No.123850

憑い姫†無双 2

こひさん

継い姫†無双外伝
対姫†無双1と3の夢編、5で説明された蜀√が舞台です。

鈴々、紫苑がすでに死亡。
鈴々が季衣に、紫苑が流琉にとり憑いています。

2010-02-12 00:51:01 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3870   閲覧ユーザー数:3379

 自分の隣で安らかな寝息を立てている少女を見つめる。

 

 しばらくして、首を反対に向ける。

 

 だら~っと、涎をたらして眠る少女。

 枕元から手拭を取り出し、口元を拭いてやる。

 

 しばらく少女を眺めた後、天井を向いて大きなため息を一つ。

 そして認めるしかない事を一言、口にした。

 

 

「……負けた」

 

 

 華琳はその日、初めて閨で敗北した。

 

 

 

 話は遡る。

 鈴々が季衣に、紫苑が流琉にとり憑いていると判明したその日の晩。

 華琳は二人を呼んだ。

「二人に……いえ、四人にかしら? 話があるわ」

「はい」

「なんでしょうか?」

 

 華琳は季衣と流琉を見つめて話す。

「張飛と黄忠が憑いているというのは本当なのね」

「はい! 以前華琳さまにお話したきょっちーみたいなことになってます」

「すみません、もっと早くお話できれば……」

 申し訳なさそうに言う流琉。

「仕方ないのだ。鈴々がいることに気づいたのが、こっちにきてからなのだ」

 季衣から切り替わった鈴々がフォローする。

 

「そうなの?」

「はい。私と鈴々ちゃんが二人の身体にきたのはごく最近。あなた方が蜀についてからですわ」

 紫苑も流琉の口を借りる。

 

 

 

 

 鈴々と紫苑は二人の身体に共棲することになったいきさつを説明した。

「そう。天に行ったの」

「そうなのだ。でも、すぐにこっちに来ちゃったからあんまり見てないのだ」

「それは残念だったわね、鈴々」

 話の中で、華琳は鈴々と紫苑と真名を与えあっていた。

 鈴々がむこうの華琳とごっちゃになってなし崩し気味にではあったが。

 

「ちょっと不安だったけど、チビペタハルマキも鈴々入れてくれたのだ!」

「ふ~んだ。今はお前もその身体なんだからね~だ。だいたい、前より大きくなってるんだから喜ぶのが本当だよ」

「鈴々の方が大っきかったのだ! 背もおっぱいも!」

「おっぱいは小っちゃくたっていいんだもん!」

 口喧嘩の一人芝居を始めた季衣。

 

「ご主人様は大きいのも小さいのも変わらなく愛してくれますわ」

 紫苑がそう二人をなだめる。

 

 

「そう。問題はそこなの」

 華琳がそう言ったので流琉も表に出てきた。

「問題、ですか?」

 

「紫苑も、そして鈴々も一刀に抱かれたい、そうでしょう?」

「はい。できれば」

「抱かれ? ……オトナにしてもらうってことだと思うよ~……応なのだ。にゃんにゃんする約束なのだ!」

 意味に迷う鈴々。

 きょっちーとの記憶の共有でそっちの知識も少しはあった季衣が補足した。

 

 

「でも、身体は季衣と流琉のものなのよ?」

「ボクは兄ちゃんとなら……ボクは直接兄ちゃんと会ったことあんまりないけど、きょっちーや鈴々の記憶、夢でよく見てたから」

「わ、私も兄様とでしたら……私も好きになって……」

 二人とも頬を朱に染めて告げた。

 

「そう……」

 華琳がうつむく。

 

「にゃ? 華琳さまどうしたのかな?」

「もしかして、むこうの華琳さまみたいに華琳さまも兄様のこと、お好きなんじゃ?」

「むこうの華琳お姉ちゃんは、お兄ちゃん追って天にまで行ったのだ」

「でしたら、私たちよりもお先にご主人様と」

 四人がひそひそと話す。

 

 

「決めたわ!」

 華琳が顔を上げる。

「季衣、流琉!」

「はい!」

「はい!」

 華琳に名を呼ばれ、元気に返事をする。

 

「今宵はあなたたちを可愛がってあげるわ」

 そう言って微笑んだ。

 

「にゃ?」

「か、可愛がるって!?」

 よくわかってない季衣と真っ赤になって焦る流琉。

 

「二人とももう少し待つつもりだったけれど、その必要はないようね」

「あ、あの!」

「私のこと、嫌い?」

「ボク、華琳さまのこと、大好きですよ~! あと、春蘭さまと兄ちゃんも大好き!」

 季衣はそう答え。

「その聞き方ズルイですよぅ……」

 流琉はそう言うことしかできなかった。

 

 

 話を戻す。

 眠れずに回想していた華琳は隣で寝ている流琉が動き出したのに気づいた。

 

「起こしてしまいました?」

「流琉……いえ、紫苑ね?」

「はい。起こさずに出て行く予定でしたが……」

 言いながら、布団から出て行く。

 

「すみません。璃々が気になるもので」

「そう。ならば仕方がないわね」

「では失礼しますね」

「待って」

 部屋から去ろうとする少女を呼び止める。

 

「……可愛がるつもりが可愛がられたのは私だった」

「鈴々ちゃんも季衣ちゃんも知らない分余計に攻め方が遠慮ありませんでしたから」

「私は攻める方が得意だもの。……でも、そうさせてくれなかったのは紫苑よ」

「そうでした?」

 ずっと主導権を握っていた女性はとぼける。

 

「貴女からは学ぶことが多い」

「男の方の悦ばせ方なら教えて差し上げられますけれど」

「そう……それでもいいわ。また閨に呼ぶわね」

「流琉ちゃんが嫌がる時はダメですよ」

「紫苑は嫌じゃないのね?」

「ふふ……おやすみなさい」

 答えは言わず、艶めいた微笑みを残して紫苑は部屋を去った。

 

 

 

「また涎たらして」

 なかなか眠れない華琳。

 再び季衣の口元を拭う。

 

「どんな夢を見てるのかしら?」

 華琳に応えるように寝言が漏れた。

「愛紗はここが弱いのだ~」

「羨ましい夢見てるわね……」

 華琳の敗北感がさらに増したのだった。

 

 

 

 

 

<あとがき>

 思った以上に早くパソコン返ってきました。

 海外メーカーだから一月ぐらいかかるんじゃないかと思ってたのでビックリしました。

 


 
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