみていたクルミちゃんは、ためいきをつくとこねこのはいったはこをもちあげました。

「クルミちゃん、どうするの?」

なっちゃんはあわててクルミちゃんにあわせてたちあがると、こくびをかしげながらききました。

「このままじゃ、はこもぬれてやっぱりぬれちゃうでしょ?それに、あんたもかぜひいちゃうんだから!とりあえず、わたしのへやにいってそれからかんがえましょ」

そういうと、クルミちゃんははこをかかえたままはしりだしました。

なっちゃんはどうしたらいいかわかりませんでしたが、こねこがしんぱいだったのであわててそのあとをおいかけました。

「はぁはぁ……ようやくついたわ……このこたちはわたしがみてるから、あんたはシャワーあびてきなさい、きがえはよういするわ」

「うん」

なっちゃんをおふろばにあんないしたあと、クルミちゃんはこねこたちをタオルでふいてあげました。

「あとはきがえだけど……あっ!?」

クルミちゃんはいきなりおおきなこえをだしました、それにねこたちはびっくりしています。

「あーん、あのこがきれるふくなんて、わたしがもってるわけないじゃない!」

なにかつかえるものはないかとタンスをあさりますが、やっぱりつかえそうなふくはありませんでした。

「くるみちゃん、シャワーおわったけど……」

そこへバスタオルをまいたなっちゃんが、おふろばからでてきました。

「あー、えーっと……ひとまずこれをはおってて」

そういってなっちゃんにタオルケットをわたします。

「ありがとう」

なっちゃんはすなおにうけとると、それをからだにまきつけました。

「ごめんなさい、わたしのふくのサイズじゃあんたがきれるわけなかったわ、はるかかあおいおねえさまにかりれたらよかったけど、ふたりともきょうはおでかけだし、どうしよう……」

クルミちゃんはとほうにくれてかたをおとしています。

「だいじょうぶだよ、おねえちゃんにもってきてもらうから」

そしてなっちゃんはけいたいであねにでんわをかけました。

「うん、もってくてくれるって」

それをきくと、クルミちゃんはほっとあんしんしました。

それからしばらくのあいだ、ふたりはこねことあそんでいましたが、そのうちに、なっちゃんが「くしゅん」とかわいいくしゃみをしました。

「だいじょうぶ?かおもなんかあかいわよ?」

「うん、ちょっとひえちゃった…くしゅん!」

しんぱいそうなクルミちゃんになっちゃんはえがおでこたえますが、またくしゃみをしてしまいます。

「ベッドでよこになってたほうがいいわ、ちょっとねつがでてるみたいだし」

なっちゃんのおでこにてをあてたクルミちゃんは、そういってじぶんのベッドにねかせてあげました。

「ありがとう、おねえちゃんがくるまでかりるね」

クルミちゃんはタオルをぬらしてなっちゃんのひたいにおいてあげます。

そのうちに、あんしんしたのかなっちゃんはねむってしまいました。

「わたしがちゃんときがえをよういしていれば……」

クルミちゃんはじぶんのせいでなっちゃんがねつをだしたとおもい、おちこみました。

それから、クルミちゃんはいっしょうけんめいなっちゃんのかんびょうをしました。

そのうちにクルミちゃんはなにかふしぎなかんかくをおぼえます。

なっちゃんをみているとむねがドキドキしてくるのです。

 

「……え?」

 

なっちゃんのねつでしゅにそまった頬、薄紅色の愛らしい唇から時折もれるかすかな吐息。

その姿にクルミの心臓が激しく高鳴り、目を逸らす事ができなくなっていく。

 

「ちょっ何!?」

 

『な、何かしらこの胸の高鳴りは……』

慎ましい胸を押さえつつ、我知らずナインへと近づいていくクルミ。

自然と顔が近づく事に自分でも気づいていない、ただ引き寄せられるようにナインの唇へと向かってゆく。

『あぁ…こんな近くに……駄目よクルミ!私には葵お姉様が……でも、ナイン…お姉様のこんな顔を見てたら……』

心の中で自制しようとするも、体は勝手にナインを求めていた、そしてついに二人の唇が重なr……

 

「いい加減にしなさーーーい!!」

スパーン!!

子気味良い音を立てつつ、クルミの右手に持つにゃんこ柄のスリッパがフルスイングされ、テスラの脳天を打ち抜いた。

「いったーい!何をするんですかぁ~」

「何をするんですかぁ~、じゃないわよ!止めなかったらどこまで妄想を進めるつもりだったのよ!?」

ここはチェリーヌ学院寮、そしてその一室、クルミが暮らしている部屋である。

そこに居るのは、部屋の主であるクルミとベッドで眠っているナイン、そして妹の着替えを持ってやってきた姉のテスラであった。

「葉月さんから聞いた話をまとめたのですが、概ねあっていますよね?」

「それは判るけど、どこから突っ込んでいいのかわからないわ!ひらがな表記で妹がほとんど別人で、それに最後の方は完全に……と、とにかく、なんなのよそれは!」

クルミの問いに、テスラはなぜわからないのかという不思議そうな顔を見せつつ説明する。

「私のライフワークはなっちゃんの成長記録です。本来ならビデオ撮影すべきところですが、今回は残念ながらその場に居合わせなかったため、せめて絵本にして後世に残そうというわけです」

「また突っ込むべきところが出た気もするけど……それで?」

「なっちゃんのあの短く簡素な言葉の中には深く重い意味が込められ、感情も盛り込まれています。ですが皆さんはそれに気づく事はありません、これはまさに悲しい事なのですよ?残念ながら文章ではその深い意味を表現する事はかないませんので、私が意味を汲み取り変換したのです」

「で、記録になんで捏造が混じる訳?」

ジト目でテスラを見ているクルミ、完全に変な生き物を見る目になっている。

「判りませんか?なっちゃんの可憐さ!優しさ!そのびゅーてぃふぉーでわんだふぉーな魅力を伝えるためには、多少の脚色は許されるのです!」

「……」

テスラの妙なテンションに言葉もないクルミ、そんな彼女を置いてテスラの熱弁は続く。

「子猫を助ける心優しい少女!そしてその姿に心奪われるツンデレな幼女!同性すら虜にするその罪な魅力に幼女は抗う術もなく、禁断の扉に手をかけ……って、そのハリセンはなんですか!?」

陶酔しきった表情で熱弁をふるっていたテスラだったが、さすがに自分の顔面に向け4番打者のごとくハリセンを構えたクルミに気づくと、慌てて言葉を止めた。

「まあ、一つ判った事はアンタが姉馬鹿だって事ね」

「お褒めに預かり光栄です」

いや褒めてないわよ、そう言葉に出せないほどクルミは疲れきっていた。

「で、これからだけど」

気を取り直して話題を変えるクルミ。

「この子達をどうするかよね」

そう言いながら子猫の片割れとぬいぐるみでじゃれあうクルミ。

「そうですねぇ……うちでは夜に誰も居ないことが多いですし、こちらも寮では無理ですよね?」

テスラがもう片方の子猫を膝に乗せ、撫でながら答える。

「飼ってくれる人を探すのも大変よね」

「あてを探すとなれば、本社のどなたかが引き取ってくれればいいのですが」

「むしろ本社で飼う……」

そう二人の会話に入ってきたのは、ナインだった。

「なっちゃん!起きて大丈夫ですか?」

「仮眠により通常行動に影響ない程度に回復……問題ない」

ナインは頷くと、テスラから着替えを受け取り、布団の中でもぞもぞと身に着け始めた。

「なるほど……確かに本社なら研究部門などに人は常駐していますし、案外良いかもしれませんね」

「一応会社なんでしょ?大丈夫なの?」

ナインの提案にテスラは賛成するも、クルミはもっともな懸念をあげる。

「あら、私たちはこれでも役職としては上の方なんですよ?それに文句がある方は黙らせますから心配いりません」

「それで問題解決するならいいけど……」

どうやって黙らせるのか気になったものの、クルミはその点についてはスルーしておいた。

それから数日後、場所はブラックファンド本社。

ツインエンジェル達3人は、奪われた天使の涙を取り戻すため、黒服を追ってここへ潜入していた。

「そろそろお出迎えがきそうね」

ホワイトエンジェルのセンサーを内蔵した猫耳が敵の気配を感知する。

「気をつけて葵ちゃん」

「遥さん、今はブルーエンジェルですよ」

相変わらず緊張感のない会話を後ろに聞きながら、クルミは身構える。

その眼前の床に穴が開いたと思うと、そこから二つの人影がせりあがってきた。

「ここから先は通しませんよぉ」「にゃー」

「侵入者確認……」「にゃん」

現れたのはツインエンジェルのライバルとも言える強敵、ツインファントムの二人。

だが、その出現に対してツインエンジェル達はしばしの間固まっていた。

「ねぇ、あれって新しい演出なのかな?」

「それは違うと思いますが……」

「あの馬鹿姉妹……」

遥と葵が頭に?マークを浮かべてる中、クルミは頭を抱えていた。

行く手を遮るように現れたツインファントム。

いつもと違うのは、二人の頭にそれぞれ子猫がちょこんと乗っている事……

「タイム!」

クルミはそう宣言すると、ダッシュでツインファントムの元に走り出す。

目の前まで近づくと二人の頭上を見上げ、それから視線を二人に戻し静かに尋ねる。

「さて、言い訳を聞きましょうか?」

腰に手をあてて二人の前に立つ姿は、さながらいたずらを見つけた教師のようだ。

「い、一体何のことでしょう……」

露骨に視線をそらし、すっとぼけるテスラ。

その横では、ナインが頭上の猫が落ちないか、しきりに手をやり気にしている。

「えーっと、あれです。この二匹こそツインファントムの新たなサポートメンバー、コードネームツインキャットこと、こちらがタマでそちらが」

「スノーホワイト……」

明らかに嘘である。

「どうせ、出番直前までその子達と遊んでて、他の人に預け忘れて一緒に連れてきた。そんなとこじゃないの?」

「正解……」

「なっちゃん!言っちゃだめです~」

クルミの予想はほぼ当っていたらしい。

「まったく、戦闘になったらその子達が危ないのよ?それくらい考えなさいよ!」

「う、正論なだけに言い返せませんね……」

「面目ない……」

クルミの言葉に小さくなって反省する二人。

「飼うなら責任を持って飼いなさいよね!」

そう言いつつ、クルミは二人から猫をとりあげると、遥と葵のほうへ戻ってきた。

「わー、かわいい~」

「本当に可愛いですね。でもホワイトエンジェル、この子達をどうするのですか?」

クルミは遥と葵にそれぞれ猫を預けると振り返り、ツインファントムに向けて言い放つ。

「さあ!この猫達を返して欲しかったら、天使の涙を返しなさい!!」

「えええええええっ!?」

クルミのその言葉に、他の4人から一斉に批難の声が上がったのは言うまでもない。

「……と言うわけで、ツインエンジェルの卑劣な猫質により、私たちは天使の涙を手放すしかなかったのです。まったく許せませんねぇ」

ブラックトレーダーの前で報告をするツインファントム、それを聞きながらブラックトレーダは苛立たしげに机を指で叩いていた。

「お前たちは一体何をやってるんだ……まったく、猫なんかの為に…」

そこまで言いかけて、彼はしまったと言葉を止めた。

「猫…なんか?」

テスラの背後の景色が色を失い、その双眸が暗い輝きを放つ。

ナインの顔も暗く沈み、俯いていた。

「そうですか……お父様はなっちゃんが命を懸けて守ったこの子達をそのような目で……」

「父様……」

「いや、待て!誤解だ!あー…つまり、猫に気を取られてお前たちが怪我をしたら大変だろう?私にとってはお前たち娘の体の方が心配なのだ。無論、生き物を大切にする優しい娘に育ってくれたのは嬉しいぞ?判ってくれるな?むしろ、判ってくれ、特にナイン!」

テスラの変貌に、慌ててフォローの言葉をまくし立てるブラックトレーダー。

なぜナインに念を押したかといえば、ナインの機嫌が直らない限りテスラの怒りが収まる事はないからである。

その甲斐もあってか、ナインの表情が幾分和らいだ。

「父様……心配してくれたのは嬉しい、でも、この子達も大事……」

「う…うむ、そうだな、だから今度からは戦闘の場所には連れて行かないようにするんだぞ?」

「了解」

ブラックトレーダーの言葉に素直に頷くナイン、テスラもいつの間にか普段の表情に戻っていた。

『危ないところだった……』

なんとか二人の機嫌が戻った事に安堵するブラックトレーダー。

以前、うっかりテスラをこの状態にさせた後、一週間ほど食事時のご飯がひまわりの種にされたのは記憶に新しかった。

「では、私たちは反省もかねて訓練してきますね」

「ああ、これからもよろしく頼むぞ」

テスラはそういうとナインを伴って部屋を出て行った。

「なっちゃん、今度はねこじゃらしの誘惑に耐える特訓ですよ」

「姉さん、それは厳しい……でも、この子達ならきっと大丈夫」

そんな会話を耳にしつつ、ブラックトレーダーは深くため息をついた。

「天使の涙、諦めた方がいいかもしれんな……」

悪の組織の首領といえども、台所の主には勝てないのであった。

……それでタマったら、バケツにはまってしまいまして、それを見ておろおろするなっちゃんがまた可愛いんですよ~」

お昼休みのチェリーヌ学院、いつものように遥、葵、クルミがお弁当を広げているところへ、なぜかテスラとナインも加わっていた。

そして、テスラは先ほどから熱心に子猫とナインの様子(主にナインの可愛さアピール)を語っている。

「へー、いいなぁ私たちもネコさん飼いたいね」

「そうですねぇ、ですがやはりペットはお世話が大変ですからね」

そんなテスラの姉馬鹿っぷりを自然に話を聞いている遥と葵、クルミは当然だが不機嫌な顔をしていた。

「なんか、突っ込むのが私一人なのがすっごく疲れるんだけど、何であんたたちがいるわけ?」

言葉通りに疲れた声でクルミが尋ねる。

「葉月さんにはなっちゃんがお世話になりましたからね。お礼になっちゃんの㊙エピソードを教えてさしあげようかと」

「姉さん、それはお礼とは言わない……葉月クルミ、これを……」

そう言ってナインがタッパをクルミに渡す。

「何これ?……肉じゃが?」

タッパに入っていたのは、何の変哲もない肉じゃがだった。

「お礼に作ってきた……」

「あ…ありがとう」

これもお礼としては方向が違うような気がしなくもなかったが、テスラよりはよほど常識的なものだったので思わずクルミは素直に受け取っていた。

「あら、結構おいしいじゃない」

「口にあってよかった……」

「あー!クルミちゃんだけずるーい!私にも頂戴。ナインちゃんには卵焼きあげるね」

「私もぜひご相伴に」

ナインから始まったおかず交換大会に、遥と葵も参戦する。

「もう、沢山あるんだから騒がないでよ馬鹿遥!」

口ではそう言いつつも、二人に肉じゃがを分けてあげるクルミ。

(ま、敵とはいえ昼間も険悪な雰囲気よりは、こんな馬鹿騒ぎしていた方が平和的でいいわよね?)

「平和が一番……」

そんなクルミの内心を読んだかのように、ナインがこくりと頷く。

「皆さん仕方ないですねぇ、では葉月さんがなっちゃんの寝顔にキスをしようとしたお話でも……」

「だから、それはやめなさいっての!」

スパーーーン!!

 

チェリーヌ学院は今日も平和だったとさ、めでたしめでたし?

 

「めでたいのは遥だけかと思ってたけど、テスラも大概よね……」

「そんな姉さんも素敵……(ぽっ)」

「……え?」

 

おわり

 

 
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