No.132559

真・恋姫†無双 金属の歯車 第二十六話

・真・恋姫†無双をベースにとある作品の設定を使用しています。クロスオーバーが苦手な方には本当におすすめできない。
・俺の◯GSを汚すんじゃねぇって方もリアルにお勧めできない。
・ちなみにその設定は知っていれば、にやりとできる程度のものです。
・この作品は随分と厨作品です
・過度な期待どころか、普通の期待もしないでください。

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2010-03-27 03:12:21 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2073   閲覧ユーザー数:1907

 あの日から一刀は変わってしまった。街の住人や兵士、恋姫たちですらそう感じていた。

言動は変わらない。しかし漂わせている気が、負のものであるのは容易に感じられた。

今の彼は、戦争を終わらせるという信念で加速し始めていた。過去に受けた心的外傷は戦争を憎む要因となっていた。

桃香たちが望む世界へ。その気持ちはどこか薄れているのかもしれない。

そんな彼をおいて呉蜀は魏に対抗すべく、着々と準備を進めていた。しかし魏の力は強大で二国だけでは抑えきれない可能性もあった。

そんな中、渦中の大国から一人の使者が蜀を訪ねてきたのであった。

「魏からの使者?」

「はい、けいん・・・と名乗っておりますが」

「なんだと?」

 

 

二十六話 加速世界 ~Made in Heaven~

 

 

 謁見の間に現れたのは、まさしく魏の御遣い、ケイン・ウェルナーであった。

その圧倒的な威圧感の前に、全員が萎縮する。そんな中桃香は気丈にケインを見つめていた。

「はじめまして、劉備殿。魏の御使いにして北郷一刀の敵、ケイン・ウェルナーです」

「はじめまして・・・というのも少し変ですね。お互い噂はよく聞いていると思います」

「確かに」

 あくまでケインの物腰は柔らかだった。

「だが、思った以上に気丈で高潔だ。一刀が力を貸すのもよくわかる」

 桃香の横で高周波ブレードを杖のように床に突き刺している一刀の姿が映る。

その目つきに優しい彼のものはなく、スネークのものだった。

「何のようだ?」

 その一刀が口を開いた。

そっけない口ぶりなのは腹を探っているつもりだろうか。

「その前に・・・その猛獣、放し飼いでいいのか?」

 ケインがそう問いかけた瞬間、謁見の間の闇から恋が飛び出す。ケインの発する異常な威圧感に圧されたのか、戦場にいる彼女の形相だった。

だが襲いかかろうとした恋の足下に高周波ブレードが突き刺った。

「止めろ、恋」

 桃香の傍にいた一刀は、そう言ってケインの方に歩を進める。

恋は納得いかないという雰囲気だったが、一刀に頭を撫でられると殺気を収める。

「音々音、頼めるか?」

「まかせろです」

 一時騒然となったが、当の襲われた本人は非常に飄々としていた。

一番扱いなれているであろう音々音に恋を任せ、ケインに視線を向ける。

「別に使者で来たわけでもあるまい」

 高周波ブレードを床から抜き、鞘に収める。一方のケインは楽しげな素振りを見せる。

「何、少し世間話と思ってな」

「なら聞かせてくれ。あんたは・・・この世界をどうするつもりだ」

「いつもの落ち着きはどうした、一刀」

 ケインは横目で一刀に照準を合わせる。

お互い話し相手を直視せずに、背中を向けて語り合っていた。

「サイキッカーと・・・アシッド・スネークがここを強襲したらしいな」

「耳が早いな、狐」

「情報を制するは世界を制す。お前が孤児院に来たとき・・・教えたはずだ」

 謁見の間には首脳陣のほとんどがやり取りを見ているが、誰も口を挟むことができずにいた。

二人の出す圧力によって英雄たちですら入ることのできない領域となっていた。

「何があったかは大体検討はつく。焦る気持ちもわかる。だが、俺の目的はPMCUの連中とは関係ない」

 交差しなかった視線が合わされようとしていた。しかし一刀はそれに応じれずにいた。

「あんたは・・・死にに来たんだな」

「前にも言ったはずだ。強いものと戦って死ぬ・・・伝説は無様な死体をさらせないのだよ。ちっぽけなプライドだがな」

「自分勝手だよ、あんたは」

「自分勝手・・・そうか、俺は反面教師か」

 自らを嘲笑うようにケインが小さく笑った。

傍から見れば談笑しているように見えているかもしれない。そんな状況も少し可笑しいとも思っている。

しかし一刀は対照的に無表情だった。

「お前は優しく育ちすぎた。お前は・・・優しすぎる。だから人一倍傷つきやすく、人一倍気負いで・・・世界で一番戦士に向いていない」

「私は戦士に向いていないかもしれない・・・だが、私は化け物だ」

「それがお前の戦う理由ではないだろう」

「だが・・・私が戦争を止める理由になる」

「劉備殿は夢のために覇道を進む。戦争があるべき道へ進む」

「言ったはずだ。桃香に覇道は進ませない」

「劉備殿の・・・夢のためにもか」

「私には夢はないかもしれない。だが夢を護ることはできる。その夢が・・・戦争をなくすことならば、例え矛盾していても私は戦争を戦争で終わらせる」

「・・・もう、俺の知っている一刀ではないのだな」

 ケインはそう言って目を伏せる。

「孤児院に来たときは寡黙で人付き合いに億劫で・・・」

「私だって変わるさ」

「そう・・・だな」

 話したいことをすべて話し終えたのか、ケインは扉のほうに向き直る。

そして扉に手をかけたそのときだった。

「一刀・・・いや、アトモス・スネーク。長坂でお前が言えなかった・・・そこにいる理由、聞かせてもらおう」

 一刀はその問いに対し、目を瞑り言葉を選び、その言葉の真意を理解し、それを発した。

「他の意志(Sence)を信じ、自分の意志(Sence)を信じる。それが私の答えだ」

 その答えを聞いた瞬間、ケインの顔が驚きに満ちたものになった。

「・・・まさか、お前からその言葉を聞くとはな」

 小さく笑い再び扉のほうに向き直る。

「スネーク、次会うときは戦場だ」

「わかっている。俺たちは敵味方に配置された・・・」

 

 

『駒だ』

 

 

 ケインが謁見の間から離れた瞬間、王座に座らない王、桃香が突然床に座り込む。

「桃香様!?」

 慌てて愛紗が駆け寄るが、当の本人は笑顔だった。

「大丈夫だよ、愛紗ちゃん。ちょっと腰が抜けちゃって・・・」

「殺されるとでも思ったか?」

「ううん。あの人、とっても優しい感じがした」

「優しいか・・・そうだろうな」

 

 

 数日後、ケインは魏領に入り、華琳と再会していた。

「どうだった、劉備は?」

「お前より胸が大きかったぞ」

「・・・いいの?」

 普段だったらケインの戯言を、華琳が皮肉という名の賞賛で返すのがこの二人だ。

しかしどこか緊迫した状況であった。

「華琳よ、進むのだな?」

「ええ、私は覇道を突き進む。それが曹孟徳の存在意義よ」

 二人が会話しているのは樊城。覇王の視線の先には長江ではなく既に天下が見えていた。

―――さあ戦争が始まる。


 
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