No.130827

華ノ守人第肆話《天》

どうも、ご無沙汰しております。
くまです。

作者がサボってしまったり、様々なトラブルが起きたとはいえ、ものすごく間を空けてしまい、申し訳ありませんでした。

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2010-03-18 21:00:11 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:3426   閲覧ユーザー数:2559

 

 

「・・・さま!華琳様!」

 

血相を変え、私の最愛の部下が部屋に飛び込んできた。

 

「・・・・・・春蘭。のっくくらいしなさい。」

 

ため息がもれる。

 

まったくこの子は・・・。

 

「大変です!大変なんです華琳様!」

 

「姉者。大変、大変では何も伝わらんだろう。申し訳ありません、華琳様。」

 

ふぅ。やっとまともに話が聞けそうね。

 

「かまわないわ。それで、秋蘭。何が大変なの?」

 

「そっ、それはですね、華r・・・」

「「貴女(姉者)は黙っていて(いろ)。」」

 

「うぅっ・・・。華琳様ぁ・・・、しゅうらぁん。」

 

あら。目をうるうるなんかさせて。可愛いわね、もう。

 

「それで?」

 

「はっ。城内に二人組みの侵入者です。正体は不明。仮面を着けており、見たことのない機械に跨っていました。」

 

まったく・・・。よりによってこんな時に。

 

「・・・・・・。」

 

「どうしたの、秋蘭。ただの賊ならばそこまで深刻ではないでしょう?雪蓮や愛紗もいるのだし。」

 

「その・・・、賊なのですが、奴らは空から降ってきたとでも申しましょうか。」

 

それって・・・・・・。

 

「北郷がやって来たときと同じように・・・」

 

「流れ星なんです!!」

 

まさか。

 

「春蘭!秋蘭!案内しなさい。急ぐわよ!」

 

「「はっ!」」

 

ねぇ、一刀。貴方なの?

 

「・・・・・・一刀」

 

《第肆話 天 》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃあぁぁぁぁああああ!」

 

どうも。空飛んでます。優理です。

ん?なんで飛んでるかって?理由は参章をチェック!

 

「なに一人でブツクサ言ってんだ!頭おかしくなったかっ!?」

 

むっ、失礼な。

僕は単に

 

「パニくってるだけでぁぁぁぁああっ!」

 

うん。やっぱこの状況で現実逃避、無理っ!!

 

「ああぁっ!うっせぇ!優理、ライフル出せ!」

 

「なんで!・・・ああ、そういう事ね。」

 

下に向けて気弾ぶっ放して減速!

 

「カウント、5、4、3・・・」

 

おっし。最大出力で!

 

「2、い・・・おい!優理ちょっと待て!」

 

「チャージ・・・ファイア!」

 

「話を聞けぇっ!くそっ!」

 

 

落下するバイクの上、突然兄さんは逆立ちの要領でライフルの銃口を蹴り上げた。

 

 

「なにす・・・うああああ!」

 

バイクが爆発的に加速する。ああ、落ちる落ちる。

 

「これは不味いな。」

 

「何で冷静なんだよ、バカ兄はぁ!くそぉっ」

 

兄さんのバカァァァ!

 

 

 

 

 

 

兄さんのバカァァァ!

 

「ん?今、声が・・・。」

 

「お姉ちゃん、どうしたの?」

 

「あ、季衣ちゃん。ううん、なんでもないよ。」

 

にっこりと微笑む、桃香。

今の声は気のせいだろうと、思ったその時。

 

「あれなんや?」

 

「わー!お星様なのだ!」

 

「え?まって、あれ・・・。」

 

「こっちに来てるっ!」

 

「「「「「「えぇっーーーーーー!」」」」」」

 

大きな音と、光とともに、彼女たちのいる場所から少し離れた所に、流れ星が落ちた。

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォォォンッ!!

 

 

 

 

「いつつ・・・・・。」

 

「おお。生きていたか、弟よ。」

 

ああん?

 

「生きていたか。じゃないでしょ!なにすんだよ急にっ!!」

 

「ん?銃口を蹴り上げてみた。・・・てへ☆」

 

てへ☆って。撃つか?撃っていいか!?

 

「そうじゃなくてっ!なんでその行動を起こしたのかを聞いてるのっ!」

 

「そう目くじら立てるなって。疲れるぞ。」

 

あのねぇ・・・・・・。

 

「がるるるっ・・・」

 

「はい、どうどう。んまぁ理由は簡単。」

 

「なにさ。」

 

「1.下にこの城が見えた。2.止めたけど、お前が聞いていなかった。以上。」

 

「むぅ。」

 

それは僕にも責任はある。あるけど・・・

 

「なんで兄さん無傷?なんで僕よりバイクが無事?」

 

 

おおう。弟よ、目が据わってるぞ。

 

「まあ、そう言うな。気にしないのが一番だ。」

 

それよりも、だ。ここは・・・。

 

「まずいな・・・。」

 

「あ”?なにがまずいのさ。」

 

そうか、お前は初めてだったな。ここ。

 

「ここはな、洛陽。いわば魏の本拠地ってとこだ。」

 

まいったな・・・、いきなりここか。

 

「加えて、こんなに派手かつ大胆に領地内に落下してきたんだ。

すぐに誰かが、それも将軍クラスが来るんじゃないか?」

 

「でも兄さんがいるし、ただいまで済みそうじゃない?」

 

「で?曹操のかわりに死にに来たよ。とでも言うか?」

 

「それは・・・」

 

「お前は俺を死なせないって言ったな?」

 

「言った。それで曹操さんも助ける。」

 

絶対に出来るって、信じきってる目だな。でもな・・・

 

「今はこれしか、華・・・曹操を救う手立てはない。」

 

「あいつはそんなこと許さんだろう。しかも、会えば何を考えてるかばれるという無駄な自信がある。」

 

「だからって!その・・・兄さんは会いたくないの?言ってただろ、愛してるって。

それに、曹操さんだっ兄さんに会いたいに決まってる。」

 

「ああ、会いたいな。」

 

「ならどうしてっ!」

 

 

 

 

そんな顔するなよ。なんかこう、だな・・・。悪いことしてる気分になる。

 

「これは俺の身勝手な理由だが、もう一度、彼女に別れを経験させたくない。あんないい女をもう一度、泣かせることはしたくないんだ。」

 

「兄さん・・・。」

 

-----なあなあ、このあたりやったか?

 

-----そうね。もうその辺に落ちてるはずよ。

 

 

「っつ!」

 

「ま、まずい!この声は・・・。霞かっ?」

 

よりによって・・・。ああもう!華琳よりめんどくさい事になる!

 

「な、なんか顔隠すものないか!?」

 

「そんなものあるわけ・・・・・って、あったよ。」

 

「か、貸せっ!」

 

「ほい。」

 

「おしっ!・・・・・・なぁ優理。なんだか心なしか、某死神代行がちょいと強くなるときの仮面に似てないか?」

 

「僕のなんか、恋人とか部下を炎に変えて戦ってた・・・・そう!たしか、くr」

 

「それ以上は禁句だ。」

 

------あーーーっ!あそこに誰かいるよ!

 

------ホンマか!?なんや、強いんやろな?

 

やば・・・、仮面装着!

 

「兄さん、一応目の色変えとけば?」

 

「ああ、そうするよ。」

 

ん?なんだぁその顔。

 

「兄さんの声、低くて無機質になってる・・・。」

 

「ふむ、それは重畳。」

 

さてと・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「あんたら、何者や?」

 

徒人ならば尻込みするであろう殺気とともに、霞が得体の知れない怪しい二人組へと視線を注ぐ。

しかし、目の前の二人はまったく意に介したようには見えず、さらには身に着けた仮面のせいで、その表情もうかがい知ることは出来ない。

だがなぜだろう。長身の男の金色の瞳には、懐かしさと、優しさと、後悔と、悲哀を感じた気がした。が、一瞬で感情が掻き消えた。

 

「霞さん・・・。」

 

「桃香、みんなと一緒に下がりぃ。こいつらたぶん・・・相当やるで。鈴々みんなのこと頼むで?」

 

「がってんなのだ!」

 

ゆっくりと戦闘態勢をとる。すると、不意に金目の男が口を開いた。

 

「我々は《天》、私の名は《刃》(ジン)。彼が《舜》(シュン)。見ての通りこの世界の人間ではない。」

 

「なんや急に?」

 

「君が何者かと問うたのだろう?」

 

「ん・・・、せやったな。ウチは張遼。一応ここの将や。んで、あんたらの目的は?なんで城内に侵入したん?」

 

「それはねぇ・・・。みがわ「失礼。」ぐふっ!」

 

言葉を遮るように、強烈な肘鉄が舜のわき腹に突き刺さった。

 

(あれは効くなぁ・・・。)

 

「すまないが目的は明かせない。侵入したのは不可抗力。言っておくが、君たちと敵対するつもりは毛頭ない。」

 

正直、彼女は驚いていた。金目の男の側にいた男・・・、いや少年と言ったほうが正しいだろうか。

予想以上に声が高かった。まあ、もう一人の声が随分と重みのある低い声をしていたのもあるだろう。

しかも、だ。

 

「あんたら、かなり場数踏んどるやろ。それも相当の修羅場や。」

 

 

 

 

この刃っちゅう奴は強さのそこが見えへん。・・・・・・勝てるかわからんな。

 

「そない奴ら信用せぇ言うたって、難しいやろ。」

 

「でも悪い人には見えないよ?」

 

「この人、強いのだ!」

 

「あー!目が金色だぁ!」

 

「ちょっとあんた達!」

 

「のわっ!桃香!鈴々!季衣!・・・はぁ。詠ー、しっかりしてぇな。」

 

「なによ?ワタシが悪いっていうの?」

 

「あーもう!いいから下がっときぃ!!」

 

「ぶーぶー。」

 

「なんか言うたか?」

 

「なんにも言ってないよぉ。」

 

「くくく・・・。」

 

目の前のやりとりを見て、刃の口から笑いがこぼれる。

 

「何笑ってるのよ。」

 

「いや、すまない。つい・・・、な。」

 

不機嫌そうに詠が刃を一瞥する。

 

「まあええわ。おとなしく捕まってもらおか?」

 

「丁重に断らせていただこう。」

 

「しゃあないな・・・。ほな、力ずくでいくで!」

 

「むう。喧嘩っ早いのは変わらないか。」

 

霞の身体が一気に間合いをつぶす。

 

「せいっ!」

 

その手、その得物から繰り出される光速の連突。

 

「おっと。」

 

放たれる突きを全て紙一重でかわし、一端、刃が間合いを取る。

 

「あーーーっ!霞だけずるいのだ!」

 

「じゃあかしい!こいつはウチの獲物や!」

 

「兄さん、獲物だって。」

 

「はぁ。なるべく彼女たちとの接触は避けたいんだがな。」

 

「何でか兄さん口調変わってるし。」

 

「下手にいつも通りに喋っていては野生の勘を持つ彼女たちにはバレかねん。故に、任務時の口調だ。」

 

「そんなもん?」

 

「そんなもんだ。」

 

 

 

 

え?そんなこと初めて聞いたって?そりゃあ口調のことなんて一切触れてませんもん♪気にせずどーぞ!

 

「自分らなぁにべらべらくっちゃべっとんねん!それにそこの兄さん。」

 

緊張感のなく会話する二人に、いい加減イライラし始めた霞が怒鳴る。

 

「なんだね?」

 

「なんで獲物抜かへんの?ウチのこと、なめとるん?」

 

先ほどの攻撃を受けても刀を抜くそぶりも見せない刃の態度が、癪に障ったのだろう。彼女の纏う空気がピリピリとしたものへと変わっていく。

 

「こいつは、人の命を奪うためだけに使っているのでね。君たちに敵対意識を持っていない以上、こいつは抜かんさ。」

 

「なっ・・・?」

 

「それとも何かね。私が、君を殺さねば逃げられなくなるほどに追い詰めてでもくれるのか?」

 

「このっ・・・・・・。言わせておけば!・・・・・・っ!」

 

一瞬。一瞬だけ、刃から殺気がこぼれた。だがそれで霞の怒りを殺ぐには十分だった。

霞だけではない。桃香、季衣は腰を抜かし、詠は硬直している。鈴々ですら笑顔が消えている。

 

「わかってくれたかね?君では、私に勝てない。」

 

「っく・・・。」

 

 

 

 

 

「私の臣下に好き勝手言ってくれるわね。・・・・・ほら、桃香。立てるかしら。」

 

「あ、うん。大丈夫。」

 

「・・・。」

 

「刃、とかいったわね?」

 

「ああ。」

 

「私は曹孟徳。どうかしら、私に降らない?」

 

「「華琳様!?」」

 

突然の発言にさすがに驚いたのだろう。春蘭だけでなく、秋蘭までもが素っ頓狂な声を出す。

 

「あら、いけないかしら?」

 

「華琳・・・。いくらなんでもそれはあかんやろ。」

 

「そうです華琳さま!このようなものがいなくても、私がおります!!」

 

「お言葉ですが華琳さま。こやつらは素性が知れません。しかも、一瞬奴が放った殺気、確実に姉者よりも実力は上。」

 

「なにぃ!?そんなこと・・・は。」

 

「姉者もわかっているだろう?」

 

「だから彼は危険だと?」

 

「はい。」

 

秋蘭の意見も最もだ。だが、なぜだかわからないが華琳は刃のことを強く欲しがっている。

 

「貴女の言いたいことはわかったわ。それで、刃。貴方の返答を聞かせて頂戴。」

 

「それは無理だな。私たちには目的があるのでね、縛られたくないのだよ。」

 

「手は幾らでも貸すわよ?」

 

「すみません。この人、そういうわけにもいかないみたいなんで。」

 

「そう。ならば、一つだけ聞かせて頂戴。」

 

無言で続きを促す。

 

「瞳の色を変え、声を変え、仮面をつける程度で、私がごまかされると思った?」

 

彼女の口から発せられた言葉に優理が動揺する。

 

「はて、何のことかね?」

 

「あくまでシラを切るの?隣の子は雰囲気にかなり出ているけど。」

 

「そんなところだ。」

 

「まあいいわ。」

 

「ふむ。それはありがたい。」

 

「ただ、貴方が目的を果たせたならば、あの日の約束、守りに来なさい。」

 

「っつ!」

 

仮面の内で一刀の表情が歪む。

 

「あら、貴方まで動揺したの?」

 

さもおかしそうに華琳が言う。

 

「・・・・・すまない。もう行っていいか?」

 

「ええ。構わないわ。」

 

「兄さん・・・・・・。」

 

「後ろに乗れ。・・・曹孟徳殿。」

 

「なにかしら。」

 

「次会うときは、戦場で。」

 

「楽しみにしているわ。」

 

「では。」

 

そう言って、爆音とともに二人が去っていく。

 

「華琳様、奴をご存知なのですか?」

 

「いずれ判るわ。」

 

二人を見送った華琳。その目に光るものが見えた気がした。

 

 

 

To be continue...


 
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