No.127715

ブラコンでヤンデレな姉達に狙われる義弟 01

堀坂勇樹さん

ヤンデレななのはさん達に狙われるオリ主の話

2010-03-02 21:53:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:32392   閲覧ユーザー数:31554

 

彼の名は、アイギス・ィエク。市立の中学校に通っている15歳の少年だ。

 

身長は、165cmほどあるだろうか。太ってもおらず、痩せてもおらず中肉中背。

短く切り揃えられた黒髪は、清潔感溢れてはいるが、これと言って特徴もない。ごく普通の少年である。

 

家族は、父と母。そして兄が一人に姉が二人の六人家族なのだが、現在はとある理由から一人の姉と二人で生活している。

二人で暮らしている。と言っても家族仲は悪くない。むしろ、良すぎると言ってもいいくらいに仲がいい。

 

どこからどう見ても、普通の家庭なのだがアイギス少年には、一つだけ悩みがあった。

同級生や他人からは、贅沢すぎる悩みだと即答されるが本人は至って真面目に悩んでいる。

 

その悩みとは──。

 

「アー君、ただいま!」

 

帰宅すると玄関先でいきなり抱きつき、過剰なほどスキンシップを図る姉、高町なのはにあった。

 

自分の頬を、アイギスの胸に擦り付ける事5分。満足したのか、その行為は止まったのだが腕を組み体を密着させる事は止めない。

 

彼女が、自分を抱きしめてくれるのは昔からなので慣れてはいるが、世間体を考えれば今のままではいけない事は分かっている。

しかし、彼女から伝わる温もりが自分の存在意義を示してくれているようで、断るに断れない。

 

嬉しそうに腕を組む姉を見つつ、アイギスは気づかれないようにそっと溜め息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が小学生の時、両親は事故でこの世を去った。

金目当ての親戚達に両親の遺産を巻き上げられた後すぐに、色んな所をたらい回しにされ、落ち着いた先は最悪な環境の養護施設。

希望も夢も無くし、自分の殻に閉じ篭る事しかできなかった僕を連れ出してくれたのが、両親の友人である高町夫妻だった。

それから紆余曲折を経て、僕は高町家の一員となったのだ。

 

高町家の人達は、たらい回しにされた親戚や養護施設の人達と違い、暖かくそして優しく時に厳しく僕に接してくれた。

特になのは姉さんは、弟が出来たのが嬉しかったらしく誰よりも僕の面倒を見てくれていたのを今でも忘れない。

 

外が怖かった僕を、外に連れ出してくれて、色々な場所に引っ張り、大切な友人が出来たのも全部なのは姉さんのお陰でもある。

姉さんは、僕に感謝しても足りないほどの愛情を注いで貰った。

 

でも、その愛情に違和感を感じ始めたのは去年の事。

僕が中ニ、姉さん高一の時だった。

 

小学校までは一緒に寝たり、お風呂に入ったりしていたが、さすがに恥ずかしくなり姉さんに頼んで止めてもらう事にした。

その時は、多少ゴネたが最終的に了承してくれて丸く収まった様に思ったが。

 

時が経つにつれ、少しずつ元に戻ってきたのだった。

 

食事の時は、いつも隣に座るのは当たり前。

いつの間にか、同じ布団に潜り込み。

スクール水着と言う、マニアックな格好で同じ風呂に入り。

登下校は、欠かさず一緒に通い一回の遅刻もしないという完璧ぶりを披露している。

 

弟に、過保護なほど構っている点を除けば普通の学生である為先生も強く言えないでいる。

言ったとしても、大の大人顔向けの戦闘スキルを駆使し障害を蹴散らしてしまう。

それを目撃した人が、自然と口にする様になり付いた通り名が「魔王様」。

 

なのは姉さんを表す、これ以上ないネーミングがシャレになっていない。

被害が、僕だけにいかない事が唯一の救いではある、が。

 

最近は、同じ高校に通わそうと必死で勉強を教える為に熱心に指導してくれるのだが、向かってるベクトルが違う方向に行っている。

僕の背中に寄りかかり、「当ててるのよ」と耳元で囁きながら丁寧に教える日もあれば、僕が逃げ出さない様、椅子に拘束して36時間耐久勉強を行なう。

 

トイレ?

勿論1分以内に戻ってこなければ後が怖い。

 

最近は特に、暴力も含めてスキンシップが過剰になってきている。

 

しかも、性質が悪い事に父さん達まで結託しているのだ。

家族全員が、協力関係にある以上、僕は逃げ切れない訳で。

 

いけないと思いつつ、なのは姉さんに悶々とした感情を感じている日常を過ごしているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を、夢を見ていました。

とても激しく荒々しい夢を、私は見ていたのです。

夢の中の私は、見知らぬ衣装に身を包み杖を持っていました。

その杖を武器に、会った事のない女の子と全力全壊の戦闘を繰り広げていたのです。

そして私は、その女の子に向かって必死になって叫んでいました。

 

 

 

「──この泥棒猫!」

 

 

 

叫びと共に、意識が覚醒しハッキリと目が覚める。

寝汗が酷かったのか、パジャマと布団に残ってる大量の湿気を肌は感じ取っていた。

 

最近、変な夢を見るようになった少女だが、今日はいつもより鮮明に覚えている。

夢にしては、やけに現実味のある感覚を不思議に思いながら、気持ち悪い汗を洗い流す為に風呂へと足を運んだ。

 

 

 

~♪~♪

 

鼻歌を歌いながら、スポンジできめ細かい泡を立て肢体を優しく洗う。

いつにも増して、彼女はご機嫌だった。

それもそのはず。

 

あと数ヶ月すれば彼も、晴れて中学を卒業し一緒の高校に通える様になる。

勿論、受験で合格しなければならないが、みっちりと勉強を教えているのでほぼ間違いなく受かるだろう。

受からなかったら、その時は今通ってる高校を辞めるなり一年休学するなり方法は幾らでもある。

 

彼と一緒に通える姿を妄想しつつ、少女は今日も全力で学校へと向かった。

 

 

 

 

 

───助けて

 

 

 

 

 

学校に着き、ホッと一息ついた所で声が聞こえた。

弱々しい口調だったが、確かに聞こえたのだ。

しかし、辺りを見回しても声の主でありそうな"人物"は見当たらない。

 

「なのはー、何ボーっとしてるの?遅刻するよー」

 

そんな声も次の瞬間、友人に呼ばれる事で少女、高町なのはは記憶から消した。

 

 

 

 

───助けて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────誰か…助けて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────誰か…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声は、誰にも聞かれる事なく、風の音と共にかすれて消えていった。

 

 
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