No.132258

真・恋姫無双二次創作 ~盲目の御遣い~ 第漆話『南陽』前篇

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色々と意見や感想や質問、『ここはこうしたらいいんじゃねえの?』的な事がありましたらコメントして頂けると嬉しいです。
では、どうぞ。

2010/03/25:誤字修正しました。

2010-03-25 15:53:53 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:20745   閲覧ユーザー数:16173

白夜と藍里が真名を交換し合い、正式に主従となったその日の事。

 

正午を前に、二人は南陽の城下町の喧噪の中にいた。

 

途切れる事無く流れる、たくさんの人の群れ。

 

辺りから漂ってくる、食材や料理の香り。

 

四方八方から耳に届く、街行く人の声。

 

思わず、零れた。

 

白夜「この街は、活気に満ち溢れてますね」

 

藍里「勿論ですよ。孫策様も、周瑜様も、黄蓋様も、陸遜様も、日々この街の人々の為に頑張ってるんですから。それに、白夜様だって他人事じゃないんですよ?」

 

白夜「・・・・そうでしたね。その為に、ここに来ているんでしたね」

 

そう、二人が街へと訪れているのは、とある理由の為であった。

 

事の発端は、一刻ほど前に遡る。

 

 

いつもの中庭にて。

 

呼び出しを受けた白夜と藍里が訪れると、待っていたのは雪蓮と冥琳の二人であった。

 

白夜「街へ、ですか?」

 

雪蓮「そ。白夜はまだ街に行った事って無かったでしょ?」

 

確かにその通りだった。

 

この荊州南陽の地に降り立って早一週間程が経過したが、白夜は未だ街へ出掛けた事は無かった。

 

冥琳「街を治めるには、その街を良く知らなければならない」

 

雪蓮「どのような人が暮らし、どのような物があり、今後どのようにしたいのか、貴方なりの『答え』を見つけて欲しいの。本当は私も行きたかったんだけどね~・・・・」

 

冥琳「仕事が終わっているのならば文句は言わん。普段から貯め込むお前が悪い」

 

ぶぅ~、と雪蓮は不満そうに頬を膨らませる。

 

冥琳「まぁ、兎に角そういう事だ。藍里には、その案内役を頼みたい」

 

雪蓮「多少お金も出してあげるから、親睦深めに一緒にお昼御飯でも食べてくるといいわ♪」

 

 

そして、現在。

 

逸れぬように空いた左手を藍里に引かれ、二人は喧噪の中を肩を並べて歩いていた。

 

女性「あれ、諸葛瑾様じゃありませんか。今日はどうされたんですか?それに、隣の男性は?」

 

藍里「今日は。今度こちらの方が城に務める事になったので、この街の案内を任されていたんです」

 

白夜「初めまして。この度、文官として孫策様の下で働く事になりました、北条白夜と申します。よろしくお願いします。私は目に病を患っておりまして、案内役の方がどうしても必要だったんですよ」

 

女性「そうだったんですか。頑張って下さいね、北条様」

 

白夜「はい、有難う御座います」

 

こんな遣り取りが、先程から何度も繰り返されていた。

 

まるで友人や知り合いにでも話しかけるように、街の人々が気さくに話しかけてくれる。

 

その事について白夜が藍里に訊いてみると、

 

藍里「それは多分、孫策様の影響でしょうね」

 

白夜「雪蓮さんが?」

 

藍里「はい。孫策様はよくお仕事を抜け出して皆さんの家に食事に行ったり、作物の収穫を手伝ったり、色々なさってますから」

 

白夜「・・・・雪蓮さんって、ここ君主なんですよね?」

 

藍里「はい、この街の君主様です・・・・」

 

軽く唖然としている白夜に、藍里は苦笑いを浮かべる。

 

白夜「冥琳さんの苦労がちょっとだけ解った気がします・・・・」

 

藍里「ですね、凄いと思います・・・・あ」

 

白夜「・・・・?どうかしましたか?」

 

ふと、藍里が立ち止った。

 

彼女の視線の先にあったのは、とある本屋だった。

 

藍里(あそこは確か・・・・以前周瑜様が勧めて下さった・・・・)※原作の冥琳の拠点参照

 

店内が少し薄暗い、小さな本屋。

 

品揃えは文句の付け所が無く、読書家の間でも有名である。

 

行ってみたい。しかし、

 

藍里「いいえ、何でもありません」

 

『今は白夜様の案内が先です』

 

そう思い至り、白夜の手を引いて歩き出そうとして、

 

 

 

白夜「―――――ひょっとして、気になってるのはあっちにある本屋ですか?」

 

 

 

藍里「・・・・・・え?」

 

白夜は正確にその本屋を指差していた。

 

目が見えない筈なのに。

 

藍里「どうして、解ったんですか?」

 

白夜「匂い、ですよ」

 

藍里「・・・・匂い?」

 

白夜「はい。あっちの方から、微かにですけど、何処か古ぼけた紙の匂いがしたんです。丁度、城の書庫ような、そんな匂いがね。藍里さんは文官ですし、やっぱり興味あるんじゃあないかなって」

 

驚いた。

 

『視覚に障害を持っている人にはそれ以外の感覚が優れている人が多い』とは聞いていたが、まさかここまでとは思わなかった。

 

藍里「でも、今日は白夜様の案内が・・・・」

 

白夜「別にいいですよ。何も一日中いる訳じゃないですし、特に『ここに行こう』って決めてた訳でも無いんですから」

 

藍里「ですけど――――」

 

白夜「藍里さん」

 

否定文を続けようとする藍里の唇に、白夜は左手の人差し指を軽く当て、

 

白夜「これから二人でやっていくにあたって、一つだけ言っておきたい事があります」

 

優しく諭すように、柔らかな口調で。

 

 

 

 

 

白夜「私に、『遠慮』なんてしないで下さい」

 

 

 

 

 

白夜「言いたい事があったら、遠慮せずに言って下さい」

 

 

 

 

 

白夜「間違ってると思ったら、遠慮せずに言って下さい」

 

 

 

 

 

白夜「確かに、形式上主従関係ではありますが――――」

 

 

 

 

 

 

 

―――――私達は、『仲間』なんですから。

 

 

 

 

 

 

優しく諭すような、柔らかなその言葉は、すんなりと心に入って来た。

 

藍里はふわりと笑みを浮かべて、

 

藍里「・・・・はい」

 

白夜「よろしい。それじゃあ、行きましょうか」

 

藍里「はい、行きましょう♪」

 

白夜の手を引きながら、藍里は思う。

 

 

 

本当に貴方のような男性は初めてです、と。

 

 

 

 

半刻後。

 

白夜と並んで歩く藍里の手には一冊の本があった。

 

白夜「お目当ての本があって、良かったですね」

 

藍里「はい♪」

 

実に嬉しそうである。両手で抱え込むように、その本を胸に抱いていた。

 

白夜「それは、どんな本なんですか?」

 

藍里「水鏡先生の新刊なんです。実はこの方の私塾に妹が通ってるんですよ」

 

白夜「・・・・それってひょっとして諸葛亮孔明の事ですか?」

 

藍里「ご存じだったんですか!?」

 

白夜「ええ、まぁ。『天の知識』の一端だと思って頂ければ」

 

藍里「凄いです。字までご存じなんて・・・・」

 

藍里の尊敬の眼差しを浴びつつ『あぁ、やっぱり孔明も女性なんですね・・・・』なんて事を白夜が考えていると、

 

白夜「・・・・・・ん?」

 

首を振り、耳をそばだてる。

 

藍里「どうしたんですか?」

 

白夜「いや、何か変な声が聞こえた気がしたんですよ・・・・」

 

藍里「変な声、ですか?」

 

白夜「ええ、『ほわ~』とか何とか・・・・何なんでしょう?」

 

白夜がそう言った、次の瞬間だった。

 

 

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 

 

 

白夜「おっと!?」

 

藍里「キャッ!?」

 

人の流れが急に激しくなり、二人はバランスを崩した。

 

ヒゲ『おいっ、向こうに天和ちゃん達がいるってのは本当か!?』

 

チビ『ええ、間違いねえっす!!』

 

ヒゲ『最近めっきり見れなくなっちまったからなぁ、急ぐぞお前等ぁ!!』

 

デヴ『ま、待ってくれなんだな~!!』

 

すれ違いざまにそんな言葉が聞こえた気がした。

 

やがて騒ぎもおさまり、

 

藍里(一体、何だったんでしょう・・・・?)

 

藍里「白夜様、大丈夫でしたか?・・・・・・・あれ?」

 

 

 

返事が無い。

 

 

 

不思議に思った藍里は辺りを見回して、

 

 

 

気付いた。

 

 

 

藍里「・・・・・・・・白夜様?」

 

 

 

時刻は正午。

 

 

 

場所は大通りのど真ん中。

 

 

 

最も人通りが激しくなる時間。

 

 

 

彼女が見る事の出来る視界の中に、

 

 

 

探し人の姿は見つからなかった。

 

 

 

 

白夜「痛たた・・・・中々凄かったですね、今のは」

 

やっと人の流れの穏やかな場所に辿りつくと、白夜は衣服の埃を払い、辺りの気配を探った。

 

白夜(近くに藍里さんは・・・・・・・・いませんね。結構流されちゃったみたいですし、それに――――)

 

白夜「ここって、何処なんでしょう・・・・?」

 

聞こえる音も、

 

漂う匂いも、

 

感じる気配も、

 

現在地を知る手掛かりになりそうな物が何一つ無い。

 

そもそも自分はこの街の仕組みすら知らない。

 

つまり、

 

白夜「迷っちゃいましたねぇ・・・・」

 

呟き、取り敢えずこれ以上流される事の無いよう、道の端に寄る。

 

白夜「どうしましょう・・・・?」

 

立ち尽くし、考え込んでいると、

 

 

 

 

 

??「そこのおにいちゃ~ん、ど~したの~?」

 

 

 

 

 

白夜「?」

 

何処からともなく聞こえた声に白夜が首を傾げていると、

 

??「そこのおに~ちゃんだよ!目をつむってるおにいちゃん!」

 

『目をつむってるおにいちゃん』・・・・

 

白夜「私?」

 

白夜が自分の顔を指差してみると、

 

??「そ!そこのきれ~なふくのおにいちゃん!」

 

その声と共に小さな気配が一つ、こちらに近寄って来るのを感じた。

 

声色からして少年のようである。

 

ゆっくりとしゃがみこんで、目線を合わせた。

 

白夜「私に、何か用かな?」

 

少年「なんか、こまってたみたいだったから。どうしたのかな~って」

 

白夜「・・・・そっか、ありがと」

 

白夜は慎重に手を伸ばし、少年の頭に触れるとゆっくりと撫で始めた。

 

少年「おにいちゃん、ひょっとしてみえないの?」

 

白夜「うん。ちっちゃい頃にそういう病気になっちゃってね」

 

少年「そうなんだ~」

 

白夜「うん」

 

少年「それで、なにしてたの?」

 

白夜「私はこの街に来たばっかりでね、今日は友達に街の案内をしてもらってたんだけど、その友達とはぐれちゃったんだ」

 

少年「まいごなの?」

 

白夜「うん、そうだね。だからちょっと教えて欲しい事があるんだけど、いいかな?」

 

少年「うん、いいよ~」

 

白夜「ありがと。人がたくさん集まる所って、何処か知ってるかな?」

 

少年「うん、しってるよ~」

 

白夜「そっか、じゃあそこまで連れてってくれないかな?」

 

少年「いいよ!こっち!」

 

 

 

少年は満面の笑みで白夜の左手を掴み、

 

 

 

白夜はその手に引かれるままに、街の喧噪の中へと消えていった。

 

 

 

(続)

 

後書きです、ハイ。

 

『ほろよいレモン』を飲みながら肴に『なめ茸』と『やわらぎメンマ』を貪り食うのが最近のマイブームです。

 

豚キムチは最強。

 

 

 

で、

 

 

 

とうとう二桁に突入しました。

 

『熱しやすく冷めやすい俺にしては珍しく持ってるなぁ』などと思いつつ毎日を殆どパソコンの前で過ごしております。

 

んで今回の話ですが、前後篇に分けさせてもらいました。

 

見知らぬ少年に連れて行かれた先で、白夜はこの街の何を感じる事になるのか、

 

現在絶賛執筆中ですのでもう暫くお待ち下さい。

 

ところで、

 

とうとう第参話の総閲覧数が3000を突破しました!!

 

他の話もじわじわと伸びており、感謝感激雨霰で御座います!!

 

本当に有難う御座います!!

 

今後とも生温か~い目で見守って下さいね・・・・?

 

それでは、次回の更新でお会いしましょう。

 

でわでわノシ

 

 

 

 

 

・・・・・・・・『龍馬伝』って面白いっすよね。


 
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