はじめに
今回も色々ゴメンナサイ
全てが飲み込まれていく
彼らの行く手に在るもの全てが
天幕も
人も
彼らの後に残るのは残骸
かつて天幕だったもの
かつて人だったもの
彼女達は
ただ見ているしかなかった
遠くに見える黄巾党を見て冥琳は雪蓮の事を考えていた
大丈夫だろうか
いくら彼女が稀代の強者とはいえ彼ら黄巾党が通り過ぎた後を見ると嫌な想像しか浮かばない
「…信じるしかなかろう」
「祭殿?」
いつの間にか隣にやってきた孫呉の宿将は彼女と同じ方向を見つめていた
「我らは策殿に着いていくと決めたのだ…ならば信じるしかなかろう?我らの王を」
「ええ、だからこそ…一緒に行かなかったのが悔やまれる」
「…」
「帰ってきたらお仕置しなければ…処で祭殿、その酒は?」
ふと気づくと祭は酒瓶を抱えている
「あそこに置いては今や無残な目に在っていただろうよ、くすねて来た」
「〇に袁と書いているが、我が軍の物ではないな?」
「さすが袁家…酒も上等と来たものだ」
あの状況下でよくもまあ
ぷは~と息を吐く祭に冥琳は苦笑する
「私も一杯頂こう」
「…えっ…えっ…」
涙が止まらず泣き続ける桃香を愛紗はただ抱きしめていた
「…ぐっ…白蓮ちゃん…」
「…桃香様」
「…桃香お姉ちゃん」
あの状況では仕方なかった
誰も彼女を助けることは出来なかった
彼女にも白蓮自身にもどうすることも出来なかった
それが悲しくてしょうがない
それが悔しくてしょうがない
二人の軍師もどう声を掛けていいか解らずにいた
とそこに
「泣けば白蓮殿は戻ってくるのですかな?」
「星!…貴様っ!!」
愛紗の鬼の形相も軽く受け流し、星はただ桃香に語りかける
「泣けば白蓮殿が戻ってくるのなら…ふむ、某も泣いて見せればよろしいか?」
「だって…どうしたら…」
「笑っていればいいのではないですか?」
「えっ?」
「泣いて…それでも戻ってこない時は…笑って…彼女を信じましょう、どちらかで白蓮殿が戻ってくるのなら、某は後者を選びます」
そういって笑ってみせる星
笑顔というのは伝染する物なのだろう
笑ってなければならない
彼女に伝えるために
おかえりなさいと
「春蘭が心配?」
城の方角を見つめる秋蘭に華琳は問いかける
「…いえ、姉者を…信じてますから」
「…そう」
そのに瞳は大切な者を想い信じて止まない強き意思が宿っている
「強いわね…秋蘭は」
「華琳様は姉者が心配で?」
少々意地悪気な秋蘭の視線に
「まさか?帰ってきたらいっぱい御褒美をあげなきゃと思っていたところよ」
満面の笑みの華琳
そこには微塵の心配もないと
覇王は物語っている
だが
姉者…早く帰って来い、華琳様は心配でならないようだ
その奥にある華琳の心を
秋蘭は読んでいた
その頃の姉者
「大人しく首をよこせぇぇ!!!!」
おかしい
どうなっている?
春蘭の太刀を必死に避けながら比呂はこれまでを思い出していた
城に入った処まではいい
中は想像以上の戦場と化していたが何進将軍が奥に進んでいったことは明白だった
何進将軍を見つけた処までもいい
無事に何進に辿り着き事の次第を告げたところ、何進はすぐに撤退を全軍に命令した
だがこの状況はなんだ?
やがて曹操陣営の夏侯惇将軍を見つけ声を掛けたところ、いきなり斬りつけられた
「貴公は勘違いをしているっ!」
「黙れっ!賊風情がっ!!!」
すんでのところで避け、距離をとる比呂
賊?
賊だというのか?
この俺が?
どうやら彼女は勘違いをしているようだ
「違う!俺は袁紹様が直属軍、張郃というものだ!賊ではない!!」
というか先程黄巾党を突破する為に集まった時に近くに居たではないかこの女は
「そのような虚言に騙されるものか!見苦しいぞ張角!!」
「は?」
「この夏侯元譲の目は節穴ではないと言っておるのだ!もしや自身の名を忘れたわけではあるまい張角!」
呆気にとられる比呂に一気に春蘭は詰めてくる
張角?
この俺が?
春蘭の太刀はある意味読みやすかった
唯ひたすらに首だけを狙ってきている
どうやら本気で俺の首を飛ばそうとしているらしい
単純、しかしその太刀はこれまで彼が受けてきたどの相手よりも速く…鋭い
「ちなみに」
掌を向けストップの意を見せながら彼女に問う
「何故に俺が張角だと?」
「なんだ…簡単ではないか?その髪だ!」
蒼龍刀を肩に担ぎ、空いている左手で比呂の長髪を指差し
「聞けば張角とやらは男か女かもわからないという」
春蘭は説明し始める
張角は男か女か解らない
↓
張角は男のような女のような容姿をしている
↓
張角がいるという城に長髪の男
カチャカチャカチャカチャ…
「…つまり」
カチャカチャカチャ…チーン(完成)
「つまり貴様こそが張角だ!!」
………
いかん…この女アホだ
序に言えば春蘭は此処に来た当初の目的も忘れていた(前話参照)
「理解したら大人しく首をよこせぇぇ!!!」
「理解できるかっ!!!」
再び春蘭の太刀を避けるも限界が近付いてきた
いかん…この女アホだが強い
自分と同等…もしくはそれ以上の強さに追い込まれていく比呂
どうする?…どうすれば切り抜けられる?
やがて思考にも霧がかかっていき
悠…
俺なら黙って諦めますねぇ
猪々子…
右に同じ~♪
斗詩…
駄目だよう二人とも…頑張って下さい比呂さん!
麗羽様…
そのような無礼な女…斬り捨ててしまいなさい!
ええい使えん奴らめっ!
若干一名…自分の主も混じっていた気もするが比呂は毒づく
こうなったら一か八かだ!
比呂は春蘭の後方に居る人物に叫ぶ
「曹操殿!見てないで止めてくださいっ!!!」
「なにっ!華琳様!?」
「へ?」
春蘭が振り向けば…そこには何進のおっさん
「ていっ」
ビシっ!!
「はうっ!」
気絶する春蘭をみて思う
コイツがアホでよかったと
「…ど~んっ!!!」
「っ!今度は何だっ!?」
一息ついたのも束の間、体当たりを喰らい比呂は倒れる
仰向けに倒れた比呂の上には血だらけの雪蓮
「…孫策殿っ!?」
その身を血で真っ赤に染め虚ろな瞳の雪蓮に比呂は息を呑む
「どうされたのだ孫策殿!?その血は?」
再び呆気に捕われていた比呂だが彼女が怪我をしていると思い急いで傷を探す
彼女の身体を弄り、その血が返り血であることにホッとした比呂だが…
「…熱い」
「…孫策殿?」
何やら様子がおかしい
「…熱いよ」
「…?俺には貴女の格好は涼しく見えるのだが」
雪蓮の纏う服は唯でさえ露出が多い
自身のスタイルを惜しげもなくさらす雪蓮だがどうやら暑いらしい
…そういえば彼女は南方の出身だったな
南方は此処より暑いと聞く
いや待て…だとしたら此処は彼女にとっては涼しい気候のはずだが
そんな比呂の思考を遮るように彼女の手は比呂の両頬を包み
「…っ孫策殿?」
段々と彼女の顔が近付いてきて…
ぶちゅううううううううう…っぽん
「???…っは!?孫策殿っ!?」
「…雪蓮」
「は?」
「雪蓮…て呼んで」
え?
この状況でいきなり真名?
もはや訳がわからない比呂
悠…
そんなんだから桂花に嫌われるんですよ…
猪々子…
右に同じ~♪…ってそうだったのかアニキ!?
斗詩…
…不潔です
麗羽…
そんな女より私の方が百倍良いに決まってますわっ!!
だから黙れって脳内のお前等!!!!
あと其処のおっさん!!ハアハア言ってないで助けろ!
そうこうしている内に素っ裸な雪蓮
「って、いつの間に脱いだんだっ!?」
「…熱いの…止めてぇ」
必死に起き上がろうとすればそれは…対面座位?
いかん…理性が
唯でさえこの一ヶ月弱
訓練に次ぐ訓練で麗羽の相手をする暇も無く
男の性が目の前の果実に反応しかける
…と
そのとき
「…ぃいやあああ!!!!」
大量の黄巾党に担がれて白蓮参上!!
…というより何しに来たんだこいつ等は!?
キキキ~っ!!とブレーキ音に続き
「嫌っ~!!!」
宙を舞う白蓮
ベチャっ!!!
彼女が落ちた先にには
「嫌っ!離してよっ!」
「「お姉ちゃんを離しなさいよ獣!」」
「うるせぇ!大人しく付いて来い!」
「兄貴の言うとおりなんだな!」
「お前らも来いってさ!」
三人の少女を連れ去って逃げようとするヒゲ、デブ、チビの三人組
その光景に押し寄せてきた黄巾党(親衛隊)が息を呑む
そんな彼らの様子を見て
まさかこいつ等は彼女達の為に…
雪蓮に顔を舐められながら比呂はようやく気づく
「…っつうう、何なのよぉ?」
頭を擦りながら白蓮は立ち上がる…と目の前には三人の黄巾党が同じく三人の少女を連れ去ろうとしている
「…成程」
「「へ?」」
白蓮の呟きにその場の全員が彼女を見やる
「この期に置いて婦女子を連れ出し、自らのみが逃げ出そうという鬼畜」
「何っ?」
白蓮の呼びかけに三人の動きが止まる
「貴様等が張角及びその弟共だな!其処になおれっ!」
スパンっ!!!!!
瞬く間に首を刎ねられる三人
ブウンっ!
剣に付いた血を振って払う
「張角及びその郎党、幽州が太守!この公孫瓚が討ち取ったあぁ!!!!!」
「え?」
あとがき
ここまで読んでくださった皆様
どうもありがとうございます
ねこじゃらしです
あれ~?
黄巾の乱編終わりのつもりで書いていたのに
終わってねえな…
…もう1話位必要だったか
なんだこの終わる終わる詐欺…
とりあえずなんかもういろいろとすみません
それでは次の講釈で
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第12話です
どうでもいい今朝の出来事
…明日飲み会だし今日の内にクリーニング出さなきゃな~
ワイシャツを纏めていたら胸ポケから一本の煙草
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