No.129756

真・恋姫†無双 ~記憶無き者~

蔵前さん

恋姫二次創作。
いやーやってみたかった。
さぁーやってみよぉーかぁ。

2010-03-13 14:04:15 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1934   閲覧ユーザー数:1739

北郷一刀が外史にとばされて三日・・・聖フランチェスカ学園庭園にて

 

「・・・『神隠し』・・・ですか?」

 

ぼくは目の前で饒舌に語る小うるさい先輩をうっとうしそうに見上げた。

太陽光が制服に反射して神々しく見えるが、自分の中でウザさNo.1の先輩という厳然たる事実が変わるわけではない。こんなのが神々しく見えた自分に嫌気がさす。

そんな考えを知る由もなく及川先輩は続けた。

 

「本当なんやってゆっきゅーん。現にかずピーもおらんなっとんやって~」

「誰がゆっきゅんでかずピーって誰ですか」

 

露骨にため息を吐きつつぼくは世界史の教科書を閉じた。まだ三国志のあたりが曖昧だ。こいつから開放されたら予習をもう一度しよう。

それにしてもこいつは他に知り合いはいないのか?なぜ毎回毎回ぼくのとこにくるんだ?うっとうしい。

 

「そのかずピーさん(仮)不登校とかじゃないんですか?ほら、虐めとか・・・」

「そーゆーんじゃないんやって!携帯に電話しても全くつながらへんしメールすらできへんのやって」

「嫌われてるんでズビー」

 

手元に置いていたダイエットコーラをすする。相手してらんないな。

ぼくはダイエットコーラを片手にスッと立ち上がった。

 

「あっ、ちょ、どこ行くねん!?」

「先輩の戯言に付き合ってる暇は微塵も無いんです。悪いですが部活に行かせてもらいます」

 

淡々とそれだけ告げてぼくは部室に向かって歩き出した。及川先輩は慌ててそんなぼくの肩を掴んだ。少し力がこもっていた。

 

「おっま・・・!友達が困っとんのにほってくんか!!」

「友達ではありません。かずピーさん(仮)ともあなたとも」

「・・・・・・!!もうええっ!!さっさと行きいやこの薄情モンがッ!!!」

 

誰がどう見ても怒った口調でそう言って先輩はぼくを突っ飛ばしてどこかへ行った。ぼくは掴まれた肩を軽く払って部室に向かってふたたび歩き出した。

 

 

「ゆ、ユキくん・・・。・・・五分遅れてます・・・」

 

びくびくと怯えながらぼくのクラスメートでこの槍術部のマネージャーを務めている雛咲みかげが全く咎めるふうには感じられない注意をした。

 

「五分も無駄にしたのか・・・。及川め・・・」

 

少し苛立った呟きに、雛咲はさらに怯えだした。

長い前髪が顔を隠しているせいで表情は分からないが今にも泣きそうだ。

 

「他の部員は?まだ来てないんですか?」

「う、うん。ユキくんが一番・・・」

「・・・・・帰る」

「え?」

 

やる気の無いあいつらや先輩の事だ。恐らくとっくに帰ってる。だったらこっちも帰って世界史の予習をしたほうが有意義だというものだ。

練習道具を担ぎ、かばんを背負うぼくに雛咲は慌てて言った。

 

「ま、待って・・・!まだ・・・誰か来るかもしれないから・・・!」

「来るもんか。来たとしてもあんなのじゃ練習にもならない」

 

やっぱり淡々とした声で答えるぼく。こんな自分がぼくは嫌いだ。こんなんだから友達ができないのだ。

 

 

「ついてくるな。何を言ってもぼくは参加しない」

 

校門で帰ると言い張るぼくに雛咲はついてきた。あわあわと慌てているだけの奴かと思っていたが意外と強情な奴のようだ。

 

「で、でも・・・私・・・マネージャーだから・・・」

「・・・・・熱心なんだな」

 

でもぼくは冷めていた。

 

「悪いけどついてこないで。もう帰ると決めた」

「で、でも・・・!」

 

と、雛咲が身を乗り出したときだった。

 

 

 

プァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!

 

 

 

トラックが突っ込んできた。雛咲はその進行方向に立っていた。

ぶつかる、と思ったときには体が動いていた。

 

 

「・・・・・・・・・?」

 

雛咲に飛びかかり、来るべき衝撃に備えていた。しかし何も感じなかった。

何も感じずに死んでしまったのだろうか?

そう思って顔を上げた。

暗かった。広かった。星が輝いている。

 

 

ここはどこだ?

 

 

ぼくはだだっ広い荒野の真ん中に突っ立っていた。足元には雛崎が寝ている。

何がどうなった。

ぼくは混乱してきょろきょろした。全く見覚えが無いぞこんなとこ!!

聖フランチェスカの敷地内じゃない。聖フランチェスカに荒野なんか無かった。

 

「ひ、雛咲・・・?お、起きてくれ」

 

ぼくはとりあえず雛咲を起こすことにした。どうすればいいかわからなかったんだ。誰でも言いから一緒にいて欲しかった。それがたとえなぜこうなったのかの原因に近い人でも。

雛咲は意外とすぐに起きた。眠りが浅かったようだ。

 

「むにゃ・・・何ぃ・・・?って、・・・ゆ、ユキくん・・・?」

「あ、良かった。轢かれてなかったんだね」

 

安堵した。もしも死んでいたらという考えもたっていたので心の底から安心した。

 

「早速で悪いんだがここがどこか分かる?」

「え?・・・・・え?ど、・・・どこ、ここ・・・」

 

・・・・・・やはり。雛咲も知らない場所のようだ。

くそ・・・どうすればいいんだ?

 

「・・・・・」

「ゆ、ユキくん?」

 

急に黙り込んだぼくに雛咲は心配したのか名前を呼んだ。

 

「なに、雛咲?」

「あそこ・・・人がいる・・・」

「マジ?」

 

ぼくは少し喜んで雛咲が指さした先を見た。確かに人がいた。三人も。

助かった。そう思った。

 

「すいませーん!!」

 

ぼくは迷わず声を出した。だって助かると思ったんだ。雛咲も、ぼくも。

そしてぼくはその三人に駆け寄った。

 

「み、道に迷ってるんで・・す・・・が?」

 

不意に雛咲の悲鳴が響いた。そりゃそうだ。ぼくだって悲鳴をあげたい。

男達は大きな刃物を持っていた。

ギラギラ輝いてる。本物。やばい。逃げないと。

 

「坊ちゃん。なかなか上物の服着てるじゃない。もらってあげるよ」

 

逃げろ。逃げろ。逃げろ。バカ。足。動かねぇ。嘘。冗談じゃない。

 

「逃げろ雛咲ぃー!!!」

 

声だけは出た。声を出したら足も動いた。手も動いた。担いでた練習道具から棒を取り出した。

 

「うおぁぁぁぁああああ!!!!」

 

突いた。渾身の一撃だ。体重を乗せた今までで一番良い突きだった。

でも、男はよろめきすらしなかった。外套の下に鎧が一瞬見えた。

 

「ひどいじゃねぇか。坊ちゃん」

 

軽く言いつつ剣を振り下ろす男。避ける?無理。間に合わない。

考えは一瞬でまとまった。

 

「ぁぁぁぁあああああ!!!」

 

腕から血が噴き出す。腕で直接防いだからだ。幸いつながってはいるがこれじゃ使い物にならない。

 

「くっそ・・・・ッ!!」

 

男は一人じゃない。三人もいる。後ろを見る。雛咲がいる。足が震えている。情けないな。ぼくも足が震えてるよ。だって怖いもんね。

 

「アホンダラァア!!!!」

 

叫んで思いっきり男の顔に棒を投げつける。もう振れない。投げるしかない。

生身に棒を投げつけられた男は少しひるんだ。

 

 

今だ!!!

 

 

「逃げろって雛咲!!」

 

雛咲の手を引っ張って走った。逃げるしかない。プライドなんか知らない。ぼくは生きたい。

こんなわけも分からず死ぬなんか嫌だ!!!

 

「あっ逃げんじゃねぇ!!」

 

うるさい!!誰がそんなの聞くか!!

声にならない。のども怯えて震えている。笑っちまいそうだ。

 

「雛咲!!おまえ自分で走れねぇのか!?」

 

ずりずりと引きずられていた雛咲ははっとした。そして自分の足を動かして自分で走り出した。

そして・・・こけやがった。

心の底から笑っちまいそうだ。お約束守んなよ。

 

「っきゃ!」

 

かまうな。あいつが勝手にこけたんだ。ぼくは必死で助けようとしたさ。

 

 

だから、また助ける。

 

 

お人よしだな・・・ぼく。

こけた雛咲に斬りかかろうとする男に飛びげりながら思った。

 

「こけんな!!ドジ!!アホ!!マヌケ!!!」

 

着地して下らない罵倒をする。そんなことをしてる間に囲まれた。

終わった。もう逃げられない。

 

「ごご、ごめん・・・ユキくん・・・・・!!」

「謝る暇あったら頭と体動かして逃げる算段立てろ!!」

 

なんか最期だと確信してるやりとりにしては下らないな。そう思った。

人生って割とこんなもんなのかな?

そう思ったとき・・・狂ったように月光が反射する神々しい剣が振り下ろされた。

 

続く・・・


 
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