やあ、はじめまして。
ボクは この短編の語り部役、呼び名を仮に友人Aとしておこうか。固有名詞 考えるのがメンドかったな、などとは思わないでほしい。大体 誰の友人だよ、とかも言われそうだが、その答えはコレだ。
男子「何だよ邪魔だな、通せよ!」
仮に彼を男子Aとしておこう。
そこそこの進学校であるウチにおいて、そこそこの問題児。別に盗んだバイクで走ったり、校舎の窓ガラス壊して回ったりはしないけど、態度は不真面目で、授業を途中でサボったりするなどザラの人。
それでもバイトをやってて世間の荒波に揉まれているせいか、授業以外の行事では頼りになったりと決してクラスで疎外されてたりはしない。
ガラは悪いけど頼れる兄ちゃん的なキャラだった。
それからもう一人。
女子「通すワケないでしょッ! もう次の授業始まるのよ、今さらドコに行くつもりよッ?」
仮に彼女を女子Aとしておこう。
…ウンもうA飽きた、取っちまえ。
まあ仮に女子だ。新学期からクラスの中心にいる この娘は皆をまとめる委員長キャラ。かっちりルールにはまって生きるのが何より喜びな女の子で、その関係で成績優秀。何故なら学生は勉強をするものだから。
そしてルールに従うことを他者にも要求する自治厨でもあり、それゆえにアウトロー男子とはクラス内で対極の位置関係にあった。
よって激突も日常茶飯事。
女子「また授業サボるつもりでしょッ! もう何回目だと思ってるの? こんなにサボられたら私の委員長としての信用がガタ落ちなんだから、大人しく席について授業受けなさい!」
男子「うっせ、お前の信用なんか知るか。俺ァ 眠ぃんだよ、黙って見送れ」
女子「学校に何しに来てんのよアンタはッ! ええい行くな! 絶対離さないからね!」
お、女子が男子の手をガッシリ握った。
男子「チッ、メンドくせえ…。離せ、でないと こーしてやるぞ!」
あ、男子が掴まれてない方の手で、女子の頭をワシャワシャと。
女子「やーッ! 何すんのよ何すんのよッ? 信じらんない、女の髪の毛 何だと思ってんのッ? 朝セットするのに20分も掛けたのにーッ!」
男子「それこそ知るかッ! ホラ手ェ離せ、さもなくば お前の髪は ますますグシャグシャになるぜ?」
女子「なら こうしてやるーッ!」
男子「いだだだだッ! 噛んだッ? コイツ噛みやがったッ?」
女子「ふふふふふ…、どう゛だー?」
男子「調子に乗りやがって…、なら こうだーッ!」
女子「にゃあーッ!」
男子「おおおぉーッ!」
女子「んんーッ!」
男子「んんんんーーーーッ!」
女子「ん~~~~~~~~~~~~~ッッ」
男子「んっ」
女子「んん……、ちゅ」
……………。
声に混じる艶、湿っぽい息、桃色の気配。
男子「ん~、………、ん、ペロ…」
女子「んっ、ちゅく、…あっ、…や、あぷッ…………」
男子「…………………………………………………………………………ぷはッ」
インターバル。
男子「………おい、リップクリームの味がしたぞ」
女子「仕方ないじゃない、今日 空気乾燥してるんだから。…それより」
男子「なんだ?」
女子「も、一回」
男子「よし きた」
女子「きゃッ、…あむ、んん、…………あっ、舌」
男子「(レロレロレロレロレロレロ)」
女子「んん~~~~~~~~~ッッッッ!!!!!!!」
男子「……ぷはッ、………お、チャイムだ(キーンコーン…)」
女子「かかったわねッ! もう休み時間は終わりよ、抜け出すタイミングを逃したわねッ!」
男子「ゲッ、しまった そういうことかッ?」
女子「ふっふっふ…、これで もうアンタには大人しく授業を受けるという選択肢しかないわ。観念なさい」
男子「くそう、俺が してやられたというのか……!」
女子「でね?」
男子「うん?」
女子「さっきので腰が抜けた、席まで連れてって…」
男子「体 張ってるなあ…」
男子は素直に聞き入れて、動けなくなった女子の体をヒョイと持ち上げた。何故か当然のように お姫様抱っこだった。
男子「運搬 運搬……、設置! 撤収 撤収………」
ここで改めて名乗ります、ボクは友人A、この短編の語り部です。
颯爽とトランスポーターして戻ってきた男子は、ボクの真ん前の席に座る。女子の思惑に負けた結果となり、そこはかとなく悔しそうだ。
男子「あー、クソ、絶好の昼寝日和だったのになあ。まーしゃーねー、次の授業は数学だったか?」
男子が、後ろの席のボクへ振り返る。
男子「オイ友人、今日の数学って宿題あったっけか?」
―――生まれてきたことを後悔すればいい。
男子「なんか最大級の呪言キタッ!?」
ボクは最大級の呪言を吐いた。
彼は まったく予想外であるかのように恐れおののいていたが。ボクの暴言は 誰もが許してくれるものと固く信じてやまない。
コイツらの被害にあっているのはボクだけではない。クラス全員だ。全員が、この二人の淫魔が振りまく災厄に心を乱されているに違いない。
だから被害の分だけ 言葉が荒くなったとしても、ボクは決して悪くない。イヤむしろ足りない、もっと罵倒してやる このバカップルめ。
イチャ死にしてしまえ!
男子「なんだ その甘ったるそうな死に方は? ハチミツの海で 溺れ死ぬのか?」
その海の底から範間 勇次郎がザプンと浮上してきて、『極上の料理にハチミツをブチ撒けるかのごとき愚行ッ!!』とか言われるんだよ。
男子「そして『色を知る歳かッ!!』とも言われるんだな?」
色々 言ってるなあ あのオッサン。
しかし まあ、この二人を見ていると、一人でいることが とても寂しいことに思えてしまう。
この世の中では二人でいることこそが自然なことで、一人の自分は あるべきものが欠けてしまった不完全な存在ではないか、みたいな。
交わりをしたならば愛情が生ずる、愛情にしたがって苦しみが起こる。
その苦しみに囚われず、サイの角のように ただ一人で歩め、と お釈迦様は仰られている。ボクは その教えを胸に秘め、インダス河のほとりの赤土を裸足で踏みしめるかのごとく進み、いつかはニルヴァーナへ至るとしよう。
………お前ら二人は畜生道に堕ちろ。
男子「さっきからヒドイな お前ッッ?」
END
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発作的に書いてしまった作品です。
こう、建設的なテーマとか、モチベーションとか一切なく、ホントに衝動的に書いてしまった作品です。
ほとばしる熱いパトスで思い出を裏切るぐらいに書きました。
なので どの既存のキャラクターにも仮託せず、オリジナルのキャラクターで勝負しております。
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