No.123362

真・恋姫✝無双 仙人で御遣い 22話

虎子さん

拙い文章ですが、よろしくお願いします。

2010-02-09 20:50:42 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:3636   閲覧ユーザー数:3050

 

~豪臣の部屋~

 

詠に乗馬を見せた後、豪臣は部屋に戻っていた。

「朔夜。出来ているか?」

「はい」

そう言って、朔夜は足の下に置いてあったリングとネックレスを豪臣に差し出す。

豪臣は、それを手に取って確認する。

「流石だな。完璧だわ、これ」

「ここ2週間、ずっと暇でしたから。昼寝の合間に氣を込めていました」

「よし、これで捜具(ソウグ)は完成だな」

豪臣は、満足そうに言う。

豪臣の言う“捜具”とは、術者の仙氣を込めることにより、装着している者の居場所を探知するための物である。簡単に言えば、探知機である。

これの用意を始めたのは、李儒の話を詠にした後だった。

 

【回想・始】

豪臣は部屋に戻ると、リュックの中に腕を突っ込んでいた。

どのくらい突っ込んでいたかというと、二の腕まで。どう考えても、リュックの容量に合っていない。

しかし、朔夜は淡々と訊く。

「豪臣。何を探しているのですか?」

「ん?ああ。ちょっと捜具を、な。・・・ん~、あの爺、どこに入れやがったんだ?」

そう言って、豪臣は肩まで突っ込む。

「貪(トン)に、喰われないで下さいよ」

「喰われねェよ。ちゃんと仙氣でカバーしてる」

 

そう。このリュックの名は、貪(とん)と言う。豪臣が陳老人から授かった物だ。

この貪は、口に入る物なら何でも、どれだけでも中に仕舞うことが出来る。ただし、人の身で貪の中に体の一部を入れると、入れた部分を喰い千切られてしまう(リュックの口に入れた部分が消失する)。

仙氣を纏えば喰われることが無いため、仙人のためにある道具と言える。

名の由来は、昔、陳老人が少年時代の頃、つまり、戦国時代の出来事から取ってあるという。

何でも、仙人見習いの頃に、師匠から麻袋を貰ったという。その麻袋は、どれだけ物を入れても大丈夫だった。少年の陳は、どれだけ入るのかを試したくなり、築城用に置かれていた大量の木材を入れてみた。すると、その木材全てが入りきってしまい大騒ぎになったとか。

そのことから、仏教の三不善根(三毒)の一つであり、『貪り』を表す“貪”と付けたらしい。

ちなみに、豪臣のリュックは、その麻袋に掛けられていた術を移した物らしい。やり方については、豪臣は知らされていない。

 

「お!見つけた!」

豪臣は、貪からリングとネックレス、色違いのイヤーカフスを二つ取り出す。

そして

「じゃ、朔夜よろしく」

リングとネックレスを朔夜の前に置く。

「・・・何のつもりですか?」

朔夜は、半眼で豪臣を見る。

「いや、それって、氣を込めないと使えないし」

「はい、知っています。しかし、何故、あたしがしないといけないのですか?」

朔夜は立ち上がり、豪臣に詰め寄って行く。

「あ、いや、・・・俺って、あんまり集中力続かないだろ?だから、朔夜の方が、さ?」

「40時間続けられるでしょう?面倒臭いだけなのではないのですか?」

後退っていた豪臣は、壁に当たって止まる。そして、朔夜は目の前。

(やばい!このままじゃ、俺、死んじゃう!)

「報酬を要求します」

「へ?」

豪臣の胸に、着くか着かないかの距離まで来た朔夜がそう言った。

豪臣は、首を縦にブンブン振った。

「何でも、どうぞ!」

「では、洛陽に帰ったら、一日中あたしを抱っこして下さい」

朔夜の言葉に、豪臣は拍子抜けした顔をする。

「え?そんなことで良いのか?俺は、楽で良いけど」

「一日中です。いいですね?」

念を押してくる朔夜。

「あ、ああ」

「交渉成立です」

そう言って、朔夜は元の場所に戻って行った。

(な、何だったんだ?)

豪臣は、首を捻りたくなった。

 

そして、捜具に氣を込め始めた朔夜は、少し嬉しそうだった。

 

【回想・終】

 

「それを、彼女たちに渡すのですか?」

「ああ。今の二人なら、李儒にどうこうされないだろうがな。一応の保険だ」

「キッパリと護衛の依頼を断ったにもかかわらず。結局、董卓の護衛をしていましたし。お優しいですね?」

朔夜は皮肉を込めて言う。

が、豪臣は気にする風でもなく

「じゃ、行って来る」

と、出て行った。

残された朔夜は

「・・・莫迦」

と、拗ねたように呟くのだった。

 

~月の部屋~

 

豪臣は、途中で詠を誘って月の部屋に来ていた。

「え!豪臣さん、出て行くんですか?」

豪臣が洛陽に帰ることを伝えると、月は驚いて訊いてきた。

「ああ。予定よりも、だいぶ長居したけどね」

「ホントに行くの?」

豪臣の答えに、詠が口を出す。

詠は、せっかく手に入れた自分と月の理解者を失いたくなかった。

しかし

「すまんね。洛陽には、仲間が待ってるんだ」

と、豪臣は申し訳なさそうに答えた。

豪臣の答えに、暗くなる二人。

「まぁ、何だ。俺の代わり、って訳じゃないんだけど、これを二人に受け取って欲しい」

月にリングを、詠にはネックレスを渡した。

「これは・・・指輪、ですね。綺麗・・・」

月に渡したのは、シルバーリングだった。リングには、螺旋の様に彫り込みがされていて、小さなアクアマリン(水色の宝石)が埋め込まれていた。

「そうね。確かに綺麗。凄く澄みきった青・・・」

詠に渡したのは、ネックレス。トップは、月のリングと同じく雫型のアクアマリンである。

(やっぱ、女の子だなぁ)

宝石で、表情をキラキラさせる二人を見て苦笑する豪臣。

「それを、身につけていて欲しい。俺は、必ず二人を見守っているから」

豪臣は、そう言って二人の肩に手を置く。

(まぁ、文字通り、二人の居場所を監視してることになるんだけど・・・言えんわな)

そう思って内心苦笑する豪臣に

「ありがとうございます。私、肌身離さず身につけておきます」

「まあ、そこまで言うなら、仕方なく付けといてあげるわ。・・・ありがと」

一人は素直に、一人はボソっと礼を言う。

「ああ。嬉しいよ。それじゃ、また明日な」

豪臣は、そう言って部屋を出て行った。

 

豪臣が出て行った後、詠は寂しそうに俯いていた。

「詠ちゃん」

そんな詠に、月が心配そうに声を掛ける。

すると詠は、バッ、と顔を上げて月を見る。

「月!」

「は、はい!」

月は、ビックリして反射的に返事をする。

「頑張ろうね!」

詠は、笑顔でそう言ってくる。

「へ?」

月は、何を言われたのか分からず、ポカンとしてしまった。

しかし月は

(そっか。私たち二人で支え合って行くんだもんね!)

そう思い、頷いた。

「うん。頑張ろうね、詠ちゃん!」

そして、二人は微笑み合った。

 

~兵舎~

 

豪臣は、月の部屋を出た後、兵舎に足を運んだ。

「紫堂殿、何か用事ですか?」

そう言って、出て来た李傕。

豪臣は、李傕に会いに来たのだった。

「今晩は、李傕さん」

「ん?そうですね。もう日が暮れますね」

そう言って、李傕は天を仰ぐ。

「して、いつ出立なされるか?」

空を見たまま、李傕が訊く。

「明日です」

「急ですな」

李傕は、豪臣を見る。

「兵たちが、寂しがります」

「喜ぶの間違いではないですか?」

豪臣は、苦笑して言う。

「いえいえ。皆、あなたの武に憧れておりますよ。男でここまで強い者は、そうは居ませんから」

そう言った李傕も寂しそうにする。

 

李傕は、豪臣の強さに眼を点け、董卓・賈駆親衛隊の兵たちの鍛錬を願い出でいた。

ちなみに、董卓親衛隊隊長(牛輔)が亡くなったため、董卓親衛隊は賈駆親衛隊と合併して李傕が隊長になっている。

そして豪臣は、実戦感覚を忘れないために、それを快く了承していた。

大体は、乗馬の訓練の後に4刻(2時間)程であった。

豪臣は、鬼教官の様に兵たちを鍛えた。それを2週間も続けてきていたため、いつの間にか信頼を得ていたのだった。

李傕も、その一人である。

 

「そうですか、洛陽に仲間が居るのですか。それでは、引き留めは出来ませんね」

そう言って、優しい目を向けてくる李傕。

豪臣もまた、そんな李傕を信頼していた。

「李傕さん。あなたに言って置きたい事があります」

「・・・・・・」

豪臣の言葉で、顔を引き締める李傕。

「李儒と郭汜に気を付けて下さい」

「それは、重々承知しています。董卓様も賈駆様も我々が護ります」

「いえ。命を狙われるのではないのです」

「と、言いますと?」

「奴らは、月を裏から操ろうとしている可能性があります」

「っ!!」

李傕の眼が見開かれる。

「本当ですか!?」

李傕は、小声で訊いてくる。

「可能性の問題ですが、無い、とは言えません」

李傕は、豪臣の眼を見詰める。そして、豪臣の真剣さに頷いた。

「分かりました。この李傕。命に代えても、お二方をお護りします」

李傕がそう言うと、豪臣は首を横に振った。

「いえ、死んでは駄目ですよ」

「む!」

「親衛隊長のあなたが死んでは、二人を護る者が居なくなります。それでは、奴らの思う壺です。もしものときは、一時の恥程度、忍んで下さい」

豪臣は、真剣に訴える。

李傕は、フッ、と笑い

「確かに、死んでは守れませんな。紫堂殿の言葉。胸に刻ませて頂きました」

頭を下げる。

豪臣が、それを止めようとしたとき

「あ、紫堂殿!」「本当だ!」「こっち来て飯にしませんか?」

兵舎から兵たちが出て来た。

そして二人は、笑い合って兵舎に入って行った。

 

~天水街道~

 

次の日。

月たちと別れた豪臣は、月に貰った馬に乗り洛陽へ向かっていた。

「さて、洛陽に着いたらどうなんのかね」

「どう、とは?」

肩に乗る朔夜が訊く。

「これからのことさ」

豪臣は、そう言って煙草に火を点ける。

「ふぅ~。三國志通りなら、黄巾の乱、反董卓連合と続いて行くが・・・」

「あの董卓が非難されるはずがない、ですか」

「ああ。月が、そして詠が悪政をするとは思えないからな」

「・・・李儒、ですね」

「そうなるだろうな。早いとこ詠が暴いてくれると良いんだけど・・・無理だろうな」

豪臣は、溜息を吐いた。

「これからの行動は、反董卓連合のことも視野に入れていく必要がありますね」

「だな」

朔夜の意見に、頷く豪臣。

そして、耳につけているイヤーカフスに手をやる。

 

(保険は、この捜具と李傕さんの二つ。月、詠。もしものときは、絶対に護ってやるからな!)

 

豪臣は、そう誓いながら洛陽への道を進んで行った。

 

~南陽 平原~

 

夜の平原に、ポツンと人影があった。

「むぅ。貂蝉の奴、遅い」

卑弥呼だった。

卑弥呼は、仙桃を取りに行った貂蝉と此処で待ち合わせていた。

が、約束の日から二日経っても、貂蝉は戻っていなかった。

「あやつは、何をしておるのだ!」

と、卑弥呼が怒鳴ったとき、辺りが光に包まれた。

「やっと戻って来おったか!」

卑弥呼は、光の中心に駆ける。

 

そこで見たのは

 

 

「なっ!!貂蝉っ!!」

 

 

全身、傷だらけで倒れている貂蝉だった。

 

あとがき

 

どうも、虎子てす。

一身上の都合で、読者の方々には申し訳ないのですが・・・

これからの更新は、ペースがかなり変動すると思います。

すぐに更新されたりしばらく開いたりすると思いますが、これからもよろしくお願いします。

 

では、作品の話です・・・

取り敢えず、董卓編終了しました。次回からは、義勇軍編です。

義勇軍編では、朔夜に期待してて・・・良いのかなぁ?

で、最後に出てきた貂蝉。いったい、どうしたんですかね?

まぁ、次回に・・・・・・書くのかなぁ?

 

次回投稿は、未定です。そこまで期間が開くとは思いませんが、念のために未定として置きます。

 

作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。

 

最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。

本当にありがとうございました。

 

ではでは、虎子でした。

 

 


 
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