No.127174

『舞い踊る季節の中で』 第20話

うたまるさん

『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

戦場の悲惨さを目にした一刀、そのあまりの惨状に一刀は闇に堕ちる、そんな一刀を救うのは・・・

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2010-02-28 09:22:34 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:23818   閲覧ユーザー数:17602

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』

  第20話 ~ 闇に足掻く想いと、黄昏に浮かぶ鎮魂の舞い ~

 

 

(はじめに)

 

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

        :●●●●

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(ただし本人は無自覚)

         気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

         神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

 最近の悩み:明命達に悪影響が及ばないように、孫策を何とかしなければと、悩むが・・・どうしたら、

         良いだろうか? この間も、幾ら急ぐからと言って、人を前に乗せて馬で疾走する始末

         速度を上げる分どうしても前屈になり、俺の背中にそれをぐいぐい押し付けてくる。

         挙句に、『 気になって、乗り物酔いしなくて済むでしょ 』と言ってくる。

         あれは、絶対此方の反応を楽しんでいる確信犯に違いない。

          ・・・・・・何とかなるのかレベルなのか? これ

  (今後順序公開)

 

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配してよく

     食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯を仕

     掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕を見

     て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、現

     実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗脳する

     も、基本的には周りには秘密にしている。 そのうち執筆も行うようになり、掲載されるようになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっている。

     黄巾の乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

一刀視点:

 

 

翡翠・・・明命・・・

 

・・・俺は・・・二人を・・・・守る・・・

 

・・そう・・・決めた・の・・だから・・・

 

・・・・・

 

俺の視界は、心は、

 

暗く、冷たく、闇に染まっていく

 

 

 

 

 

ぽにゅん

 

そんな、音が聞こえそうな感触と共に、

俺の頭は、柔らかく、温かなものに包まれる。

甘い香りが、そこから漂い、俺を包む。

その感触に、俺は少しだけ、引き戻される。

 

「って、陸遜、何をっ」

「あっ、目が醒めましたか~」

 

そんな暢気な声が、頭の上から落ちてくる。

だが、俺はそれ処ではなくなっていた。

俺の顔は、陸遜の手で、その胸に埋め込まれ、押さえられていたからだ。

 

「と・とにかく、色々やばいから、

 と言うか、馬上でいきなり何をっ」

「暴れたら、よけい危ないですよ~」

「だったら、離してくれっ」

「だめですよ~、今の北郷さんは、とても危ない顔をされていました。

 翡翠様も明命ちゃんも、そんなものは望んでいません、だから、止めさせていただきます~」

「いや、だからって、とにかく、これは拙いからっ」

 

俺は、ひとまず頭を離そうとするが、

なんとか押し退けようと、手を前に突き出すが・・その、手に当たる感触が、やわらか過ぎて、その上確かな弾力が在って、意味を成さないというか・・・・その、いろいろ複雑な事情で、頭が湯だってしまい、上手く動けないでいると、

 

「北郷さん、勘違いしてはいけません。

 確かに私達は、殺し合いをしています。

 どちらも殺されたくありませんから、そりゃ~もう、お互い死に物狂いです。

 そこに人も、獣も区別は無い、と言っても良いですね~」

 

俺の心を侵食していた、事実を口にする

 

「だから、大義名分が必要なんです。

 自分達のやっている事は間違いではないと、

 家族を、お友達を、守りたいものを、守るためなのだと、

 本当に、獣に堕ちないために、自分を保つために、大義名分が必要なんです」

 

だから、それが何だと言うんだ。

確かに、そう思わなければ、あんな事出来やしない。

でも、そこに堕ちる事には、何の変わりはないはずだ。

 

「北郷さん、私達は軍師なんですよ~

 私達のお仕事は、そんなにまでして戦ってくれる人達を、一人でも多く、無事家族の元に返す事なんですよ~

 だから、人の心を捨ててはいけません。

 将や軍師が獣に堕ちてしまえば、あの人達は本当に獣に堕ちてしまいます~。

 私達が、人でいる事が、やっている事が正しい事だと知らしめる事が、あの人達を獣に落とさないでいるの

 です~」

 

じゃあ、どうするんだっ

人のまま、あの狂気に飛び込めというのかっ 

 

「辛くても、厳しくても、人の心を捨ててはいけません。

 人のまま、心を強くしなしなければ、いけないのです~。

 あの人達を人として、家族の元に返したいなら、

 北郷さんが、翡翠様や明命ちゃんを守りたいと思うなら、

 辛くても、悲しくても、人のままでいてください。

 笑顔を捨てないでください。

 そうでなければ、翡翠様や明命ちゃんを守る事には、なりませんよ~」

 

・・・・・・

 

「・・・・堕ちては、二人を守れない・・・・か・・・・」

「そうですよ~」

 

『 ・・・・俺が・・を・・・泣かせているのか・・・ 』

 

いつだったろう、そんな、自分の声が聞こえた。

・・・そうだな、また、間違える所だった。

 

 『 殺した事で自分を責めるのはやめなさい。

    責めるなら、そういう世の中を責めるべきです 』

 

・・・そうだな、そもそも俺一人で、背負えるようなものじゃ無かったよな

 

『 一刀さんの所まで、一人だって敵なんて通しません 』

 

・・・守ると決めておいて、実際は逆じゃないか・・・

はははははっ、俺は本当に、あの二人に守られてばかりだ。

いや、二人だけじゃないか、

 

孫策が、そして、今こうして陸遜が、俺を導いてくれている。

俺が、俺のまま、明命達の元に帰れるように、俺の心を鍛え、守ってくれている。

 

明命と翡翠の想いが、俺を支えてくれている。

なら、安易な方向に逃げられないよな。

あんな良い娘達の、想いを踏みにじるなんて、俺の矜持が許さないっ。

何より、決めたんだ。

 

『 あの二人を守るっ! 』

 

何度だって、心に刻んでやる。

 

「・・そうだな、覚悟が足らなかった」

「ん~~、笑えますか~?」

 

惨劇が目の前で起こっていると言うのに、可愛い顔をして、随分無茶を言う。

でも、それが必要だと言うなら、しなければいけないんだよな。

覚悟を決めたんだろ、北郷一刀

 

「ああ、もう大丈夫だ」

 

そう、今出来る精一杯の笑顔を見せてみせる。

 

「う~~~~ん、いつもに比べたら、30点と言った所ですかね~」

「ひでぇなぁー、でも、今はこれが精一杯なんだ、勘弁してくれ、

 と言うか、いい加減離してくれっ」

「ほえ? 男の子はこうされると、喜ぶものではないのですか~?」

「ひ・否定はしないが、今は非常時だと言う事を忘れないでくれっ」

「もう少し、こうしていたいのですけど、残念ですねぇ~

 北郷さんは、こう母性本能を刺激されると言うか、

 翡翠様では在りませんが、こう守ってあげたくなるのです~~」

「うぷっ」

 

陸遜は、最後に俺を"ぎゅ~~~~~~っ"と抱きしめて、俺をやっと解放してくれた。

・・・と言うか、俺子供扱いですか・・・?

まぁ、そう思ってなければ、男の俺にあんな事なんて出来やしないか・・・・

それに、そのおかげで、戻ってこれたんだ。

そんな扱いでも、この際、感謝すべきなのだろう。

・・・でも、あの感触は、流石に反則だろう・・・・うぅっ

 

「すこしだけ調子が、戻ってきたようですね~」

 

・・・そうかも知れない。

目の前では、目を逸らしたくなる光景が、いまだ繰り広げられている事に、違いはないと言うのに。

何もかも吐き出したくなる気分も、少しも変わっていない。

こんなものに慣れる事なんて、おそらく無いだろう。

でも、それでいいんだ。

これに慣れてしまったら、いけないんだ。

 

こんな事をしなくても済む様に、

皆が笑って過ごせる世の中になるように、

俺達が、していかなければいけないんだ。

それまで、歯を食いしばって、耐えてみせなければ、いけないんだ。

あははっ、そう言えば、そう孫策が教えてくれてたよな。

かなり厳しい、やり方だったけど、

それでも、教えてくれた。

きっと、あの集落の事が無ければ、

さっきの闇に、耐えられなかったかもしれない。

 

明命が翡翠が、俺を守ってくれた。

陸遜が道を間違わないように、俺を導いてくれた。

ついでに、孫策も俺が潰れない様に守ってくれた。

だから、俺は、もう目を逸らさない。

二人の背中に隠れたり、逃げたりしない。

辛くても、今度は、耐えてみせる。

 

 

そう覚悟を決めると、

頭が舞いの時のように、冷静になっていくのが分かる。

舞の練習での事が、こんな事で役に立つなんて・・・・皮肉だよな。

だが、今はその事に感謝しないと・・・

 

 

 

 

 

俺と陸遜の予備隊が、本体から離れた所で戦況を見守るなか。

戦況は、順調に進んでいるようで、本隊は、戦列を保ったまま、少しづつ後退している。

孫権は、最初こそ、最前線で指揮を取って、兵を鼓舞していたが、

今は、後ろの方で、冷静に戦局を見分けながら、指揮をしているようだ。

後しばらくすれば、敵が予定地点まで下がるはず。

俺は、ふと、その予定地点より後ろの森に目をやる。

 

キラッ

 

ん?

何が光ったんだ?

 

「陸遜、あの森へは偵察は?」

「ほぇ? あそこは流石に、離れすぎているので、行っていませんが」

「確か、砦が襲撃されたのは、救援隊が出てすぐだったよな」

「そうですがって、まさか」

「そうだ、別働隊がいるはずだ。

 やつらの本隊が、一向に戻ってこない事に、不審に思い、行動に出ているはず。

 それに、先程あそこで、何かが光った」

「うわ~、雪蓮様の言っていた、やな予感 って言うのは、この事だったんですね~」

「暢気な事言っている場合かっ、このままでは、逆に挟撃されて、此方が混乱する」

「そ、そうでした。

 みなさ~~ん、あの森に伏兵がいるかもしれないので、調査も兼ねて強襲しちゃって下さ~い」

 

「「「 おーーーーーーっ 」」」

 

そんな、陸遜の命令に、兵士達は駆け出し、やがて・・・

 

「盾隊は前に出てください」

 

そんな、陸遜の声に従い、陣を変更しながら早足で進軍すると、

前方の森から、明らかな動揺する気配と、殺気が膨れ上がった。

やがて

 

シュッ、シュッ、シュッ、シュッ

シュッ、シュッ、シュッ、シュッ

 

まばらに、森から矢が発せられ、此方に降り注ぐ、

だが、この事を予見していた陸遜の手によって、前列の動いた盾隊の手で、そのほとんどが無効化される。

 

「もう一射くる筈です。

 その後、盾隊は下がって、他の人は入れ替わりに、そのまま突撃してください。

 今の攻撃で、相手は少数と分かりました。

 一人も逃がさないようにしてくださいね~~」

「「「「「 おおーーーっ! 」」」」」

 

 

 

 

 

 

「周囲を警戒しつつ、負傷者の手当てを最優先にしろっ!

 無事な者は部隊毎に集まり、現状を報告しだい、順次野営の準備に当たれっ」

 

孫権の指示が飛び交う中、俺は戦の跡を歩き回っていた。

 

・・・ぐっ・・・

 

押し寄せる吐気を必死に我慢し、その光景を目に焼き付ける。

自分達がやった事を、その目に焼き付ける。

 

地面に横たわる人であったもの・・・

此方の兵も居るが、圧倒的に賊と呼ばれた、人のものが圧倒的に多かった。

中には、まだ子供と言えるものもあった・・・・・・こんな子供まで、

いや、元々はその殆どが農民だった人達だ。

ごく普通の人達だったんだ。

老人も、子供がいても、なんの不思議ではない。

 

ぎゅっ

 

「一刀さん・・・」

「・・・・・・・」

 

繋がれた左手から、確かな温もりと、想いが伝わってくる。

明命が、俺を心配そうに、見上げてくる。

でも、それだけだ。

正直それは、ありがたかった。

今の俺には、話す余裕が無いからだ。

きっと、明命は知っているのだろう。

今、この状況で、下手な言葉など、無意味でしかない事を

だから、こうして、俺が潰されてしまわないように、

俺に請われるまま、手を握ってくれているのだろう。

今、俺がやっている行為が、俺にとって、必要な事だと分っていてくれる。

その想いが分るから、

その想いが大切だから、

俺は何とか耐えられている。

 

俺が、これから歩む道を、心に刻むための行為に、

自分が犯した過ちを、犯すだろう過ちを、受け入れるために、

辛くても、逃げ出したくなっても・・・きっと、耐えてみせる。

そうでなければ、この人達が浮かばれなくなる。

これから、俺に関わって傷つく人達が浮かばれなくなる。

だから、俺は、

そんな人達為に、

二人の為に、

自分の為に、

今を受け入れてみせる。

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、ある事に気がついた。

俺は、その事で、孫策達の下に向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

俺と明命が、孫策達の下に付いた時、

孫策達は、あらかた指示を出し終え、張られたばかりの天幕で、状況確認を行っていた。

そして俺達に気がつくなり、

 

「あら、少しは、ましな顔になったみたいね」

「あぁ、おかげさまで、それなりに腹が据わったよ」

「明命が居なかったら、怪しいところだけど、今日の所は、それでもかまわないわ。

 はやく慣れろとは言わないけど、一人で立って見せるだけの気概は見せてほしいわね」

「そうだな、情けない事は否定しない。

 明命には感謝しているし、いつまでも迷惑はかけられないとも思っている」

 

俺は、そう言って、明命に礼を延べながら、もう一度だけ、しっかりとその感触を確かめる。

もう十分、勇気はもらったから、

もう十分、温もりをもらったから、

堕ちずに済む事ができたから、

感謝の気持ちを籠めて、俺は、明命から手を離す。

 

「あっ・・」

 

ん? 明命が一瞬何か寂しげな顔をしたが、今はそれ所じゃない。

動くなら、早いうちの方が良い筈だから、

 

「孫策、戦死してしまった人達の事だけど」

「そうね、残念な事だけど、戦をすればどうしても、死者は出るわ。

 孫呉のために、民のために死んだ人達ですもの、急を要しない限り弔いはするわ」

「それもそうだけど、俺が言いたいのは、賊に堕ちてしまった人達を、何で弔わないで、そのままにしておく

 のかって事だ」

「貴様はっ、自分が何を言っているのか、分っているのかっ!」

 

俺の言葉に、孫策の隣にいた孫権が、声を荒げる。

 

「先程の戦で、少しは、ましな所を見せたと思ったら、

 女に手を握ってもらわねば、現実を見る事もできない始末。

 挙句に、賊共を何故弔わないかだとっ、

 当たり前だっ!

 やつらは、人を捨て、獣となって我等が民を傷つけた。

 獣に堕ちた者を、弔っては、殺された者達やその家族の怨みを、どう晴らせと言うのだっ。

 賊に堕ちた者の行く末を見せ付けねば、また同じことが繰り返されるだけだっ!

 そんな事も分らないやつが、我等に、何を言うと言うのだっ!」

 

孫権の殺気の篭った怒声が、天幕中処か、あたり一面に広がる。

孫策や陸遜も、どうやら、この事に関しては、同じ気持ちなのか、怪訝な顔でこちらを見ている。

思春にいたっては、ひたすら冷たい目で此方を射抜いている。。

明命は、気持ち的には、孫策側なのだろう。

どうやって、俺に納得してもらおうか思案顔だ。

ありがとう明命、それで十分だから。

 

「一刀、貴方のその優しさは、貴方の美徳よ。

 だけど、此方の世界には、此方の流儀があるの、

 幾らなんでも、王として、今の一刀の言葉は聞く訳にはいかないわ」

 

孫策が、皆の代表して、王としての言葉を放つ。

・・・・やっぱ、そう言われるか、

 

「つまり、民のために、見せしめの意味があるから、弔う事は出来ないと言うんだね」

「そうよ、さすがに、道周辺のものは邪魔だから、退かす事になるけどね」

 

分っている、孫策達の言う事は、頭では理解できる。

この時代において、それはきっと当たり前の事、

俺の言葉の方が異端なんだ。

だけど、そんな事は分っている。

それでも俺は、あの人達をこのままにしておけない。

あの人達だって、好きで賊に堕ちたわけじゃない。

賊に堕ちざる得なかっただけだ。

なら、その罪は、死んだ事で償われたはず。

出切る事をせずに、死者を冒涜する事なんてできない。

だけど、そんな事を言っても、孫策や孫権達は納得しないだろう。

彼女等は、民のために、動いているのだから、

なら、彼女達の流儀に合わせるまでだ。

 

「じゃあ、民のためなら、あの人達を弔えとまでは言わなくても、埋葬してやる事はできるよね」

「貴様は、まだそんな事をっ」

「蓮華待って、

 一刀どういう意味」

「俺の世界、天の国では、病気や疫病の原因って言うのが、ある程度特定できているんだ。

 あの人達を、埋葬しなければ、疫病の原因になるよ」

「「「「「 っ! 」」」」」

 

俺の言葉に、全員が驚く。

それは、そうだろう。

俺もこの世界に来て、半年ちょいしか経っていないけど、

この世界の人達の衛生概念や、病気に対する基礎知識が無い事はすぐ分かった。

医者はいても、数は少なく、知識も乏しい。

まともな医者など、全体からしたら、ほんの一握りだろう。

治療にしたって、呪いによる治療を、本気で信じている人達が殆どだ。

まぁ、医者の治療費が高い、と言うのもあるのだろうけど、

彼女等にしたら、病気は忌む物でしかなく、原因の分らない、恐怖そのものでしかないのだろう。

ましてや、疫病とくれば、その恐怖は、凄まじいものに違いない。

だが、俺の言葉に一瞬怯むものの、

 

「貴様は何を出鱈目な事をっ! そう言えば、我等が怖気づくと思ったのかっ!

 賊共の怨みなど、孫呉の英霊が、叩き斬ってくれるわっ」

「べつに、怨みと疫病は関係ないよ、少なくても天の国ではね」

「まだ言うかっ、ならこの手で・」

「蓮華、待ちなさい。

 一刀続きを話しなさい、疫病となれば、話を聞かないわけにはいかないわ。

 ただし、其処まで話を大きくした以上、もし嘘なら、それ相応の覚悟はしてもらう事になるわ」

 

孫権を制止し、孫策は、嘘を見極める王者の目で、俺を睨み付ける。

陸遜も、ほんわか とした表情とは裏腹に、真偽を確かめんと、軍師の目で、黙って此方を見つめる。

そんな二人の態度で、俺は考えが間違っていない事を確認できた。

皆が、俺の一言一句、表情や仕草を見逃さないほど、真剣になっている。

それだけ、疫病は、民にとって、国家にとって、恐怖なのだろう。

戯言で許されるものではないのだろう。

だからこそ、俺の話しを聞いてくれる気になった。

俺の持っている情報を、天の国の知識を、信じている孫策達だからこそ、

自分達の流儀を曲げてでも、俺の言う事を聞く可能性があるんだ。

 

「疫病の原因は幾つか有るけど、その一つに細菌や黴があるんだ」

「"さいきん"?」

「目に見えない程、小さな生き物と思ってくれればいいよ

 とにかく、細菌や黴にも色々あるんだけど、その中に人や動物の遺体が腐った体に、大量に発生するものが

 いるんだ。

 それが、風や鼠や犬等の動物を介して、人に感染・・えーと、病の原因が移る事なんだけど、疫病となって

 広がっていくんだ」

 

俺は、丁寧に、分かりやすく、疫病の伝染理由と、その防護策等を説明していく。

そして、一通り説明や質問を終えると、やがて孫策は、

 

「穏、どう判断したか聞かせて頂戴」

「理解できない言葉も多かったですが、話の内容そのものは、辻妻は合っています。

 それに過去、大戦があった戦場の近くの集落では、疫病が流行った事も多く、戦死した者達の怨みが原因と

 されていましたから、北郷さんが言う事が本当なら、それにも辻妻が合う事になります。

 少なくとも、否定するだけの根拠は、何もありませんね~」

「そう、私も嘘を言っている様には、少しも感じられなかったわ。

 逆に本当の事だって、私の勘が言っているぐらいですもの」

「しかし、姉様、こやつが言ってた様に、必ずなるとは限りません」

「蓮華、貴方の気持ちは分るわ、私も正直、蓮華と同じ気持ちよ」

「ならっ」

「一刀が言ったでしょ、弔らわないまでもって、

 確かに、怨みを晴らすのも、見せしめにするのも大切よ。

 でも、生きている民の事を考える事の方が優先よ。

 一刀の言うとおりにして、疫病の原因が一つでも減らせるなら、そうしない手は無いわ。

 一刀、地中深くに埋めれば、とりあえずは防げるのね?」

 

俺は、孫策の答えに、強く頷きながら、

 

「本当は火葬の方が良いけど、其処までの余裕は無いだろ。

 なら、野犬とかが掘り起さない位の深さで埋めてくれれば、後は地中の細菌や虫が、病気の原因の細菌を

 やっつけてくれるはずだよ」

「そう、なら穏、思春、聞いていたわね。

 賊共を率いていた者達の首を残して、総て地中深くに埋めさせなさい。

 首は槍に刺して、その上に晒して置きなさい。

 一刀、まさか、これも駄目とは言わないわよね」

 

孫策達の考えも分る。

だから、これ以上は無理と言わざる得ないか・・・

 

・・・・すまない

 

 

 

 

 

パチッ

 

バチッ

 

火の爆ぜる音が、周りに響く、

 

全ての後片付けも終わり、

 

日も傾き、暖かな夕食を終え、

 

兵達が、生き残れた今を実感し、

 

そして、己の罪に、耐えながら、思い思いに体を休めている。

 

少し先には、賊になってしまった人達が眠る場所に、更に土を盛られ、小さな山となっている。

 

幾つもの賊将の首が晒され、立て札が掲げられていた。

 

また、違う所には、此方の兵達の亡骸が、安置されていた。

 

スーー

 

俺は、二つの間で、手にした扇子を構える。

 

俺には、何も出来なかった。

 

君達を助ける事も、

 

戦を回避する事も、

 

ただ、見る事しかできなかった。

 

だけど、俺は確かに、孫呉の軍師で、

 

君達を死に追いやった。

 

生き残った人達の中には、大怪我したものも多い。

 

許してくれなんて言えない。

 

そんな資格など、最初からありはしない。

 

その責は、確かに俺にもあるのだから、

 

だから、せめて、舞わせてほしい。

 

兵達の死も、賊に堕ちた人達の死も、

 

死んでしまえば、同じ死だ。

 

そこに、もう罪は無い。

 

残るのは、悲しみと、後悔だけ。

 

もう、これ以上、苦しませたくはない。

 

せめて、安らかに眠れるように、

 

舞わせて欲しい。

 

きっと、孫権達は、知れば怒るだろう。

 

孫策には、俺の思惑など、きっと、ばれているだろう。

 

それでも、俺は舞う。

 

逝ってしまった者達の為に、

 

明日を生きなければ、いけない者達の為に、

 

悲しみや、後悔が消える事は、決して無いだろう。

 

それでも、希望を持って、生きられるように、

 

逝ってしまった者達が、安心して眠れるように、

 

俺は、鎮魂の舞いを舞う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

 第20話 ~闇に足掻く想いと、黄昏に浮かぶ鎮魂の舞い~ を、此処におおくりしました。

 

なんか、一刀の心が、予想より成長してしまった気が(女性関係に関しては相変わらずヘタレだけどw)

戦の跡を明命と手を繋いで、歩き回るなんて、我ながらなんてシュールな光景を書いてしまったんだろ(汗

まぁ、それは置いておいて、此処三話は、ヒロイン二人を放っておいて、一刀の成長を書いて見ました。

今回の事で、一刀はこの世界で、生きていく事の覚悟を、持つ事が出来ました。

もっとも、まだまだ、ある一定方向に対してのみですが・・・

それと心の傷の深さの影響は、今後書いていくとして、

孫策は、理由あっての行動だけど、孫権・・・悪役だなぁ・・・・・しかも小物っぷり(汗

まぁ、彼女も成長過程と言うことで、温かい目で見守ってやってください。

一刀に触れて、変わらない女性陣は居ないよなぁ・・・このGAMEって・・・

 

まぁ、さておいて、次回は、4話構成の最後の作品として、久しぶりの別視点でのお話になります。

 

頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
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