No.126326

真・恋姫無双 歌姫と天の舞手 二話前編

areareさん

更新遅くなってすいません。長くなってしまってしまい、前編・後編の構成ととなりました。楽しんでいただければ幸いです。

追伸
前回の投稿でクリエイターとして不適切な注意書きをしてしまいました。現在はその箇所と思われる場所は消しましたが、読者の方々に不快な思いをさせてしまいました。
本当にすみませんでした。

2010-02-23 22:34:49 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:1477   閲覧ユーザー数:1286

注意

1、 主人公はオリキャラです。(他にもオリキャラがでます。)

2、 時代背景メチャクチャ、キャラ崩壊(呼び方、言葉使いなど含む)アリ

第二話『天の舞手、付き人となる・前篇』

舞十「う…んん……。」

頬に肌寒さを感じて舞十は目を覚ました。

舞十(何だったんだろうあの光は。僕はいったいどのくらい寝てたんだろう。)

いまだにチカチカする目をこすりながら起きてみると…

舞十「ここ、何処?」

舞十は唖然とした。なぜなら彼がいるのは気を失った山ではなく、見たことのない景色が地平線に見える平地だったからだ。。

舞十「とりあえず…(ムギュー)…夢じゃない…よね。」

頬をつねってみた…がなにも変わらなかった。

舞十「まぁ、わかってはいたけどお約束みたいなものだしね。」

舞十は誰に言うでもなくそう呟いた。自分の奇行(?)ですこし落ち着いたようだ。

舞十「とりあえず、今自分が置かれている状況を確認しよう。」

舞十は少し落ち着いた頭で自分の状況を確認してみることにした。

<状況確認(舞十視点)>

・自分

佐野小路舞十 17歳 『佐野小路団』劇団員兼事務員etc…とりあえず気を失うまでの記憶はある。持っていたバッグがない。縛られてはいないし、誰かが布をかけてくれたみたいだ。

・場所

不明(さっき自分でも言ってたしね)。

・周り

開けた平野にいるみたいだ。まわりの景色は見たことがない。付近に小さいが林が、反対側には道らしきものがある。

○結論

縛られていたりしないところから、人さらいの可能性は薄いと思う。誰かが助けてくれたと思える(思いたい)。ここが何処なのか、どうして此処にいるのかは依然不明。

=自分が無事という以外何も分からない。

<状況確認(舞十視点)終了>

舞十「だめだ…何が何だかさっぱりだ!」

両手で頭を押さえ俯いた舞十だったが、誰かが近づいてくるのを感じた。

??「あーー!起きたんだー。」

声の方に向くと、そこには桃色の髪を腰まで伸ばした女の子がいた。

舞十「あ、あの…」

女の子「ちーほーちゃーん、れんほーちゃーん、あの人起きたよー。」

舞十は女の子に声をかけようとしたが、女の子は走って行ってしまった。しばらくして先ほどの女の子は、水色の髪をポニーテールでまとめた女の子と、藤色のショートカットで顔に眼鏡をかけた女の子を連れて戻ってきた。

少し後‐

焚き火の跡を挟んで、舞十は三人の女の子と向き合って座っていた。話を聞くに、倒れていた舞十を見つけ、介抱してくれたのはこの三人で、三人は姉妹らしい。

長女「(ジーー♪)」

次女「(ジトーー。)」

三女「(ジロ……)」

長女は何処か楽しげに、次女は胡散臭そうに、三女は値ぶみするように、と姉妹たちは三者三様の目線で舞十を見ていた。そんな中、まずは舞十が切り出した。

舞十「えーと…僕は佐野小路舞十と言います。まずは助けていただきありがとうございました。」

長女「気にしなくていいよー。困った時はお互い様だしね♪」

次女「ま、あのままにしておくのはさすがにかわいそうだったしね。感謝しなさいよ!」

三女「見つけてしまった以上、助けるのは道理だから。」

舞十のお礼への返事も三者三様であった。

舞十「先ずは名前を聞かせてもらえますか?恩人の名を聞いておきたいですし。あと、いくつか質問したいこともありますし。」

長女「うん。いいよ~♪」

三女「姉さん、そんな簡単に…」

次女「そうよ。格好からして変なのよコイツ。」

変と言われた舞十は自分の格好を見た。ちなみに舞十の格好は私服(Tシャツにフードパーカー、カーゴパンツ)である。

長女「確かに変だけど、根はいい人そうだよー?」

三女「…まぁ確かに。賊とかではなさそうね。」

次女「はぁ。ま、いっか。名前くらいなら。」

長女「決まりだねー♪私は、張角って言いまーす♪」

次女「あたしは張宝。まぁよろしくね。」

三女「…私は張梁。よろしく。…なにか?」

舞十「あ、いや、知っている別人に名前が似ていたもので。(ちょうかく、ちょうほう、ちょうりょう、ってまさかね。でも…)」

長女以外しぶしぶといった感じだったが、三人は舞十に名前を教えた。それを聞いた舞十は驚きの表情になったが、すぐさま取り繕い質問を続けた。

舞十「まず、近くに荷物が落ちてませんでしたか?大事な物とか入っているんですが。」

張宝「それって昨日一緒に拾ったこれの事?…んしょっと」

張宝はそう言うと、後ろから大きなバッグを取り出した。

舞十「あ!それ僕のです!…あの、中身を確認してもよろしいですか?」

張梁「ええ、どうぞ。」

許可をもらった舞十は中身を確認しだした。

<中身>

劇団員用身分証明証

携帯電話

筆記用具(メモ帳、ボールペン、ノート)

財布

アクセサリー数点

虫よけスプレー(山に入ったため)

トランプ、お手玉×4(ジャグリング用)

『取り扱い注意』と書かれた小箱

舞巫女衣装・化粧道具(奉納舞のため)

タオル三枚

ハリセン(諸事情のため持ち歩き)

<以上>

舞十(あれ?銅鏡が無い。)

舞十は荷物を何度も探ってみたが、あの銅鏡だけが見つからなかった。

舞十「すみません。ちょっトォッ!?」

張角・張宝「「きゃっ!?」」

舞十は張梁に質問しようと顔を上げようとして驚いた。いつの間にか張角と張宝がすぐ近くまできて一緒に覗き込んでいたからだ。

張宝「ちょっと!急に大きな声出さないでよ!びっくりするじゃない!」

舞十「こっちだってびっくりですよ!なんであんな近くで覗き込んでるんですか!?」

張角「だってー。昨日から気になってたんだもーん。れんほーちゃんは、開けちゃだめっていうしー。」

舞十「気になるのはわかりますが、今は先に確認したいことがあるので。」

玩具をねだるような眼をした張角を留め、舞十は言葉をつづけた。

舞十「他には何もなかったですか?」

張梁「ええ。あなたの傍にはそれしかなかったわ。」

張角「何か、大切な物がなかったのー?」

舞十「いえ、一応の確認です。(後で探そう…彼女たちを巻き込むのも悪いし。)」

舞十は一呼吸整えてから次の質問をした。

舞十「えっと…ここは何処ですか?」

張角「えーっと、ここ、何処だっけ?」

張梁「豫州(よしゅう)と兗州(えんしゅう)の州境の近くよ。私達は陳留へ向かうところなの。」

舞十「豫州・兗州?(どこかで聞いたことあるような…)つまりここは日本じゃないということですか?もしかして中国とか?」

舞十は生きてきた限り日本で張梁の言ったような名前の場所を聞いたことはなかった。それゆえに馬鹿げてるとは思ったが、外国、それも先ほどの名前が一番ありそうな国を挙げてみることにした。

張角「にほんー?ちゅーごくー?」

張宝「何それ?何処にあるの?あたしは知らないわよ。」

張梁「少なくとも私達は聞いたことないわ。」

舞十「どっちも聞いたことがない!?」

帰ってきた答えに舞十はただ呆然とした。自分の知っている限り『日本』と『中国』は現代社会でかなりの知られた国であるはずだからだ。同時に舞十の頭の中にもっと馬鹿げた考えが頭に浮かんだ。

それは考える限りありえないはずのことなのにだ。

張角「あの、大丈夫ー?」

舞十は一瞬飛んで行った意識を戻した。見ると張角が心配そうな目で舞十を見ていた。

舞十「ああ、すいません張角さん。ちょっと考え事してしまっただけです。」

笑顔を作り答えると、舞十は質問を続けることにした。

舞十「すいませんが、今のこの周辺の事を詳しく教えてもらえませんか?」

舞十はとにかく現状を把握しようと彼女達から情報を聞き出すことにした。しかしそれは舞十にとって血の気の失せるような内容であり、ありえないはずの馬鹿げた考えを肯定するものだった。

彼女達の話を簡潔にいえば、今は光武帝が皇帝として治めるいわゆる後漢末期。だが漢室の力は衰え、各地で飢饉や騒乱が起きているという、まさに三国志の始まりの状況。

 

そして

 

それは同時に、舞十が『別の世界にきてしまった』という、馬鹿げている答えが真実であることを目の前で言われているようなものだった。

[舞十視点]

頭をかち割られたような気分だった。いや、むしろそちらのほうが幸せかも知れないとすら思えてしまうほどの虚脱感が僕の体を支配した。

『別の世界にとばされてしまった』

夢物語としか考えられない展開。しかし、それならこの状況のつじつまが合う。

現代で一般的な常識や言葉が通じず、服装が昔の中国の人々のものに近いこと。

見たことのない景色に、州という国の分け方。彼女達が教えてくれた今のこの地の状況。

そしてどうして僕がそんな所いるのか…すべてに説明がつくのだ。

『別の世界にとばされてしまった』という、その一言で簡単に。

張梁さんの言うとおりなら今は有名な三国志時代の始まり、黄巾の乱の起こる前の情勢であったはずだ。…そしておそらく、三人の名前を漢字で書くと、張角・張宝・張梁となるはずだ。どうして女性なのか分からないけど、つまり僕は後の黄巾党のトップと対面していることになる。

彼女達が嘘をついている可能性はおそらくない。彼女達は本当のことを言っている。

僕にはそれがわかる…わかってしまう。

小さい頃からずっと劇場で演劇やミュージカルといった『演じること』に関わり、父さんと一緒に営業でいろんな所を周り、さまざまな人を見てきた僕は、いつの間にか相手が『本物』なのか『役者』なのかが、個人差はあるがある程度わかるようになってしまった。

自分で言うのもなんだが悪趣味なスキル(勘)だ。まぁ、助けられてもいるけど。

その勘が、三人が口から紡いだ言葉がすべて真実であると告げている。

そして何より、今座っている土の感触が、体に当たる風が、僕が『ここ』にいると証明している。

しかしこれがリアルならなぜ僕はここにいるんだろう。…いや、限りなく怪しいのは一つしかない。あの銅鏡だ。あれの光で気を失った僕は今ここにいる。あの銅鏡が原因でまず間違いない。…だとしたらいくら探しても銅鏡は無いだろう。僕の近くに無かったということは、銅鏡は元の世界に残されたのだ。僕をこの世界にとばして。

舞十「ハハ…まいったね。」

乾いた笑いが口から洩れた。いきなり何も分からない(知識はある程度あるが)場所へ飛ばされ、しかも手がかりは手の届かない場所にあるときたもんだ。僕が一体何したっていうんだろう。

張角「…ぇー!ねぇーてばー!聞こえるー?」

舞十「あ…すみません。」

どうやらずいぶんボーっとしていたみたいだ。なぜか三人ともすごい顔で僕を見ているけど、どうしたんだろう?

張宝「ちょっと…大丈夫?顔真っ青よ。」

張梁「急にどうしたっていうの?」

舞十「え?」

言われて初めて今の自分の状況に気づいた。

足はわずかに震え、首筋をいやな汗が伝っている。顔は見えないが、張宝さんが言うには顔面蒼白らしい。なるほど、すごい顔されるわけだ。

舞十「すいません。ちょっとパニックになってしまって。」

張角「ぱにっくー?」

舞十「あ、僕の国の言葉です。混乱しているといった意味です。」

本当はまだかなり混乱しているが、これ以上張角さん達を心配させるのは気がひけたので出来る限りの笑顔で取り繕った。

張角「あーーーー!そうだよ!思いだしたー。」

とりあえず安心してもらえたと思ったら今度は張角さんが声をあげた。いったい何を思い出したのだろう。

張宝「急に大声出さないでよ姉さん!」

張梁「いったい何を思い出したっていうの?」

どうやら二人もわからないようだ。そんな二人にかまわず、張角さんはこっちにやって来た。

張角「ねー。ちょっと、聞いていいー?」

どうやら僕に聞きたいことがあるみたいだ。

張角「君ってこの国の人じゃないよね?」

舞十「え?はい、そうですけど。」

張角「その国ってー、私達の知ってる所にあるー?」

舞十「いや、多分無いと思います。」

1800年程後の世界を知ってるなんてことないだろうしね。

張角「やっぱりー。やったー。すごーい♪」

僕がそう答えると張角さんは満面の笑みではしゃぎだした。…見ててかわいらしいのに何か嫌な予感しかしないのはどうしてだろう?

張宝「あのー、天和姉さん…」

張梁「私達にもわかるように説明してくれない?」

張角「えー。二人とも覚えてないのー?ほーらー、管輅っていう子の占いだよー。」

張宝「あー。あの天の…って!?」

張梁「まさか!?」

三人が僕を見ながら話をしている。どうやら占いのことみたいだけど、それが僕と何の関係があるというのだろう。と考えていたら、

張角「きっとこの人だよー、あの管輅って子の言った天からの使者ってー。」

張角さんは僕を指さしてもっととんでもないことを言ったきた。

<舞十視点、終了>

張角以外「「「えーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?」」」

『舞十が天からの使者である』

そのあまりに突拍子のない張角の発言に張角以外の三人はそろって絶叫した。

ところが張角だけは自信満々といった感じで立っていた。

張梁「姉さん、本気で言ってるの?」

張宝「そ、そうよ!何を根拠にしてるのよ。」

いち早く混乱から回復した張梁の言葉に続くように張宝も追及した。二人はまだ信じられないといった感じだった。それゆえに姉がなぜそんなにもって言っているのか気になった。

張角「だってー、私達の知らない所から、お星様に乗ってきたんだよー。きっと間違いないよー♪」

張宝「うーん。それはどうかな?」

張梁「……。」

舞十「ちょ、ちょっといいですか!?いったいなんの話ですか天の使者って?僕が星に乗ってきたってどういうことですか?」

だが、姉のあまり根拠にならない発言に二人が顔をしかめていると、やっと意識が返ってきた舞十が三人に質問をした。

張宝「あんたは…知らなくて当然か。」

張梁「最近、管輅という占い師がいろんなところで言いまわっているのよ。『黒天切り裂き、星に乗り天より使者が来る。白く輝く衣纏いし御使いは乱世を沈静し、真なる衣内に隠した舞手は時の流れに沈む星を導く標(しるべ)となる。』とね。」

舞十「…その天からの使者の片方が僕だと言うんですか?」

張角「そうだよー♪白く光ってないからー、踊る方の人?」

張宝「あたしに聞かないでよ。ちーと人和はいまいち信じられないけどね。」

張梁「ええ」

舞十「…僕はそんな大層な者じゃないですよ。ただの劇団員です。」

張梁が口にしたのは管輅という占い師の預言であった。張角はその予言の使者の一人が舞十であると思っているのだった。しかしそれを舞十は否定した。

張角「えー。でも、お星様に乗ってきたんでしょー?」

舞十「僕は気が付いたらここにいたんです。だから僕自身全然わかりません。それよりも僕が星に乗って来たって本当なんですか?」

張梁「…確証はないわ。確かに昨夜(ゆうべ)、星は落ちてきたけど。」

張宝「その場所にあんたがいたってだけだしね。ま、限りなく怪しいというのは変わらないけどね。」

舞十「だとしたも僕は別人ですよ。確かに珍しい格好をしてますが、僕には占いに出ているような力なんてありませんし。たぶん気を失っているところに星が落ちてきたんだと思います。すみませんね、期待はずれで。」

張角「むーーーーーー。」

張宝「………ま、あくまで占いだしね。」

張梁「それに管輅という占い師、あんまり評判良くないみたいだし、鵜吞みにするのは良くないかもね。」

張角はまだ納得いかないみたいだったが、とりあえず天の使者の話はそこまでとなった。

舞十「(張角さんには悪いけど、ただでさえ何も知らない世界に来てしまったっていうのに、なんの力もない僕がそんなとんでもないモノに祭り上げられるのは正直勘弁してほしいしね。…それにしても都合よすぎるでしょう…何なんだ、あの占い。)」

しかし舞十自身は管輅の占いにあった天の使者の一人『真なる衣内に隠した舞手』の特徴があまりにも自分に似ていることに冷や汗が流れそうな思いだった。しかし舞十はそれを認めたくなかった。認めてしまえばこれ以上の事に巻き込まれることはわかりきったことだったからだ。

舞十「ところでその星が落ちたのって何処なんですか?」

張宝「ん?そこの林だけど?」

舞十「あー。あのすぐそこの…。わかりました。長々とすみません。そろそろここから動きましょうか?(此処にいたら余計な疑いをかけられそうだし。)」

張梁「…そうね。そろそろ動かないと、お昼に町に着けないし。」

張宝「それもそうね。それじゃ行こっか。」

張角「えー?待ってよー。お姉ちゃんまだ荷物まとめてないよー。」

舞十が星の落ちた場所を聞くと、張宝はすぐ近くの林を指さした。それを聞いた舞十は少し焦り気味にここから動くことに話題を変えた。三人も町に着くのが遅れるのはまずいと思ったようで、動く準備を始める。

舞十「あの、すみませんが。」

張角「んー?なーにー?」

舞十「僕も一緒に町まで連れて行ってもらえませんか?実はこの大陸にきたのは初めてで、行く当ても土地勘も無くて…。それに助けていただいたお礼もまだですし。」

舞十は自分も連れて行ってほしいと願い出た。此処で置いていかれてはどうしようもないためである。

張角「えーと。どうしよう二人ともー?お姉ちゃんは別にいいけどー。」

張宝「なんか変なこと考えてたりしてるんじゃないでしょうね?」

舞十「考えてません。何ですか変なことって?」

張梁「いいわ。」

張宝「ちょっと人和?」

張梁「ただし、何かへんなことをしたら、途中で捨てるか、町の役人につきだすから。それに条件があるわ。」

舞十「かまいません。ありがとうございます。」

張宝は疑ったが、張角が賛成、張梁も条件付きで賛成したため、渋々ついてくることを許可した。舞十は三人に頭を下げ感謝した。

その後荷物をまとめ、四人は町へ向かって歩き出した。

―道中―

張宝「あー。楽ちん楽ちん♪」

張角「ほんとー♪」

張梁「これなら予定より少しは早く着けそうね。」

張宝「うまいこと考えたよね。人和えらい!」

張角「れんほーちゃん、えらーい!」

舞十「(そりゃらくちんでしょうよ。)」

張梁が出した条件とは、町まで三人の荷物の一部を代わりに運ぶことであった。三人は舞十にもてる限りの荷物を渡しているので足取りは軽かった。舞十は口に出すわけにもいかないので心の中で突っ込みを入れておいた。そんな中、舞十は気を紛らわせるため、ずっと疑問に思っていることを一番話しやすい張角に質問してみた。

舞十「あのー。張角さん。」

張角「え?なーにー?」

舞十「さっきから名前とは違う呼び方をしてますけど…それってあだ名ですか?」

舞十の疑問とは、三人の間で時々出てきた名前とは違う呼び方のことだった。

これを舞十はあだ名だと思っていたが、張角は首をかしげた。

張角「あだなー?何それ?」

舞十「えと、あだ名っていうのは親しいもの同士で呼ぶ時の別名です。」

張角「違うよぉ。それはあだ名じゃなくて真名だよー。」

舞十「マナ?マナって何ですか?」

今度は舞十が首をかしげた。しかし張角だけではなく張宝、張梁も信じられないといった顔で足を止めて舞十に詰め寄ってきた。

張宝「嘘でしょ?アンタ真名を知らないっていうの?」

舞十「は、はい。」

張角「ほんとーにー?」

舞十「本当です。僕の住んでいるところにはそういった習慣はありませんでしたので。」

張梁「…嘘はついていないみたいね。」

詰め寄る三人の剣幕にたじろぎながらも、舞十は答えた。三人は舞十が嘘をついていないようだとわかるととりあえず離れた。

舞十「あの…そのマナっていうのは何なのか教えてもらえませんか?なにやら重要なことみたいですし。」

張宝「“みたい”じゃなくて重要なの!下手したら死ぬわよあんた。」

舞十「ええっ!?そうなんですか?」

張梁「本当よ。いい?真名というのは…」

張宝の例えに驚愕した舞十は説明を始めた張梁の言葉に真剣に耳を傾けた。

張梁「真名というのはその人の本質を表す真の名前のこと。親しい人や認めた相手だけが呼ぶことができる神聖な名前。たとえ知っていてもその人に許されなければ決して呼んではいけないの。偉い人にとってはそれこそ死罪につながる程にね。」

舞十「なるほど、つまり勝手に使ったら相手にとって最大の侮辱につながるわけか…確かに殺されるわけですね。わかりやすい説明ありがとうございます。」

張梁「いいわよ。お礼を上乗せしてもらうだけだから。」

舞十がお礼を言うと張梁は意地の悪いほほ笑みでそう告げた。

舞十「へ?上乗せ?」

張梁「あら、当然でしょ?下手したら命をとられるかもしれない危機から未然に救ってあげたんだから。」

舞十「ハハハ……。そうですね。(しっかりしてるなぁ。)」

張角「んーと。どういうこと?」

張宝「つまり御礼は期待しちゃっていいってことよ♪」

張角「ほんとー?やった~♪」

意気揚々と再び歩き出した三人に舞十は苦笑いしながらついていくしかなかった。命を救われたと言われたら反論はできなかった。

舞十「(お金はどうしよう?お礼の事もあるし結構必要だよね。…持ってるものいくつか売るしかないか。)」

張角「ねぇ、ちょっといいかな?」

舞十が町に着いたらどうしようか悩んでいると張角が声をかけてきた。

舞十「はい。何ですか?」

張角「君のことは、何て呼べばいいのー?そういえば、君の呼び方決めてなかったし。」

舞十「そういえばそうでしたね。差支えないなら、僕のことは舞十で構いません。佐野小路では呼びにくいでしょうし。」

張宝「いいの?それってもしかして…。」

舞十「確かにこれは両親からもらった大切な名前です。しかしさっきも言ったように僕の国には真名という習慣がありませんでしたし。それにこちらの流儀に合わせるなら命の恩人には呼ばせても問題はないのでしょう?」

張梁「そうね。間違いではないわ。」

張角「そっかぁ。じゃあ舞十でいいねー。」

舞十の呼び方が決まると、張角はさっきよりも好奇心いっぱいの目で舞十を見ると、質問を続けた。

張角「それじゃぁ舞十にしつもーん。舞十の言ってた『げきだんいん』って、どんなことするのー?」

舞十「そうですね。基本的に演劇やミュージカルといった物語を人間が演じるものが多いですが、家は特殊なので時には屋外で大道芸をやったり、大規模な奇術をやったりもしましたね。」

張角「え?つまり、舞十は芸人さんなのぉ?」

舞十「ええ。こちらでいえばそれに当たるものだと思います。」

張角「そーなんだー♪一緒だねー♪」

張宝「ちょっと、舞十だっけ。それ本当?」

舞十「は、はい。というか一緒ということは…?」

張梁「私達は旅芸人なの。」

張角「大陸で一番を目指してるんだー♪」

張角の質問に対する舞十の答えに、会話に参加してなかった二人も興味を向けた。

それから四人は話が弾んでいった。舞十の話に張角と張宝は目を輝かせ、張梁も冷静に分析しつつも楽しげに話を聞いていた。それは舞十も同じだった。この世界に来て以来舞十は初めて本当に楽しそうに笑っていた。楽しい時間はあっという間に過ぎ、舞十達は町の前に到着した。

どうも、areareです。読んでいただきありがとうございます。そして更新が遅れて申しわけありません。試行錯誤しましたが短くまとめきれず、結局前編・後篇に別れてしまいました。他の作家の皆さんのようにうまく、早くまとめられるようになれるよう、これからも頑張りたいと思います。

コメントにもあった本家御使い、北郷一刀のことですが、出す方向で行きたいと思います。本家にオリ主が食われないように気をつけていきたいと思います。出るのはまだ先ですが。

舞十がずいぶんネガティブなのですが、いきなり知らない…しかも自分の常識が通じない世界に飛ばされ、帰る手段もないとなったら、普通は前向きにはなれないとおもったので、こうしました。また、天の使者という名は、のる神輿がなければ、かえって危険な存在なのではということから、いきなり名乗るのはやめました。それにいきなり自分が天の使者だなんて言われても認められないですし、載る神輿があったり、命を救われた条件だとしても、受け入れるのはかなり難儀なことだと思います。世界への順応性なども含め、改めて北郷一刀はすごい人間だと思います。(自分がマイナス思考なだけかもしれませんが。)

書いてて人和(張梁)が腹黒くなってしまっている感がありますが公式でも悪巧みを使うみたいに書いてあったのでこれくらいは大丈夫じゃないかなあと思って書きました。

また、豫州、兗州と地名を出しましたが、陳留があるのは兗州です。つまり三人は豫州から兗州へ向かっているということです。ちなみに豫州は兗州の南にあります。

 

感想、ご指摘をいただけたら幸いです。

 


 
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