No.132056

SNEIL3

もんがーさん

私は間違っていたのだろうか…

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2010-03-24 15:20:31 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:603   閲覧ユーザー数:579

…かちっ。

しゅん、しゅん、しゅん…

…体が、重たい…。

 

意識ははっきりせず、夢と現実の境をふわふわと漂っている。

 

『…まるで、海の中のようだなあ…』

『…え?!あ!!すみません、主任。起こしちゃいましたか』

 

 

今日でこの研究室に泊り込んで1週間目になる。

私はどうやら給湯室で転寝していたらしい…。

連日の泊り込みで体が疲労のピークに達しているのだろうか。

目は覚めてはいるものの、瞼はなかなか開こうとしない。

 

『いや、いいんだ。こんなところで転寝してる私が悪いんだから。

…私にも、1杯貰えるかい?』

 

しばらくすると、部屋中に芳醇な香りが漂いだした。

 

 

『…いよいよ今日、ですね?』

淹れたてのコーヒーを差し出しながら、彼は私に確認するように言ってきた。

私はその問いに軽く頷きながら、ゆっくりとそれを口に運んだ。

 

 

 

明け方の、少し肌寒さが残る場所にもかかわらず、

彼の頬は興奮冷め遣らぬと言わんばかりに、紅葉している。

彼はこの実験が始まってからずっと精力的に参加している、若い研究員であった。

 

『…君は、今回のSNEILの事、どう思う…?』

『どうって…。SNEILは主任が中心のチームじゃないですか!!

それなのに…、何も感じないのですか…?』

 

彼は、コーヒーカップを無造作に机の上に置きながら、言葉を続けた。

 

『…僕は。このSNEILは天からの啓示だと思っています…』

『…啓示…?』

 

私の表情が一瞬曇ったのを、確認してなお、彼は言葉を続けた。

『…研究者としては、あるまじき言葉ですよね…。でも、主任は感じませんか?』

『確かに、あの実験結果には目を見張るものがある。もし、SNEILの作用が

確定できるものになったら、人類にはこれほどの発見はあるまい…。だが…。』

『…だが・・・?』

『自分で手がけた事なのに…。どうしても拭えないんだ、この何ともいえない違和感。

目に見えてはっきりと証明しているにもかかわらず、何かが違うって感じてしまう…。』

『…主任…』

『…すまない。私のほうが、非科学的な事を言い出してるな…』

 

そうだ…。何をこんなに疑ってしまうのか。

素直に喜べばよいではないか。

 

過去、偉大な発見をしてきた科学者達でさえも、

その結果が『偶然の産物』だったということはよく聞く話ではないか…。

今回のSNEILプロジェクトも、きっとそうなるのかもしれない。

 

 

 

 

…だが、しかし…。

 

 

 

私が、自分の中のもどかしさと葛藤していた、

まさにその時である。

 

 

 

『…大変です!!主任!!早く実験棟の方へ着て下さい!!』

 

…このとき、私はまだ気づいていなかった。

自分自身がすでに、その違和感の渦に絡め取られていることに…。

 


 
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