「誰かと思えば一刀じゃない」
魏が呉を侵攻した戦いから数日。魏の御遣いケイン・ウェルナーと交錯した後にぶっ倒れた玲二は、未だに寝台に磔になっている。
暇を持て余した一刀は、孫堅の墓前に足を運んでいた。そんな彼の後ろから、いつもと少し違った声色の雪蓮が話しかけてくる。
「暗殺者だと思ったか?」
「暗殺者が母様の墓前に手を合わせている訳ないわ」
それもそうか、と納得し雪蓮の顔色を伺った。
「玲二は何で・・・私を庇ったのかな?」
表情は少し翳って・・・しかしどこか嬉しげにそう呟いた。
だから少し聞いてみたくなった。
「雪蓮は聞いていないのか?」
「何を?」
「玲二の・・・過去だ」
霊話表 幽体行列 ~James・R・Date~
―――2032年10月
―――アメリカ合衆国、ネバダ州、エリア51
―――アメリカ特殊作戦軍(※1)、特殊作戦センター
―――ハイテク特殊部隊
―――通称、FOXHOUND
「よう、大将」
「ジェームスか」
真新しい軍服に身を包んだ一刀の後ろから、少し色あせた軍服を着たジェームスが声をかける。
「しかし、その呼び方だと振り向く奴がいるかも知れんぞ」
「そんな馬鹿な」
一刀がFOXHOUNDに入隊してすぐにコンビを組んだ二人は、ジェームスの社交性からか随分と親密になっていた。
「しかし軍とは随分と楽な仕事だな」
「おいおい、ムキムキマッチョが集う天下の海兵隊よりきつい仕事だぜ?」
「鍛え方が違う」
「どんな鍛え方だよ」
「体力と筋肉は違うぞ」
一刀は寡黙な方だが社交性が無いというわけでもない。最初はどうあれ今では世間話を交わせるほどだった。
「そういえば昔FOXHOUNDは軍属じゃなかったんだってな」
「ああ、今と昔ではそもそも組織の意味が違うからな」
当時を知るわけではないが、CIA直轄のFOXHOUNDも27年前に、その前身となった組織も62年前に解散していた。この部隊はその伝説的な名を継いでいた。
「横にいる奴は蛇のコードネームだし、意味ありげというか、演出が憎いというか」
「文句があるなら司令に言え。幽霊」
「FOXのコードネームを与えられたやつもいるんだぜ?絶対狙ってるって」
「FOX?本当か?」
「ああ、顔も名前も知らんが・・・」
「となると・・・チキン、グレイに続く三番目(Tre)ということか」
―――2032年12月
その日はうっとおしいくらいの雨だった。12月にも関わらず、雪は降らず何かを流してしまいそうな雨だった。
日本では師走と言われるほど忙しい時期に、ARSOC(※2)指揮下の、PMCを査察する部隊が壊滅したとの一報が入った。
「自殺・・・だな」
手渡された写真には自ら首を絞めた兵士や、ハンドガンで自分の頭を打ち抜いた状態のものもあった。
「自殺を強制させられた・・・そんな感じですね」
玲二は嫌悪感を抱きながら渡された写真をデスクに放る。
一方の一刀は少し悩み、指令の顔をうかがった。
「もしやと思いますが、このご時世にサイキック能力を使う連中がいるのですか?」
「一刀はサイキッカーが軍にいたことを知っているんだな」
「スネーク・イーター作戦(※3)モセス事件(※4)、ガンズ・オブ・ザ・パトリオット(※5)の際に暗躍したBB部隊(※6)」
「それだけ知っていれば充分だな・・・もしかすると、君たちもこの敵に相対するかもと思ってな」
「どこの所属のサイキッカーですか?」
ジェームスの問いかけに司令は目を瞑り、言葉を選んだ。
「ジェームス、君とこのサイキッカーはずいぶんと因縁深いようだ」
「司令!俺に行かせてください!」
「この件に関しては既にフォックスが動いている。君たちの出番はない」
「しかし!」
「落ち着け、ジェームス」
肩に手を置かれ、相棒である一刀ですらも睨みつける。
「・・・悪い。頭冷やしてくる」
あんなに苛立ちを見せるジェームスを初めて見た一刀は、不思議そうな視線を送る。
「不思議か、一刀?」
「比較的冷静なあいつが、あそこまで暴れているのをみるのは初めてですよ」
「何れ彼に聞いてくれ。君ならきっと教えてくれる」
* *
「一刀?」
蒼天を仰いだまま昔を思いふけっていた。
雪蓮の問いかけにはっと現実に戻ってくる。
「何れ玲二に聞いてくれ。貴女にならきっと教えてくれる」
「貴方からじゃ言えない?」
「あいつが解決するべき問題だ。」
降りしきる雨。その雨は戦火を消していく。
しかしその雨は、爪痕も、記憶も、死体も消すこともできない。
その雨の中、一人の男が一人の女性の亡骸を抱え、濁天に向かって咆吼をあげる。
その男は玲二だった。
よくわからないかもしれない解説。
(※1)米国の陸海空軍、海兵隊の特殊作戦部隊を指揮する。
(※2)米特殊作戦陸軍の略。米陸軍の特殊作戦を統括する。かの有名なグリーンベレーもこの麾下。
(※3)1964年、ソ連の大陸間弾道ミサイルを発射できるシャゴ・ホッドの破壊、及びそれを指揮するヴォルギン大佐とザ・ボスを暗殺する作戦。この作戦が、メタルギアシリーズのすべての始まりにしてすべての元凶となった。MGS3のお話。
(※4)2005年、メタルギアREXの演習を行っていたシャドー・モセス島を、リキッド・スネーク率いるFOXHOUNDが占領した事件。MGSのお話。
(※5)2014年、ソリッド・スネーク最後の戦い。PMCの軍事クーデターだが、裏に張られた思惑は、漢たちの忠義と信念だった。MGS4のお話。
(※6)ビューティ&ビースト部隊の略。一刀が指すサイキッカー、スクリーミング・マンティスが所属。
おまけ2:
十六話 Tre・Fox ~狐ノ称号~
呉編
十七話 御遣交錯 ~Be Ultramundane~ 世界を越えて
十八話 連繋世界 ~Meme~ 文化的遺伝子(MGS2のサブテーマ)
益州侵攻編
十九話 理想人達 ~SONS OF LIBERTY~ メタルギアソリッド2の副題より
二十話 The Twin Snakes ~二人ノ蛇~ メタルギアソリッドのGC版リメイク作品より
二十一話 勝者不在 ~Force of Will~ ←次回
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この作品について。
・真・恋姫†無双をベースにとある作品の設定を使用しています。クロスオーバーが苦手な方には本当におすすめできない。
・俺の◯GSを汚すんじゃねぇって方もリアルにお勧めできない。
・ちなみにその設定は知っていれば、にやりとできる程度のものです。
・この作品は随分と厨作品です
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