No.125720 真恋姫無双外伝 外史をかける一刀 15話2010-02-21 05:10:18 投稿 / 全5ページ 総閲覧数:6288 閲覧ユーザー数:5191 |
一刀達は劉表領に一番近い砦まで来ていた。
「マツリさん、後は宜しく。予定の場所で合流するよ」
「おう、任しておれ」
一刀はこの後の陣設営場所までの移動を黄権と司馬懿に任せ他の将と兵数人を連れてある場所に向かっていた。
しばらくすると一刀等は劉表領内の森の中に来ていた。
「この近くで間違いないんだね、思春?」
「はい、あと少しで小屋が見えるはずで!?ありました。あそこです」
思春の指差す方を見ると小さな小屋があり、その前に椅子に座ってる老人とその横で立っている女性がいた。
「お久しぶりです。蘇飛様、黄射様。孫堅軍の先発隊の責任者を連れてまいりました」
「ひさしいのぅ、思春よ。だがワシ等にそのような喋り方をするとは悲しいぞい」
「蘇飛様、仕方ないですよ。今彼女は孫堅軍の将として尋ねてきてるのですから」
思春の挨拶に、蘇飛は寂しそうに返事をし、それを見てた黄射は苦笑しながら返した。
「始めまして、蘇飛殿に黄射殿。私は孫堅軍で客将をしている北郷と申します」
「ふぉふぉふぉ、よい目をしておいでだ北郷殿。生憎、ワシは立つすべを無くした身。座ったままでの挨拶許されよ」
「・・・ビン(月賽)刑ですか?」
その問いの後、辺りは静まり返った。
しばらくすると冥琳がおそるおそる
「そのぉ先生、ビン刑とはなんなのですか?」
冥琳の問いに一刀は蘇飛の方を向く。
すると蘇飛は無言で頷いた。
「・・・ビン刑とは足切り刑の事だよ。もっとも蘇飛殿の場合は本来の足を切られるのではなく雪蓮の祖先である孫ビンのように両足の膝蓋骨を抜かれているようですね」
「ふぉふぉ、この少しの間にそこまで見抜くとはさすがですな」
一刀と蘇飛の言葉に冥琳は愕然とし己の無知を恥じた。
この頃の冥琳は軍師としての勉強を主にしていたので刑罰などに関しての知識を持ち合わせていなかった。
その無知故の問いで蘇飛を傷つけてしまったのではないかと思い罪悪感で顔を伏せてしまった。
「気にせずとも良いぞ、嬢ちゃんや。何にでも興味を持つ事は軍師になる為には必要な事じゃよ」
「あの、その、すみません」
「よいよい。さてしんみりとさせてしまったのう。気分を切り替え本題へと移ろうかの北郷殿?」
一刀は兵に見張りを指示して蘇飛の小屋に入った。
部屋に入ると蘇飛と黄射が椅子に座り、彼等と向かい合うように一刀と冥琳が座る。
そして残りの思春と黒曜が扉の前に立った。
「蘇飛殿、早速ですが例の物は?」
「うむ、これじゃあ」
そういって一刀は蘇飛からある物を受け取る。
一刀はさっそくそれを広げ中身を確認する。
広がったそれを見て隣にいた冥琳は思わず
「!?先生、まさかこれは・・・」
「そうだよ。これから俺達が攻撃する事になるいくつかの城の見取り図だ。もっとも、いくつ使うようになるかは分らないけどね」
そういって一刀が冥琳に説明したのは劉表軍の各城の見取り図だった。
「しかし、これだけの物をどうやって?一つだけならまだしもこれだけの量の見取り図など手に入れようが・・・!?まさか」
「さすが冥琳鋭いね。ただそれだけだと半分正解といったところかな。蘇飛殿は元黄祖の部下、黄射殿にいたっては黄祖の娘さんだ。但しある事で親子の縁を切ったらしいけどね。この事は文台様も承知の事だ」
付き付けられた事実に驚愕した。
そして冥琳はある事に気付き、思春の方を向いて
「貴女はこの事を知ってたのですか?思春」
その問いに思春は暗い表情をして俯いてしまった。
その行動を冥琳が不思議がってると、突然一刀が立ち上がって思春の方に向かった。
思春の前まで来た一刀は屈んで思春の目線に合わせ、頭に手を置き
「辛いなら無理に話さなくてもいいんだよ。誰にも話したくない事もあるから、冥琳には俺からそう話しとこうか?」
一刀はそう聞きながら優しく思春の頭を撫でた。
しばらくそうされていた思春は決心がついたらしく
「有難うございます、師匠。気持ちが落ち着きましたのでお話します」
そういった思春は一刀と共に机の前まで来て静かに話し出した。
「冥琳様、この事は私が知っていたという事ではなく、そもそもお二人が軍を抜けたのは私のせいなんです」
そのことに冥琳は驚きつつも思春の話を最後まで聞こうと態度には出さなかった。
「実は私の家族は劉表様の所で働いていました。ある日私が謝って馬の餌に毒草を混ぜてしまって多くの軍馬を死なせてしまいました。しかもその軍馬達は黄祖の部隊の物だったので怒った黄祖が私達を処刑しようとしました。それを不憫に思い私達を孫堅様の所まで逃がしていただいたのが蘇飛様と黄射様の御親友の禰衡様でした。そこで逃げてる時に私をかばって禰衡様は黄祖に殺されてしまいました。蘇飛様も処刑されようとしましたが劉表様などにとめられその代りにビン刑に」
「・・・そうだったのですか。ごめんなさい思春。辛い事をはなさせてしまって」
それを聞いた思春は「大丈夫です」と答えながらも声には出さないようにすすり泣いていた。
「気にすることは無いぞ思春よ。小さな子供の失敗に対して黄祖が取ろうとした事はいくらなんでもやり過ぎじゃ。ゆえにワシも禰衡も自分の考えでお主達を助けたに過ぎんのじゃ」
「そうですよ、思春。それに劉表様は心優しい方なのであのままでは心痛めていらしゃったことでしょう。最もまわりの臣下達は腐ってしまっていますがね、父のように」
その後暫く静寂な空気になっていたが一刀が
「さて、こちらの用件は済みました。ですので次はそちらの要望に答えましょう。黒曜、兵に持ってこさせた例の物を持って来てくれ」
そう言われた黒曜は一度外に出てある物を運んできた。
「では蘇飛殿こちらにお座りください。我故郷で使われていた足が不自由な者の為の移動手段、車椅子という物です。これを使って貴方方を文台様の下へお連れします」
「おお、これはありがたい。よろしくお願いする。そちらで文台殿に直接お伝えしないといけない事もあるゆえ頼みますぞ」
そういって蘇飛は黄射と思春に手伝ってもらい車椅子に座ると陣に合流するために元来た道を帰っていく。
その途中一刀は皆に静かに伝える。
「どうやら刺客に囲まれてるようだね。戦う覚悟を決めるように」
その言葉に緊張が走り皆が得物を構えると物音が聞こえ
「!?来るぞ、なんとしてもお二人を護衛しろ」
一刀達と黄祖からの刺客との戦いが始まろうとしていた。
後書き
15話なんとか完成しました。
今回はなぜ思春が孫堅軍にいるのかを書きました。
ちなみに今回出てきた人たちはこの話を作るために甘寧を知っていそうな人達を集めました。
多分次回以降は出てこないと思いますので説明などは致しませんので気になった方はウィキ大先生で調べてください。
ちなみに蘇飛に関してはオリジナル要素がかなり入ってるのであしからず。
話は変わりますがやっぱり私には絵の才能はありませんでした。
子供思春を書いてみましたがめちゃくちゃで「・・・誰だよ?」な感じです。
まあ、これが現実というものですよね(泣)
投稿してしまったので良かったら見てください。
絵を見ていただいたら分りますが思春の得物が違います。
『双鈴』といって鈴音をそのまま小さくしたような二振りの短剣です。
次回はいよいよ思春と冥琳の初めての実戦となります。
うまくかけるか心配ですが楽しみにしていてください。
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15話を投稿します。
思ったより長くなってしまったので途中できりました。
今回は思春の過去がわかります。