初めての方は始めまして、以前の作品を読んでくださった方、ありがとうございます。
*このSSは99%が作者の妄想で出来ています。
「原作に忠実じゃないキャラは嫌!」「キャラ崩壊は読む気しない!」な方はスルー推奨です。
完全に愛紗のキャラが崩壊しています、注意。
「あ、あの・・・僕と、付き合ってください!」
「(はぁ・・・)申し訳ないが、私には好きな男がいる」
「そ、そう、ですか・・・」
制服を着ている、と言うより着られているという表現の方が似合っている、顔も幼さが抜けきらぬ、そんな相貌。
そんな見た目から眼前の少年が下級生だと当たりをつけた愛紗だったが、それは見事に当たっていた。
顔を真っ赤にしながら『少しだけお時間を頂いてもいいですか?!』と言われた所で何となく用事は分かった。
案の定交際を申し込まれた愛紗だったが、いつもどおり心の中で嘆息してからテンプレートの返事をした。
凛とした佇まいに可愛いというよりは美人と呼ぶ方が相応しい相貌。
濡れた様に艶めいた長い黒髪に異性・同性を問わず眼を引かれるスタイルの良さ。
とりあえずで粉をかけるモノもいれば、真剣に交際を申し出るモノもいて、その全てに愛紗が微笑む事は無かった。
『もしかしたら愛紗は男が嫌いなのでは?』との噂が真しやかに囁かれ、それから数人の女生徒が涙を呑んだ。
「あ、あの・・・愛紗先輩の好きな人って・・・どんな人なんですか?」
失恋はよほど堪えたのか、目元を拭いながら震える声で下級生の生徒が尋ねてきた。
そんな事をお前に話す義理はないと切って捨てたかった愛紗だが、答えるのを渋ってまた変な噂が流れても困る。
また一つ心中で溜息を吐くと、何時も通り「お日様みたいな人」とだけ答えてその場を去った。
ホームルームが終わると同時に先程の後輩が尋ねて来たので、愛紗は帰り支度を終えていなかった。
根は真面目だが、態々鞄を取りに戻る為だけに教室に戻るのは面倒だという感情しか浮かんでこず、知らずの内に眉間に皺が寄っていた。
(根も葉もない噂は簡単に広がる癖に、何故好きな男がいるというのは広がらないんだろうか)
考えも怒りを孕んだモノしか浮かんでこず、本当なら今日あるはずだった予定を思い出すと気が滅入り、教室に入る。
「お、愛紗じゃないか。なぁ、いい加減俺と付き合ってくれよ」
「前歯折られたく無かったら其処をどけ」
しかし教室のドアを引く所で、もう何度交際を申し込まれたかも思い出したくない顔を見てしまった。
その男の名前など覚えてもいなかったし、当然顔もオボロゲだったが、思わず拳を叩き込みたくなるようないけ好かない笑みと声は覚えていた。
その男はドアと愛紗の間に身体を割り込ませ、腕で通せんぼをするかのように道を塞ぐ。
「おぉ、怖ぇ。 なぁ、あんま俺に恥かかせんなよ」
もう返事をする事も面倒だったし、何よりこの男と会話が成立する事も耐え難い苦痛だった。
(何故日本は銃社会じゃないんだろう)
「なぁ、マジ考え直せって。俺の何が気にいらねぇの? 自分でいうのも何だけど、俺って結構モテるし、優しいし、浮気とかマジしねぇよ?」
(はぁ・・・今日は厄日だ・・・急に先輩はドタキャンだし、後輩に捕まって帰りは一人だし)
「なぁオイ!聞いてんのかよ!」
己で優しいと言ったにも関わらず、男は愛紗の態度に腹を立てて肩に手を掛けようとして―――見事なコンボを決められた。
肩に触ろうとした右手を左手でかち上げて右胸にコークスクリュー、左胸なら男の時は奪われていただろう。
右胸を強打された事で息が止まったのか、男の膝が落ち、そこにあわせて右のガゼルパンチ。顎をかち上げられた男は意識を見事に失った。
「あぁスマン、私はお前ほど優しくないんでな」
聞こえていないのを百も承知で愛紗はそう言うと、何事もなかったかのように教室に入り、鞄を持って再び出てきた。
そして―――
「・・・・・・ぷっ!」
ペンケースに入れていた油性のマジックペンで男の顔に散々落書きをしたあと、何処からか荷造り紐を取り出して腕と足を縛り自由を奪う。
「ふむ・・・溜飲は下がったが、まだ物足りないな・・・」
そういうと制服の背中に『私は女子を襲おうとして返り討ちにされたヘタレです』と書き込むとガムテープで口と眼を塞ぐ。
ついでにその有様を写メで撮影すると、満足気に頷いて校舎を後にした。
「わるぎはなかった!いまははんせいしている!ならばよし!」
ダメだこいつ・・・はやくなんとかしないと・・・
「ねぇねぇ彼女、一人?良かったら俺らと遊ばない?」
「他を当たれ」
真っ直ぐ帰るのも癪だったので、喫茶店に寄ってはみたものの。
(私は夏場の電光掲示板か・・・)
男の釣れる数は星の如し。中には彼女が目の前にいるにも関わらず声を掛ける馬鹿もいた。
やれ「可愛いね」だの「綺麗」だの、想い人に言われるなら頬の緩みが止められない賛辞も苛立ちの原因でしかない。
加えて男性の店員が事ある毎にテーブルを拭いたりお冷の継ぎ足しを持ってきたり、頼むからそっとしておいてくれと言いたい状態。
(用事があるのは分かったけど・・・メールぐらいくれてもいいじゃないですか・・・)
他を当たれとは言うものの、別段誰と待ち合わせをしている訳でもない愛紗は手持ち無沙汰になりケータイを細かくチェックする。
その度に溜息を漏らすその態度は、外野に「待ちぼうけをくらう美人」としか映らず、それが声を掛けられる原因の一つであると愛紗は気
がつかない。
「ねぇ、そんな時間にルーズなヤツほっといて、俺らと遊びにいこーよ?」
「そーそー、車あるから帰り送ってくよ」
「早めに帰る為にも、早く移動しちゃおうよ」
などと言われても、視線を胸と太股を嘗め回すように這わされては到底信じる気にはなれない。
(私はそんなに軽い女に見られているのか・・・)
大体の場合、約束をすっぽかした男に苛立ちが募るモノなのだろうが、【忠犬】とまで称される愛紗の【先輩】への想いはもはや信仰と呼べるモノだった。
“約束をドタキャンする先輩が悪い”などと言う考えは誰かに唆されても微塵も心に浮かばず、寧ろ間の悪い時に約束してしまった己を攻めるのが常である。
もう帰ろうかと思う愛紗だったが、生憎と注文した飲み物はまだ大分残っており、一気飲みをするのも気恥ずかしい。
折角注文したのであるし、やはり全部飲みきってから下げてもらうのが筋だろうという思いもあり、未だに席を立てないで要る。
しかし―――
「ほらほら、いこーよ!」
この馬鹿ドモを相手にするのももはや面倒。しかし公衆の面前でスマッシュをぶち込むのもはしたない。
もしそんな真似をしたのが先輩の耳に入ったらと思うと心臓が止まりそうになる。
そんな時、愛紗のケータイがなった。
ただ一人を除いて着信音はすべてPiPiPiPiというアレであるが、今回は違った。
愛紗は眼を見開いた。メールではなく電話だったからである。
「は、はい!もしもし?!」
『あー、愛紗?』
「はい!」
今、喫茶店にいる従業員を含めた全ての人間の視線が愛紗に集まった。ほとんどのモノは眼を見開いて驚いている。
何の漫画だと言いたくなるほどの人数に声を掛けられても、その全てに絶対零度の視線と口調で返してきた鉄面皮が満面の笑みで崩されているのだ。
十数人居た喫茶店内の人間の内、半分以上が愛紗のお尻から生えた尻尾が嬉しさ爆発といった具合にブンブンと振られている幻影をみた。
『ごめんな、今日はすっぽかしちゃって』
「いえ!そんな、先輩は何も悪くないです!」ブンブン!←尻尾と首の動き。
『でさ・・・すっごい言い難いんだけど、さ・・・』
「何ですか?何でも言ってくださいって、前もお願いしたじゃないですか!」ショボ~ン・・・←犬耳と尻尾の垂れる擬音
『あー・・・今からでも、会えない、かな? 俺が行くからさ』
「ほ、ホントですか?!」ブンブンブンブン!!!←人生の絶頂
『もし愛紗がよければ、なんだけどね。もし都合悪かったら』
「構わないです!今先輩何処にいらっしゃるんですか?!私直ぐに行きますから!」ブンブンブンブン!!!←発狂
『いや、晩飯の材料も買わないとだから俺が行くよ』
「そんなの私買います!」ピーン!←もうどう動けばいいかも分からない
『あー・・・じゃあ、さ。一緒に行かない? 今日の埋め合わせにしちゃ安っぽすぎるけど、デートの代わりみたいな』
「(デ、デート・・・)構わないです嬉しいです寧ろご褒美です!先輩と一緒にお買い物するの夢だったんです!」にへらぁ♪←絵では見せられないよ!
『あはは。愛紗今何処?俺今外だから迎えにいくよ』
「そんな!私が先輩の所に行きます!」
『いつも良くしてもらってるし、偶には男らしいトコ見せないとな』
「あ、あの・・・じゃあ、えっと・・・その・・・」←目はグルグル、尻尾オロオロ、言っていいのかどうなのか悩んでいる。
『ん?』
「あ、あの、**っていう喫茶店なんですけど・・・その、」
『オッケー、直ぐ行く』
通話は終了したのだろう、愛紗はいそいそとケータイを鞄にしまうと、堪えきれず笑い出した。
「フフフ・・・・・・フハ、フハハハハ・・・・最っっっっ高にハイってヤツだ!」
仮面の化身もこんな美少女にセリフを引用して貰えるとは思わなかっただろう。どうしてこうなった。
もう痛い子でしかなかったが、それでも遠眼から見れば美人な辺りがまた涙を誘う。
一人、二人と後退り、気付けば高らかに笑う愛紗を取り囲むようにして人の壁が出来る。
「大旱に雲霓を望むこと二週間!」と歌いだした辺りから一人減り、二人減り、気付けば愛紗と店員以外、誰もいなくなった。
そこから数分後。
「何だこの空き具合・・・」
「先輩!」
「あ、お待たせ」
ヘッドフォンを肩から下げ、私服の姿でやってきたのはイケメンと言えなくも無い青年。
俺の方が!と思わなくも無い男性店員達だったが、先程の姿を見せられれば百年の恋も冷め切ってしまう。
原因は主にこの男の趣味にあるのだが。
「ごめんね、急にバイト行かないといけなくなっちゃってさ」
「いえ、私の方こそ間の悪い時にお誘いしてしまって申し訳ありません」
言葉こそ硬いが、その顔は満面の笑み―――ではなく、犬耳をショボンとぶら下げる、落ち込んだ愛玩犬のソレだった。
「えっと、時間まだ平気?」
「はい!全く問題ないです!」
「そっか、んじゃお茶しよっか?」
すげー走ったから喉渇いちゃった、と席についてメニューを見る一刀に自前のオシボリを渡し、己が注文を受けるかの様に横に立つ愛紗。
「座んないの?」
不思議そうに愛紗を見る一刀だが、渡されたオシボリで手を拭いている辺り染まっている。
「あ、えっと、オススメはこれです!」
「へ? あ、んじゃソレにしよっかな―――って、やべぇ」
「え?」
腕時計ではなく店に備え付けられた時計をふと見た一刀の表情が固まる。
「腕時計止まってやがる・・・ごめん、用事あるんだ」お前なんで来た。
「え?え?」
「埋め合わせは絶対するから!」
そう言うと伝票を持って会計を済ませ、愛紗に向かってゴメン。とジェスチャーすると外に出て駆け出す。
それをポカンとした表情で見送るしかない愛紗。
「あ、えっと・・・いってらっしゃ・・・い・・・」
届くはずもない言葉を何とか紡ぐを、そのままテーブルに突っ伏す。
コトン。と言う音に涙の滲んだ眼を向けてみれば、自身がオススメだと言った甘いカフェラテが置かれていた。
持ってきた女性店員さんが肩にポンと手を置き、慰めるようにウンウンと頷く。
「・・・・・・帰ったら、大神やろう・・・思いっきり泣こう」
呟くと、グイッとカフェラテを一気飲み。
あの日のカフェラテは妙にしょっぱかった。今日の出来事を後に愛紗は友にそう語り―――友は泣いた。
流石に説明不足すぎてなんのこっちゃ分からないと思われるので愛紗のキャラ設定を。
コンセプトは「デレツン」
一刀がいるとデレデレな普通の恋する乙女、いないとドSな冷たい美人。
美人が悪戦苦闘し、もがき苦しみ空回りする様を書きたかった。後悔はない。
あとこの場を借りて前作で感想下さった皆様にお礼を。どこに書けばいいのか分からないので、今回は許してください。
Night様 まさか悲恋姫†無双の作者様では・・・だったら光栄です、いや、そうでなくても感想はとても嬉しいのですが。
こんなのでも楽しんでいただけたら幸いです。
sayji様 なんかすげーほめられてるー。が第一感想でしたw
期待にこたえられるよう精進していきます。
ヒトヤ様 今すぐ小学館文庫の「うしお○とら」を買うんだ!
冗談はさておき、個人的には「うしとら」と略してる癖が出てしまいました。
MiTi様 意外と面白い、はこのSSにとって最高の褒め言葉だったりします。
原作のキャラ設定を生かしたSSで面白い物は沢山あるので、こんなのもいいかな、と思って書き始めた次第です。
tyoromoko様 蓮華の最近の口癖は
「誰もアタシに追いつけない!貴方が言った言葉です!」だったりします。兄貴燃え
米坊様 今すぐ他作家様の良作SSを読むんだ!手遅れになるぞ!
続きを待っていただけるのが何よりのモチベUPです。ありがとうございます。
セイン様 きっと最終回は蓮華がお腹一杯になります。
これの続きでなくて申し訳ないです。
truth様 彼氏の趣味はきっとこれだけじゃないんだぜ?
偏ってるのはきっと幼少時に英才教育を受けたんでしょうw
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何でも楽しめる心の広い方推奨二次創作です。
「原作に忠実じゃないと読む気しない」な方は読まれないほうが懸命です。