蓮華達が加わった軍勢を率いて黄巾党の軍勢が潜む城に到着した俺達は、城の近くに布陣した。
周辺にはかなりの数の諸侯が集まっており、その中には曹、公孫、劉の旗が混じっていた。
曹操、華琳に公孫賛か・・・。
華琳はこの外史でもあいかわらずなんだろうな。
公孫賛・・・。前の外史では結局恩も返せなかったな・・・。
この外史ではなんとか助けてやりたいけど・・・。
そして劉・・・おそらく劉備の軍勢を見てみると、その旗の中に、関、張の旗が混じっていた。
やっぱりこの外史にも関羽がいたか・・・。
愛紗に偽名を名乗らせて正解だったな、こりゃ。
隣の愛紗を見てみるとなにやら複雑そうな顔をしていた。
「どうかしたのか?愛紗」
「いえ・・・、別の世界とはいえ私と鈴々がご主人様以外の者に仕えていると知ると、なにやら複雑な気分になりまして・・・」
まあ確かに自分と同じ顔と名前の人物が別の主君に仕えているのを見ればな・・・。
最も正史ではこっちが正しいんだけどね・・・。
「北郷、関平、軍議を始めるから本陣に来てくれ」
と、突如冥琳が俺達を呼びにきたので、俺は思考を中止した。
「まあとりあえず今は目の前の敵を倒す方法を考えるか、愛紗」
「そうですね。いくら先のことを考えても仕方ありませんしね」
愛紗は俺に微笑みながら、俺に対してそう返した。
俺達が陣地に着くと、すでに雪蓮達が集まって、軍議を始めようとしていた所だった。
「おっそ~~~~い!!二人とも何してたのよ!
一刀と関平ぬきではじめちゃおうかと思ったわよ!!」
と雪蓮が膨れながら俺達に言った。
「悪い悪い、ちょっとどんな諸侯が集まっているか見に行ってたんだ」
「私もご主人様と同じく、
どのような諸侯が集まっているか興味がありましたので」
俺と関平は雪蓮達に謝りながらそう答えた。
実際はこの世界の諸侯に前の世界にいた人物と同じ人物がいるかどうかを確かめるのも理由なのだが、他にもどんな諸侯がいるか興味があったから、嘘は言ってない。
「ふ~ん、ま、いいけどね。それでどうだった?一刀達の目から見て諸侯たちは」
「最後まで生き残りそうなのは、曹操、劉備、辺りかな・・・」
「私もご主人様と同じく。その他の諸侯は他の諸侯との争いに負けて滅びるか、もしくは傘下に入るかのどちらかでしょうね」
雪蓮の問いに対して俺と愛紗はそう答えた。
何のことはない。元の世界の三国志に書かれていたことをそのまま言っただけである。
ちなみに愛紗も俺の世界で自分がどう扱われているのか知りたかったのかよく三国志を読んでいた。最初、自分や自分の知っている人物が男になっているので戸惑っていたみたいだが、演義での自分の扱いや、後の世で神としてあがめられた事については満更でもなさそうだった。
そういうわけで、愛紗も三国志の出来事については俺と同じくらいよく知っている。
「ほう・・・、その根拠は?」
「まあ、天の知識とでも言っておこうかな?もしくは天の御使いの勘、かな」
冥琳の問いに俺はそう答えた。
この外史も正史どおりとは限らないし、(孫策達が女性の時点で正史から外れてるんだが)未来が分かると安易に言わないほうがいいだろう。
実際、正史ではまだ生きていた孫堅がもう死んでいるのだから、これから正史どおりに進むかどうか怪しいものだ。
「勘、か・・・。まあいい。とりあえず全員そろったので軍議を始めるぞ、雪蓮」
「はいはい分かってるわよ、冥琳」
なんかまだ納得がいっていないみたいだが、冥琳は早々に話を切り上げ、雪蓮に軍議をするよう促し、雪蓮も分かっていると言いたげにかえした。
「さて・・・今回の戦だが・・・」
「私たち以外にも、曹、袁、公孫、劉・・・結構集まってるわね・・・」
雪蓮は戦場を見回して答える。
「これだけの数ならば、敵が篭城したとしても、充分戦えると思いますわ」
「しっかり連携できれば、ですけどね~・・・」
「それに我等の功名も得れねば意味がないしの」
六花さんの言葉に穏と祭さんはそう言って返す。
まあ確かにこれだけ数がいても、ほとんどの諸侯はほかの諸侯と連携しようだなんて考えてないだろうし、へたをしたら功名争いで足の引っ張り合いになりかねない。
「穏と祭殿の言うとおり、諸侯との連携はほとんど期待できませんし、孫呉の独立のためにもここで少なからず功名を立てねばなりません。諸侯の軍に邪魔されないためにも、時間はかけられません」
「でも、力押しってわけにもいかないわよ。どうするの~、冥琳?」
「それについては・・・、穏!」
「はいは~い」
冥琳の声に穏は返事をしながら、なにやらぐるぐるに巻いたポスターみたいな紙を取り出す。
「なにその紙?」
「これはですね~、この城の元城主さんが持っていたこの城の見取り図ですよ~。
元城主さんが逃げる際に一緒に持ち出したものなんですけれど、この戦が始まる前に穏が元城主さんから買ったんですよ~」
高かったんですからね~とか言ってるけど、俺はそれより、穏がどうやってその元城主と渡りをつけたのか知りたかった。
まあ陸家は正史と同じくこの世界でも呉の名家みたいだし、いろいろとコネがあるんだろう。
「そういうことだ。さて、見取り図を見てみるか」
冥琳の言葉を聴いて、穏は巻いてあった紙を広げた。
「ふむ・・・、厄介な城だな」
「攻めづらく守りやすい、教科書に出てきそうなお城ですね~」
「全軍を展開できるのは城門のみ、後ろは断崖絶壁・・・、隙がありませんね・・・」
地図を見て、冥琳、穏、藍里はそんなふうに呟きながら顔をしかめていた。
それで俺と愛紗も見てみたけど・・・・、なるほど、城門は前方に一つ、
後ろは崖、隙はないな・・・。
「面倒くさいから、一気にとつげきしちゃおうよ~」
「うむ!策殿に賛成じゃ!」
「策様・・・祭・・・・何馬鹿なこと言ってるんですか・・・
それではみすみす死にに行くようなものですよ・・・」
雪蓮と祭さんの言葉に、六花さんはあきれたように言う。
まあ二人ともおそらく冗談なんだろうけど・・・・多分。
「というか雪蓮、さっき力押しってわけにはいかないっていってなかったっけ?」
「へ?そんなこと言ったっけ?」
俺の問いに雪蓮はきょとんとした顔で答える。
この顔・・・間違いなく忘れてたな・・・。
「それでは北郷よ、おぬしには何か案があるのか?」
「へ?俺?」
と、いきなり祭さんが俺に話を振ってきた。
いきなりそんなこと言われてもな・・・・。
「そんなこと言われてもな・・・。せいぜい敵の陣に入り込んで兵糧を焼き払うぐらいしかないんじゃないか?」
「しかし、敵陣に入り込むなど、並みの人間ではできません。ましてや相手は城の中。
熟練の兵でも相当困難でしょうね」
まあ愛紗の言うとおりだな。
敵に気づかれずに城に潜り込むなんてこれほど難しいことはない。
へたをしたら敵に見つかって殺されるのがおちだろう。
「あとは夜襲ぐらいしかないけど、・・・さすがに難しいよな」
俺が冥琳に聞くと
「・・・いや、可能だ。祭殿、諸侯の軍が引き上げた後に全軍を城門に集結させてください」
冥琳は少し考えるそぶりをした後、そう祭さんに指示を出した。
「それはいいが、なんじゃ、夜襲を仕掛けるのか?」
「掛ける振りだけで結構です。敵の目をこちらに引き付けさせるのが狙いです」
なるほど。城門に軍を展開させて敵の目を軍に向けさせて、そのすきに兵を城に送り込んで兵糧を焼くって策か。
「そして、興覇と幼平が城に侵入し、放火活動を行い、その後祭殿と雪蓮、六花様が城内に突入する・・・こんなところか」
「ええ、その方法でしたらこちらの兵の犠牲も抑えられますし、早く決着を着けられます。それに、孫呉独立のための風評にもなりますね」
「いい策じゃない。わくわくしちゃうわ」
冥琳の出した案に六花と雪蓮は賛同の意を示す。
「それじゃあ私と祭と六花は諸侯が引いたら城を攻撃する役目で・・・」
「お待ちください!お姉さまは孫家の頭首なのですよ!?前線に出るのは危険すぎます!」
雪蓮の言葉に蓮華は反対の声を上げる。まあもし雪蓮が流れ矢にでもあたったら目も当てられないからな。
「大丈夫よ。前線の指揮は祭にとってもらうから。それに私はこんなところで死ぬ気は無いわよ。まあ念のために蓮華、あなたは後方に下がってなさい」
「なっ!!どうしてですかお姉様!?」
「言ったでしょ?念のためだって。万が一私が死んだらあなたが孫呉の王位を継ぐのよ?
そのあなたに何かあったらどうするのよ?」
「・・・・」
雪蓮は反論する蓮華にそう言って諭した。その言葉を聞いた蓮華は、まだ不満そうな顔をしつつも、それ以上反論しなかった。
まあ三国志じゃあ孫策はここでは死なないんだけどね。
もっとも史実通りにいくかは分からないけど。
へたをしたら正史とはまったく関係ない死に方をする可能性もある。
なにしろここは外史、なにが起きても不思議じゃないしな・・・。
「明命と思春はすぐに城に突入する為の部隊を編成しておいて、あと作戦も検討しておいてね」
「「はっ!」」
「あとは・・・穏は蓮華の補佐をお願いね」
「わかりました~」
「冥琳と一刀、関平は城壁の兵の掃討をお願い」
「ふっ、承知した」
雪蓮は他の将達にてきぱきと指示を出す。
俺達の役目は城壁の兵の掃討か・・・。何気に重要な役目だな。
愛紗にはちょっと向いてなさそうだけど・・・。
「それじゃあ、夜襲の準備でも始めましょうか。解散!」
雪蓮の言葉で俺達は解散となり、夜襲の準備の後、夜になるのを待つことになった。
時を少し遡り
「紅刃様、新しい軍がきたようです」
「ほう・・・旗印は?」
「孫、江東の孫策の軍勢と思われます」
「孫策?・・・ふん、孫堅と奴との娘か・・・。確か袁術の小娘の客将をしているとのことだったが?」
「はい、しかし孫策は先代の孫堅以上の人物と言われています。客将のまま終わりますまい」
「そうでなければ困る。あの小娘は仮にも奴の血を引いているのだ。せいぜい余の前に立てるほどにはなってもらいたいものよ・・・」
「御意・・・」
「まあとりあえずまずはこの城を攻め落とせるか、だな・・・。白華」
「は、紅刃様」
「我が軍はこのまま待機、城攻めはせぬ」
「・・・よろしいのですか?」
「この程度の手柄、あの小娘にくれてやるわ。それに、この城を落とせねば、袁術からの独立など、ましてや余を討つなど不可能よ・・・」
「紅刃様・・・・」
「余は見てみたいのよ・・・。あの小娘が、どこまでいけるかをな・・・。余にまでたどり着けるかどうかをな・・・」
「・・・・」
「ここで躓くのなら所詮はその程度よ。その時には我が軍をもって城を落とせばよい」
「・・・なるほど」
「それまで、この城を落とせるかどうか、せいぜいここで見物させてもらうとする」
「承知いたしました、紅刃様。桜花達にもそのように伝えましょう」
「うむ・・・下がってよいぞ白華」
「は、劉表様」
「江東の小覇王、か・・・・。果たして余に辿り着けるかな?お前の母の敵であるこの余に・・・」
あとがき
長い間更新できずにすいませんでした~!!
ホントテストテストで更新する暇無かったんです・・・。
そしてようやく今日更新・・・何日たってるんだよ・・・。
そのせいか文章も雑ですし・・・。涙出てきますよ・・・。
まあとりあえず、これからも更新続けていきますので、応援よろしくお願いいたします!
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申し訳ありません~!!!かなり久しぶりの更新になります!!もう毎日毎日試験試験で更新する暇ありませんでしたので・・・。とにかく12話更新です。