No.128804

真・恋姫†無双 金属の歯車 第二十四話

この作品について。
・真・恋姫†無双をベースにとある作品の設定を使用しています。クロスオーバーが苦手な方には本当におすすめできない。
・俺の◯GSを汚すんじゃねぇって方もリアルにお勧めできない。
・ちなみにその設定は知っていれば、にやりとできる程度のものです。
・この作品は随分と厨作品です

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2010-03-08 02:26:52 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:2156   閲覧ユーザー数:1929

 平穏は突然破られる。

たった一発の銃弾が火種となり、最後に残るのは子供の泣き声だけ。

そう、たった一つの過ちが全ての発端となり得る。それは正史でも外史でも変わらない。

 

 

二十四話 Atomos Snake ~大気ノ蛇~

 

 

 一刀は日の入りをじっと見つめていた。

これから闇がやってくる。その幻想的な光景をいつものお気に入りの場所で眺めていた。

黄昏。

その光景は暗に何かを表しているようだった。

「ご主人様」

「どうした、こんなところにこんな人数で」

 一刀が振り返った先には、桃香に朱里と雛里、詠に音々音と頭脳首脳陣が勢ぞろいだった。

「折り入って話が・・・」

「そろそろ始まるのか。未曾有の大決戦が」

「はい。われわれ蜀は呉と同盟し、魏を撃退します」

 一刀の言葉に朱里が珍しく淡々と答える。

「その言い方だと・・・魏を滅ぼすつもりはないらしいな」

「うん・・・三人一緒に立つ。その方法を見つけたから」

 桃香の目は希望に満ちていた。

「あきらめ切れなかった。みんな、やり方は違えど目指すところは一緒なんだから。だったら協力しあえば、きっとこの国の未来はずっと明るくなる。だからみんなと話し合ったの」

「今大陸に立っている三人の中で領土的野心を持っているのは曹操さんのみです」

「確かに雪蓮は領土には拘っていないかもな」

 直に、膝を交えて話し合った自分の経験だった。確かに雪蓮は戦いが上手だった。しかし戦いが好きというわけではなくどこか消極的だった。

「ですから曹操さんの力を削げば・・・」

「お互いがお互いを見張りながら不干渉を貫く。そうすれば三つの天下の平穏が保つことができるでしょう」

 朱里と雛里の説明に納得する。

天下が三つあるという話は少し滑稽に聞こえるかもしれない。しかしそれで平和になるのであれば、民はそれでいいんじゃないだろうか。

「三国とも悪政を敷く国家ではないですし、それぞれの理想にそった国造りを行う方が・・・」

「桃香の理想に近づくってことよ」

 詠が最後をしめた。

「しかしそれを実現するには、曹操の力を削がねばならん。至難の業だぞ」

「そのための呉蜀同盟です」

「あんたがずいぶんと買いかぶってる魏の御遣いも倒せるでしょうね」

「・・・あれと恋、どっちが強いだろうな」

「恋殿が負けるはずありません!」

 音々音の言うとおりに恋がケインに勝利できるのであればどれだけ楽だろうか。どの道、魏を倒すには障害は多かった。

「で肝心の魏はどういう動きなんだ?」

「はい、呉の周泰さんの・・・」

 雛里がしゃべっているところを急に一刀が制し、あたりを見回す。

「この邪気・・・」

 暴かれた闇の中からアシッドの姿を現す。挑発的な態度は変わらない。明らかに一刀を誘っていた。

一刀は腰のブレードを静かに抜き放ち、無言で桃香たちに下がる手振りをだす。

「ご主人様!」

「敵の数がわからん。待機だ」

「けど一人じゃ危険だよ!」

「あいつは私の獲物だ!」

 そう叫ぶと一刀は漆黒の方向に走っていった。

 

 

 城壁の上では二人の蛇が文字通り火花を散らせていた。

一刀は前回の戦闘でワイヤーの庭に誘い出されたため、攻勢に回ることを躊躇したがワイヤーが張り巡らされていない。

その戦い方に違和感を感じるが、戦いやすいに越したことはない。油断も慢心もせず、ただ敵を倒すのみ。

アシッドのしぶとい特性を考え短期決戦の構えを見せる。

片手で目を隠す。あの赤目を使うしぐさだ。

「兄弟!甘いな!」

 その言葉と共にアシッドも赤目になり、蛇が対峙する。

一刀は高周波ブレードを逆手に、左手にはナイフを持ち、アシッドの首を執拗に狙う。対するアシッドは両手にナイフを持ち、同じく一刀の首をひたすらに狙う。

間合いで勝る一刀だったが、相手が悪い。異常な再生能力を持っているアシッドは首がちょっと傷ついただけではひるまず、傷つくことを恐れずに一刀の首を狙ってくる。

何合か切りあった末、高周波ブレードを両手のナイフで受け止められ大きく弾かれる。

「兄弟!バーサーカーを制御しきれていないようだな!」

「何・・・」

「感情論で動いている貴様と!本能のままお前を殺そうとしている俺では!殺戮する効率が違うのだよ!!」

 紅い目のままアシッドが言葉を続ける。一方の一刀は既に白い目に戻ってしまっている。

「なあ兄弟!俺たちは数多の兄弟を犠牲にして生まれた完成品だ!ならば!俺たちは生まれることなく死んでいった数多の兄弟の意志を!そして!蛇の意志を受け継ぐべきだ!」

「まさか・・・」

「そう!ボスを超えし者の理想!彼の意志こそこの世界で実現するにふさわしい!!」

 たった一人の観衆に向かってアシッドは高らかに宣言した。

「違う!BIGBOSSはそんなことは何も望んでいなかった!」

 一刀はアシッドに向かって一気に距離を詰め、下段から喉を引き裂くように狙いを定める。しかしその一撃を赤目のアシッドは手で掴み、二人の間合いが零になる。

二人がとった行動は頭突きだった。

「兄弟!俺たちは化け物だ!化け物らしく生きようじゃないか!!」

「俺たちは人間だ!」

 頭から流血しながら二人がそれぞれの言い分を叫び、交差しないまま再び構える。

しかし急にアシッドが笑い出し、一刀が構えを突きを繰り出しやすい中段に構える。

「兄弟!お前は戦場を離れすぎた!」

「何だと?」

「俺が一人で貴様を襲うと思ったか・・・」

 アシッドの一言にはっとなった一刀は、アシッドに目もくれず全力疾走で撤退する。

「さあ・・・苦しんでくれ、兄弟」

 

 

「みんな・・・?」

 一刀が中庭に降りてきた時には既にとき遅しであった。

マグナの不吉な笑い声が響いていた。マグナの周りは彼を守るように恋姫たちが立っていた。

不気味。その一言がこの場を埋め尽くしていた。

「催眠術か」

 一刀がそう呟いた瞬間、一番手前にいた翠と星が一刀に迫ってくる。

左腰に差してある、高周波ブレードと熱破断ブレードを両手で構え、二人の攻撃を受け止める。

「主・・・自分の意思を・・・貫きたまえ」

「私たちに構わず・・・」

「意識があるのか!?」

 二人を傷つけまいと強引に両手を振り下ろし、間合いをあける。しかし次は蒲公英と焔耶がこちらに迫ってくる。

「どうだ!?信じている者に斬られる恐怖は!?信じている者を斬る苦しみは!?」

「下衆が!」

 小さい体格の蒲公英はどうにかできるかもしれないが、焔耶の武器はとてもではないが受け止めることはできない。

すばやく迫った蒲公英の一撃を両手の刀でいなし彼女を蹴り飛ばし、焔耶の縦振りをすんでのところで回避する。地面に叩きつけられた焔耶の武器の上に足を乗せ、逆の足でこれまた蹴り飛ばす。

すべて避け易く無力化しやすい攻撃だった。体を操られているとはいえ自我で抑制しているらしい。

「ほう・・・さすが正史では英雄と云われている連中だな。催眠受けても自我を保つとは」

 マグナが手をかざすと、ゆっくりとだが恋姫たちは歩きはじめ一刀に刃を向ける。

「首尾はうまく行ってるようだな。マグナ」

「ああ・・・そろそろだ」

 アシッドが先ほどワイヤーを駆使していなかったもの、精神的に一刀を追い込む算段だったのか。

何よりもここで誰かを失えば実質蜀は崩壊し、均衡が破られる。その混乱した隙を正史は突くだろう。

焦りながらも一刀は何とか自分のやるべきことを見出した。

誰も死なせない。

「サイキッカーのわりに、自分の弱点を知らないみたいだな」

 桃香たちの中心に金属の塊が投げ込まれる。

「馬鹿な・・・殺す気か?」

 マグナは金属の塊をグレネードと判断し大きく後退する。

次の瞬間、金属の塊が爆発し爆音とともに閃光が放出される。スタングレネードだ。

響く爆音は鼓膜を突き破らないにしても、人を気絶させるには充分だ。

桃香たちは全員、その爆音の影響を受け気絶する。

全員が気絶したのを確認し、蛇が只ならぬ妖気を発し二人に近づいていく。

ゆっくりと・・・だが一歩ごとに殺気は増し、空気が擦れる音を立てる。

「貴様ら・・・本当に俺を怒らせたいようだな」

 彼の全身から雷がほとばしり、目が蛇の目が変わっていく。

「アシッド、マグナ。これが真の化け物だ」

恋姫たちが倒れている脇を通り、全員が彼の後ろに納まった時に彼の形相が大きく変わる。

雷が翼のように肩からほとばしる。全身の毛が逆立ち目が紅く染まる。

人から蛇へと変わっていく。

咆吼。

獣の咆哮の如く音量が目の前の二人に叩きつけられ、恐怖で支配される。

「バーサー・・・カー」

 今までとは違う彼の姿に敵はただ恐怖するだけだった。

その姿はまるで・・・

 

 

―――化け物。

 

 

 雷の鎧を纏った化け物だった。

「さすがだ!兄弟!」

 アシッドがそう叫んだ瞬間だった。

彼の真横を爆音と衝撃波が通り過ぎ、横にいたはずのマグナが『消滅』した。アシッドの後ろでは城壁の一部が大きな音を立て破壊される。

「電磁誘導砲か!?」

 相方をあっけなく、その上一瞬で失ったアシッドが一刀を見据える。彼はハンドガンを構え、紅い目はアシッドに照準を合わせていた。

アシッドはすぐさま回避行動を取るが、ハンドガンではなくブレードを逆手に持った一刀が既に迫ってきていた。狙うはアシッドの頸部のみ。

アシッドはナイフを構えるが、ブレードにナイフを貫き喉にそれが突き刺さる。しかしこれごときで死ぬタマではなかった。すぐにナイフを捨て、距離を開ける。

一刀の全身だけでなく、ナイフが刺さったままの高周波ブレードからも電撃が唸りをあげている。

「死なない体の俺が恐怖している!?恐怖しているだとぉ!!」

 アシッドの咆哮が庭に響き渡った。しかしそれを掻き消すように再び一刀が咆哮と共にハンドガンを構える。

電磁誘導砲だ。

「落ち着いて!ご主人様!」

 桃香の悲痛な叫びに一刀の動きが止まった。

赤い眼と雷の鎧はそのまま、桃香の声がしたほうを振り向く。

スタングレネードの影響で片手で頭を抱えているが、目が覚めたらしい。電磁誘導砲の爆音から蛇の咆哮まで、大きな音は響きっぱなしだったのだ。

一刀は桃香の声に頭を抱えこんでしまう。

「見ないでくれ・・・」

 一刀が怯んでしまったその隙にアシッドが大きく跳躍する。

一刀は震える手で再びハンドガンの照準を合わせようとした。

「兄弟!次は!次こそは殺すぞ!!」

 アシッドが叫びながらとった行動は撤退だった。

「みんな・・・」

 アシッドの姿や気配が完全に消えたと同時に一刀は力なく倒れていく。

蜀の長い夜は終わった。

一人の人間が蛇になった。

 

 

おまけ:補足説明。

※BIGBOSS:すべての始まりの蛇、ネイキッド・スネークに与えられた称号と彼自身のことを指す。

※電磁誘導砲:レールガン、電磁加速砲の方が正しいかも。「とある魔法の禁書目録」でおなじみですね。

伝導体を弾丸とし、弾丸とレールの磁場の相互作用によって、弾丸を加速させ発射させる。簡単に言えば電気を使った大砲。

なお一刀のハンドガンM9はカスタマイズが施されており、バレル部にレールを内蔵し特注の弾丸を発射する機構を設けている。ただ銃自身がその負荷に耐え切れないので五発が限度となっている。

 


 
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