No.133102

真・恋姫 頑張れ郝昭さん!閑話

きゅうりさん

この話はいわゆる拠点ですが、100%ネタで構成されているので、苦手な方や、嫌悪感を持つ方はスルーしてください。
これを読まなくても本編には何も支障はありませんので。

2010-03-29 21:35:24 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:3067   閲覧ユーザー数:2554

 

 

時は少しさかのぼり、郝昭が長安へ派遣される前のお話。

 

 

「急いで部屋に…いや、都を離れなければならないッ!」

 

俺は郝昭、字は伯道。

各地を転々とし、ようやく魏という国に仕える立場となった。

旅の途中、チーズの製法を教わり魏に仕えるに至るまでそれを熟達させていた。

 

 

「ここは……この角を曲がればすぐ…」

 

急いで部屋に戻るため、俺は足を早める。

俺は現在、ある人物に追われているのだ。

 

右に曲がり…そして突き当りを左にいけば俺の部屋が…ッ!

しかし、現実とは非情なものである。

 

 

「あら、お久しぶりね」

 

俺の事を追っている人物…それは曹操、字を猛徳。

 

 

「や、野郎…ッ!」

「貴方にはしっかり真名を預けたはずよ?…それに、私は野郎ではなくて立派な女性なのだけれど」

「ふん…その体格でよくもまあ立派な女性などと…片腹痛いわ!」

「な…ッ!」

 

俺は言葉で曹操を牽制する。

 

何故曹操に追われているのか?

それは俺が旅の途中で製法を知ったチーズに関する事だ。

何時ぞやの宴の時に、俺が大事に製造したチーズを隠し味として振舞ったのだ。

それは勿論女性陣には大うけで、その中でも曹操がかなりお気に召した。

 

 

「ふん…、そんな事はどうでも良いわ。……それより、"ちいず"の製法書を此方に渡す気になったかしら?」

 

チーズの製法書…俺が忘れぬように走り書きしたメモのようなものだが、

曹操にとっては、その程度でも喉から手が出るほどほしいものなのだろう。

 

 

「悪いですが渡す気にはなりませんな…。これは俺の物であり!そして俺だけの物であるのだ!」

 

そう言って製法書を天高く掲げる。

 

 

「そう…。それじゃ、力ずくで奪わせてもらうわッ!!」

 

やはりこういう展開か…、しかしここで諦めるわけにはいかない。

 

 

 

 

 

「ちっ…」

 

俺は苦戦していた。

曹操の武器は鎌…その特殊な形状、そしてそのトリッキーな動き。相手の動きを読めない。

 

 

「郝伯道!貴方の攻撃方法は全て把握している…、よって貴方の体術は全て無駄…無駄なの!」

 

曹操は俺の動きを全て読んでおり、俺の体術による攻撃が届かない絶妙な位置で

鎌を振るっている。身体能力は猛将には及ばぬが、戦いの"センス"が違う。

 

 

「…ッオラっ!」

 

俺はこれ以上の体術は無意味と判断し、近くに落ちていた手のひらに収まる程の

石を拾いそれを曹操に向かって投げつける。

 

 

「ふんっ!」

 

顔面目掛けて飛んでくる石を臆する事も無く片手で受け止める曹操。

そしてそれを…

 

 

「無駄なの、貴方の行動は全て。無駄、無駄無駄…」

 

そう小さな声で呟きながら受け止めた小石をバラバラに…

…とんでもない握力だ。

普通の女性なら絶対にありえない事だ。

 

 

「ハァァァッ!!」

 

曹操が鎌を振るう。

その速度は何とも遅いものだ。

 

俺はそれを避け、迎撃を試みるが

 

 

「……ッ」

 

遅く振るわれた鎌をそのまま一回転、その遠心力で威力とスピードを何倍にも増して俺を襲う。

始めに遅く振るったのはこれを狙っていたからか。

 

難なくそれを避け、足技を繰り出す。

 

 

「甘いわね」

 

そう曹操が言い放つと、鎌の柄の部分で受け止められてしまった。

そして更に鎌を一転…これも難なく避ける。

これで状況はイーブン。

いや、単純な武力的に考えれば俺のほうが有利なのだが…

 

曹操が沸々と笑い出す。

 

 

「ふっふふ…あはは……」

 

無垢な少女のように…見た目は本当に少女なのだが、こうみえても○○歳だ。

 

 

「何がおかしい?」

 

俺はそう訊ねる。

この状況で不利なはずの曹操が笑い出すなんて不自然極まりない。

 

 

「貴方にはこの広場に見覚えがないのかしら?…それとも、まだこの土地に慣れていないだけなの?」

 

腕を組んでそう言い放つ曹操。

一体何を言い出すのだろう、この広場に見覚えが?

 

曹操は腕を組んでそう言い放った。

腕を組んで…?という事は武器はどこに持っているのだ?

そう思ったときには既に遅く…

 

 

「…ッくっ!」

 

曹操はいつの間にか鎌を投げていたのだ。いや、最後の攻撃の時には既に投げていたのだろう。

鎌は近くにあった大木を切り倒し、更に向こう側の壁に突き刺さっていた。

当然大木は倒れてくる。…俺のいるところへ

 

 

「詰んだわねッ!!」

 

俺は空中へと高く跳躍し、それを避けたのだがそれがまずかった。

跳躍してしまったので、空中でうまく身動きが取れない。

俺は曹操の一撃をもろにくらってしまった。

 

 

「うぐッ……ああ、空を飛ぶのはこんな感じなのか……」

 

跳躍して更に下から上へと突き上げるかのような一撃もらったので

更に上へとふっ飛んでいく。

 

 

「終わったわね……駄目押しにもう一撃ッ!!」

 

近くに落ちていた少し大きめの石を拾い、投げつける。

勿論俺にそれを避ける術は無く、防御する形になってしまう。

 

 

 

SIDE・曹操

 

 

駄目押しに加え、更に落下による衝撃はかなりのもの…

これで"ちいず"の製法書を手に入れることができる…!

 

ドサッ、と人が落ちる音がする。

私はそれに歩み寄り、目的物を回収しようと試みるが…

 

 

「…何か変ね」

 

郝昭といえば、一人で敵本陣を突破したという経歴を持つ。

それほどのものがこの程度で気絶するのだろうか。

 

 

「……もしかしたら、"気絶したフリ"をしているのかもしれない…」

 

機転が利く、意外と策士、などなど凪や真桜から聞いている。

これは用心すべきだ。

 

 

「体術に秀でている者に安易に近づくのは、…賢い者のする事じゃないわね」

 

もしも"気絶したフリ"だったのなら、近づいてきた私を一瞬で屠るのは容易いだろう。

ならば、それを防ぐためにも此方も最大限用心してかからなければならない。

 

…しかし、どうやって確かめるか。

不用意に近づくのは危険だ…しかし、近づかなければ"確実な安心"を得る事も叶わない。

 

 

「か、華琳様!どうしたのです?凄い音がしたので飛んできたのですが…」

 

そう後ろから声をかけられた。

私の親衛隊…流琉ね。

この娘なら…。いや、この娘にしかできない事がある。

 

 

「丁度良いところに来たわね。今すぐ作ってもらいたい物があるのだけれど」

 

「へっ?あの…?」

 

突然の事に驚いているようだが、それも仕方ない。

急いで作ってもらわなければならない。

 

 

少しすると、流琉が大急ぎである物を作り、此方に届けてくれた。

 

 

「ご苦労様…もう下がって良いわ。此処は大丈夫だから」

 

そう言ってすぐに流琉を下がらせる。

食べ物を粗末にする光景を流琉には見せられないからだ。

 

 

「ふふ…、流琉が作ってくれた麻婆は格別ね」

 

一口、また一口と食べ進んでみる。

…しかし、郝昭からは何の反応もない。

 

 

「………ッ!」

 

蓮華にすくった麻婆を、郝昭の口元へ向かって飛ばす。

それは見事に唇に付着する。

麻婆好きの郝昭にとってはたまらないだろう。そしてそれを舐めとるはずだ。

 

 

「…やはり、本当に気絶しているのかしら」

 

ここまでしても反応がないのは、やはり気絶しているからなのだろうか。

下手に勘ぐって時間が経つと、回復してしまうかもしれない。

行動するなら今だ、と思って郝昭に近づく。

 

 

「む、華琳ではないか。何をやっているのだ?」

 

またしても後ろから声をかけられた。

声の主は張郃だった。

 

 

「貴女こそ何をしているのかしら」

 

急いでいるので手短に済ませようとする。

 

 

「なに、ただの散歩さ。もうすぐ遠征とあるからな。心を落ち着かせようと思って」

 

呉への遠征の事を考えているのか。

やはり魏に入ってまだ日が浅いので、いきなり大きな戦という事で不安なのだろう。

 

 

「そう…。ところで」

 

私はある事が気になっていたので、それを聞いてみることにした。

 

 

「貴女、郝昭と恋仲なのかしら?」

 

「…な、…まあ一応そのつもりだが」

 

「私に対して敬語を使わないのはあの男と貴女だけよ。…だけれど、その度胸もまだ良いわ。」

 

「………」

 

「貴女ほどの女が郝昭のモノだなんて…どう?私に鞍替えする気はないかしら?」

 

冗談交じりにそう訊ねる。

勿論、本気の部分も強い。

黙っている張郃に更に話を推し進める。

 

 

「貴女は恋仲の"つもり"なのかもしれないけれど…もしかしたら郝昭のほうは違うのかも……ッ」

 

カリッ、と僅かだが、郝昭のほうから何か引っかく音が聞こえてきた。

発言している途中であったが、それを中断する。

 

 

「…まさか、まだ意識があるの…?」

 

そう思い、目を向けるが郝昭は依然倒れたままだ。

やはり完全に根を絶つ必要があるのかもしれない。

"完全なる止め"というヤツだ。

 

 

「これで、最後ね」

 

そう呟き、ギリギリの位置から鎌を振り下ろす。

水平に振り下ろすので、郝昭が死ぬ事はないが、怪我は間違いなくするであろう。

手荒になってしまったが、"確実なる安心"のためには仕方の無いことなのだが…

 

ガシィッ!と、鎌を捉まれてしまった。

誰に?…張郃ではない。彼女は私の後ろで悶々と考え事をしている。

では誰が?…そんなものは1人しかいない。

 

 

「な、なんですって…!?」

 

捉まれた鎌を思い切り引き寄せられた。

そしてそのまま反対方向へと投げ飛ばされる。

鎌を離せばそんな事にはならなかったが、武人として武器を離すのはどうなのだろう。

むしろ、ここで離してしまったら体術に秀でている郝昭を止める事はもうできない。

 

 

SIDE・OUT

 

 

 

 

 

「くそっ…曹操め…よくも麻婆を弄んでくれたなッ!!」

 

そう呟き、口元の麻婆を舐めとる。

許すまじ、曹操!全国の麻婆を代表してお仕置きをしてやる!

 

…しかし、武力で解決するのは向こうが武力で対抗してきた場合のみだ。

ここで追撃なんてしてみろ、曹操に怪我なんて負わせたらそれこそ反逆罪ものだ。

曹操が向かってきたのをねじ伏せたのならば、鍛錬で押し通せるのだが…

 

やはりここは逃げるのが無難か。

逃げて製法書を安全なところへ隠そう、それが良い。

そう思って廊下を突っ走ろうとする。

 

 

「おい、郝昭」

 

誰かに呼び止められる。

誰かと言っても、この場にいるのは3人だけだ。

消去法を使ってもそれが誰だか特定することができる。

 

 

「どしました、流那さん」

 

自分急いでいます、と言ったのを体で表す。その場で足踏み!

 

 

「その…、私の事をどう思っているんだ?」

 

何を今更な…と思ったがキチンと答える

 

 

「どうって…大切な仲間ですよ」

 

これが妥当な線か。こんなところでにゃんにゃんしている暇はない。

じゃ、そういう事で…と思ったのだが

 

 

「…それだけなのか?」

 

なんて聞き返してくるものだから──

 

 

 

SIDE・張郃

 

 

私の突拍子も無い質問にも律儀に答えてくれる郝昭。

やはりこういったところには好感をもてる。

 

言葉の真意を問いただそうとしただけなのだ。本当に。

なのに郝昭は此方へと近づいてくる。

 

そして私の頬を手に取り、優しく包み込むかのように体を引き寄せてくる。

そんな事をするものだから思わず声が出てしまったのだが──

 

 

SIDE・OUT

 

 

 

「うごッ!?」

 

変な声が出てしまった。情けない…

甘い雰囲気に水を差したのは誰ぞ、これも消去法で解かる事だ。

 

 

「油断していたわね、私があの程度で終わるとでも思っていたのかしら?」

 

曹操が俺を思い切りふっ飛ばした。

俺は廊下のほうへと向かっていき、うまく受身をとる。

 

 

「バカめ華琳!貴様こそここの通りに見覚えが無いのか!」

 

俺は悪のヒーローにでもなったかのようにそう高々と言い放つ。

 

 

「…なんですって?」

 

曹操が辺りを見回すが、何が起こるでもない。

俺はその隙を衝いて逃げることにした。

 

 

「あっ、待ちなさいッ!」

 

廊下の角を曲がれば良い…、それだけでチェック・メイトだ!

 

案の定、廊下の一角を曲がると、そこには予想通りの人物がいた。

 

 

「郝昭殿、どうしたのです?こ「華琳が稟に今夜閨へ来るようにとの事だ!何でも新しい玩具で壊してあげるそうだ!」……ッ」

 

俺が矢継ぎ早にそう言い放ち、曲がり角を猛ダッシュする。

これで良い、これで逃げ切ることができた。

 

 

 

SIDE・曹操

 

 

この通りに見覚えがないか、ですって?

そんなわけがない、此処の通り一帯は全て把握しているつもりだ。

あの男が私から逃れられるはずがない。

 

そう思いながらも、曲がり角へと消えていった郝昭を追う。

しかし、曲がり角からはある人物の気配がする。

 

 

「…稟?何をやっているのかしら…」

 

稟からは何やら妙な気配がする。

だが、ここで立ち止まってしまっては郝昭を逃がしてしまう事になる。

私は構わず廊下を猛進する。

しかし──

 

 

「なッ!こ、これは……!」

 

曲がろうとする寸前で大量の血飛沫が飛んできた。

私は思わず…いや、一瞬だがよく考えた結果立ち止まる事にした。

 

 

そういえば時間的にはもうすぐ定例会議の時間だ。

稟がここにいるのも、その会議に出席するためだ。

当然私もその会議に出席する事になる。

それに、ここで大量の血を被り、郝昭を追えばたちまち城内は騒ぎになるだろう。

一国の主が血まみれで城内を…なんとも情けない話だが。

 

 

「……ふん、今回は見逃してあげるわ」

 

私は小さくそう呟く。

その言葉には悔しさも混じっているが、それと同時に勝利も確信している。

 

 

SIDE・OUT

 

 

 

やはり定例会議が近いようで、稟がこの通りにいた。

頭の良い方達…というか今回は涼州や呉の国境問題などで俺も出席することになっているのだが。

ま、そのおかげで稟を上手く利用してこの場を凌ぐ事ができた。

…さて、製法書を安全なところへと隠すか。

こうして俺の戦いは、勝利という形で幕を閉じたのだ。

 

 

 

後日、定例会議に遅刻した事を曹操に問い詰められ、"ちいずの製法書を渡す"という事で

責任を不問にしてもらう形になった。

ちいずちいず…やはり女の子は食なのね!

何故か張郃さんも俺に対して何か問い詰めてきたが、軽く流した。

その結果は勿論──

 

 

END

 

1日で書きました。物凄く疲れました。

 

曹操との絡みが少ないという事で書いてみました。

 

いかがでしたでしょうか?ほぼネタとはいえ、繋がる事にはなりますが…

 

あくまでネタとして見て頂ければ嬉しいです。

 

それではまた…、1日2本になってしまいましたが、次回でお会いしましょう


 
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