賊の討伐と国力の基盤を固める政策を行っているときに麗羽が公孫賛を打ち破り
董卓連合で徐州を与えられた劉備の元へ公孫賛が逃げ延びたという情報が入ってきた
「それで呂布が見つかったとの報告も入ってきたのだけど」
「ええ、ですが相手にしないほうがよろしいかと」
秋蘭は俺の評価をそのまま信じて曹操様に無視することを進言した
確かに呂布は脅威だがあれは手を出さなければ牙をむかない
「そうね、今はもっと警戒すべき相手が居るわ、桂花」
「は、河北四州はほぼ全て袁紹の勢力下に入っています。北はこれ以上進めませんので
後は南下してくるでしょう」
南下か、それなら麗羽の性格なら素直に下がっては行かないな
「と言うことは次に狙ってくるのは我等と言うことですね?曹操様」
そういうと桂花はあきれたように俺を見て「馬鹿じゃないの?」といってため息をつくが
「そうね、昭の言う通りこちらでしょうね、劉備の方に目を向けたりはしないでしょう」
と言う言葉に「え?」と驚き意味のわかっていない桂花は俺を睨む
「麗羽の性格を知ってるだけだよ、だからそんなに睨むなよ」
「フフフッ桂花、国境各城に万全の警戒であたるように通達なさい、後は袁術にも
監視を怠らないように、ここのところ動きが無いから気味が悪いわ」
桂花は「了解いたしました」と言うと鳳のほうを見て顎で呼ぶ
それに対してこめかみをヒクヒクさせながら鳳はついていく
「それでは会議を終了する。解散!」
玉座の間に春蘭の声が響き会議の終了を告げる
「あれって仲いいんだよなきっと」
「そうなのか?私には良くわからん、昭のような慧眼があるわけではないからな」
桂花と鳳のやり取りを見ながら春蘭と話していると秋蘭が小走りによってくる
「姉者、家で食事を取っていけ、ここのところ三人とも帰れてないからな」
「いいのか?秋蘭の料理が食べられるのは嬉しいな、涼風にも会いたい」
「いいさ、どうせ気を使って今日は城の待機部屋で休むつもりだったんだろう?」
秋蘭はそう言うと俺の腕を取りからませ見上げて同意を求めてくる
「ああ、と言うか屋敷は春蘭の部屋もあるんだから遠慮するなよ家族なんだから」
「そうだな、あ!まだ礼を言ってなかった。眼帯をありがとう秋蘭」
春蘭は蝶の形をした眼帯をつまみ秋蘭に礼を言う、俺は「よく似合ってるよ」
と言うと顔を赤くした春蘭に額をはじかれた
「昭、そこの塩を取ってくれ」
「ああ、そろそろ餃子を蒸篭に入れるぞ、一馬~皿の用意と机拭いてくれ」
「はい、兄者」
俺と秋蘭は食事の用意をして一馬は皿などの準備
春蘭は涼風と遊んでいる、こういう日が毎日続けばなんと幸せなのだろう
「さぁ出来たぞ、運んでくれ昭、一馬」
「了解、春蘭は涼風と食べるのか?」
「ああ、膝の上にもう乗っているしな、はははははっ!」
涼風はニコニコしながら春蘭の膝の上に座り食事を待っている、すると屋敷の外が騒がしくなり
部屋に兵が飛び込んできた
「曹操様より非常招集です。袁紹が動きましたっ!」
くっ!早い!もう動いたのか!急いで曹操様の下へ行かねば
「一馬すまない涼風を見ていて」
「食事を取ってからだ、それからでも間に合う!!」
俺が言い切るまえに春蘭が叫ぶ、膝の下では涼風が暗い顔をしてしまっている
そうか、そうだよなここのところ帰れてないんだ、さびしい思いをしていたのは当たり前だ
そんなことをわからないなんて俺は父親失格だ
「さあ食事をしよう、涼風は何が食べたい?」
春蘭が涼風に優しく話しかけ俺たちは席に着く、兵士にはすぐに向かうからと告げて
「ありがとう春蘭、涼風を泣かせるところだった」
「いいさ、私にはこのくらいしか出来ない、昭と秋蘭に私は世話になってるからな」
そういって俺たちは食事を取る、楽しく、また戦場に出かけ寂しい思いをする涼風に少しでも
笑ってもらうために
「あんたたち遅いわよっ!もう袁紹は動き出しているのよ!」
玉座の間に着いた俺たちは桂花に怒鳴られる、しかたないなこのくらいは
「いいのよ桂花、話は聞いてるわ偉いわよ春蘭」
「は、もうしわけございません」
曹操様は怒るどころか兵士の話を聞き事情を察してくれていたようだ
それどころか春蘭を褒めた、これほど器の広いかたが居られるのだろうか
「それで、敵の情報はどうなっているのかしら桂花」
「は、旗印は袁、文、顔。主力全てが揃っています。数はおよそ3万
敵の動きはきわめて遅く、奇襲などは考えていない様子。
こちらに自らの力を誇示しているような印象を受けたそうです」
敵の数に俺たちは少し驚いた、この間公孫賛を下したばかりでもう3万もの
兵を動かせるのか、よほど麗羽のほうには兵が多いのだな
「それで報告のあった城に兵はどのくらいいるのだ?」
「城にはおよそ7百といったところね」
春蘭の質問に桂花は苦虫を噛み潰したように答えた。一番手薄な場所
を狙われたのか、桂花でなくとも苦い顔はする7百か
「昭、凪たち討伐からはまだ戻っていないのだろう、戻るまでは?」
「ああ、一日はかかるな一馬に伝令として走らせても半日はかかる」
「姉者、青洲兵を5千ほど残してある。後は霞の騎馬隊が3千だ」
あわせて8千か、凪たちを呼び寄せて何とか3万にいけるか?
だが遅いな、半日は篭城で持ちこたえられないか
「親衛隊を更に加えて一万で耐え切りましょう、一馬に走らせてくれるかしら」
「英断ですね、ありがとうございます。すぐに一馬を凪たちに向け出しましょう」
「華琳様!」
俺は秋蘭の肩を掴み頸を振る。ここで自分の身の可愛さに兵を
出し惜しみしては俺たちは喰われる
「失礼いたしますっ!曹操様っ!伝令でございますっ!」
玉座の間に一人の兵士が指揮官の伝令を伝えるため
全力で馬を走らせたのかふらふらになりながら報告をしてくる
兵士の報告を聞き俺たちは驚愕した
「兵の増援は不要だと!?」
「何ですって!死ぬ気!?そこの指揮官はっ!」
春蘭と桂花は叫びにも似た声を上げるが、気になるな
増援は不要?兵は7百、袁紹軍・・・・・・・・もしかして
「すまん、そこの指揮官の名を教えてもらえるか?」
「は、はい!郭嘉殿と程昱殿です」
郭嘉と程昱!やはりそうか、程昱ならば7百でも袁紹軍3万に対して
援軍を求めないなど理解できる、俺の知る歴史とは違うが郭嘉まで居るのなら
だが一応兵をいつでも出られるようにしておいたほうがいい
「フフフッ昭、顔が笑ってるわよ。貴方も増援は不要だと思ったのね?」
「ええ、曹操様もですね?と言うか笑ってましたか私?」
「笑っているわよ、本当にお祖父様に似てきたわね、こんなときに笑ってるんですもの」
曹騰様に似てきたのか?確かにあの方は少し変わっていた
俺も変わっていると言えば変わっているのかもしれない、敵が迫っているのに
頭の中は英傑に会えるのを楽しみにしてるんだからな
しかし郭嘉もいるのか、郭嘉は桂花の紹介で来ると思ったのだが
「では、増援は希望通り送らない、その二人には袁紹軍が去った後こちらに来るよう伝えなさい
みなの前で説明をしてもらうわ」
新たな伝令を受けた兵士は返事をするとすぐさま立ち上がり走りだす
その様を見送りながら春蘭は納得行かないといった顔で俺に近づいてくる
それはそうだな、理由が解らなければ城を棄てるようなものだから
「華琳様はああおっしゃっているが大丈夫なのか?私にはその・・・・」
「そうだな、一応ここの兵士はいつでも出られるようにしておこう」
「うむぅ・・・・・」
まったく、今すぐその城に向かいたくて仕方ないと言った顔だな
「皆も勝手に兵を動かさないこと、これは命令よ。守れなかった者は厳罰に処すからそのつもりでいなさい」
釘を刺されてしまった。兵の用意までもするなと言うことか、しかしこれは解っている俺でも
肝を冷やす、たまに思うんだが曹操様はどこか己のを試しているような気がする
まるで自分は本当に覇者として資格があるのかを問うような
「昭、とりあえず屋敷に戻ろうか、華琳様の命令ならば聞かねばなるまい」
「そうだな秋蘭、せっかくだから俺は涼風と今日は一緒に寝るよ」
「なら私もそうしよう」と言って秋蘭は手を握ってくる。意地悪だな、皆がいるところで
言わなくてもいいのに、俺は顔が赤くなりながら上を向く
「フフフッでは解散を、私も閨に戻るわ。着いてらっしゃい桂花」
俺のほうを見て微笑む曹操様は招集の解散を告げる
桂花は頬を染めて、目を潤ませながら曹操様の後を着いていく
相変わらずだな桂花は、まあ、俺も人のことを言えないか、この手を見られては
「春蘭どうした?行かないのか?」
「ん?あ、ああ・・・・」
屋敷に向けて歩を進めようとしたとき、難しい顔をして立ちすくむ春蘭
この顔は変なこと考えているな、まあ昔とは違うから大丈夫だろう
声をかけると小走りで追いかけてくる春蘭
さて今日は涼風にどんな本を読んでやろうかな
「おはよう昭、起きてくれ食事にしよう。」
秋蘭の手が俺の頬を優しく撫でる。どうやらまだ袁紹軍が城には来ていないようだ
本当にゆっくり進んでるんだな
「ああ、おはよう秋蘭、涼風は?」
「もう起きて一馬と水を汲みに行ったよ。水路はもうすぐできるんだろう?」
「ああ、もうすぐだよ。さて腹が減った、飯にしようか」
俺は寝台から降りて着替えると秋蘭に身だしなみのチェックが入る
毎朝のことだからもう慣れたんだが初めは恥ずかしいだけだったなぁ
そんなことを思っていると外から俺を呼ぶ声が聞こえてくる
「兄さまっ!!兄さはいらっしゃいますか!?」
「どうした流琉、袁紹軍が動いたのかっ!!」
小さい体を上下に揺らしはぁはぁと息を切らせている
なんだ?まさか袁紹軍が城を突破したのか?それとも?
「い、いえ春蘭様と霞さんが一騎打ちを!」
「なんでだ?・・・・・・・・・まさかっ!」
俺はすぐに理解した、昨日のあの顔!俺は昔とは違うからと思ったのに
その言葉で俺は走り出していた。おそらく兵舎だろう、まったく!!
「流琉、すまんが昭に着いていってくれ、私は涼風がまだだからな後から行く」
「はいっ」
兵舎に着くなり凄まじい剣撃の音が響く、春蘭と霞が一騎打ちをしている
どちらも途中で火がついたのか、本気の目をして打ち合っている
周りを見れば兵が装備を整え出陣しようとしていた。まったく、コイツラはっ!
「はぁっはぁっ!に、兄さまっ!どうしましょ・・・・・・」
「「コラァアアアアアア!!!!おまえらぁあああああああ!!!!」」
あたりをビリビリと凄まじい叫び声が支配する。周りで見ていた兵士も
着いてきたと流琉もあまりの声の大きさに体が固まり、春蘭と霞までもが
手を止めて固まり春蘭はカタカタと震えだす
「うぐっ・・・・・・・・・・・・あ、ああああああ昭っ!!!」
「な、なんやぁ、今の声」
俺の顔を確認した春蘭は剣を地面に落として振るえながら涙目になり
それをみた霞は「え?え?え?」と俺と春蘭の顔を見ている
「座れ」
「ひっ・・・・・ううぅ」
俺の低い声で春蘭は震えながら正座になる、霞は何を言ってるんだ!
私は悪くないとばかりにこちらを睨んでくる
「あのなぁ!うちはこの猪をとめて」
ガゴンッ!!
俺の拳骨が霞の頭に落ちる。その後いつもと違う雰囲気を感じたのか
涙目になりながら頭を抑えて口をパクパクさせながら正座になる。
「あ、あれは・・・・・」
「ふぅ、やっぱりこうなったか」
「え?あ、秋蘭さま!あの、あれはいったい?」
「ああ、昭が叱るところを見たことは無いか、まあめったに叱るなんてことはしないからな」
秋蘭が後から追いつき流琉に話しかける。目の前には兄が幼い妹を叱るような光景が
繰り広げられ、流琉はその光景に言葉を無くしてしまっていた
「怒るのとは違うからな、何と言うか言い返せないし道理を通して叱るからあれは怖いぞ」
「え?怖いぞっていうことは秋蘭様も?」
秋蘭は赤くなりながらクスクスと恥ずかしそうに笑う、そんな秋蘭を見て流琉は
目を丸くしていると
「私も一度だけ叱られたことがあるわ、お祖父様と同じ叱り方をするから苦手なのよね」
「か、華琳様!華琳様も!?」
「小さいときにね」というと叱られている二人に近づいていく、そして二人の前に立ち
俺のほうを向くと終わった?と目で問いかてくる。俺は終わりましたよと目で返す
「後ろから聞いていたけど、春蘭は城を侵略されるのが私を穢す行為だと、それで
我慢できず兵を動かそうとしたのね?」
「・・・・・・・はい」
「霞はそんな春蘭を見て止めようとしたら一騎打ちになってだんだん本気になってしまったと」
「・・・・ううぅ」
「で、昭は私を信じることが自分達臣下の務めだと、霞にはそれでは己が猪ではないかと言うことね」
言い終えるとやれやれといった表情を浮かべたあと少し笑っている、叱られる春蘭を久しぶりに見て
可愛いと思っていらっしゃるのだろう、まったく
「厳罰といったけれども、すでに十分に厳罰を受けたようだしこのことはもういいわ」
そういうと春蘭の目がうるうると涙ぐむ、霞までも少し涙ぐんでいる、少し叱りすぎたな
「春蘭には兵3百を動かすことを許しましょう」
曹操様の言葉に皆が驚く、それはそうだ城の兵とあわせて千、3万の兵に適う訳が無い
理由を知らない者には馬鹿げているとしか思えない
「ふぅ、春蘭、3百で十分だ死にはしない、理由は実際聞いたほうが良い」
俺の口から言うのと実際にその策を行った本人が言うのとでは信憑性にかけるからな
春蘭は特に自分の目と耳で確かめたほうがいい
「霞には残りを率いて賊の討伐に出てもらうわ、盗賊団が出たとの報告を受けたからね」
「そ、それはええけどほんまに3百で行かせるんか?」
「ええ、出来るわよね春蘭?」と春蘭に向かって少し強い目を向ける。その目に春蘭は強く頷く
「はい、必ずや守り抜いて見せましょう。全員騎乗っ!」
「ちょっと待て春蘭、さっきは悪かったな叱りすぎた。」
そういって優しく抱きしめると「私も悪かった。」と答え顔を赤くしてすぐさま騎乗し城を出て行く
霞にも頭を優しく撫でて「すまなかったな」というと「うちは抱きしめてくれんのか?」と言われた、まったく
仕返しか?そんなことをしたら秋蘭に俺が叱られる
「昭、本当に姉者は大丈夫なのか?」
「ああ秋蘭、心配は要らないよ。さあ帰って食事にしよう、そのときにでも説明するよ」
とりあえずは春蘭が戻ってきてからだな、向こうに着いたらきっと我が目を疑うだろうな
それとも郭嘉と程昱がこの城に向かってくるのが早いかもしれない、途中で会って驚くか?
フフフッ、どちらにせよ無事に帰ってくることは確かだ春蘭が無事であればほかに何も望まないさ
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袁紹との決戦が近づいてきています
ようやく風と稟が名前だけですが出てきます
次あたりで主人公にちょっとした変化が
あります。というか次でそこまで書けるかな?
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