一刀が気絶しているとき
「・・・・・ろ」
ん?なんか声がするな・・・。
「お・・・・ろ」
う~ん、もうちょっと寝かせて・・・。
「起きろといってるだろうが!!ばかもん!!」
「うごっ!!」
突如怒鳴り声と同時に腹部にすさまじい一撃が食らわされた。
あまりの衝撃に俺が目を覚ますと、そこには容姿が雪蓮と蓮華によく似た女性が立っていた。
ただ、目の色が違う。雪蓮達は碧眼だったけど、この人の目は緑色だ。
「あの・・・どちら様で・・・」
「人にものを尋ねるときはまず自分から名乗らんか!!小僧!!」
俺が質問するとその人は俺にそう怒鳴りつけてきた。
まあ確かに俺から名乗らないとな。それが礼儀だし。
「あ、俺の名前は北郷一刀と申します」
「ふむ、お前が北郷か」
あれ?この人俺を知ってるの?
「あの~、それであなたは・・・」
「おお!私の名か!我が名は孫堅、字は文台と言う!よろしくたのむぞ小僧!」
孫堅?確か雪蓮と蓮華のお母さんだよな?確かもう死んだはず・・・。
「あの~」
「ん?何だ小僧」
「つかぬことをお聞きしたいのですが、孫堅さんはもう死んでいらっしゃるのでは・・・」
「うむ、確かに私は死んでおる」
「と、いうことはここはあの世ですか?」
もしそうなら俺はもう死んでいることになる。
一体なんで?俺は記憶を探ってみる。
・・・・ああ!
確か愛紗が嫉妬の余りジョーカー化して、その一撃うけたんだっけ・・・。
女の嫉妬で死ぬなんてなんつー間抜けな・・・。
その考えに至った俺は凹んでしまった。が・・・
「がはははは!それは違うぞ小僧!此処はあの世ではない!」
「え?」
それじゃあ此処はどこ?
「此処は外史の狭間、外史からはじき出された人間が来る場所だよ」
突如誰かの声が聞こえた。声の聞こえた方向を見ると、そこに一人の男性が立っていた。
身長は俺より少し高いくらい、目は雪蓮と蓮華と同じ碧眼であった。
「ようこそ、天の御使い北郷一刀殿、俺の名前は孫栄、前の名は呉栄、王蓮・・・孫堅の夫で雪蓮、蓮華の父親だ」
その人は人懐っこい笑顔で俺に自己紹介をした。
呉栄・・・確か正史では孫堅の妻だったな・・・。こっちでは男性か・・・。
そういえば雪蓮が、孫堅さんと共に呉の建国に尽力した人だって言ってたな・・・。
「よろしくお願いします、孫栄さん、それで、外史の狭間って言いましたけど、なんで俺はここに来てしまったんでしょう?」
俺は一番疑問に思っていたことを訊く。
「うむ、それはだな、今のお主は向こうの世界で死んでいるような状態なのだ」
「へ!?」
やっぱり俺死んでるの!?
「いや、そうではなくてだな・・・、刀牙、頼む。」
「はいはい、一刀君、今の君の状態は向こうの世界の体から魂が抜け出て、この場所に行き着いてしまっている状態、いわば幽体離脱の状態なんだ。君の場合はまだ肉体が完全に死んでしまっている状態じゃない。だから時間が経てば元の世界に戻れるよ」
「まあ即死したりすでに手遅れの場合は即あの世行きだがな。もしくはお主が元いた世界に強制送還されるかのどちらかだが」
・・なるほど、つまり俺はまだ死んではいないけど向こうでは意識不明か危篤ってことか・・・。
「じゃあ早く戻らないと・・・」
「うろたえるな小僧!!!」
と、突如俺は孫堅さんに吹っ飛ばされる。
・・・どこの教皇だ・・・あんた・・・。
「言ったであろう、時間がたてば嫌でも帰れると!それまでの間、この江東の虎!孫堅文台が師匠を務めるこの猛虎道場が、お主が二度と同じような過ちを繰り返さぬようきっちりしごいてやろう!!」
猛虎道場って・・・。一体どこのゲームだよ・・・。
まあ確かにこの人虎っぽいけどさ・・・。
「まあまあ、王蓮落ち着いて、まあしばらくゆっくりしていきなよ、一刀君」
そう言いながら孫栄さんがお茶を淹れてくれる。
なんか妙に親近感が沸くな~孫栄さんって。
「さて!お主の死因は・・・」
「いや、まだ死んでないから、意識不明なだけだから」
「おお、そうだそうだ。まあその原因は、だ!お主が雪蓮らに色目を使って、お主の彼女を怒らせたからである!」
うっ・・・・反論できない・・・。
「確かこの外史以外でも関羽ちゃん以外の子に手を出してたしね」
・・・耳が痛い。
「とにかく!対処法は一つ!お前の彼女以外の女を抱くな!これに尽きる!」
「でも一刀君は雪蓮から種馬になれって言われてるんだよねえ・・・」
「おお!そうであった!う~む、孫の顔も見てみたいがな・・・・」
いや、悩まないでよ・・・。俺は今は雪蓮達に手を出す気はないからさ・・・。
「・・・まあなんにしても、あまり他の女の子に色目使っちゃ駄目だよ。俺も以前ひどい目に・・・ん?」
孫栄さんが俺を見て突然話を止めたので、俺が何事かと自分の体を見てみると、なんと自分の体が透けていた。
「おお、もう時間のようだな」
俺が思わず焦っていると孫堅さんは笑いながらそう言った。
「え、じ、時間ってどういう・・・」
「つまり、元の世界に戻る時間が来たってことさ」
ああ、なるほど。つまり俺はもうすぐ戻るってことか。
「ああ、そうそう、ひょっとしたら関羽ちゃんは君を殴り飛ばしてへこんでるかもしれないから、戻ったら慰めてあげなよ」
まあ、愛紗は真面目だからな・・・。でもへこむか・・・?
「まあへこんでるであろうな、恋する乙女とはそんなものよ。私もついうっかり刀牙を殴り飛ばした時は後悔したものよ」
「あのとき俺は祭とただ話をしてただけだったのにね。本当に王蓮は早とちりというか・・」
「うっ・・・し、仕方がないではないか!お前が私以外の女と話をしていると・・・
不安になって・・・」
・・・なんか孫堅さんってどことなく愛紗に似てるな~、嫉妬するところが。
そうこうしているうちに、俺の体の大部分が消え、段々俺の意識が薄れていった。
「もう時はなさそうだな、ではな北郷、呉と娘達を頼んだぞ」
「雪蓮はやんちゃだからね、振り回されると思うけど頑張って」
ちょっ、孫栄さん・・・不吉なこと言わないで・・・。
その思考を最後に、俺の意識は闇に落ちた。
「・・・・ん?」
・・・あれ?ここって、雪蓮の屋敷にある、俺の部屋?
どうやら幽体離脱から戻ってきたみたいだな。
俺がベッドから起き上がると、隣で愛紗が眠っていた。
よくよく見たら愛紗の顔に涙の跡があった。
それを見て俺は苦笑した。
「まったく、泣くなら俺を気絶させないでよ」
そういいながら俺は愛紗の髪の毛を撫でる。
「んんっ・・・」
くすぐったいのか、愛紗は身をよじる。その仕草が可愛くて俺はしばらくその寝顔を見ていた。
その後愛紗が起きて俺に泣きながら抱きつき、それを雪蓮たちに見られてからかわれたのは別の話。
外史の狭間
「どうだった?彼」
孫栄は孫堅に尋ねる。
「うむ、なかなかいい男ではないか。あれでは娘たちが惚れてしまうのも無理はない」
孫堅はそう言いながら笑みを浮かべた。
「そうか。ま、彼と彼女なら、雪蓮たちを導いて、俺達の悲願を達せさせてくれそうだしね」
孫栄もまた、笑いながら満足げにそう言った。
「うむ、我等はここで、のんびりと娘達の活躍を見物させてもらうとしよう」
「そうだね、王蓮」
孫堅の言葉に孫栄は頷きながら、目の前にある巨大な画面に目を向けた。
あとがき
やれやれ、ようやく投稿できた・・・といっても番外編ですが。
ちなみにこの作品での設定では、王蓮は愛紗並みに嫉妬深くて、
刀牙が他の女性と一緒にいるとしょっちゅう暴力沙汰になったことになっています。
ついでに言うなら、刀牙は王蓮ひとすじですが、その性格と顔の良さから、
子供ができてももてていました。
いずれこのことについても書きたいです。
では、また会う日まで。
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これは、この作品の番外編、猛虎道場の第二幕です。
正確には一刀が気絶中の出来事を書いています。
それではどうぞご覧ください。