No.122239

真・恋姫†無双 十√ 11

kazさん

来月あたりから忙しくなりそうなのでもう少しがんばろう

 拠点のようなものですので、まったり読んでいただければと

2010-02-03 21:13:46 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:47157   閲覧ユーザー数:29849

陳留

 

反董卓連合が解散して数週間

陳留に戻った一刀達に待っていたのは各地の豪族や有力者、商人達などからの謁見や陣営傘下に入りたいといった嘆願だった、無理もない、難攻不落の汜水関、虎牢関を破った無敵の軍団、董卓の圧制から洛陽を救った英雄といった風評はすでに国中に広まっていたからだ。

その為北郷軍は一気に勢力を拡大し、その範囲は兗州、予州まで及ぶものとなる。

 

各地からの献上物は毎日のように積み上げられ、仕官を求める者達は後を絶たない、そんな忙しすぎる仕事をてきぱきとこなしてくれたのは仲間になったばかりの風や稟、そして霞であった。

 

風、稟の能力はまだ未知数で桂花などは未だ疑問を持って見ていたが、いざ仕事をやらせてみるとそこいらの文官など遥かに足元に及ばないほどの仕事をこなし、皆の度肝を抜いたものだった。

本当は詠にも軍師としての仕事をしてほしかったが「月をほっとけないでしょ!」と言って聞かないのでしばらくは月とメイドの仕事をしてもらう事になった。

そして霞は仕官する武官候補を次々と相手にし、死なない程度に加減してその実力を見抜いていく。

これが春蘭や季衣あたりならいきなり再起不能にして使い物にならなくしただろうと秋蘭は冷静に分析する。

 

そんな忙しい日々の陳留では一刀も例外なく、毎日デスクワークの毎日であった。

山のように積まれた各地の情報や内政の竹簡を前に一刀と秋蘭、稟がもくもくと仕事をこなしていた。

 

「へぇ、桃香が徐州に入ったのか」

 

「なんでも徐州州牧の陶謙殿が劉備殿の活躍を聞き招き入れたそうです、陶謙殿は病に伏し気味だったので民の為に劉備殿を徐州の州牧にとの目的だったそうですが劉備殿はそれを断ったとか、孔明や関羽、徐州の陳登などが説得したそうですが陶謙殿のお子方に配慮して了承しなかったとの事です」

 

「桃香らしいね」

 

「ですがこの時勢にそのような事をして何の得になるのか私にはわかりませんね、しかも劉備はその後は徐州に留まって番犬のような事をしているらしいですよ、最近領土を伺っている袁術への睨みの為に利用されてるとわかっているのでしょうか」

 

「番犬て、稟は結構きつい事言うよね」

 

その言葉にピクッ!と反応する稟

 

「どうせ私は風のように可愛くはありませんから!」

 

何か機嫌を損ねてしまった稟さん、一刀はなんとかフォローしようとするも上手くいかず

 

「い、いやそういう事でなくて、えと、あの秋蘭、なんとか言ってくれない?」

 

「北郷私に頼るな、自分のまいた種は自分でなんとかしろ」

 

「う、うーん…、えと、稟、よかったら今度食事にでも行かない?俺おごるからさ、実は良い店見つけたから二人で行こうよ」

 

「え!しょ、食事ですか、しかもふ、二人きりで!?…そ、それはあの…///// ぶはっ!」

 

鼻血をちょっと噴いて赤くなってる稟、一刀は「ご、ごめん変な事言っちまったかな」とあたふたし、秋蘭はそんな様子を見てやれやれと溜息をつく

 

「と、ところで稟、恋…呂布の居所とかはやっぱり、まだわからないかな」

 

「えっ、は、はい、各地から情報を集めてはいるのですが中々…、どこかの諸侯に雇われていればすぐわかるでしょうが、それがないとなるとまだ流浪の身でいずこかに隠れていると見るべきでしょうね」

 

「確かに、あの天下無双の飛将軍呂布を得ればどこもそれを喧伝して力を誇示するだろうしな」

 

「恋…、無事だといいんだけどな…」

 

そんな事をつい考えてしまい溜息混じりになった俺を気遣ってか秋蘭が

 

「北郷、そろそろ一休みしないか?働きづめで疲れたろ、稟も一緒に一休みしないか」

 

「ん、そうだね、丁度小腹も空いてきたし、食事にしようか」

「はい、それでは」

 

秋蘭の気遣いに俺と稟は答え、三人で厨房の方に向かう、すると美味しそうな匂いと一緒に楽しそうな話し声が聞こえてくる、声の主は月と詠?

 

「だ、だから月はそんな事をしなくていいんだって~」

 

「詠ちゃん、私もお手伝いしたいの、それに料理ってやってみたら凄く楽しいんだよ♪」

 

「何やってんの?」

 

俺が話し声に誘われて覗いてみると、流琉が料理を作っているのを月が手伝いをしている所で詠がそれをやめさせようとしている所だった。

 

「あ、兄様、料理をしていたら月様が手伝ってくれるっていうので」

 

「あ、ご、ご主人様、あの、その、すぐお食事の用意をしますから」

 

「月、こんな奴の為に食事なんか作る事ないって!、こいつなんか残り物でも食わせておけば十分だって!」

 

「お前な、さすがに温厚な俺でも怒るぞ、ってか月がせっかく作ってくれてるって言ってくれてるのに邪魔するんじゃない」

 

「うっさい黙れ!大体何で月があんたなんかの為に食事なんか作んなきゃいけないのよ!

食べたきゃあんたが自分で作ればいいでしょ!」

 

「詠ちゃんダメだよ、ご主人様にそんな事言「お、いいね、久々に何か作ってみるか」」

 

月が詠をなだめようとする所を一刀が遮り厨房へ向かう、その様子を興味深く見る秋蘭と稟、こう見えて自炊とかしてた一刀さん、材料を見て作れそうなものを考え、流琉に手伝ってもらいながらじゃかじゃかと作り始める、美味しそうな匂いが漂い、一刀が出したのは

 

「ほい天ぷら出来上がりー、新鮮な魚介類とかあればよかったんだけどな、あとこれがツユね、これにつけて食べてみて、あと塩だけでも結構美味いと思うから、柚子の絞り汁とかかけても美味しいよ」

 

そう言って出された熱々の野菜の天ぷらを皆がぱくぱくと食べ始める、上手くできたかなぁとか心配する一刀、しかし

 

「ほぉ、これは中々美味だな」

「そうですね、私は塩だけで食す方が好みでしょうか」

「美味しい~、ご主人様は料理もできるのですね、凄いね詠ちゃん♪」

「ふ、ふんっ!こんなの元の材料が良かっただけでしょ! もぐもぐもぐもぐ」

 

不安ではあったが中々好評でほっとする一刀、そんな天ぷらの匂いを嗅ぎつけたのか霞、凪、季衣がやってくる

 

「なーんかええ匂いすんなぁ」「あ、北郷様、このような所でなにを?」「何か美味しそうな匂い~、ボクも食べたーい」

 

その後も春蘭、真桜、沙和、桂花、風といった面々も現れ、一刀はオムレツやハンバーグ、ポテトチップスとか色々作ったり、他にもあったけど作り方が思い出せなかったり材料がなかったのでまた今度ね、といったら流琉、秋蘭が興味を示し、是非教えて欲しいといってきた、そういやこの二人料理得意だったな。

 

「なぁなぁ、ほんなら今度食事会みたいなんやらへん?天の国の料理とかもっと食べてみたいわー」

 

霞の何気ない提案に皆が賛同する、そして俺もまぁいいよって感じで承諾したのだが…

 

 

 

この時はまだ、あんな事になるとは思っていませんでした…

 

 

 

 

食事会当日

記憶を辿っていくつかのレシピを思い出しレパートリーを増やして準備する、流琉と秋蘭が手伝ってくれたおけげで結構な種類が作れた、食事には酒ないとあかんやろー、と言った霞が倉から大量の酒を持ってきて皆が飲み始める、それがすべての始まりだった……

 

 

「うにゅう~かじゅとぉ~、最近おみゃえわらしと遊んでくれないのにゃ~、寂しいにゃ~」

 

春蘭が猫化しています、俺の隣でごろごろしてスリスリしてきてます、アゴの所とかすりすりしてやると「にゃ~♪」と気持ち良さげ、しかしこいつこんな酒癖悪かったのか、普段とは違って妙に可愛いんでなんかこう悪戯したくなってくんな。

 

「はぁ~、姉者はほんとに可愛いなぁ、ああもう~///////」

 

秋蘭は春蘭を見てなんかもう悦に浸ってます、普段と変わらないように見えるが誰もいない空間に向かって春蘭の可愛い所百選のような事を語りかけてる所を見ると多分普通の状態ではない。

 

「や、やめてください!だ、誰か助けて!」

「んん~、凪はかわいいなぁ、やわらかくてこうむにゅむにゅってしたらうちもう変になってしまいそうやー」

「や、やめて、はんっ!お、お願いです霞様、や、めて…/////」

 

こっちは酔った霞が凪を襲っている、沙和と真桜に助けを求めているが二人は完全に出来上がっていて霞をけしかけている状態

 

季衣は食べるのに夢中、流琉は追加の食料を作るので厨房に行ってる、で、さっきから俺の足を蹴っているのが

 

「ふんっ!ふんっ!このっ!このっ!」

 

「荀彧さん、あの、痛いんでやめてくれませんか?」

 

「うるさいわねぇ~、黙っててよ!ひっく!何よ!馬鹿!アホ!全身精液孕ませ覇王!」

 

そう言うとぐびぐびと酒を飲み干しぶっ倒れる、おーい誰か救急車ー、そんな事を言ってると座ってる俺の膝にちょこんと座る風

 

「何やってるんですか風さん?」

「いえいえお気にせず~、風は酔ってませんよ~、ただちょっとふらふらして気持ちよくて、おにーさんの太ももでお座りしたいだけすから~、ぐう」

 

いや、完全に酔ってるから君、そして寝てるし、はぁ…と呆れていると稟が寄ってきて

 

「………」

 

「な、何か用でしょうか稟さん」

 

そう聞いた俺の前で何故か急に脱ぎ出す稟

 

「ちょ、なななな何やってんですか稟さん!だ、ダメですこ、こんな所でちょっと!////」

「ひーっく、破廉恥ですね」

 

あんたがなっ!ダメだ、誰かこの状況を止めれるのは…、そ、そうだ月さん、あの子ならなんとかして

 …そう思ってた時期がありました。

 

 

「あははははははははははははははは♪」

 

 

凄く楽しそうに笑っている月さん、うん、キャラが完全に変わってるよ、初見の人は誰このキャラ?オリキャラ?とか言いそうな程変わってます。

 

「まぁったくどいつもこいつもさぁ!馬鹿ばっかなのよ!いっつもいっつも何でボクがこんなに苦労しなきゃいけないのよー!うぃっく!(ぐびぐび)」

 

詠さんは飲みまくって愚痴りまくってます、もう新橋あたりでいるような酔っ払いのおっさん状態です。

 

すでにここはカオスというには生易しいほどの状態、なんでこんな事に…いつもの食事とかでもたまに酒は出るもののこんなに酷い事になった事はない、まぁ今まで色々大変な事続いたし、一気にそういったものが解き放たれた感じなのかなぁとか冷静にしみじみと想っている一刀、こんなのもたまにはいいかと考えていたが、ある一言がすべてをぶち壊してしまう。

 

それを言ったのは春蘭、彼女が言った言葉とは…

 

 

「うぐうぐ…かぁじゅとはぁ~、誰がいちばん好きにゃのらぁ~?」

 

 

その言葉に場が  シンッ…  となる

 

 

そして次の瞬間皆の目が俺に降り注ぎ、バイオハザードのゾンビを彷彿させるようにゆらゆらと動く皆が俺を包囲するように集まってくる、そして完全に囲まれた俺に復活したばかりの桂花さんが

 

「誰が一番なのよっ!」

 

と直球で聞いてくる、ど、どうする俺、何か、何か答えないとヤバイ!、そ、そうだここは一番無難、かつ安パイなあの言葉

 

「えと、俺は皆の事が好きで…(ヒュンッ!!!!ドカッ!!!しゅうううううううううう、ずばきゃああ!)」

 

俺の顔すれすれを横切って後ろの木に突き刺さって木が真っ二つに割れる、それは秋蘭の餓狼爪から放たれた矢

 

「北郷~、男なら今ここではっきり答えろ~」

 

「しゅ、秋蘭!ミリ!ほんとミリだったぞ今の!ってか何で餓狼爪もってきてんだよ!」

 

「いついかなる時でも敵と戦う為の準備をするのは武人の心得であろう」

 

「敵!敵って言いましたよ皆さん!敵って!くそっ!仲間を信じられない奴のいるこんな所にいられるかぁ!」

 

そう言って臭い芝居で今すぐこの状況から逃げ出そうとした俺だが、膝の所に風が座っている事に気付く、う、動けない…

 

「くふふ~、逃げようとしてもダメなのですよ~」

 

「き、貴様!まさかこれを読んでその上で俺の動きを封じる為に俺の膝の上に居座ったと言うのかっ!」

 

「風はこう見えて一流ですから~」

 

くうっ!さすがは軍師、いつの間にか俺の退路を絶っていたのか、どうする、どうすれバインダー!

そんな時、季衣と流琉が目に入る、そうだ、この子達は酒を飲んでいない、きっと俺の味方をしてくれる、そう思って

 

「き、季衣、流琉、た、助けてくれ、この人達ちょっと酔いすぎて変なんだ、だから…」

 

言い終わる前に季衣と流琉は俺の近くまで寄ってきて、そしてにこやかな顔で、しかし目に光のないあの目で

 

 

「ソレデ ニイサマ(ニイチャン)ハ ダレガ スキナノ?」と…

 

 

この子達がこんなになったのは誰のせいなんだろう、きっとこの国が悪いんだな、俺は改めて国を良くしようと思うのだった 完!

はい、終わりだよ~って解散の声をかけるも次の瞬間俺の首とかにいくつもの冷たい感触、皆さんの武器もってますね

 

「だ、誰が一番…でしたっけ、えと、えと…」

 

誰を言っても殺害される、そう思った、まさかこんな最後を迎える事になるなんて、ああ、何故、こんな事に…

絶望し、覚悟を決めようとした俺の所に、ふらふら~っと近寄ってくる人影、月さんだ、その手にはお酒を持って

 

「あはははははははははは♪」

 

「ゆ、月…さん?」

 

「ご主人様もぉ~、お酒い~っぱい飲んじゃえ~♪」

 

そう言うと俺の口にがぽっ!と酒瓶を突っ込む月、「ごはっごぼがああ」俺は逆らう術もなく酒を飲まされ、そして意識を失う、正気(?)だった季衣と流琉が後に語る、俺は意識を失いながら「助かった」とつぶやいてたとか。

 

 

翌日、何人かが昨日の事で自己嫌悪に陥っていた、中でも月さんは部屋に閉じこもり、詠さんが扉の前で

 

「月、扉を開けて!月~~!!!」ドンドンドン!

 

 

 

そんな陳留での一日

 

 

 

 

がぁん!

 

「いってぇえええ!」

 

どしゃあっ!っと地面に叩きつけられる一刀、彼は今春蘭に稽古をつけてもらっている、弱いのはわかっているがそれでもせめて自分を守れるくらいの力は持て、という理由で、一刀は元の世界で剣道をやっていた為多少剣の使い方は知っているつもりだったが力技の春蘭の剣の前ではそんなもの役にも立たなかった。

 

「だらしがないぞ北郷!そんな腕ではあっという間に殺されてしまうぞ!」

 

「無茶言うな!春蘭の馬鹿力でボコられたらどんな奴でも殺されるって!」

 

「誰が馬鹿だーーーーー!!!」

 

その言葉に思いっきり反応した春蘭が一刀を追いかけまわす、一刀は逃げるので精一杯、そんな様をみた秋蘭が

 

「姉者、その辺にしてやれ、北郷もあまり姉者を刺激するな、ほんとに殺されるぞ」

 

いや、止めてくださいよ秋蘭さん、そう思う一刀、ようやく気が収まったのか春蘭もおとなしくなり、三人は休憩する。

 

「はぁ、せめてもう少し耐えれるようになんないとダメだよなぁ、でもこっちの人達って皆強いんだもんなぁ」

 

「情けない!そう思うんだったら毎日鍛錬しろ!何だったら私が毎日稽古をつけてやるぞ!ははははは!」

 

「いや、だから春蘭手加減しないからほんと死ぬから、そうだなぁ霞や凪あたりに稽古つけてもらうかなぁ」

 

「だが北郷、お前は中々筋がいいぞ、姉者の攻撃をかわし続けられるのだからな、刃を寝かせて姉者の太刀の衝撃も上手く受け流していたし、目が良いというか、反射的に避ける能力に秀でてるのかもしれんな」

 

「元の世界でじいちゃんのきっつい稽古から必死で逃げ回ってたからなぁ」

 

「元の世界…か、そういえば北郷がここに来てから結構経ったな」

 

「そうだね、色々あったよな、でも二人に会わなかったら俺きっともう死んでたろうな」

 

「確かにな、貴様のような貧弱な者が一人で生きていけるほどここは甘くはないぞ!」

 

「だよな」

 

そう言って笑いあう三人、最初はこの三人から始まり、仲間が増え、そして今に到る、色んな事を思い出しながら一刀は想う。

 

「風や稟、桂花も言ってたけど、本拠を許にすべきだって話、二人はどう思う?」

 

「この後の事も考えればそれがいいのかもしれんが、決めるのはお前だ」

 

「うん、わかってる、ちょっとこの陳留は思い出深いからね、少し色々考えちまうんだよ」

 

「どこに行っても別に何か変わるわけでもあるまい!己が信じる道を進めばよいのだ!」

 

「だな」

 

春蘭の言葉に一刀、秋蘭は笑みをこぼす、そして

 

「よし、じゃあ行こうか春蘭、秋蘭!、これからも俺を助けてくれな」

 

「何を今更!貴様はただ命令すればよいのだ!そうすれば私は貴様の為に剣を振るってやる!」

 

「お前を御旗と決めてから我等は北郷の盾であり矛だ、なんぴとたりとも手は出させんよ」

 

「心強いね」

 

 

 

三人は笑いあい、そして歩き出す

 

 

 

そんな平和な日常も終わろうとしていた。

 

各地に潜ませていた細作の一人から報告が上がってくる、その内容は

 

 

 

 

「袁紹軍、幽州へ侵攻」

 

 

 

 

『荀彧2』

 

「やらせなさいよっ!」

 

そう言ってきたのは桂花、桂花が、桂花がそんな事を言うなんて!俺はドキドキしながら服を脱ぎ出しその白い柔肌を晒し

 …た、所で

 

「変な事考えてるんじゃないわよ!この変態孕ませ最低男!私が言ってるのは風と稟相手の模擬戦をやらせろっていう事!」

 

ああ、そゆ事ね、桂花は風と稟を妙にライバル視している、二人が軍師としてどの程度の実力かを見極める為に自ら二人を試したり質疑応答などをした。

結果、二人は桂花の質問をすべて答え、逆に質問を返したりとその才を知らしめる事となる。

そして内政などの仕事を二人は無難以上にこなし、軍師としては兵の訓練をてきぱきとこなしたのだ、こうなると桂花も二人の才を認めるしかなかった。

しかし、それでも納得はできない、それは自身が誰よりも優れた軍師だといいたいからか、それとも…

 

「わかった、近く凪達の鍛えた新兵達が訓練を終えるからその兵達の練度を見極める意味でも模擬戦をやってもらおうか、日時は2日後の昼、それでいいか?」

 

「ええ、二人には私から伝えておくわ」

 

そう言って立ち去る桂花、その背中を見ながら一刀は何か危うさのようなものを感じる、何か焦ってるような。

 

そして、模擬戦当日、新兵4千は2千づつに分けられ桂花vs稟、桂花vs風といった感じで行われた、結果としては対稟は双方せめぎ合い、わずかな隙をついて稟が僅差で勝つ。

しかし風に対しては桂花は主導権を一度も握れないほどで、結果としては惨敗と言ってもいいほどだった、それを見ていた秋蘭などは。

 

「桂花は山だな、そして稟は林、風は名の通り風のような戦い方と言ったところだろうか、守りに徹していれば桂花にも勝機はあったろうがうまく誘い出されたのか、それとも焦って自ら動いたのか」と

 

戦いの終わった三人は一刀の所にくる、風と稟はいつも通りといった感じ、しかし桂花は

 

「きょ、今日はちょっと体調が悪かっただけよ、でも本調子だったら私が勝ってたわ!それに前線指揮官への命令伝達が…」

 

「言い訳とは見苦しいですね」

 

桂花が必死で自身を擁護しているのを稟がバッサリ切り捨てる

 

「条件は同じです、それに体調や指揮官が万全であったとしても貴方は私たちには勝てませんよ」

 

「ふ、ふざけないでっ!私が貴方たちより劣るっていうの!この私が!荀文若が貴方たちに勝てないって言うの!」

 

「けど実際桂花は風達に勝てなかったじゃねぇか」

 

「なっ!」

 

「これこれ宝譿、本当の事を言っては桂花ちゃんが傷ついてしまうでしょう~」

 

なんか風の頭に乗ってる人形と腹話術みたいな事をやる風さん、慣れると結構面白いんだが、今の桂花にはちょっとまずいんじゃないでしょうか風さん。

必死に言い返す桂花、しかしどう見ても桂花の方が分が悪い、このままじゃ何か後味が悪いし、そう思った一刀は

 

「ま、まぁ今日はこのくらいで、新兵達もそろそろ休ませないと、荀彧も少し頭を冷やして…」

 

「私はいつも冷静よ!今日は…調子が悪かっただけなんだからっ!」

 

「あ、おいっ!」

 

止める俺を振り切って走り去る桂花、その様子を見てる稟は溜息をはき、風は何かを思うのであった。

 

 

部屋に帰った桂花は布団に倒れこむと、悔しさに体が震える、準備は万全だった、にもかかわらずその上をいかれた。

ここ最近内政をしてたとはいえ、軍略において遅れをとるとは思ってはいなかった、何故自分はこんなにもあの二人を敵視するのか、仲間であれば心強いはず、しかし桂花の中には一刀から言われた言葉が忘れられないでいた

 

 

「王佐の才」

 

 

自分の事をそう評してくれた人物、その言葉は彼の本心だと思った、そして自分でもそうだと思った、そして事実一刀は連戦連勝、名声を高めた、自分がいたから、自分だから、そう言いきる自信があった、しかしそれが崩されようとしている、桂花の焦りはそれが原因だった。

 

(もし私が本当に風や稟より劣る者だったらあいつはそれでも私を必要としてくれるのだろうか)

 

考えてしまう、その事を、そして彼女達は一刀に真名も預けている、それは一刀を主を認め、一刀も彼女達を信じたから、

でも私は…

風が私に聞いた事がある、何故真名を一刀に預けないのかと、

”男なんかに真名を預けられるわけがないでしょ!”そう答えた、でも本心は

 

 

”自分が自分でなくなりそうだったから”

 

 

「あいつの事を意識してもし…ありえない!そんな事絶対ありえないから!」

 

独り言のように言い聞かせ悶える桂花、深呼吸して再び冷静になる

 

「はぁ、何でこんな事をかんがえているのよ…」

 

あまりにも大きくなりすぎた一刀の存在に気付きつつも素直になれない自分に苛立つ桂花だった、

しばらく部屋で休んでいると

 

コンコン

 

とノックがされる、ちなみにこのノックという習慣は一刀が流行らせた、この時代にはないそうだが、

桂花などは好んで取り入れた

 

「誰?」

 

「はい、北郷様より荀彧様へお渡しするようにと荷物をお預かりして参りました」

 

「ほ、北郷から!、い、いいわよ、入りなさい」

 

そう言うと入ってきた侍女は綺麗な食盒を桂花に渡し立ち去っていく、

それを机に置いて何度も確認する桂花

 

「な、何よ、急にこんなもの送りつけてくるなんて、ま、まったく!///」

 

と、誰もいないのに何か言い聞かせるように言う、しかし内心は嬉しくてたまらないといった感じだ、きっと今日の事で何か気分転換にでもなるようなものを送ってくれたのだろうと思い食盒の蓋を空けてみる、そして中をみた瞬間

 

 

 

 桂花はその意味を察する

 

 

 

しばらく時間が経ち、いつしか桂花の目から止め処なく涙が溢れ出す、そして崩れ落ちる

 

 

 

 

王座の間

 

そこには一刀が一人ぼけーーっと立っていた

 

「んー、何だろうなぁ、ってか誰だろうなぁ、うーん、うーーん」

 

一刀が何故こんな状態かというと、実はこの少し前に、一刀の部屋に手紙が入れられていた、

紙が貴重品の時代に贈られたその紙に書かれていたのは

「王座の間で待っています」との一文、それを一刀はラブレターと思ってそっこー来たのだった。

 

「飲み会の事とか誰か気にしたのかなあ、うーん、にへへ、なんかちょっと嬉しいかも」

 

そんな風に色々考える一刀、と、その時、扉が強い調子で開けられ一人の人物が入ってくる、その人物は桂花。

 

「あ、あれ?荀彧?え、何で…ってかこれ荀彧が…なのか?!」

 

何か色々困惑してる一刀に対して、桂花は何も言わず一刀の所までズカズカ歩いてきて、そして

 

 

 パァン!

 

 

思いっきり一刀の頬をひっぱたく、急な出来事に真っ白になる一刀に、桂花が怒った口調で

 

「私がいらないならはっきりそう言えばいいじゃない!」

 

はい?桂花は今何を言った?”いらない?”何?何のこと?混乱する一刀をよそに桂花は続ける

 

「こんなもの、こんなものっ!馬鹿ぁ!!」

 

どかぁっ!って感じに一刀にぶつけられたのは中身の入ってない箱

 

「いってぇええ!!ちょ、いきなり何すんだよ!訳わかんねえだろ!俺が何したってんだよ!」

 

「うるさい!うるさい!うるさぁい!!!」

 

そう言い終えると、静かになる桂花、肩で息をして何か我慢してるようなそんな感じ、そして泣き腫らしたのか目は赤く涙を溜めている

 

「よかったわね、いい軍師が二人、いえ、詠もいれれば三人も配下に加えられて、さぞ満足でしょうね!」

 

「どうしたんだよ、何か変だぞ?」

 

「どうせ私は三人に比べたらたいした事ないわよ!軍略も、内政も、もう風や稟や詠にまかせれば問題ないんでしょ!」

 

何か変、というか何か混乱してるように見えた

 

「なぁ、何かあったのか?俺に出来る事があったら何でも…」

 

「もういいわよ!あんたが私をいらないって言うならこんなとこ今すぐにでも出ていってやるわよ!それでいいんでしょ!」

 

「は?な、何言って、おい!」

 

俺に背を向けて出口へ向かう桂花、よくわからないがこのままじゃ荀彧がいなくなる気がした、

咄嗟に一刀は桂花の手をつかむ

 

「離してよ!もうあたしなんかいらないんでしょ!必要ないんでしょ!」

 

「だから何の事言ってんだよ!訳わかんないだろ!俺はお前の事いらないなんて一度も思った事ないぞ!」

 

「嘘よ!じゃああの食盒は何よ!あんなもの使って遠まわしに私の事いらないって、用無しだって言いたかったんでしょ!」

 

「食盒?何だよそれ、さっきのか?あんなもん俺知らないそ」

 

「うるさい、離してよ!」

 

なんか埒が明かない、ってか話を聞かない桂花に何か段々腹たってきた一刀、そして

 

 

 

「いいから話を聞けーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

 

 

絶叫にも似たその言葉にようやく桂花も静かになる、ぜぇぜぇと息を吐いた後、呼吸を整え、冷静になって桂花に向き合う

 

「頼むから話を聞いてくれ、俺はお前が何で怒って何で泣いてるのかわからないんだ、あの箱に何か入ってあったか知らないけど俺あんなもん初めて見たから、それといるとかいらないとか何だよ、さっきも言ったけど俺は一度だってお前の事いらないなんて思った事ないぞ、今も、今までも!」

 

必死な一刀の言葉に聞き入る桂花、ようやく落ち着いたのか、少し呼吸を整える

 

「あ、あの箱、中身のない食盒…、あんたが私に送ったものじゃないの?」

 

「はぁ?中身がないって何だよそれ?誰かのいたずらか?よくわからないけどそんな事する訳ないだろ、子供かよ」

 

「ほん…とに?」

 

「天に誓って!」

 

一刀があまりにも真剣に、そしてきっぱり言うので嘘をついてないように思えた桂花、

その瞬間冷静になってきて急に恥ずかしくなってくる

 

「だ、だったらいいわよもう、きっと誰かが間違えたのよ…、て、手を離して、部屋に戻るから…」

 

今すぐここから出て行きたい衝動にかられ必死で出口に向かおうとする桂花、しかし一刀は手を離さない

 

「何か俺不安にさせちまってたのかな、だとしたらごめんな、俺全然気付いてやれなくてさ、ほら俺って鈍感だからさ」

 

「いいから手を離して!孕んじゃうでしょ!この馬鹿!」

 

「聞いてくれ荀文若、俺には君が必要だ、今までも、今も、そしてこれからも、だからもう二度と出て行くとか言わないでくれ、荀彧がいなくなったら俺はきっとこの先進んでいけない、だから荀彧にはずっと俺の傍にいてほしいんだ」

 

一刀の言葉に言葉を失う桂花、この男は、本当に私を必要としてくれている、私はどう答えたらいいんだろう

 

「ごめんな、俺もっとお前と話をしなきゃダメだよな、大切な話をもっと沢山、この国の事をもっと沢山、

そしてもっと仲良くしなきゃな」

 

返事を、何か言葉をかけなければ、でも言葉が見つからない、でも今一番言ってほしい言葉…言葉は…

 

「……ふぁ」

 

「ん?何?」

 

「……桂…花…よ」

 

「…、真名、呼んでいいのか?」

 

そう尋ねる一刀に桂花は何も答えない、ただうつむき、言葉を待っている、一刀はそれを見て、深呼吸をして

 

「改めてお願いするよ桂花、これからも俺を支えて欲しい、我が子房、王佐の才荀文若」

 

「……ええ…」

 

そっけない返事だった、しかし一刀は凄く嬉しそうだった、やっと桂花という真名を呼べた事が本当に嬉しかったのだ。

そのまま二人は無言になる、そして、二人の間に何かが芽生えようとした時

 

 

 

「は~い、そこまでですよ~」

 

 

 

 

そのゆる~い言葉に一刀と桂花はばっと距離をとる、そして声のした方を向くと…

 

「な、なな何で皆いるんだよ!?」

 

一刀が見た所には不自然に積まれた荷物、来た時は手紙の事に夢中で全然気付かなかったが、

ほんとに不自然に置いてあった荷物の後ろに風、稟、春蘭、秋蘭、季衣、流琉、凪、真桜、沙和、霞、

そして月と詠までいた、皆ニヤニヤしたり真っ赤だったり。

 

「あ、あんた達そんな所で何してるのよっ!」

 

桂花が顔を真っ赤にして皆がいる所を指差して怒鳴る、それに答えたのは風さん

 

「いや~、桂花ちゃんが最近何だかピリピリしていたので~、ここはおにーさんのお力をお借りしようと思いまして~、少し策を練ったのですよ~」

 

「策?……って、ま、まさかあの食盒を私に送ったのは!」

 

「はい~風が侍女さんに持たせて桂花ちゃんのお部屋に持って言ってもらったのですよ~、あとおにーさんにはお手紙をお出ししました~」

 

「なあ!!!」

 

風の一言に唖然としてしまう桂花、一刀は何が何だかわからない状態、そんな二人をよそに、皆は

 

「いやぁ~、ええもん見せてもらったわ~、うちもあんなん言われて見たいなぁ~」

「姐さん、そりゃあやめた方がええで、大将は生粋の女殺しやさかいなぁ~」

「はぁ~、でも北郷様の”これからも俺を支えて欲しい!”な~んて言われたら沙和も変になっちゃうの~」

「北郷様、私はずっとお支え致します!/////」

 

霞、真桜、沙和、凪が各々の感想を述べる

 

「そ、そしてこの後二人は、互いを見つめあい…あ、や、やめて!いいじゃないかいいじゃないか、い、嫌がりつつも体は正直な桂花殿は一刀殿のその屈強な腕に逆らえ…ず… ぶはっ!」

 

いつもの妄想でぶっ倒れ、鼻血の海でヒクヒクして恍惚な表情のまま気を失ってる稟さん、誰か助けてやれ

 

「ほほほほほ北郷め!何をやっておるんだ!まったく!あ、あんな言葉別にかけてほしい訳ではないが!」

「姉者、それは自分にも言って欲しいと言ってるようなものだぞ」

「はぁ~、いいなぁ/////」

「?何何?よくわかんない?」

 

春蘭、秋蘭、流琉、季衣もこんな感想

 

「へう~、いいなぁ、ご主人様にあんな事言われたいなぁ~/////」ほわほわ~ん

「ゆ、月、戻ってきて!お願いだからーーーーーーーー!!!!」

 

月と詠はこんな感じ、そんなもんで各々が楽しげに感想を述べてるのを見て、桂花は静かに怒りながら風に

 

「風~、覚悟は出来ているんでしょうねぇ~」(ゴゴゴゴゴ)

 

「ぐう」

 

「寝るなっ!」

 

「おおうついうとうと、それでは後は若い者にまかせて風はお暇させてもらいましょうかねぇ~、ほっほっほ

それではおにーさんまた後で」

 

そう言うとテテテテッって感じで外に走り去っていく風さん、それを

 

「風待ちなさいよーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

ドドドドドッと物凄い勢いで追いかけていく桂花さん、残された一刀さんもそろそろとその場を離れようとしたが

 

 

まわりこまれた!かずとはにげられない!

 

 

皆に囲まれた一刀は翌朝まで皆に付き合わされて酒の肴にされたとか。

 

 

 

 

 

翌日、桂花とばったり出会った一刀だったが

 

「近寄らないでよ馬鹿!まったくあんたのせいでとんだ大恥かいたじゃない!この変態色魔!全身精液魔王!外道孕ませ男!」

 

と、俺が何したんだよ、ってくらい酷く言われる一刀さん

 

「いや、俺悪くないよね、ってか俺もどっちかっていうと被害者じゃね?」

 

「うるさい!いいからしばらく私には近寄らないでよね!いい!ガルルルル」

 

そう言うとスタスタと一刀から去っていく桂花、一刀はそれをはぁーっと溜息まじりに見つめる

何か出会った頃に戻ったように思えるが、ただ一つ違ったのは

 

 

「わかったよ、けど後で今後の事について相談させてもらうからな、桂花!」

 

 

「ふんっ!」

 

 

 

桂花という真名を許された事だった。

 

 

 

あとがきのようなもの

 

って事で空箱ネタで桂花さんと呼ばせるってベタなネタを…

 

もうちっと色んな人の拠点もやろうと思ったんですが良いのが思いつかなくて、あうあう


 
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